色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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地区を統べる者

「鑑定◆鑑定◆鑑定」

 

■ゴールドが言葉を紡ぐ■

■彼だけが使える、オリジナル魔導の重ね掛け■

 

「【承認】」

 

■そして、融合の合図が発される■

 

「ほう、融合魔導とハ」

 

 ゴールドが行う融合魔導の発動手順を、マリオは興味に染まった眼で見ていた。

 特にその動きを妨害しようとはせず、如何なる超常現象が行われるのか、それをしっかりと見極めようという思いのようだ。

 イヤシノ地区の地区長である男にして、元トップファイターの使う切り札。

 興味を抱くのは当然と言えるかもしれないが、しかし。

 

(命取りになるかもダ)

 

 マリオの勘が告げるのは絶対的な魔導の気配。

 目前の敵が操る世界の縛りのやらについては詳しくないが、おそらく今まで体験したことのない、未知の法則を見ることになるだろう。

 自身の斧で対処できるかは怪しい。

 

(それでも……まあやってみるカ)

 

 慎重を捨てた生き方。

 にやりと笑うマリオの心境は、決闘者としてのもの。

 異世界競技に明け暮れていた過去を思い出し、それが血を沸騰させ、目の前の壁を越えたいと思わせる。

 とくに彼はある競技が好きだった。

 

(儀攻戦——懐かしいなァ)

 

■自分を超えるような怪物が、ゴロゴロいた■

■そんな日々を、懐かしく思ってしまう■

■そうしている間に、奥義は発動した■

 

「【世界掌握(オールマイティ・ロード)】」

 

■世界のルールが書き換わる■

■あらゆる富を掌握する男が、世界の一部を買収した■

 

「これは……!!」

 

■ゴールドの周囲に渦巻く黄金のフィルム■

■ランダムに様々な光景が映されていくそれが、融合魔導の結晶■

 

「思考しても、分析しても無駄。ならば、その力を見せてみロ!!」

 

 異常な光景に怯むことなく、マリオは最強の斬撃を即座に飛ばした。

 これで倒せるとは思っていない様子見の攻撃だが、まるで手加減はない、破壊力を込めた大斬撃。

 

「不要なものを飛ばすな。処分が面倒だ」

 

■事も無げに斬撃を分解・消滅させるゴールド■

 

「!?」

 

 マリオの攻撃は、フィルムにすら到達しないで弾け消えた。

 さっきまで見せていた防御方法ともまた違う、世界の縛りを用いた新たな法則防御(りふじんなまもり)。

 ゴールドは一歩も動かずに、いや指先一つ動かさずに、殺意の斬撃を防いでみせた。

 

「さっきから斬撃を飛ばすだけか? 単純な攻撃では突破できんぞ?」

 

「……反則はやっぱりお前ダ。さらにやれることが増えたってことカ」

 

「鋭いな。その通り、この融合魔導は【選択肢】を増やすことが可能なんだ。ただそれだけ」

 

「それだけ?」

 

 ゴールドの言葉に苦笑するマリオ。

 世界を掌握して、攻撃や防御を行うなどという規格外の力が、普通に増えるという事実。

 それは、紛れもない悪夢だろうと混迷の太陽は笑うのだ。

 

「あの人の気持ちが分かったヨ。危険な奴め」

 

「そうでもないぞ。ワシの魔導を解析して、コピーした魔導の使い手がいるんだが……彼女の魔導は異常に不安定な代わりに、これ以上の効果を発揮することがある。それこそ町一つが一瞬で滅ぶ……とかな」

 

「改めて怖いな。この島の魔導師ハ……」

 

 乱れの一人であるマリオは確かに理解した。

 自分たちが襲いかかったこの平穏に過ぎる島は、決して平和ボケした地などではなく、底知れない戦力が集った魔境であると。

 異世界競技で戦ってきた強者が脳裏をよぎり、思わずニヤリと笑ってしまう。

 

「――だが破壊スル」

 

■重ねてマリオはにやりと笑い、己の欲望をさらけ出す■

 

「……ほう」

 

■同時に、彼が持つ斧から赤色の光が発生■

■それが膨れ上がっていく■

 

「グぐぐ、ははハッ!! 未知なる脅威ッ。それが、足を止める理由になるわけもなシッ」

 

「……」

 

 くぐもった笑い声は、嵐の前の静けさか。

 マリオは斧を構えたまま動かず、ゴールドもまた動くことなく、斧の力が解放される時を待つ。

 その先にある脅威を予感しながらも、止めるために動かない。

 

「存分に見せてみてくれ。キミの可能性をッ」

 

「ははハッ、ああ見せてやるゼ」

 

■笑い合う二人は■

 

「――消し飛びナ」

 

■赤色の極光に飲まれて――■

 

●■▲

 

「おおー、マリオくんかなぁ」

 

 遠方で弾ける光を視認したリーチェは、砂地でそれを楽しそうに見物していた。

 彼女の周囲には安寧の太陽——だった肉片が転がっていて、リーチェ自身も返り血で真っ赤に染まっているが、ただ無邪気に笑うのみ。様子を見に来た町民もついでに排除したようだ。

 罪悪感など発生するわけもなく、乱れは乱れらしく、安寧を壊す者として立っていた。

 

「いいなぁ。花火みたいでキラキラ綺麗」

 

