色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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試合時間

「大きな筋肉……それこそが力ッ」

 

「迸る両足ッ、それこそがスピードッ」

 

「駆け巡る知略、それこそ至高」

 

■三人の男達が陣形を組んで立ち塞がる■

 

「ふふふ、どこからでもかかってくるが良いッ」

 

「我らのフォーメーション」

 

「百以上の侵攻者を退けて来た力、思い知るが良いッ」

 

■遺跡のような場所で、三人の守護者が叫ぶ■

■古ぼけた壁と、天井に囲まれた彼等の背後には■

■儀式場の【終点】である、陣が存在する■

 

「……」

 

「……」

 

「……いまいち」

 

■彼ら以外の存在が皆無なそこで■

■眼鏡をかけた、三人組の知略担当がつぶやく■

 

「やっぱり、少し台詞多すぎない?」

 

「ふーむ、実はオレもそう思っていた!」

 

「あっ、いやお前は賛成してただろっ。なんだよもうーッ」

 

 眼鏡の・カネガの言葉に賛成する屈強な体躯を持つ男(上半身裸)。とても長い足を持った男性・リーチは、己の案に駄目出しされたことに腹を立てる。

 

「ちくしょう、せっかく新人の侵攻者に舐められないようなキャラづくりを考えたのによっ」

 

「今更感がな~。オレたち、腰が低すぎてすでに舐められまくってるぜ」

 

「テレビのアレ、見たかよ? なんかすごい批評されてたよな」

 

 愚痴を吐きまくる彼らに、もうさきほどのような威厳はまるでない。

 かったりーんだよ、やってられるか、くそったれ。この三つの言葉で表現できる状態であるからして。

 一応、少しテレビに映ったこともある選手たちなのだが、銀の闘技会などではあまりいい成績を残せていない。

 

「やめだやめ!」

 

「自然体でいこう!」

 

「オレたちにはオレたちの良さがある!」

 

■開き直った彼ら■

■挑戦者たちが入って来るであろう、前方に並ぶ三つの通路を見る■

■すでに戦いの後のようで、三人の姿は少しボロボロで、体の数か所にひび割れが見える■

 

「あそこの、どれかから来るのが定石だが……」

 

「あくまで定石だ。今回のチームはあのスタークを倒した奴ら。どんな手段を使ってくるやら」

 

「ブリーフィングで念押し確認はしているが、どうにも掴めないチームなんだよなぁ。ぽっと出のやつがエースっぽいし」

 

 注視する視線には油断なく、今までの経験を総動員して事に当たる彼らはまさに、この中級の儀式場を守るにふさわしい就職者たちと言えた。

 その視線が左右の壁に向けられる。

 

「たとえば……」

 

■その時、大きな音が鳴る■

■破壊される左右の壁■

 

「さらに言えば!」

 

■天井に視線を送る■

■破壊されるそれを見た■

 

「お前ら!!」

 

「分かってる!」

 

「任せろい! 当然、こういうシーンも想定してる!」

 

■即座に対応する三人■

 

(こいつらはッ! ジャスミンとゴウト!!)

 

 左右から迫る侵攻者の情報を、反芻する筋肉男。

 二人共、ファイターとしてはそれなりに名が通った強者だが、儀式場を奪う侵攻者としての実績はそれほどでもない。

 

(今の状態じゃ、ただの単独戦闘では敵わないだろうが、儀攻戦としてならッ)

 

(こちらに利があるぜ! 勇士様よォ!!)

 

■天井から現れたのは、戦斧の勇士・ジン■

■すでに、得物である戦斧は現出している■

 

「支援◆研磨!!」

 

「疾風◆左足◆剣豪!!」

 

 リーチとカネガのコンビネーション。

 彼らはいい成績を残せていないが、それは運が悪かった部分が多く、選手としては【中級上位】ともいえる。

 カネガが支えの言でリーチを補助し、補助を受けたアタッカーが強化した・赤く光る魔導具の剣で斬りかかる。

 もう何十回も行ってきたそれは、素晴らしいほど綺麗に流れ、戦斧の勇士に炸裂した。

 

「!?」

 

「ぐはッ!?」

 

 何が起きた?

