Fate/北斗の拳 世紀末聖杯戦争―私は北斗神拳伝承者? 桜救出編   作:GMKゴジラ

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桜が今まで感じてきた、「ツッコミ不在の空気」

「慎二ぶっとばし」で会話が繋がらなかった理由。
全てが明らかになります。



24話・桜救出編 (十数年前) 虚数ツッコミ・うっかり時臣とポテンシャル葵

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 十数年前・間桐桜・誕生秘話

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それは、誰にも知られることのない──遠坂家の、最後の祈りだった

 

 

──遠坂邸、深夜

 

──桜が産まれた直後

 

 

遠坂邸の寝室。静まり返った書斎の中に、ランプの灯りがぼんやりと揺れていた。

 

時臣は、ひとつ深く息を吐くと、両手を机に置いたまま、黙って立ち尽くしていた。

その隣では、葵が、ベッドに横たわったまま、目を伏せている。

 

ふたりは、言葉を選ぶように、長い間沈黙していた。

 

「──ポテンシャル葵よ」(時臣)

 

「……ええ、うっかり時臣さん」(葵)

 

時臣は、振り返らないまま呟いた。

 

「……やはり、桜にも“ツッコミの才能”がある」(時臣)

 

「……はい。凛のときと、方向性は違いますが、確かにあります……」(葵)

 

「“ツッコミ”を入れようとした瞬間に、言葉が押し留められた。まるで、こちらのツッコミをかき消されるように」(時臣)

 

「わかります。“ツッコミ”がおかし過ぎるんです。まるでツッコミのエネルギーを奪い取られるような」(葵)

 

「凛のときは“ツッコミの圧”で全てが圧倒され、私はツッコミの嵐に飲み込まれた。しかし、桜は逆にツッコミを吸収している」(時臣)

 

「ツッコミを吸収するなんて 極めて異例です」(葵)

 

「……桜は、“凛とは別方向のツッコミの才能”を……生まれながらにして、持っている」(時臣)

 

「うっかり時臣さん……やっぱりそうなんですね」(葵)

 

葵は体を震わせる。

 

「……なのに……なのに、どうして……っ」(葵)

 

彼は、机上にあった“魔術ツッコミ計測針”、の針をそっと示す。

その針は──桜の測定時、計測不能で裏返った声を出したという。

 

「これほどとは……」(時臣)

 

「凛のときとは“ツッコミの質”が違います。凛は計測針が破壊されるほどの、最大最強のツッコミだった。名付けるなら〝ツッコミーズワン〟、世界最強のツッコミの証だ」(時臣)

 

「はい、でも桜は全く違いました。魔術針から裏返った声のツッコミが帰ってきたんです」(葵)

 

「それに、計測不能だったのがおかしい、裏返った声はありえない。桜のツッコミはナンバーワンでこそ無いが、オンリーワン、よって名付けるなら〝虚数ツッコミ〟」(時臣)

 

「〝虚数ツッコミ〟とは?」(葵)

 

「ツッコミが起こってもおかしくない雰囲気の時、全員のツッコミを押し留め、吸収して魔力に変換する才能だと私は推測している」(時臣)

 

「それは、どういうことでしょうか?」(葵)

 

「つまり、日常が恐怖なのに誰もツッコミを入れない、誰も異常だと気づかない、ツッコミを全て吸収し、魔力に変換する」(時臣)

 

「じゃぁ、桜は、ツッコミ不在の環境で生活するってことですね」(葵)

 

「そうだ、“虚数ツッコミ”とは、桜自身はツッコミが止まらないのに、誰もツッコミを入れない。という、ツッコミ吸収能力だろう、この世に存在しないはずの才能だ」(時臣)

 

「そんな才能、聞いたことありません。うっかり時臣さん」(葵)

 

「このツッコミは世界で初めてのものだろう、凛のように最強のツッコミではないかもしれないが、封印指定になりうる……それに」(時臣)

 

「……それだけでは……ありません……桜の魔術回路」(葵)

