色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】 作:幸福野郎
「――さすがです。最強の盾・ロビン・クルーニー様」
■称賛しているのが本心なのか分からない声色で、守護の会の管理者は言った■
「ははは、なんか毎回言ってないかな? それ」
軽い口調で対応する少年は、自身の地味なスポーツウェアを見て顔をしかめながら、その言葉を笑って流す。
その体・服には、一切のダメージが見られない。
戦った敵たちも中級以上ではあったのだろうが、結果はこれだ。
「まあ、律儀なことでもあるんだろうけど……もう少しフレンドリーでも構わないぜ? ロビーと呼んでくれ」
「では、またの活躍をお祈りしています」
「スルー!?」
そっけなさすぎる態度に、少しショックを受けるロビン……もといロビー。
現在の管理者との付き合いはそんなに長くないため、どうにも付き合い方が分からないロビーなのであった。
頭をかきながら、まあいっかと笑って話を進める。
「はあ、まあいいや。今回はボクのお楽しみタイムだったしね」
「楽しめましたか?」
「そりゃあもう。ボクは別に、苦戦する戦いを楽しむタイプではないし」
圧倒的な蹂躙を行った彼は、飄々とした態度で対応はする。
その嫌味のまるでない姿勢は、だいたいの人が好感を抱くものではあるのだろう。
「やっぱりさわやかに行きたいよね! ほら、ボクってイケメンだしさ!」
しかし、発言がいちいちキザ(っぽく聞こえる)なので、勘違いされることもあるのだが。
たとえば、現在彼の背後に立つ人物にとか。
「相変わらずキザですね!」
「お? ああお前か」
■その人物は、ロビーに似た雰囲気の少年■
■特に、なんの目立った要素のない外見だ■
「おれですよ、ロビーさん! いやー、今回も出番がなくて暇だなぁ」
「そんなにボクの出番多いかな、【クリス】」
■にこやかな笑顔で話す彼は、この儀式場を守護する者の一人■
■比較的新入りに位置するクリスだ■
「いっつもロビーさん達が片付けてしまうから、おれ達やることないんですよ!」
「ははは、それはすまないが……」
「本当にそう思ってますか! 本当に!?」
微妙な顔でクリスに接するロビーは、話を逸らすようにして、いや実際逸らした。
守りの大剣における主力級が、他の選手の活躍を食ってしまうレベルであると、なんだかんだで自負しているからだ。
ゼロに至ってはあの性格、遠慮などするわけもなかった。
「漆黒ナイトはもう去ったのか?」
「ナイトさんなら本職に戻りました。なんでも新種のS級モンスターが出現したとかで、あっちの方もゴタゴタしているようで」
「S級モンスター? もしや前に話題になった」
「喋るモンスターですね」
■不動のGの話題■
「なんかうさん臭いよね、アレ」
「というと?」
「本当にモンスターなのかなってね、やたらと行動が人間的というか」
「ははは、もしかして中に人が入っていたりしてっ」
クライスが聞いていたら、ぎくりとなる言葉。
ロビーの推測は普通に当たっていた。
もっとも、彼は別にそんなモンスターに興味などない。それ以上追及しようとはしない。
町を襲ったとかなんとかいうが、特に義憤に駆られたりはしないようだ。
(ボクが興味があるのは……)
【本気で――】
「……」
■ふと、ロビーはなにも言わなくなった■
「どうしました? そんな無言で……らしくないっすね」
「……いや、なんでもないさ。ははは」
そんな風に取りつくろってはいるが、明らかにロビーは何かを抱えている様子だ。
三つの太陽を見上げて、数秒の間、揺らめく灼熱を見つめる。
それが、抱えた負債も流してくれるようにと。
「……」
「なんのまぬけ面だ。ロビン」
「ああ、ゼロ」
次に声をかけたのは同僚の守護者・ゼロ。
きっちりとしたスーツも相まって、見る人によっては美男子にも思えるかもしれない女性。
彼女は、優雅な足取りで近付いてくる。
そこには絶対の自信が表れていた。
「今回はお前の独壇場だったというのに、浮かない顔だな」
「そんなことは……あるかもね。はは」
「ふう、強者には強者の態度というものがある。自覚してくれよ?」
「それは少し勘弁だな。ボクは自然体でいたいんでね」
飄々とした態度のロビーと、常に優雅なゼロ。
対照的にも見える二人だが、割と仲は悪くないようだ。
ゼロにしては珍しくも思える柔らかな声色で、会話は進んでいく。
しかし、それが中断された。
「――」
■姿を現す最強の盾の一角■
■その人影は静かに立っていた■
「!」
「……」
■最強の盾・二人の視線が、一人の人物に集中■
「マルチネスさん」
■ロビーが口にした名は、この儀式場を守護する主力■
「いきなり現れるのは止めてくれないか? マルチネス」
「……」
ゼロの言葉に無言で返す。
それに対して不快な様子を見せないゼロは、おそらくもう慣れてしまっているのだろうと思われた。
フードが付いた灰色のローブで全身を隠した彼は、無言のまま立っているだけだ。
「すごい無口だっ。守護者の中で一番秘密が多いと言われるだけはありますね」
