「さて、今回のMVPは飯田少年だった。なぜだかわかるかな?」
戦闘訓練が終わり、公表をオールマイトがしている時にそんなことを言われた。なんでもバイクに乗ってた女子、八百万が言うには、爆豪,緑谷,麗日はこれが【訓練】であるということを意識していたからであるらしい。甚爾はというと判断はいいところもあったが、だからといって甚爾自身が戦況を大きく変えることがなく、いわゆる普通の結果であるということらしい。それを聞いたオールマイトは、全て言われたみたいで少ししょんぼりしていた。
そして全ての戦闘訓練が終わり、オールマイトは緑谷の公表をするために急いで走って行った。そして皆も帰ろうとしている時、甚爾は心の中に〈違和感〉を感じでいた。別に動きが悪いというわけでもなかった。独断専行をしたが結果的には影響はなく、あの中ではいい方だった。それでも甚爾は思ってしまう。
(クラスの奴らと戦いたかったな…)
今の自分がどこまでこのヒーロー科最高峰とも言える雄英に無個性である自分が対抗できるかやってみたかった。だからこそあの時、無理にでも建物を壊して、飯田と戦いたかったなと思ってしまった。だがそれはダメだと自分に言い聞かせながら教室に入る。
「お、甚爾じゃねえか!今から反省会をやろうと思ってるんだけどさ、甚爾もやんねえか?」
「禪院ちゃんのあの壁登りや個性、色んなことを聞いてみたいわ。」
「あーすまねえ。今日はあのじji..親父に早く帰ってこいって言われてるからな。遠慮させてもらう。」
「そうなのか、すまん!呼び止めて!」
荷物を持って帰ろうとしていところに、赤髪のやつとカエルっぽい女子が話しかけてきた。今は正直反省会をする気分ではないのでそれを断って、昇降口に向かう。外ではなにやら爆豪と緑谷が話しているようで、そのあとすぐにオールマイトも話していた。それを横目に通り過ぎて家に帰っていった。
「よう甚爾。どうしたそんな顔して。」
「少し考え事をな。…そういえばあの時の
「あるがお前、何に使う気だ?」
「今日の戦闘訓練で少しやられてな。ジジイの言った通り、やっぱり釈魂刀だけだと色々と不便だったから貸して欲しいんだが。」
「がはは!だから言ったろそれだけだとやりにくいと!まあ気づいただけマシな方だわ。ほれ大切に扱えよ。」
そして投げ込まれたのは個性が宿っている短刀、『天逆鉾』であった。
次の日、今日は戦闘訓練ではなく災害時の救助訓練とのことらしい。さっき雄英バリアと言われていたものが壊されて、ヴィランがくるとワクワクしていたが、ただのメディアであったため今日はすこぶるイライラしていた。
「緑谷ちゃんの個性はオールマイトに似ているわよね。」
「え!?いやいやそんなことないない!?」
「そうだぜ。威力はオールマイト並みだが、似ても似つかないだろあれは。どっちかって言うと甚爾の方が似てる気がするな!」
「確かに禪院ちゃんは体力テストや、昨日の訓練を見るとそっくりな部分が多い気がするわ。」
「私もそう思いますの。あれほどの脚力、どういう個性か教えてくれませんか?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「甚爾くん大丈夫なの言って!?」
甚爾は緑谷や麗日には言っていたがそういえば他の奴らには言っていなかったなと思いながら言おうとすると緑谷が止めてきた。どうやら俺が無個性であることを隠して、入学してきたやつだと思われているらしい。
「まあ隠す理由もないしな。」
そう言って皆は期待をしていた。どんな強個性だろうか、汎用性があるのか、緑谷みたいに超パワーを真似することはできるのか。皆が皆、各々の考えを持ちながら聞いていたが、その一言はとてつもない衝撃であった。
「俺は【無個性】だ。」
『『『『『…は?』』』』』
考えもしていなかった一言。皆が口を開けて止まっている姿を見て、思わず吹き出してしまった。
「そりゃそうだよなwこの天下の雄英さんが俺みたいな無個性を入れてくれるなんてなww」
『『『『いやいやそこじゃなくて!無個性なのになんであんな動きができるの!?』』』』
「めっちゃハモってるwww」
「おいお前ら、もうすぐ着くから静かにしとけ。」
甚爾のことをもっと知ろうと話しかけようとしたが相澤先生に止められてそれはできなかった。甚爾はというと、さっきまでの怒りはどこへやら、皆の反応がツボに入ったのかずっと笑っていた。
「きみたちの力は、人を傷つけるためにあるのでは無い、助けるためにあるのだと、心得て帰ってくださいな」
バスから降りて見えたのは、災害時の救助訓練用の場所であり、そこで13号とやらのヒーローから個性がどれだけのものかということを教えられていた。内容があやふやになっているのには、甚爾は個性を持っておらずこの【助けるための力】というのがいまいち理解できていないからである。そんな感じで聞いていると、広場が騒がしくなっていた。
「一塊になって動くな!」
「なんだアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな!あれは……敵だ!」
「どこだよ…せっかくこんなに、大衆引きつれてきたのにさ……オールマイト……平和の象徴……いないなんて……」
「……子どもを殺せば来るのかな?」
広場には黒い霧の中から大群を率いるヴィランが現れた。見たところほとんどがチンピラの集まりのように見えたが、手がたくさん付いているボスらしきやつの隣にはおそらく、さっきの黒い霧を出したやつ、オールマイト並みにでかいヴィランなど、多くのヴィランが集まって生徒たちは混乱していた。通信機能が遮断されているらしく、飯田が直接他の先生方に伝えようとすると、黒い霧が目の前に現れてきた。
「初めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして。まあ、それとは関係なく私の役目はこれで。」
そう言って体らしき黒い霧を俺たちに被せてきた。おそらくさっきのことからワープ系の個性で分断させようとしているのだろう。それを甚爾は察して、懐に隠しておいた天逆鉾を取り出してその霧を斬った。
「なぜあなたはワープされない!?…なるほど、干渉系の個性が効かない個性でしょうか?先生が欲しそうな子で..『邪魔だ』ぐっぁぁ!?」
何か喋っていたが関係なく斬りつけた。どうやら相性が悪かったようで、そのまま霧に隠れてどこかへ行ってしまった。
「チャンスです皆さん!飯田くんはオールマイトや校長にこのことを伝えに行ってください!他のみんなは外に…って甚爾くん!!」
「先に行ってろ。俺は相澤先生の助けに行くから。」
先生が避難誘導しているうちに、一人甚爾は抜け出して広場まで走っていった。皆はさっき怯えていたが、甚爾は昨日の鬱憤を晴らせると生き生きとした様子で下に降りて、ヴィランの前にたった。
「まあ殺さねえくらいにやってやんよ。」
そうして暴君による虐殺劇が始まった。