色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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初手混沌

「リング上で火花を散らす、熱き格闘家たち……!!」

 

 豪勢な部屋の中で、拳を握りしめて立ち上がるダンディな髭の男。

 彼は熱き想いに突き動かされて、感動のあまり立ち上がったのだ。

 

「いよいよその熱きバトルを、私自身がセッティングできる時きたり!!」

 

 机に載った複数枚の写真には、有名なファイターたちの姿が映っている。

 その中には円盤戦のファイター、ジャスミンの姿もあった。

 それらを眺める髭男は、にんまりと満足そうに笑った。

 

「ああ……ぜひ君たちの雄姿を見せてくれ!!」

 

■機嫌よく笑う男■

■その時、部屋のドアがノックされた■

 

「失礼します」

 

 ドアから入ってきたのは黒い制服を身に纏った、真面目そうな目をした男性。顔には少し焦りの色があった。

 年齢は部屋の主よりも若く、はきはきとした声色で彼は用件を伝える。

 

「ある方から、今回のイベントに関する融資のお話が来ています」

 

「? このタイミングでか。……名は?」

 

「それが……あの【旧貴族】の一人でして……」

 

 旧貴族。

 その名前を聞いた髭男の顔が、少し渋いものに変わっていく。

 彼の中で、面倒そうな予感がふつふつと溢れて来たのだ。

 かつて貴族だった者達が、この島に来てその地位を失った存在。しかしどうにも高慢な態度の者が多く、貴族制になじみがない髭男・ランスは好きでなかった。

 

「名は……【ハーディン・ゴズレイド】と名乗っていました」

 

■夜の屋敷に■

■波乱の種が芽吹いた■

 

●■▲

 

「……お勤めご苦労」

 

 周囲に魚が泳いでいた。

 ここは海に囲まれた魔導空間。

 前にこの部屋を管理していた者の趣味で、今になってもそのまま残っている。

 現在の部屋の管理者は、大して気にしていなかった。

 

「……ふむ、やはり怪しいのはこの旧貴族か」

 

 部屋の管理者・ナゴミノ地区のソルジャー拠点部隊長【クリア・ノーランド】。ソルジャーの最高階級、【ゴールド】に位置する男。

 とても広い肩幅を持った、金髪オールバックの人物。

 彼はさきほど部下から貰った資料の束に目を通して、現在マーク中の男がついに尻尾を出したことを確信した。

 

「ハーディン……乱れとの繋がりは明らか……」

 

■書類の一つに載った顔写真は■

■小太りの男性のもの■

 

「こちらの動きは慎重に行かなくては。……他にも気になる案件はあるしな」

 

■違う書類に目を通すクリア■

■その目が鋭く細められる■

 

「ヤマトで【黄金巫女】がモンスターと戦闘を行い重症……現在、療養中」

 

 書類に記されているのは、閉鎖的な町であるヤマトの情報。

 そこを治める女性の黄金巫女は、最強の盾に匹敵する戦闘力を持っているとされるが、そんな彼女がモンスターと戦闘行為を行って敗北したという。

 恐ろしい怪物のような特徴なので、もしかしたらまた新種のS級かもしれないとナイトの間でも動揺が広がっていた。

 

(そういえば、【変化モンスター】という種族もいた)

 

■変化モンスターとは■

■モンスターに変化できる種族のこと■

■とても希少な存在■

 

(かつては、モンスターとして扱われていたとも聞くが……まさか?)

 

 悪辣王の一派には、そういった種族の者も混ざっているという情報がある。

 そうなると、ヤマトの巫女と戦ったのは悪辣王の一派ということになるが、理由は分からない。

 しかし、クリアの頭によぎった可能性があった。

 

「もしや【ヤマトの遺産】……か!?」

 

 ヤマトという地には、様々な不可思議な伝承が残っている。その中の一つがよぎったのだ。

 自分の想像が当たっていれば、最悪の未来が待ち受けているかもしれないと、クリアは動揺した。

 悪辣王の目的が、世界を巻き込む事態に繋がる可能性もある。

 

「悪辣王……!!」

 

■ソルジャー達は、悪辣王打倒に向けて水面下で動く■

 

●■▲

 

「ふふん、これはまた厄介な……ハハ。今代の悪辣王はずいぶんと自由だなぁ」

 

「厄介なではないッ。大変な事態なのだぞ!?」

 

「少しびびりすぎだろう。この島の守りは並ではない」

 

■AM10:34・机を挟んで話し合う二人■

■片側のソファーに座るのは、イヤシノ地区の富豪であるゴールド■

■彼は、自身の館である交渉を行っている■

 

「今回の乱れの対処には、【ナイト】・【ファイター】・【守護者】が力を貸してくれる。この島ほど精鋭が揃っている地はないだろう。今度こそ奴らも終わりだ」

 

