「やったわね、緑谷ちゃん。」
「いや…梅雨ちゃんたちのおかげだよ。」
水難ゾーンにワープさせられていた緑谷たちは、ヴィランたちを凌いで相澤先生のいる広場に向かっていた。
「相澤先生、大丈夫だよなぁ…」
「大丈夫よ峰田ちゃん。なんたってプロヒーローだもの。」
「でもあのオールマイトに喧嘩売りにきてる奴らだぞ!」
そうこうしているうちに広場が見えてきた。そこには相澤先生を押さえつけている大柄のヴィランの姿だった。そして不意に後ろから声がかけられ、体を向かせた時そこには甚爾がいた。
「おーい。お前らそっちどんな感じだ?」
「甚爾〜!大丈夫だったか!?」
「まあ。それにしてもヴィランのやつら全然歯応えがねーな。もうちょい粘ってくれると思っていたが。」
そう言いながら甚爾が指を刺したところには、赤黒い血が溜まっていた。おそらく人間であろう者たちが無惨にも、そこら辺に転がっており、甚爾のヒーロースーツにもこびり付いていた。
「甚爾くん!?っだ大丈夫なの!?」
「別に傷一つついてないk『敵がいながらおしゃべりごっこですか?』ってあぶね〜」
水の中に入っている緑谷たちに気を取られ、後ろからやってきた大柄のヴィランに気づかなかったが、間一髪でそれを避ける。
「少しは強そうなやつがいんじゃん。緑谷〜、相澤先生頼むわ。」
そして緑谷たちの前に置かれていたのは相澤先生だった。頭部の出血が酷く、今すぐに手当が必要な状態だったのでそれを見た三人は、すぐに抱えて戦線離脱をした。
「今の避けんのかよ……さすがヒーローの卵たちって言ったところかな……だがこの…対平和の象徴怪人…脳無…そこの目の前のガキをやれ。」
「対平和の象徴ねえ...なんかあるなあれ。」
そう思ってさっき相澤先生の持っていたナイフを投げた。そうするとまるで吸収するかのようにナイフが止まり、そこから再生しているように見えた。
(なるほどな。普通に真正面からだとやれねえな。だったら...)
そうして甚爾は目の前まで来た脳無とやらの大振りを避けて背後に入り込み、そこで天逆鉾を取り出して左足に傷をつけ、そしてそれを上に投げすぐさま釈魂刀に取り替えて足を切り落とした。
「ショック吸収の脳無が斬られた!?」
「落ち着け黒霧……おい脳無。早く起きてそのガキ殺せ……おい」
「無理だよ。ご自慢の脳無さんは。」
大柄の黒いヴィランは、起きあがろうとしていたが何度も転げ落ちていた。どうやら足を再生しようとしているが、うまくできずに落ち続けている。
「おい脳無……早く起きてそいつ殺せ……」
「なぜ脳無の足が再生されない!?あいつの個性は干渉個性無効なはず!?」
理解ができずに困惑しているヴィラン。そうこの釈魂刀は魂に直接傷をつけるものであり、再生するには魂自体をやらなければならない。だがこの脳無がそこまで考えれるわけもなく、さっきから片足で立とうとしているのだ。
「で?チェックメイトってわけだが。なんか他にあるのか?」
「どうなってる!……なぜ再生されない……なぜオールマイトもいない……言いたいことが追いつかないぞ……!」
「死柄木弔一旦ここは撤退しましょう。いくらなんでも部が悪すぎる。また体勢を立て直してかr『わーたーしーがー来た!!』早く逃げましょう!」
「あれ、もう倒しちゃった感じ?ナイスだ禪院少年!後は大人に任せなさい!!」
「っち……命拾いしたなオールマイト……また会おうぜ平和の象徴サン…」
そう言って二人のヴィランは逃亡した。残されたのはチンピラの寄せ集めだけだったが、もうそれらは甚爾によって
「禪院少年…これらは一体…?」
「襲ってきたんで全員もれなくやっときました。何か問題でも?」
