色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

81 / 125
その鎖の導く先は

「うりゃああ!! ああ!!」

 

「……!」

 

■大きな鉄柵に囲まれた、少し薄暗い平原■

■クライスとは別の場所での、激しい攻防■

■選手たちがぶつかり合い、複数の火花散らす■

■その中で、ひときわ輝く太陽があった■

 

「これで、どうよッ!!」

 

■桃色の髪をなびかせながら、大地を踏みしめ進む暴走少女■

■その破壊的な突進は、並の選手を寄せ付けない■

 

「……」

 

■そう、つまり■

■その突進を、剣一本で止める彼・マルチネスは並の選手ではない■

 

「やあああっ!!」

 

 衝突するマルチネスの剣と、ジャスミンの拳。

 凄まじい轟音が鳴り、嫌でも周囲の選手たちの注意を引く。

 方や身長180cm越えの巨人・方や美しく戦場を蹂躙していく、破壊の暴走列車。

 強大なる力の象徴を持った二人が、試合終盤の局面を彩るのだった。

 

「らぁあああッ!!」

 

■ジャスミンの両拳が、空間をねじ切るように連打される■

■それは乱暴な乱舞でありながら、どこか美しさと可憐さも感じさせるような、強さと美の結晶■

■彼女のスター選手としての潜在性が見え隠れする、美麗かつ狂暴である突進■

 

「……」

 

■それを見事に受け切っているのは、最強の守護者の一角・フード付きローブで全身を覆った大男■

■緑色の刃を有する大剣によって、ジャスミンの攻撃の衝撃にも怯まず、ゴール前の鉄壁を築いている■

 

「くっっそ! なんて固さ!! 調子狂うわねッ!!」

 

「……」

 

「びくともしてないッ!? この……ッ!!」

 

 ジャスミンの超絶POWER・破壊力をもってしても、揺るがぬ不動の山の如し。

 ビーフの修業で鍛えている彼女ですら手こずる、その堅牢さ。

 まさしくそれこそ、最強の盾である証明と言えた。

 加えて、現在のジャスミンはかなり消耗している。

 

(やっぱり、あの攻撃はまずかったわねッ)

 

■ここに来るまでの戦いで■

■ジャスミンは複数のダメージを受け、万全とは言い難い■

■相手も消耗はしているだろうが、ジャスミンは運悪くかなりの一撃を食らってしまっている■

 

「らああッ!! ああ!!」

 

 そもそも、一度気絶まで追い込まれていて、そこから気力で試合復帰したのが異常な展開。

 彼女の復活・指揮によって、チームメンバーが活気づいたのは言うまでもなく。

 クライスの動きが序盤で封じられた不運による不利的状況を、なんとか押し戻そうとしていた。

 ここまでで、充分に貢献していると言っても過言ではないだろう。が。

 

「――迷いが見える。何を悩む?」

 

「!?」

 

■マルチネスの静かな声、響き■

■同時に、ジャスミンは少し後方に弾かれる■

 

「ぐッ! ……この! 何よ迷いって!!」

 

「そのままの意味だ。集中し切れていない」

 

 ジャスミンは再び突撃し、マルチネスの巨体を吹き飛ばす勢い。

 だが、やはり彼は大して動かず、鉄壁としての役割を果たす。

 それに対し彼女は目を細めて、一旦後退した。

 

「……!」

 

■息を整える彼女の頭に、マルチネスの言よぎる■

■迷い・集中無■

 

(あるわよ迷いならッ……! 言われなくても……!!)

 

 ジャスミンの中に渦巻く悩み。

 それは、円盤戦と呼ばれる異世界競技の選手として、このまま続けていくかというもの。将来性や収入がどうとかそういう問題でなく、自分がやりたいかどうかが彼女にとって大事なのだ。

 

(心のどこかで、くすぶっているモノがあった……迷走している自覚はある、けどッ)

 

 クライスに手伝ってもらった創作活動なども、その迷いの表れと言えるのだろう。

 自分では試合に集中しているつもりでも、無意識に心鈍らせていた可能性は否定できない。

 そう考えて・ジャスミンは。

 考えて。

 

「――ああッ、もうッ。知るかァッ!!」

 

「!」

 

■狂暴に吠える・悩める少女■

■同時、地面を揺らす・両足の駆動■

 

「うああッ!! りゃああ!!」

 

「これは……!」

 

■さきほどまでを凌駕する、破壊的侵攻突撃■

■発する威圧感が段違いで、マルチネスは一瞬だけだが気圧された■

 

「ッ」

 

■マルチネスが有するスキル、【守護の背水】■

■そして、【魔剣】が有するスキル【専心防壁】■

 

「……来いッ!」

 

 守護の背水の効果:自身の近くかつ背後に式の柱がある場合に発動可能、防御力を急激に上昇させる。代わりに、使用者はその場から移動することが出来なくなる。戦闘行動は可能。

 専心防壁の効果:防御力が一定以上を超えているANDスキルの効果などで行動を封じられている場合に発動可能。打撃と斬撃系の攻撃に対して強い耐性を得る。ただし、魔剣で一定回数防御しないと使用者の体全体に効果は発動しない。また、発動して一定時間経つと解除される。

 

(両スキル・維持可能。万全の態勢)

 

■マルチネスの防御は、万全発動■

■揺るがぬ鉄壁がそこに在る■

 

「――オオッ!!」

 

「なッ」

 

■轟音と衝撃が発生し■

■魔剣を叩くジャスミンの拳によって、鉄壁にひびが入った■

 

「なんというッ。ぐッ!」

 

■魔剣ごと、マルチネスを押し込んでいく圧力・パワー■

■地面を削る彼の両足は止まらず、後退していく■

 

(これはッ。防御破壊の魔導かッ!)

 

 ジャスミンの周囲に渦巻く、半透明で水色の魔導エネルギー。

 これは、魔導の一種・【武人の言】の【砕く】。

 魔導・スキルによる防御効果を、破壊し弱体化させる、攻撃する者にとって有効な魔導だ。

 彼女はビーフに言われたことと、あの修業の日々の感覚を反芻し、凄まじい集中力を発揮して魔導を維持する。

 

「らあああッ!!」

 

「ぬ、ぐおおッ」

 

■止まらない・その力の発露■

■切り札となる彼女の得意魔導を、出し惜しみなしでぶつけてくる■

■この瞬間だからこそ、破壊の魔導は最大限の効果を発揮した■

 

「な、ん、というッ!」

 

■マルチネスを押し込む、ジャスミンの魔導+パワー■

■それは、修業によって強化されたものだ■

■モンスターの体液によって変質した、悪い足場での突撃+スキルによる防御を持つモンスター■

■二つの困難が、彼女の突進力を更なる高みへと昇華した■

 

「これがッ、あたしのッ——!!」

 

■ジャスミンは、ある言葉を言おうとして■

■暗く重い影が頭を過り、それを遮られた■

 

「アああッ!!」

 

■叫びを上げる、獣のごとき少女■

■その動きが停止した■

 

「……」

 

 彼女の突進の勢いが止まり、マルチネスは未だ健在。その肉体を粉砕するには、まだまだパワーが足りない。

 彼はゆっくりと口を開く。

 

「素晴らしい・その可能性」

 

■式の柱から発生する、ゴールした証である光■

■ジャスミンは、マルチネスを式の柱まで押し込んでいた■

 

「どんな、もんよ……ッ!!」

 

■心の中で、ガッツボーズを取るジャスミン■

■その髪も肢体も汗に濡れ、今にも倒れそうなありさまではある■

■しかし、瞳に映る情熱の火は力強く輝いていた■

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。