シャニPはキヴォトスで先生になる 作:Optimum Pride
今日はアビドスの定期会議に参加することになった。
対策委員会のみんなと借金対策や新入生を増やす方法についてお話しをしていて、昼になって休憩時間。
昼ご飯を食べ終えると、ホシノは昼寝をすると言ってその場から離れた。
いつものことなので、俺たちは全く気にしていなかった。
だが休憩時間が終わりそうになっても、ホシノは全く帰って来ない。
心配なので俺はホシノを探しに行くことにした。
いつもの屋上の昼寝スポットに行くと、ホシノの姿が見えた。
「ホシノ、昼休みがそろそろ終わるぞ」
「……」
彼女に呼びかけた。返事が来ない。
隣まで歩み寄っても、ヘイローが全く見えない。
彼女の横に座って顔を覗くと、気持ち良さそうな寝顔が目に入る。
どうやら完全に寝入っていたらしい。
ホシノを見つけたので、俺はグループチャットで報告することにした。
先生『ホシノを見つけた。気持ち良さそうに寝ているからそっとしてくれないか?』
アヤネ『先生がそう言うのならそうしましょう』
ノノミ『うん〜私も賛成』
セリカ『ちょっと! ホシノ先輩を甘やかさないでください』
先生『ははっ、お願いだから、ね?』
シロコ『ん、先生も私とお昼寝するべき』
ホシノがせっかくこうして寝ているので、彼女をほっておくことにした。
みんなとチャットをしていると、隣にいるホシノが寝返った。
「んんん……」
ヘイローが見えない、まだ起きていないみたいだ
だが寝ているホシノは、寝言を言いながら手を動かした。
「うへぇ〜、大きなクジラさんだぁ……」
「えっ」
彼女はそのまま俺の手を引っ張り、腕に抱きついた。
俺はなす術もなく彼女と一緒に寝る体勢になった。
しかもグリップがびっくりするほど力強い。彼女を起こさないと会議に戻れそうにない。
先生『すまん、会議に戻れないかも』
アヤネ『どうしたのですか?』
先生『寝ぼけたホシノに捕まれた』
ノノミ『あらあら〜』
シロコ『待って、私も行く』
セリカ『シロコ先輩はここに残って!』
アヤネ『先生は気にしないでください。先生のお陰でアビドスの状況は以前よりずっとマシになりましたので、一回くらいサボってもいいんですよ』
先生『ありがとう、せっかく俺を呼んで来たのにすまない』
セリカ『今度はちゃんとしてくださいよね!』
先生『分かった、そうするよ』
全員の許可を貰ったので、仕方がなくホシノと一緒にサボることになった。
とは言え、片腕しか動けない俺はなにかできる訳でもなく、イヤホンで音楽を聴きながら空を眺めるしかできない。
太陽が暖かくて、微風も気持ちいい。
ホシノが寝たくなるのも仕方がない。
これが彼女がいつも見ている景色なのかもしれない。
彼女を理解することに近づけた気がして、少し嬉しかった。
すると横からヘイローの薄光が視界に伝わり、ホシノがやっと起きた。
「うへぇ、気持ちいい〜」
「おはようさん、ホシノ」
「せ、先生⁉︎ なんでここにいるのさ⁉︎」
ホシノに目をやると、彼女は一瞬で顔が赤くなった。
「すまん、びっくりさせてしまったか?」
「先生、近いよ……」
「ははっ、それはホシノがなんとかしてくれると助かるな」
「え……あわわ」
俺の腕に抱きついていることに気づいたホシノは慌てて手を離した。
「こんなおじさんの抱き枕にさせられて、ごめんねぇ」
「気にしていない、それにホシノは可愛かったぞ」
「う、うへぇ、無理に褒めてもなにも出ないよー」
「ははっ、事実だから無理してないよ」
「顔がいいってのはずるいなぁ」
「?」
気まずそうなホシノは起き上がって、自分のスマホ画面を見る。
「もうこんな時間⁉︎ 年を取ったせいで気を緩めてしまったねぇ」
「ホシノはまだ若いぞ」
「またまた〜、早く会議に戻ろう」
ホシノが校内に戻ろうとすると、俺は彼女の手を掴んだ。
「ホシノストップ」
「どうしたの? シロコちゃんたちが待ってるよ」
「許可を取ったから、今日はゆっくりサボろう?」
「うへぇ?」
話を聞いて、ホシノは俺を見下ろした。気のせいかその眼差しはさっきより少し鋭い。
「あれ〜? 先生はこういう行事にもうちょっと厳しかった印象だけどなぁ」
「失敗は誰にでもある、次回で直してくれればいい」
「サボることとは別の話だよ?」
「俺だって普通ならこんなことしないよ、だけど」
意識をもっとしっかりとホシノに伝えるためのように、俺は彼女を掴む手を少し力を入れて言う。
「ホシノがアビドスを一番思っていることを知ってる。だからこそそんなホシノにはたまには力を抜けて欲しい」
「もう先生ったら、甘い言葉で生徒を誘惑して」
「そういうことじゃない、ホシノはここ最近いつも朝になるまでパトロールしてただろう? 寝れない辛さなら俺だって知っている」
「なぜそれを?」
「最近アルから朝でホシノを見かける報告があったんだ」
「……」
実際見かけただけじゃなく、彼女にホシノを見張る依頼を頼んだんだけどね。
ホシノが無理をしていないか、毎朝パトロールルートを見に来てくれという依頼。
ホシノの見張りができるし、アルに金の援助をあげる口実にもなるし、俺にとってWin-Winというわけ。
「無理に休ませるつもりはない。だけど休みめるチャンスがあるなら、それを使って欲しい」
