Fate/北斗の拳 世紀末聖杯戦争―私は北斗神拳伝承者? 桜救出編   作:GMKゴジラ

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39話・桜救出編 美の伝道者、慎二の暴走 ナルシスト①

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 抜けきらぬ恐怖

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──朝

──遠坂邸・玄関前

 

慎二が風と共に去った後。

静けさが戻ってきた玄関で、桜は再びうつむいてしまった。

 

「……やっぱり、まだ怖さが……」(桜)

「大丈夫。私がずっとついてるわ」(凛)

 

「俺もいる。みんなで行こう」(士郎)

 

桜は小さく頷き、ぎゅっと凛の手を握る。

 

「ありがとうございます、姉さん……先輩……」(桜)

 

──登校開始。

 

 

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 学園前・ポスター

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──穂群原学園・正門前

 

門の外、登校生たちがざわついていた。

 

「なにあれ……」

「マジで貼ったの!?」

「夢じゃないの!?」

 

そして、桜たちの視界に、それは現れた。

 

校門の左右にずらりと並ぶ、慎二のポスター群。

 

すべて、斜め45度・バラ咥え・逆光気味のポーズ。

壁にも、フェンスにも、花壇の柵にまで「美しすぎる僕」が貼られていた。

 

「ふ……ふふっ……あはははっ……なにこれぇええ……!」(桜)

 

桜は笑いが止まらなかった。

あれほど硬直していた体が、一気に力を抜かれていく。

 

「効いてる……慎二ポスター、想像以上の効果ね」(凛)

 

「むしろ強すぎるぐらいだな……」(士郎)

 

 

──慎二への制裁は、想像以上の効果だった。

 

「……兄さん……どうして、そんなことを……!」(桜)

 

「“自分を愛してやまない男”に改造されたのよ、あいつ」(凛)

 

「反応としては、100点だな。桜が笑えたなら」(士郎)

 

 

──穂群原学園・廊下

 

桜が通るたび、バラを咥えた慎二のポスターが次々と現れる。

 

「ふふ……“準備”ってこれのこと!?……こっちにも貼ってあります……!」(桜)

 

ロッカーの扉、掲示板、配電盤の蓋にまで。

どこを見ても、慎二。咥えバラ。咥えバラ。咥えバラ。

 

「姉さん……私、さっきまであんなに怖かったのに……」(桜)

 

「なんだか、もう……歩ける気がします」(桜)

 

「その調子よ、さすが。ツッコミーズセカンド」(凛)

 

 

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 笑う桜・セカンドとして

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──桜の教室・前

 

「……着きました」(桜)

 

「姉さん、先輩……大丈夫です。私は授業を受けられます」(桜)

 

その目には、もう昨日までの怯えはなかった。

代わりに、笑いをこらえたような照れくささと、ちょっぴりの自信が宿っていた。

 

「無理してない、さくら?」(凛)

 

「私は、今日から……“普通の生活”を取り戻します」(桜)

 

「よく言った、桜。頑張ってこい」(士郎)

 

「後でね、ツッコミーズセカンド」(凛)

 

「はい、行ってきます、勇気をもらえました」(桜)

 

桜は笑って、小さく会釈し、教室に入っていった。

 

 

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 凛・士郎の教室 ①

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──穂群原学園・教室(2年C組)

 

──凛と士郎の教室

 

「──ああ、なんて、僕は……美しいんだ……!」(慎二)

 

教壇の上に鏡が斜めに設置され、

そこに映るのは、ポーズを決めた慎二。

背後の黒板には『Shinji is Beautiful』の文字。

 

「見よ、この横顔!

この眉の角度、5.7度! そしてバラ──情熱の証!!!」(慎二)

 

生徒たちは、ざわめいていた。

 

「え、なにこれ……引く……」(女子A)

「痛い……これは痛すぎる……」(女子B)

「前はあんなにカッコよかったのに……」(女子C)

 

ポツ、ポツと去っていく元・取り巻きの女子たち。

 

──彼女たちは、そっと離れていった。

 

「ま、待って! どこへ行くの!? せめて“美しい”の一言だけでもぉおお……!!」(慎二)

 

涙がポロリとこぼれる。

その一滴が、ファンデーションを溶かし──

 

「──メ、メイクがッ!!」(慎二)

 

慌てて鏡前へ駆け戻る。

 

「落ち着け、落ち着け慎二……!」

「美しさは再生できる……美は死なない……!!」(慎二)

 

リキッドファンデとBBクリームを同時塗り、

ティッシュで汗を抑え、髪を整え、再びポーズ。

 

「復活……! それが、美の執念……!」(慎二)

 

 

──その時。

 

──ガラッ!!