 疑問を抱く守護者二人。

 立ち向かった両者に衝撃が走り、その体勢が崩されたのだ。

 

(攻撃!? 斧は動いていないぞッ!?)

 

(まずい!! あと、あと一撃くらったらッ)

 

■消滅するだろうと、カネガが思った時■

■彼ら二人は消滅していた■

 

「――任務完了……」

 

■見えざる暗殺者の刃が、煌めいたのだ■

 

「ぐおおおおッ!?」

 

■続けて吹き飛ぶマッスル守護者■

■終点を通り過ぎ、壁に激突する■

 

「く、そぉお! やりおるッ!」

 

「アンタもね。これでも修行で強くなってるんだけど……」

 

■吹き飛ばした女ファイターは、戦闘用魔導具スーツに身を包み■

■その美しき肢体を強調しながら、守護者の前に立ち塞がった■

 

「おいおい、終点を素通りとは……舐めてくれるなッ」

 

「それは違うわよ。ただ、普通に勝つだけでは意味ないだけ」

 

「はは……、踏み台にでもするつもりかよ?」

 

「……否定できないわね。ごめんなさい! でもぶっ飛ばす!!」

 

「はは、やっぱり舐めてるじゃないかよ! この野郎ォッ!!」

 

■叫び、突進を仕掛けるマッスル■

■その口元は僅かに笑っていた■

 

(ちくしょう、そんな真っ直ぐな目で見やがってッ)

 

■彼の視界に在るジャスミンの瞳に、侮りは微塵もない■

■己を強者と認める視線に、嫌悪感など抱けない■

 

(いいぜ、やってやる! いざとなったらアレがあるしなッ)

 

■マッスルは魔導を詠唱する■

■その詠唱速度だけなら、高速戦闘でも問題ないレベルだ■

 

「右腕◆左足◆研磨!!」

 

■屈強な肉体を保護する、赤と緑の光■

■勢いよく、マッスル守護者はジャスミンへと殴りかかった■

■対してジャスミンが取る戦法は■

 

「――研磨◆右腕◆疾風◆疾風◆疾風ッ!!」

 

■どこまでも、馬鹿正直な突撃である■

■直接的な攻撃魔導の才能がないので、それより他になく・シンプルに強い■

 

(消えッ――!?)

 

■彼女の動きを見失ったマッスルの腹に■

「ぐぼあッ!?」

■重々しい攻撃が響く■

 

(なんつー、重いパンチだよッ!?)

 

■攻撃を受けた守護者は確信する■

 

(この女、噂通りの脳筋野郎かァ!!)

 

■薄い笑いをこぼしながら、マッスル消滅■

 

「なんか失礼なことを考えていた様な……気がする!!」

 

 消滅寸前の守護者の顔に釈然としないものを感じながらも、ジャスミンは己の成長を実感する。同時に、【魔導強化】の手ごたえが薄くなっているとも思った。

 以前なら、間違いなく苦戦していた相手を、そこまでの難なく撃破に成功。

 これが、あのビーフの修行の成果かと。

 自然とガッツポーズを決める。

 

「よしよし、あたしはまだまだッ」

 

 ほころぶジャスミンの顔。

 正反対にしぶい顔なのはゴウトである。

 

「うがー、おれ何もやってねー!!」

 

「あらら、ごめんなさいねー。ふふっふ」

 

「うおあー、このたぎった熱をどこにぶつければいいんだー!!」

 

 結局活躍できぬまま、壁壊し要因として終わってしまって不満のゴウト。

 上着を脱ぎ捨て、上半身裸で腕立て伏せを開始する。

 

「なにいきなり筋トレ始めてるのよ……」

 

「59!! 60!!」

 

「……儀式場で、熱血筋トレとかアンタぐらいでしょうね」

 

