シャニPはキヴォトスで先生になる   作:Optimum Pride

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???:認めてあげるわ、このふゆが


マリーとカイテンジャーロボごっこ

 今日のデスクワークは順調に処理できた。

 すべては今日の当番生徒、マリーのおかげだ。

 

「ありがとうマリー、シスターフッドも忙しいのにわざわざ」

「とんでもございません、先生のお力になれって嬉しい限りです」

「謙虚は美徳だけどたまに甘えてもいいんだぞ……ファー」

「ふふ、コーヒーを用意しますね」

「ははっ、気が抜けちゃった」

 

 マリーは鼻唄を歌いながら給湯室へ向かった。

 彼女の柔らかい雰囲気に触れるといつも気が抜けちゃんだ、しっかりしないと。

 すると給湯室からいい匂いがしてきた。これは期待できそうだ。

 

「コーヒー、お召し上がりください」

「ありがとう、いただくよ」

 

 不思議なことに、マリーが淹れてくれた普段と同じ豆のコーヒーは、いつものとは段違いほどに香りがいい。

 そして一口を飲むと、凄く美味しい。

 

「はーっ、マリーのコーヒーは麻薬だな」

「えっ⁉︎ 私、違法な食材など……」

「あっすまん、ただの比喩だよ。マリーのコーヒーが毎日飲みたいくらいに美味しいってことだ」

「あわわ、そ、そうなのですか」

 

 素直な性格からか、俺の変な例えを聞いてマリーは慌てた。

 その姿はコーヒーに負けないくらいに素晴らしい。

 思わず頭を撫でてしまった。

 

「うん、ありがとう」

「こちらこそ……ありがとうございます……」

「どうして? 世話をされてるのは俺なんだから、素直に感謝を受け止めてくれると嬉しいな」

「はい……」

「ははっ、素直でよろしい」

 

 なぜか俺に感謝するマリーを少し揶揄うと、彼女はまたあわあわする。

 ちょっと震えている彼女は、小声で話し出した。

 

「もし先生が良ければ、私が毎日コーヒーを淹れて差し上げても……」

「ん? なにか言った?」

「なななななんでもありません⁉︎ 私ったらなんてはしたないことを……」

「大丈夫か? もしかして疲れてる?」

「いえ! 先生はご心配なく!」

「そっか」

 

 マリーがそういうのなら信じよう。

 なんだか最近シャーレに来る子たちは体調が変になりやすいんだよね、もしかしてシャーレの環境になにかあるのかな?

 今度空気清浄機でも買ってみよう。

 

「マリー」

「はい、なんでしょ……」

「カーッ、カーッ、見んねんマリー! カイテンジャーロボばいー!」

 

 マリーがぎこちなさそうに見えたから、彼女を驚かせようと、最近買ったカイテンジャーロボを彼女の目の前に押し出した。

 

「あの、先生、このお人形は一体……?」

「ワタシ、カイテンジャーロボ、キヴォトスを守るすごいやつばい!」

 

 カイテンジャーロボを動かしてポーズをとる。

 

「マリーを励ましに来たけん! 聞きたいことがあればなんでも言うとっと!」

「ふふ、お可愛らしいロボットさんなんですね。ロボットさんの特技はなんでしょうか?」

「分かったけん! ワタシの特技、見せてあげるばい!」

 

 カイテンジャーロボの背中のボタンを押すと、腹からミサイルが飛び出た。

 

「カーッ! カイテンジャーミサイル!」

「わー! すごいです!」

「特技はこれだけじゃねぇけん!」

 

 簡単な手順で、カイテンジャーロボは五体のカイテンジャーマシンに変形した。

 

「我々! カイテンジャーマシン!」

「ロボットさんが、お寿司になっちゃいました……!」

 

 カイテンジャーロボを見て、マリーは目をキラキラさせていた。

 

「ロボットさんをお触りしてもよいのでしょうか?」

「特別にマリーに触らせてあげるばい」

「ありがとうございます、ふふ」

 

 マリーは微笑みながらロボットを動かしていた。

 正直ネタが滑っていないか心配だったが、ちゃんとウケたようで安心した。

 

「驚きました、先生にこのようなご趣味があるのですね」

「ははっ、この前他の生徒に趣味を探してって言われて、試しに買ってみたんだ」

 

 果穂を真似して買ったんだけど、こんな形で役に立つとは思わなかった。

 

「俺の方こそマリーが興味を持ってくれたのちょっと驚いたけどね」

「もしかして、私が固すぎるという意味……?」

「違うんだ、それはマリーがこういう男向けのおもちゃも気に入ってくれたことで、マリー自身は気軽に話しかけれる優しい女の子だよ」

「あ、ありがとうございます……! ロボットさんも可愛いですから女の子にも好かれると思いますよ?」

 

 マリーは妙に自己評価が低いけど、彼女がシスターとしても人としても立派な人だと俺は思っているんだ。

 そこをちゃんと褒めて、彼女の自己評価の上昇に繋がると嬉しい。

 