「……」
「お願いできないかな? 俺もう丁度疲れててさ、一緒にサボってくれるパートナーが欲しかったんだ」
「……先生は頑固だねぇ」
そう言って、ホシノはやれやれと言わんばかりの表情になり、俺の隣で寝転ぶ。
「だけどストーカーはダメだよー、そんな先生はシロコちゃんたちにバラしちゃおうかな?」
「は、はは、なんのことか良く分からないな?」
「またまた」
ホシノが納得してくれたことでなんだか緊張感から解放された気がして、俺も寝転んだ。
「疲れたーっ!」
「うへぇ、先生も疲れるんだねぇ」
「そりゃ人間なんだから当たり前だろ?」
「先生はもっとこう、真面目さでできた真面目人間みたいな感じだからさ」
「ははっ、それは買い被りすぎ」
俺を揶揄ってホシノが俺の脇を突っついた。俺は「痒いよ」と笑いながらホシノの頭をわしゃわしゃする。
「昔はさ、ちょっと疲れやすい子とは知り合いでね。あの子は偶に寝過ぎたせいで仕事に間に合わなかったこともあるんだ」
それは甜花のことだけど。
慌てて俺に電話を掛けて来て、今でも泣きそうな声で「ぷろでゅーしゃーしゃん」って呼んでくれるのが印象的だったな。
「うへぇ、おじさんとそっくり」
「あの子は抜けてるところがあるけど、仕事はいつも頑張ってくれるんだよ、ホシノと同じでさ」
「もうー、恥ずかしいよー」
「甘やかすのは良くないけど、ある程度相手の性格に合わせるのことで、その子の成長に繋がるのが俺のプロデュース方針なんだ」
「先生が本当のプロデューサーみたい」
「みたいもなにも、本物だぞ」
「そうだった」
プロデューサー生活が懐かしい。いつになったらプロデューサーに戻れるだろうか。
とは言え、今一番やりたいことはホシノと一緒にこの時間を堪能することだ。
ホシノが少しでも気が楽になれるよう、俺は彼女の手を握って、一緒に空を見上げる。
「でも、ホシノには一つだけあの子に学んで欲しいことがあるんだ」
「なにかなー?」
「あの子はゲームが好きで、隙があればいつもゲームしてたんだよ。ホシノもあんな風に気が抜けるようになって欲しい」
「ゲーム? ゲーム部の子たちのノリはおじさんには少しきついかな?」
「ははっ、そうだな。でも別にゲームじゃなくてもいいんだよ」
俺は手を掲げて、目の前の空に指差す。
「あの雲ってさ、クジラっぽくない?」
「うへっ? どっち?」
「あっちだよあっち」
「おじさん分かんないよー……本当だぁ〜」
「かわいいよね」
「そうだなぁ」
空を見つめながら、ホシノは笑った。
「先生はいつゆるふわキャラになったのさ?」
「そんなことないぞ? 大人の男性でも雲を眺めたくなるんだ」
「へー、大人の尊厳はどうするのさ」
「普段の仕事っぷりで取り返す!」
「いつもセリカちゃんに怒られてるのに?」
「それは言わない約束だろ?」
「うへぇ……先生見て見て、鳥だ」
「うわぁ、鳥さんだー」
「先生脳死すぎだよー」
他人から見ればしょうもないことしているようにしか見えないが、俺はこの時間を堪能している。
この気持ちを、少しでもホシノに伝えたい。
彼女が気が休めるように。
こうして、俺たちはしばらく雲を眺めていた。
「見てホシノ、あの雲……」
「んん、ファー、なーに?」
「もしかして眠い?」
「そんなことない、先生と、お話……」
「大丈夫、俺は側にいるから、今は寝てもいいんだ」
「ほんと?」
「約束するよ」
「うへぇ、おじさん、あまえちゃおうかな〜?」
「そうしてくれると嬉しい」
「うへへ、じゃ、おや……」
セリフを言い終えることもなく、ホシノは深く眠りに落ちた。
彼女の寝顔は年相応に柔らかく、可愛らしかった。
これだけ疲れたということだ。
彼女にここまで無理をさせて、大人として情けない。
アビドスのことは俺がなんとかする、だからホシノはただ、子供らしく休んでくれ。
「おやすみ」
ホシノと楽しく話せたな。
その後、俺は下校時間になっても起きないホシノをおんぶしてシロコたちの元に戻った。
そのままホシノを託したいけど、シロコがどうしても俺と一緒に寝たいと言って、結果対策委員会のみんなで学校お泊まり会を開くこととなった。
ホシノがこんな風に青春できて俺も嬉しかった。
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夢を見た。
夢の中で、私は先生とクジラたちと一緒に空を泳いでいて、とても幸せな夢だった。
不思議だね、最初は先生のことをめちゃくちゃ疑ってたのに、今はこんな風に先生を思っている。
アビドスにやって来た優男風の大人。
しかも元アイドルプロデューサーであったことも知って、本当に胡散臭さしかなかった。
あのビジネススマイルで色んな女の子を騙して来たんじゃないって思いながら先生を利用しようとした。
だけど、あの笑顔が本物だったということは嬉しい誤算だったな。
身を挺してアビドスを守ろうとして、かと言って勝手な振る舞いをせずに私たちの意思を尊重してくれる。
しかも子どもらしい部分もあって、愛嬌を持っている。
今まで見たどの大人とも全く違う。
この大人なら信頼できるって初めて思った。
これはただの儚い夢なのかもしれない、だけど先生がそこにいるのなら……。
私は、ひと時だけでもそれに甘えたいと思う。