「はは、きっとシャイなんだよ。分かる分かる!」
他の二人も、マルチネスのことは詳しく知らない様子。
最強の盾ともなれば、その情報も広く知れ渡るものだが。
マルチネスは異常なほどに情報が少なかった。そのせいなのか悪い噂があったりする。
「そういえばナイトは?」
「主殿ならば、今日はナイトの仕事だと言っただろう」
「そうだった! うっかりしてたー!」
ロビーのいい加減なスタイルに、あきれ顔になってしまうゼロ。
彼はかなり抜けているところがあるので、ゼロがサポートすることも結構ある。
「意外と、彼女は面倒見が良かったりするんだよね! いやー助かるっての!」
とは、ロビーの談。
「きっとナイトはナイトとして、ナイトらしい仕事をしているんだろうな~。ふふ、ボクも華麗にモンスター退治とかしちゃおうかな! ファンの女の子も、そういう姿見たいって言ってたし!」
「ナイト連呼されると、意味が分からないですね……」
「ナイトだからね。仕方ないさ!」
「そうっすか」
ナイトを除いたチーム最強クラスの守りが、今この場に集結していた。軽口を言いながら、ロビーはこの状況にプチ感動中。
こんなことは中々ない。
自分に会いに来てくれたのかと、うれしくなるのだ。
「みんな……! そんなにボクのことが……!」
■ロビーは感嘆し、決意した■
■目を閉じ、その決意を言葉にする覚悟完了■
「よければ、これから一緒に食事にっ。焼肉でもっ」
■目を潤ませながら、ロビーが言った時■
■既に三人は消えていた■
「……そんな」
彼は少し泣いた。
●■▲
「ぐううううお!!」
「おおおおおッ!!」
朝の、ビーフの館内部に響く暑苦しい声×2。
修業期間は、既に一か月になろうとしていた。
彼らの背負う石の色は、もう半分以上が変色済み。そこに至るまでに並の覚悟の選手なら心折れ、強くなるのを諦めているところだろう。
つまり、これに耐えているということがある種の証明になる。
「ぐ、おおおお!!」
鬼気迫る顔であるジンは、精神的に限界を越えようとしていた。
一日も休みなく、十時間以上これを使って修行するなど、よほどのタフネスを持つ者でも厳しい。
ビーフ老人にすら一日休めと言われているのに、彼は必死に継続し続けた。
(少しでも早くっ。あいつに追いつくんだ!!)
彼の目の前に立つ、ライバルの幻影が後押しする気合い。
折れそうになる度に奮起し、さらに気迫を増して立つ。
通常ならあり得ないほどの能力値を超えるスペックが、異常なトレーニング法を可能にしていた。
(そして、そしてッ)
■咆哮するジン■
■熱気がその場に渦巻く■
「うおおおお、根性はいってんなぁ!!」
隣で汗を流しまくっているゴウトは、ほくそ笑む。その目には、仲間に対する信頼の光があった。
正直な話、彼はジンのことを根性なしな野郎と思っていた。
まったく覇気を感じられず、明日に向けた熱意もない。
そんな男だと思っていたのに。
「見直したぜ!! ジン!! クライスとは大違いだッ!!」
かかかと笑うゴウト。
さらりとバカにされたクライスは、二階廊下でしぶい顔になっている。「まあいっか。むしむし」とナマケモノはスルーする。
ゴウトは仲間の奮起に感銘を受け、涙を流しながらそれに付き合うことを決めた。
彼一人だったなら、ここまで頑張りはしなかっただろう。
「やれやれ、意識高いのは困る」
二階廊下で、彼らの熱血修行風景を眺めるクライス。なんだかんだで結構見てしまっていた。
意識高い系とは言わないのは、これまたなんだかんだで認めている証拠だろうか。
彼はジャンパーを読みながら、時々ちらりと様子をうかがっているようだ。
表面上、関心がないように振舞ってはいる。
が、そんな彼の様子をサーシャは見て、微笑みを浮かべる時があったとか。
「ほんと、よくやる」
気の抜けた声でつぶやいた。
そして、また漫画雑誌をめくり始める。
彼の瞳は、何かから逃れるように逸らされた。
「うおおおお!!」
「どりゃああああ!!」
■30分程度、クライスはその場にいた■
■なぜそこから離れないのか、自分でもよく分からない■
●■▲
「……」
木々が生い茂る魔導場。
遠くで、戦闘音らしき音が聞こえる。
クライスは小走りでそこへ向かった。
走り出す足は、いつもより軽くなっている気がしたような、しないような。
「――なんのッ……!」
木々を飛び移りながら、オークの触手的なモノをよけまくっているヒナ。
修業の成果によって、危なげなく回避を行えるようになってきた。
その動きは速力が上昇し、洗練されている。
これが、この修業の目的なのかとクライスは思った。
「やるな」
木陰に隠れて観察を行っているクライスは、彼女の成長に感心。
ちょくちょく修業風景を見に来てはいたが、彼女は普段のダメ人間っぷりと反し、真面目に頑張っていた。
汗を流しながらひたすらに打ち込む、そんな姿がさまになっているのは気のせいだろうか?
新たな一面を見た気がした。
「だが、なんか惜しい」
■失われたぬるぬるを想い■
■彼は静かに敬礼した■