「それならマリーだって素敵な子なんだから、そもそも心配する必要がないと思うんな」

「そんなことありません、今でもシスターとしては半人前です」

「そんなことないぞ? この前なんてサクラコが君のことを褒めたんだ」

「サクラコ様ですか⁉︎」

「そうだよ、『マリーさんにはいつもお世話されてばかり』って」

「あわわ……」

「セリナにも……」

「もう十分ですから! 許してください!」

「ダーメー! マリーは自分の良さを分かっていない!」

「そんな……!」

「そう思うよなカイテンジャーロボ?」

「マリーは自覚が足らんばい!」

「もうー! 先生は意地悪です!」

 

 マリーはポカポカと手で俺の胸を叩くが、全く痛くはなかった。

 

「ははっ、すまんすまん」

「今日の先生、普段とは別人みたいでおかしいです」

「そんなことないぞ、マリーと一緒いるのが楽しいだけだ」

「……先生なんて大嫌い、許してあげません」

「えっ」

 

 そう言って、マリーはプンプンになって顔を逸らした。

 これって、ガチなやつ?

 

「あの、マリー?」

「知りません」

「そんな……!」

 

 嘘⁉︎

 

「マリー?」

「ふうん」

「カイテンジャーロボだよ?」

「ふうん」

「あががっ」

 

 全く返事をしてくれない。

 ははっ、今日は俺の命日みたいだ。

 

「マリー、すまなかった……」

「なんのことでしょうか?」

「俺がはしゃぎすぎた、大人気がなかった」

 

 さっきまでの言動を思い返してみると、我ながらキモかったと自覚している。

 マリーと一緒にいるのが楽しいから、完全に羽目を外した。

 

「もうこんなことしないから、俺を許してくれないかな……?」

「……」

「マリー?」

「ふふ、ふふふ」

 

 俺が謝罪すると、マリーからなぜか笑い声が聞こえた。

 

「マリー、笑ってる?」

「先生がおかしくて、つい……!」

「えっ」

 

 怒っていると思った彼女は、涙が出そうなほどに笑いを堪えていた。

 

「あの……もしかして、怒ってない?」

「ふふ……怒ってなどいません、はしたない真似をしてしまい、申し訳ございません」

「そうなんだ……」

「さっきのお返しです」

 

 さっきの言葉はただの芝居のようだ。マリーは俺のことを嫌っていない。

 それは……! それは……!

 

「よかったーーー!」

 

 体から力が一気に抜けた。

 

「先生⁉︎ お体どうされたのですか⁉︎」

「マリーに嫌われて、一瞬死ぬのかと思った」

「死らないでください! マリーは先生のことを嫌っておりませんから!」

「ははっ、ありがと」

 

 マリーは本当に優しい子だ。おじさん臭いことをした俺にも優しくしてくれた。

 

「でもさっきまでのことは本当に申し訳ないと思っているんだ。マリーと一緒にいると、なんか気分が楽になって、学生の頃に戻ったような気がして、つい……」

「そうなのでしょうか、私には勿体ないお言葉です……」

「そんなことないぞ。マリーと話したことある人はみんな同じ事思ってるはずだ」

 

 そうだな、俺を含めて、トニリティにとってマリーは……

 

「マリーは太陽なんだ」

「えっ」

「みんなを見守ってくれて、親身になってくれて、だからみんなは安心できるんだ」

「そのようなことは……」

「あるんだよ、マリーは魅力的な女の子なんだから」

 

 もし283に居た頃彼女に出会っていたら、きっと彼女をスカウトしたと思う。

 彼女はここまですごい人ってこと。

 彼女なら、きっとファンの心を掴んでくれる。

 

「すまん、ちょっと熱くなりすぎた。気を悪くしないでくれると助かる」

「……先生も、太陽ですよ」

「えっ」

 

 マリーは微笑みながら言う。

 

「いつも私たちのことを見守ってくれて、ありがとうございます」

「は、ははっ」

 

 マリーに褒められるなんて全く予想してなかった、めっちゃ恥ずかしい。

 なに気に耳が熱く感じる。マリーにバレてないよな?

 

「じゃあ、そんなマリーにマフィンを用意したんだ。今持って来るからちょっと待ってて!」

「ふふ、期待しております」

 

 俺は逃げるようにキッチンまで走った。

 うん、多分マリーと楽しく話せたと思う。

 その後、俺たちは小さなお茶会を開いたのであった。

—————————————————

 シスターフッドに戻ってすぐ、シスターヒナタに聞かれました。

 

「幸せそうな顔してますね、なにかいいことでもありましたか?」

「幸せそうって、あはは、私は普段通りですよ」

 

 どうやら私は一目見て分かるほど嬉しそうに笑っていたらしく、自覚がなかったので恥ずかしかったです。

 先生と一緒にいることが、私にとってそれだけ幸せだったという意味なのかもしれません。

 

「今日の先生、子供みたいで可愛らしかったです」

 

 ロボットさんの真似をする先生を思い返すだけで、幸せな気分になります。

 そして私は先生にたくさん褒められました。

 

『マリーは太陽なんだ』

 

 私はそんな立派な人ではありません。

 今だって、先生の言葉をずっと独り占めしたいと思っています。

 シスターが持ってはいけない、下心がいっぱいに満ちています。

 

「ふふっ」

 

 神よ、この未熟なシスターを少しお見過ごしください。

 この幸せをもうちょっとだけ、感じていたいのです。

 

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