Fate/北斗の拳 世紀末聖杯戦争―私は北斗神拳伝承者? 桜救出編 作:GMKゴジラ
〝王の選定のやり直し〟という間違った願いに終止符が打たれます
──そして、朝を迎えた。
昨日の夜は、脳内ケンシロウが沈黙したまま終わった。
本来なら静寂が訪れて安眠できるはずなのに、逆に怖くて眠れなかった。
なにせ、"奴"が黙ったのだ。あの脳内ケンシロウが。
──ツッコミを極めすぎた結果、とうとう脳内ケンシロウ黙らせることに成功したのか!?
それはそれで逆に怖い。
食堂でぼんやりと座ろうとすると、セイバーと士郎が顔を合わせていた。
セイバーが神妙な顔つきでうつむく──
しかし少しの沈黙の後、晴れ晴れとした表情で前を向いた──
「昨日の言峰の講義で私は気づいてしまったのです」(セイバー)
「私に必要なのは聖剣ではなく〝拳〟でした。私が聖杯に願うべきは、〝選定のやり直し〟でなく、〝北斗神拳〟だったと気がつきました」(セイバー)
「セイバーの願いって〝選定のやり直し〟だったってどういうことだよ?」(士郎)
「シロウ、私はブリテンを滅びの運命から救えなかったのです。私より完璧な者が私の代わりに聖剣に選ばれれば、ブリテンを滅びから救えたのだと信じていたのです。だからそれを願って聖杯戦争に参加しました」(セイバー)
「セイバー!そんな願いじゃお前自身は救われない」(士郎)
「でも私は気づきました。私に〝北斗神拳の力〟があれば、ブリテンを滅びから救うことも、円卓の崩壊も防げたのです」(セイバー)
「私が聖杯に呼ばれたのは間違いではなかった〝北斗神拳〟と出会えたのだから。私も凛とともに拳を極めます。そして、北斗神拳伝承者を目指します」(セイバー)
「セイバー、それだ!北斗神拳を伝承すれば、ブリテンもお前自身も救われる。北斗神拳は全てを救う、北斗神拳とは全てを救う正義の味方だ!」(士郎)
「じゃあ北斗神拳セイバーにあげるわよ!士郎でもいいわよ!受け取ってよ!」(凛)
だが、セイバーと士郎は完全に二人の世界に入っており、私のツッコミに答えない。
セイバーは晴れ晴れとした表情で食卓に座り、衛宮くんは朝食を作り始めた。
「おっはよー、リン!」(イリヤ)
イリヤが挨拶してくる。
衛宮くんが朝食を私の前に並べる。
でも、私はただ虚ろな目で味噌汁を見つめるだけだった。
「……なんなのよ、これ」(凛)
「味噌汁?」(士郎)
「違うわよ! いや、まあ、味噌汁は味噌汁なんだけど……私、今、普通に朝ごはん食べてるのよね……?」(凛)
「食べてるわね」(イリヤ)
「普通に味噌汁飲んでるわよね?」(凛)
「普通に飲んでるな」(士郎)
「……何これ、逆に怖いんだけど」(凛)
そう。私は普通に朝食を食べていた。
箸も割れないし、茶碗も砕けない。
味噌汁を持っても爆発しないし、納豆を混ぜても空間が歪むことはない。
「な、なんで……?」(凛)
「何がだ?」(士郎)
「私……昨日、あれだけのことがあって、今、普通に食事できてるのよ?」(凛)
「普通できるだろ」(士郎)
「むしろ、今さら何を騒いでいるのですか?」(セイバー)
「いやいやいや!! 昨日の流れで言ったら、私の拳、もうとんでもないことになってるはずじゃない!?!?!?」(凛)
「茶碗が爆裂したり、 箸が折れたりするはずじゃない?」(凛)
「凛、お前は……すでに"力のコントロール"を極めているのだ」(脳内ケンシロウ)
「いるのかよぉぉぉぉぉ!! ずっと黙ってたくせに、いきなりドヤ顔で解説すんなぁぁぁぁ!!」(凛)
「教会でのツッコミ、帰宅中の怒涛のツッコミ、それらすべてが極限まで闘気を高め、お前の拳を新たな境地へと導いた」(脳内ケンシロウ)
「だからなんで私のツッコミが北斗神拳の進化を遂げる流れになってるのよぉぉぉぉ!!」(凛)