「どれだけ強くてもッ。乱れの波動に飲まれたら終わりだッ。戦えなくなる!! 油断はできん!! 当然、敗北するとは思っていないが……!」

 

「……ふむ」

 

 反対側に座るのは、少し禿げた中年男性。

 彼はソルジャーに頼まれて、親交のあるゴールドの説得に動いた交渉人。

 ゴールドが持つ私兵には力のある者達も多く、その力を悪辣王の討伐に役立ててほしいという内容だ。

 しかし交渉は難航していた。

 

「だが、まだ苦戦しているわけでもなし。相手の戦力もつかめていないだろう? なのに我が私兵たちを使わせろとは、少し早計というものだ」

 

「スターライト・ファイターの死亡事件を忘れたのか!? この島の最強戦力の一角すら! 乱れの前に敗れ去った!! それにッ」

 

「スミスは、耐性を持っていたのに純粋な力で乱れに敗北した。か」

 

「そうだッ!! さらには悪辣王と最強の盾たちの交戦情報!! 最強の二人でも乱れの親玉を仕留めるに至らなかった!!」

 

「たしかにそれは脅威だ……おそらく悪辣王の肉体能力は、ある点において島の最強すらも超えている。……ワクワクするほどにな」

 

 この前の悪辣王襲撃事件。

 マルチネスと漆黒のナイトという最強の魔剣コンビですら、悪辣王の肉体に傷一つつけることすらできず、島の外に弾き出すことが精一杯だった。

 この情報はソルジャーや他勢力に激震を走らせ、警戒度を急激に上げるに十分すぎるものである。

 

「魔導具などを使った、肉体強化戦法ではない……。素で、間違いなく能力超過しているという話だ……! 恐ろしい……!」

 

「スターライト・ファイターの【鉄壁超過】と同等かそれ以上の防御力とは、にわかには信じられんが」

 

「【鉄壁超過】を超える防御力だけならまだ良かったが……! 奴はそれ以外にも脅威を持つッ」

 

「……」

 

 机をバンと叩いて声を張り上げた知人に、ゴールドは無言の反応。

 その顔は、対面の相手が叫ぶ気持ちを理解してのものだった。息を乱す知人の様子は、決して大げさではない。

 そう彼は、十分に悪辣王たちの脅威を理解している。

 なので、知人が感じている脅威の正体をそっと口にした。

 

「――【王の体技】。アレを使える者が他にいたとはな」

 

■ゴールドが口にした単語は■

■重々しく部屋に響く■

 

「あはは、ぴんぽーん」

 

■同時■

 

「!!?」

 

■連続する銃撃音と共に、室内が弾丸の嵐に飲まれた■

■破壊音が場を圧殺する■

 

「おっわりー! あっけなーい!!」

 

 惨劇は一瞬だ。

 破壊された室内に散乱する飾り物の破片や、抉られた壁や床の一部。舞う粉塵が破壊の凄まじさを伝えてくる。

 その中に入ってくる人影は少女のもの。

 この惨状を生み出した彼女はなんの悪びれもなく、楽し気に歩いてきた。

 

■床に散らばる肉塊は、一人分のものしかない■

■もう一人は■

 

「いきなりこれとは……礼儀がないな。お嬢ちゃん」

 

「ははは、そうかなそうかな? ていうか何で死んでないのー?」

 

「死ぬかと思ったよ。本当に。まったく……かんべんしてほしいね」

 

■弾丸の雨をしのいだゴールドは、紺色スーツに傷一つない■

■敵意を込めた瞳で少女を睨む■

 

「白昼堂々と乱れの一派か。いやはや恐れ入る行動力だ」

 

「??」

 

「彼が死んだということは、乱れによって空間浸食を行ったということ。なるほど気分がなかなか悪い」

 

「???」

 

 ゴールドの言葉に、疑問符を大きく浮かべる短銃を持った少女。服装は、まるで黒いレオタードのようで露出多し。

 その麗しさも相まって、魅了される異性を大勢生み出しそうなスタイルだった。

 赤色のポニテと金色の瞳を持った彼女は、言葉の意味が理解できないようで、頭を大きく悩ませている。

 

「……乱れの気配を発すれば、キミの位置も分かってしまうだろう。すぐに捕縛部隊が来るぞ? 捕まれば二度と自由はない。完全な管理の下……情報を徹底して引き出されることだろう。キミのような【希少種族】はなおさらな」

 

「ああ~、そういうこと。ふむふむ」

 

「余裕じゃないか。なにか策でもあるのかね」

 

「ううーん。【リーチェ】むつかしいこと分かんなーい」

 

■自身をリーチェと呼称する少女は■

■緊張感のない態度で、短銃型の魔導具をゴールドに向ける■

 

「速攻でおわらせればノー問題じゃない?」

 

■引き金が引かれ■

■爆裂音を伴って、館の一角が大きく弾け飛んだ■

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