「コスチューム着たかったなー」
「公平を期す為、着用不可なんだよ。」
体育祭当日。今までの準備期間はあっという間に過ぎていた。本番前、入場するのを甚爾たちは待っていた。暇だなと考えながら待っていると不意に前から轟がきた。そして少し睨んでから通り過ぎて、後ろにいた緑谷に向かっていた。
「轟くん……、何?」
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」
「へ!?うっ、うん……」
「おまえ、オールマイトに目かけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねえが……。おまえには勝つぞ」
そう緑谷に告げていた。明らかな宣戦布告に周りの空気が凍ったが、そんなのお構いなしと言わんばかりに緑谷を睨んでいた。
「そりゃ、君の方が上だよ……実力なんて大半の人に敵わないと思う……客観的に見ても……」
「緑谷もそーゆーネガティブな事、言わない方が……」
「でも……!!皆……他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって……遅れを取るわけには、いかないんだ。」
「僕も本気で、勝ちに行く!」
緑谷は轟に対してそう宣言した。この二人の会話によってクラス全体が気圧されていた。そう
「なあ。言っておくが俺は少なくともおめえらに負けるつもりはねぇぞ。」
黙っていられるほどいい気分ではなかった。いつもならこんな面倒事はしなかっただろう。しかし今、目の前にいるのは、No.2ヒーローのエンデヴァーの息子でこのヒーロー科においてトップクラスの実力を持っている人である。
否定してみたかった。捩じ伏せたくなった。俺を否定した禪院家、ヒーロー社会の頂点を。自分を肯定したくて、いつもの自分を曲げてしまっていたが、そんなことはもう今更どうでも良かった。
「そうだぞ!甚爾だけじゃない!!俺たちだって舐めてもらっちゃ困るぜ!!」
「油断してたら足下掬っちゃうからね!!」
「イケメンだからって体育祭でも勝てると思ったら大間違いだぞ……」
この雰囲気を変えるためか、甚爾の熱意が伝わったのかわからないが、他の皆も次々とやる気を轟たちに向けていた。そこにはさっきまでの殺気はなく、まさしく体育祭と言えるような雰囲気になっていた。
「せんせー。俺が一位になる。」
開会式。初手爆豪が爆弾宣言をしてブーイングが巻き起こった。爆豪はそんなのを意に返さずに皆を煽りながら元いた位置に戻っていく。主審であるはずのミッドナイトも、この状況を無視するかのように第一種目の説明をし始めた。
「さーて、それじゃあ早速第一種目に行きましょう!いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわティアドリンク!さて運命の第一種目!今年は……障害物競走!!計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周、約4km!我が校は自由さが売り文句!コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さあさあ、位置につきまくりなさい……」
そう言うと向かい側にあるスタートラインに各々が向かっていく。甚爾はと言うと、中途半端に前に行くよりかは一番後ろに行って上から行ったほうが速いと思い、最後尾に歩いていくと、不意に何かに触られた感触がしてそこに目を向けてみると体操服が浮いていた。
「えっと…葉隠だったけ?」
「せーかい!甚爾も後ろから抜いていく感じ?」
「まあ真ん中とかでごちゃるより後ろから踏み台にして行ったほうがいいしな。爆豪もいい踏み台になってくれって言ってたしw」
「うわーやること大胆だねぇ!…そういえば気になってたんだけど、その手に持ってる
「あーこれはサポートアイテムの『さあ!位置についたわね!!』っともう始まる感じか。」
「どんな結果になっても恨みっこなしだからね!」
葉隠はそう言いながら離れて行った。生徒全員が位置についたところで、スタートシグナルの明りがピッと音を立てて、一つ消えた。残りは2つ。
甚爾は集団の最後尾から後ろに数メートル離れた位置に居る。その状態で自分の武器を持ちながら始まるのを待っていた。ざわめきが消えて、生徒全員がスタートの合図に身構える。
そして、信号機の最後の明りが消えた。
『スタート!!』
始まりの合図と共に皆が走り出した。