「力とは、ツッコミとは制御できてこそ真の極み」(脳内ケンシロウ)
「うるさいわよぉぉぉぉ!!ツッコミは止まらない!!制御できない!!」(凛)
──昨日の地獄の講義と成長の理由が再びフラッシュバックする。
──昨日の冬木教会、言峰綺礼の北斗神拳講義。
最初は「また変な講義をされる」だけだと思っていた。
だが──それだけではなかった。
私が"怒ってツッコミ"まくってる時、"進化し続けてる"
〝私自身が聖遺物〟だったという驚愕の話だった。
「昨日の言峰は異常なほど論理的だったな」(士郎)
「どこがよぉぉぉぉ!」(凛)
「彼の口から発せられる北斗神拳の歴史、その原理、秘孔と人間の生命の相関関係、戦闘理論、それはまるで〝歴史と科学と人体医学を融合させた学術論文〟のようでした」(セイバー)
「綺礼は、『秘孔とは、人体のエネルギー循環の要であり、これを操作することで生命力を最大限に引き出せる』と言ってたな!」(士郎)
「ふむ、論理的ですね」(セイバー)
「『人体構造を徹底的に理解すれば、秘孔を突くことで筋力を強化し、肉体の限界を超えることが可能』ってコトミネは言っていたわよ」(イリヤ)
「なるほど……」(士郎)
「リン、貴女って本当に天才なのね」(イリヤ)
「いやいやいやいやいや!! なんでみんな納得してるのよぉぉぉぉ!!」(凛)
なぜか 私以外の全員が納得していた。
納得するな!!
こんなの明らかにおかしいでしょうがぁぁぁぁ!!
昨日、私は必死にツッコミを入れ続けた。
だが、それこそが 致命的だったのだ。
私のツッコミはあまりにも白熱しすぎて、 言峰の〝論理的説明?〟と衝突し続けた結果、異常なまでに思考が活性化し、さらには爆発的な闘気の増大に繋がってしまったのであった。
──気づけば、私は怒涛の勢いで成長してしまった。
「そう、それこそが"ツッコミの真髄"」(脳内ケンシロウ)
「だから何よそれぇぇぇぇぇ!!」(凛)
「凛、力を極めたのですね。素晴らしいことです」(セイバー)
「いや、セイバーはもうちょっと疑問を持って!?!?!? なんで納得しちゃってるのよ!!」(凛)
「強くなることは良いことです」(セイバー)
「良くない!! これ、良くない流れなのよ!! これ以上強くなったら、私、もう人間やめるわよ!!」(凛)
「リン、あなたはもう人間の領域じゃないわよ、バーサーカーの拳ですらマッサージ程度にしか感じないんだから」(イリヤ)
「いやぁぁぁぁぁ!!」(凛)
私は頭を抱えた。
もうダメだ、完全に人生の進む方向がズレてる。
魔術師としての道を極めるはずだったのに、
気づけば北斗神拳を"ツッコミ"で極めつつあり、それも北斗史上最強の存在になりかけてる……。
こんなの、こんなの絶対おかしいわよ!!
私は茶碗を握りしめ、納豆ご飯をかきこみながら叫んだ。
「私、普通に生きるわよ!!」(凛)
「それができるなら、今さら騒ぐことはないだろ?」(士郎)
「……まあ、それはそうね……」(凛)
「ムリよ、リン、あなたほどの存在、封印指定が放っておかないでしょうね」(イリヤ)
「でも、あなたはもう魔術協会と聖堂教会、全員まとめて圧勝できるくらいの強さだから安心していいわ」(イリヤ)
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」(凛)
──どうやら、北斗神拳伝承者としての道は避けられそうにない。
でも、少なくとも朝ごはんは美味しい。
それだけが、今の私の唯一の救いだった……。
セイバーの迷い”王の選定のやり直し”すら北斗神拳で正した凛!
北斗神拳は人を救うもの、果たして彼女自身に救いはあるのか?
作者にも全く分からない!