 リーチェは目を輝かせながら、誘蛾灯に引き寄せられる虫のように走り出した。

 もう何の感慨もない肉片のことなどすっかり頭の中から消え去ってしまい、駆け出した少女は無邪気な悪意をまき散らす。

 

「わたしも一緒にあそぶー!」

 

●■▲

 

「――そして結果は?」

 

「……」

 

■時間は20と35ほど過ぎた■

■場所は???■

 

「ゴールドは死んだ」

 

■広い・広い室内に、荘厳な声が響いた■

■芸術的な飾り物が多く、神秘を宿しているかのような空間だ■

 

「……そうか」

 

「奴め、また無駄な好奇心を働かせおったな」

 

「だからといって敗れるなど……なんということだッ」

 

 嘆きと困惑の声を漏らすのは、厳格な表情の初老男性。

 身に纏う衣服は黒いガウンで、頭には輝く王冠が載せられている。

 彼こそは地区長の一人、【マリグナ・ソール】。

 

「フン、ゴールドも全盛期よりは劣っただろう。負けたからといって、そこまで不可思議でもない」

 

 マグリナと会話を行う体格に恵まれた初老男性は、かつての記憶を思い起こして、目を閉じた。

 それは、死んだゴールドに対する追悼のようにも見えるかもしれない。

 彼もまた、元スターライトファイターなのだから。

 マグリナは問う。

 

「ドック。今の貴様とどちらが強い?」

 

■かつて【披露戦】の頂点に立ったファイター■

■ドック・マインドは質問に答えた■

 

「……俺が得意とする競技は、技の芸術性を競うものだ。戦闘特化の野蛮なものではなくな」

 

「要するに奴の方が強いということか」

 

「……」

 

 ドックは少し不快そうな表情でマリグナから顔を背け、肯定も否定も行わない。

 その態度が何よりの返答になっていた。

 

「……やはり脅威だ。乱れ共は。スミスの件もそうだが、安寧の太陽のように耐性を持った戦闘要員ですら敵わない場合がある」

 

「……」

 

「奴らを倒すには、こちらもそれなりの犠牲を払わねばならんッ」

 

「……悪辣王がいない今がチャンスなのはたしかだが、焦り過ぎるのは禁物では?」

 

「いいや、あの手の人種に考える時間を与えるのは危険だ。一気に畳みかけねばならんだろう」

 

■議論が白熱していく■

■そして、新たな意志が混ざる■

 

「わたくしも……混ぜていただけますか……?」

 

「!」

 

■ひっそりと出現した声■

■まるで気配を感じさせぬ、暗殺者の如き歩み■

 

「【信望者】か。相も変わらぬ几帳面さだ」

 

「ふふ……スケジュールは完璧……」

 

■170程度の身長■

■黒いローブとフードで全身を覆った、青髪の女性■

■彼女の声は穏やかで——とても狂気的な美しさを秘めていた■

 

「無職の勇士様……の信望者。いい響きですわ……」

 

「よりによって無職の勇士とは、本当に良い趣味をしている……」

 

「……」

 

 ドックのバカにするような言い方に、女性の敵意が急速に膨れ上がった。

 自分が失言をしたことに気付いた彼は、露骨に彼女から目を逸らす。

 彼女の放っているそれは、殺気に相違なく、何かの間違いでドックの【首が飛ぶ】光景が見れてもおかしくはなかった。

 ゆらりと・見えない【なにか】が空間を渡っていく。

 

「悪かった、許してくれ【ローラ】」

 

「……」

 

■ラクダノ区の地区長■

■ローラと呼ばれた女性は、不気味に笑う■

■地区長の中でも【武闘派】として知られる彼女の敵意は、シャレにならない圧を感じる■

 

「……ま、よしとしましょう……ですが、あの方への偏見発言……二度目は……ないですわよ?」

 

 ただし敵意は消さずにローラは言う、

 すぐに謝罪しなければ、トラブルに発展しかねない展開であった。

 それほど、彼女の【故郷】では無職の勇士が賛美されている。

 噂では姉妹がいて、その人物に無職の勇士らしき者の写真を送ってもらっているとかなんとか……。

 ストーカーじみた話まであり、ひそかに恐れられている女性だ。

 

「我が全てである……あの方を侮辱なさらないよう……にネ」

 

 熱がこもった瞳でローラは釘を刺した。

 その熱量は紛れもなく狂気の域にあり、彼女は自身の全てを無職の勇士に捧げても構わないと思っている。

 地区長としての地位を利用して、信望する者の素晴らしさを広めているためか、ラクダノ区は無職の勇士に好意的な人が多いとも言われている。

 

「……む、これは……」

 

 彼女が殺気を完全に失せさせた、その時。

 ローラの右手首にはめられた腕輪から、珍妙な雰囲気のBGMが流れた。

 彼女は、怪訝そうな顔をして腕輪に触れる。

 そうすると、立体映像の小さな画面が腕輪の上に出現した。

 

「何用です……?」

 

「――こちら大王。こちら大王」

 

■画面に顔を移したのは■

■島の頂点に立つ大王を名乗る麗人■

■肩程度まで伸びた茶髪の女性■

 

「ちょっと今、乱れたちに襲撃されてる。やばいよねーこれ」

 

■彼女はマイペースな様子で、緊急事態を告げた■

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