 

彼女は震える手で、書斎の机に置かれた診断用紙をそっと持ち上げる。

その中央には、精密な魔術測定図が描かれていた。

 

「それに、……胸の位置に……北斗七星の形に、魔術回路の出入口が……七つあるのだ……」(時臣)

 

時臣はその紙を見て、眉を寄せる。

 

「この配列は偶然ではない。明らかに“形”として、整っている」(時臣)

 

「意味があるんですか? ツッコミと……この、北斗七星の形に……」(葵)

 

「わからない……だが“北斗神拳”の宿星、“北斗七星”に関連している」(時臣)

 

 

灯りの下、書斎は静まり返っている。

そして、その静けさの中で──時臣が、ぽつりと呟いた。

 

「もし、魔術師の家以外で育った場合、魔術協会に“発見”される」(時臣)

 

「……そんな、うっかり時臣さん」(葵)

 

「“虚数ツッコミ”の構造を持った存在。再現性のないツッコミの才能。特異体質と呼べる北斗七星型の魔術回路。魔術協会が喜ぶ条件が、すべて揃っている」(時臣)

 

葵の声がわずかに震える。

 

「うっかり時臣さん、どうなるんですか?」(葵)

 

「……嬉々として、“ツッコミ保護”の名の下に……」(時臣)

 

「ホルマリン漬けの“ツッコミ標本”にされるだろう」(時臣)

 

「そんなっ、桜が、嫌です……」(葵)

 

 

しばらく、沈黙。

 

「この家で……守れませんか? 魔術とツッコミを知らない普通の女の子として……」(葵)

 

「ツッコミ的、魔術的保護は、凛にすべて注いでいる。一子相伝は、原則だ」(時臣)

 

「破ることは……できないのですか?……」(葵)

 

「……ああ……魔術的、ツッコミ的な保護がなければ……ツッコミの才能は逆流し、本人の精神を“ツッコミ不在のおかしな雰囲気“で破壊する。桜にはこの未来が起きる」(時臣)

 

「……守れない……生かすことも、ツッコミを入れることも、できない……? 残酷です!?……」(葵)

 

時臣は、小さく首を振った。

それが「違う」という否定ではなく、「認めたくない」という、抵抗の動きだと、葵はすぐにわかった。

 

「ポテンシャル葵よ。私は絶対に桜を殺したくない」(時臣)

 

「当たり前です、うっかり時臣さん」(葵)

 

「桜を生かすため……なら」(時臣)

 

時臣は机に手を置き、ひと呼吸おいて、言った。

 

「どこか……魔術とツッコミを必要とする家に、養子に出すしかない」(時臣)

 

葵は目を伏せたまま、強く頷いた。

養子に出してでも、“桜を生かす”。それが、ふたりの出した、唯一の答えだった。

 

──それが、彼女たちの愛のかたちだった。

 

 

「虚数ツッコミ」それは、桜が今まで感じてきたツッコミが止まらない空気、それなのに誰もツッコミを入れない、その現象はこれが原因だった。

 

かつて桜が感じていた、"誰もツッコまない衛宮邸の恐怖"は──

桜自身が生まれ持った、「虚数ツッコミ」の証だったのだ。




間桐桜
真命:遠坂桜

保有スキル

虚数ツッコミ (EX)
ツッコミが起こってもおかしくない時、
全てのツッコミを吸収してツッコミ不在の空気を作り出す。
桜本人は恐怖からツッコミをできなくなっても、
周囲の人間は誰も異常に気づかない。
会話が成立しない、と桜が感じることも起こり得る。

ツッコミーズワンである、凛のツッコミだけは吸収しきれないことも稀にある。

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次回──
「刻印虫暴走──叫んだ声は届きますか」

七つの傷が熱を持ち、過去が焼き返される。
桜が初めて、すべてを吐き出す夜。

──怖い。でも、話さなきゃいけない。
──見てほしい、この胸の“しるし”を。

──To Be Continued──
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