 呆れながらゴウトを見ているジャスミン苦笑い。彼女は疲れていてそんな気力もない。

 やがて、最後の一人がその場に現れた。

 彼はゆったりと歩きながら、仲間たちの様子を見る。死んだような無気力な目は変わらず。その視線の意味はよく分からない。

 

「うお、終わったのかー」

 

「遅いわよっ、サボり男!」

 

「迷った」

 

「うそつけっ、口の周りに食べかすついてるわ!」

 

「おっと」

 

■どう見てもお菓子タイム後の男■

■クライスはまるでやる気がない■

■怒ったジャスミンに、アームロックをかけられる■

 

「てか、もう決着着いた?」

 

「まあそうね、守護者はこれで全員。今回は儀式場の持ち主が参戦してないから、これで終わり」

 

「どうなんだっけ」

 

「この場合、そろそろ……」

 

■クライスの頭に鳴り響く声■

■脳に、直接語りかけているような感覚■

 

「これか」

 

■それこそが、守護の会による連絡方法である■

 

「――試合お疲れ様です。侵攻者の皆さま」

 

 流れた声は、女性のものであると感じられる。

 静かなそれは、しっかりとした声量を伴ってクライス達に届けられた。試合の疲れがいやされるような、そんな錯覚も抱く声色。

 

「試合時間、約【35分】……この度のナゴミノ地区A—27儀式場、第121回儀攻戦の勝利を収めましたことに称賛の言葉を送りたいと思います。素晴らしい試合でした。さすがは【不屈の歩兵団】。その名にたがわぬチーム力」

 

■クライス達のチーム名を、彼女は口にする■

■スタークのチームを倒したことで、知名度が上がったチームだ■

 

(どうやって見てるんだろうなー)

 

(遺跡入口の二人に手間取ったわね……強敵だった)

 

■張り巡らされた監視体制■

■儀攻戦の模様は、しっかりと記録されているらしい■

 

「では、終点に足を進めてください」

 

「……」

 

■顔を見合う、五人の侵攻者■

■事前に、この儀式場の所得者を申請してはいるが、一応最後にちょっと話し合う■

 

「で、誰が?」

 

「あたしは良いわよ。もう強化枠が埋まっているし」

 

「ははは、ならおれか!!」

 

「この儀式場とは……相性が悪いので……」

 

「オレはそもそも強化できん。どの儀式場とも相性が悪い……ようだ」

 

■ゴウトが一歩前に出る■

 

「……よっしゃ、じゃあやっぱり申請したとおりおれだッ!! うおー!!」

 

■元気よく足を進めていく彼は、あふれるようなパワーを感じさせた■

■終点の中央で、目を閉じる彼■

 

(この感じ……)

 

■儀式場による強化には相性が存在し■

■その強化幅は個人差がある■

 

(いけるかもしれん……。力強い感じだッ!!)

 

■そして今、ゴウトはその力を開放する■

 

「おおおお――ッ」

 

■赤と青の乱舞が炸裂し、天井を貫いた■

 

●■▲

 

「……ジン?」

 

■親友の声を聞いた気がするロビーは■

■あらゆる要素が、複雑に入り組んだ空間にいた■

 

「気のせいか?」

 

 彼が立つのは草が生い茂る大地。

 その頭上には【湖】が存在。

 その場を照らすのは、三つの太陽のようなモノ。

 周囲にはお菓子の家が点在。

 

■ちぐはぐな・儀式場内■

■儀式場内のフィールドは千差万別、どんな場所でも戦える能力も競技者に必須だ■

■このフィールドの名は、守りの大剣という■

 

「ぐ、ああぁう」

 

「ちくしょう……」

 

■最強の守護者の足元に転がるのは■

■この儀式場に挑戦した者たち、数十名■

■その肉体が、次々に消滅していく■

 

「――守護成功。おめでとうございます、試合時間の新記録【1分20秒】です」

 

■淡々と告げられる言葉は、圧倒的な蹂躙を意味していた■

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