「今はいい。君も他の先生方がもうすぐ来るから一緒に避難していてくれ。」
そして甚爾は何事もなかったかのようにそれらを踏みながら階段を登り、帰路についていた。
次の日、学校は休みになった。だがこの二人、オールマイトと相澤消太はとある民家の前に立っていた。そしてその家のインターホンを押し待つ。数秒後、玄関から出てきたのは禪院直毘人であった。
「これは先生方。こんな朝っぱらからどうした?」
「すいません禪院さん。昨日のヴィラン襲撃のことについて話したいことがありまして。甚爾さんはいらっしゃいますか?」
「あいつはもう朝からどっかに出かけとるよ。まあとりあえず入ってくれ。」
そうして禪院宅に入りお茶を飲んで話をし始めた。
「単刀直入にお聞きしたいのですが、本当に禪院甚爾は個性がないのですか?」
「またか。この前も送ったはずだろ。足のレントゲン写真を。ちゃんと送られてなかったか?」
「確かに拝見させてもらいました。無個性の証がちゃんとあることを確認し、本人からも言質はとっています。ですがやはり無個性であるというには疑問点が多すぎるのです。昨日のヴィランを病院やリカバリーガールなどで回復を行いましたが、どれも効果がなく自然治癒でしか回復が見込めない状況だそうです。そしてあの増強型や異形型などのものと遜色がないほどの身体能力。教えてください。あの子は何者なんですか?」
直毘人は今の話を聞いて立ち上がり、後ろの部屋に入っていった。そしてそこから取り出されたのはいつも甚爾が使っている釈魂刀であった。
「多分だが甚爾はこれを使ってヴィランを斬ったのだろう。これは儂の親父のもんでな。個性が宿っとるものだ。これで斬られたら魂に直接傷をつけるから多分その病院の奴らは【傷】を治そうとして【魂】自体を回復できていないんじゃないか?」
「個性が宿った刀…禪院少年はそんな危ないものを使っていたのか。」
「なるほど。一応確認のために預からせてもらえませんか?」
「構わん。で、身体能力だったけ?まああれに関してはあいつの体がなってるからしゃあない。」
そう言ってタンスから出てきたのは個性因子を数値化したものである。そこを見ると甚爾は0.00%となっていた。
「これは個性因子の総量。これがどうして?」
「普通の無個性でも個性因子は0.1%くらいは存在するんだよ。例えば個性が他人に渡された時でもそれが扱えるようにとな。」
「!?」
「だが甚爾は完全に個性からの脱却をしている。個性を譲渡されても使えないという前時代的人間、超常前の人間ってところかな。」
「禪院少年はじゃあなぜ個性因子すらないのにあれほど...」
「逆だよNo.1さん。あいつには個性因子っていう重りがないんだよ。皆が持っているもんがない。だから甚爾はそれ以外の能力が底上げされとる。鍛えるべきものがないからこそ、身体能力が強いってことじゃないか?」
そして直毘人はそれらのものをしまい、掛けてあったカバンを持った。
「すまんな先生方。今から用事があって出なくちゃならねえんだ。」
「…こんな朝から失礼しました。お話ししてくださりありがとうございました。」
そう言って相澤とオールマイトは出ていき、帰りのタクシーの中で二人は話し合っていた。
「個性因子がないか…オールマイトさんは何か知ってます?」
「すまない、私も聞いたことがなくてね。鍛えるべきものが欠けているからこそ他の部分が強くなっているか。」
「フィジカルギフテットって言えば綺麗ですかね。とにかく今はそれぐらいにしておきましょうか。例の脳無についてはどうなんですか?」
「今知り合いの警察から聞いているがやはり何も進展がないそうだ。個性の複数所持…」
「そこら辺についても話合わなきゃいけませんね。」