 

教室のドアが豪快に開かれる。

 

「ホームルーム始め──うわあああッ!? なにこれ!?」(藤ねえ)

 

担任の藤村大河が、開口一番で教室全体にツッコんだ。

 

「何やってんのよ朝からぁああああ!!!」(藤ねえ)

 

「美を、広めていただけですッ!!!」(慎二)

 

「教卓はステージじゃないわよぉおお!!!」(藤ねえ)

 

──凛が小さくつぶやいた。

 

「……この学園の平和、保たれたわね」

 

士郎も苦笑して頷いた。

 

「慎二がいる限り、ある意味安心かもな……」

 

──そのころ、桜は。

 

教室の席に着きながら、心の中で静かに笑っていた。

 

──あれだけ恐ろしかった“外”の世界に、

ほんの少しだけ、“笑える居場所”ができた気がした。

 

 

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 昼休みとナルシスト地獄

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──昼休み

──穂群原学園・2年C組(凛と士郎の教室)

 

昼休みのチャイムが鳴る。

桜は、凛たちと弁当を食べる約束を思い出す。

 

「姉さんと……先輩が、来てくれるって……」(桜)

 

しかし、その場に立ち上がろうとした瞬間。

 

──ズゥゥゥン……(“蟲の”フラッシュバック)

 

視界を埋め尽くす、数万の蟲の奔流。

 

「──っ……あ……足が……動かない……」(桜)

 

手が震え、膝が小さく崩れる。

まわりのクラスメイトは気づいていない。

 

 

──その時だった。

 

「──テスト、マイクテスト……」

「醜き穂群原学園の民たちよ──この慎二様が、至高の美を届けに参った!!!」(慎二・校内放送)

 

「この美声、美貌、美意識!!

 “ローズ・オブ・シンジ”こと、間桐慎二による“美の福音”をお届けする!!」(慎二・校内放送)

 

教室中、失笑・混乱・ざわめき。

だが、桜だけはその声に微かに笑みをこぼす。

 

「……ふふっ……兄さん、まだやってる……」(桜)

 

 

──震えがほんの少しだけ止まる。

──その時、後ろから声が掛かる。

 

「さくら、遅いじゃない。ほら、行くわよ」(凛)

「って、その顔、笑えてよかったな」(士郎)

 

桜が振り返ると、凛と士郎が並んで立っていた。

 

「……だって……ふふっ……兄さんが、あんな放送……!」(桜)

 

「効果抜群だな……完全にツボってるじゃないか」(士郎)

 

「放送ジャックは予想外ね。でも、あいつの使い道は、あれしかないわ」(凛)

 

凛がそっと桜の肩に手を置く。

桜は微笑み、立ち上がる。

 

「……はい。行きます。私……歩けます」(桜)

 

「放送、聞きながらね。アイツまだまだやりそうだし」(凛)

 

「美しい僕が、醜い君たちの代わりに美の真理を映してやる……!」(慎二・放送)

 

「昼休みの間、鏡の前に集え! 鏡を持ってない奴は、反省せよ!」(慎二・放送)

 

──歩く桜は途中でくすくす笑い出す

 

「“鏡の前に集え”って……なんですか、それ……ふふっ……」(桜)

 

「いい調子。ツッコミーズセカンド、本格始動ね」(凛)

 

ほんの数時間前まで“恐怖の象徴”だった外の世界が、

少しだけ、温かく、可笑しく、息のしやすい場所に変わっていた。

 

 

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 凛・士郎の教室 ②

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──穂群原学園・2年C組

 

──凛・士郎の教室

 

「ふふっ……この卵焼き、美味しいです」(桜)

「でしょ? 自信作よ」(凛)

「ほら、桜。こっちの焼き魚も食べてみろよ」(士郎)

 

3人で囲む穏やかな昼食。

校内放送の余韻が残る中、笑顔の桜は少しずつ、世界を取り戻しつつあった──

 

その時。

 

 

──ガラッ!!

 

勢いよく開かれた教室のドア。

そこに立っていたのは、教壇の主──否、「ナルシストの象徴」。

 

「──ふっ……昼の舞台は、ここか……」(慎二)

 

バラを咥え、制服は完璧にアイロン済み。

顔面はメンズメイク全開、髪は逆光に輝いている。

慎二、降臨。

 

「醜き穂群原学園の民たちよ……この僕の“美”に、ひれ伏すがいいッ!!」(慎二)

 

 

一瞬、静まり返る教室──

 

「なんでここに来たのよ……昼休み、終わってないけど?」(凛)

「そもそも、お前何してたんだよ……校内放送ジャックとか」(士郎)

 

慎二は真剣な眼差しで、凛たちを見つめ返す。

涙を浮かべながら──

 

「……だって……誰も、僕の美を理解してくれなかったんだ……」(慎二)

 

「“美しい”の一言が、誰からも聞こえなかった……!」(慎二)

 

その涙は、ほんとうに悲しみから溢れていた。

 

「僕は美しいのに……! なぜ、この世界は僕を受け入れない……!」(慎二)

 

 

──そこへ、

 

「しんじぃぃぃぃぃいいい!!!」(藤ねえ)

 

藤村大河、怒りの怒号が空を裂く!

 

「アンタねえ! 無断ポスターに加え、校内放送をジャックした上に、バラ咥えて教室に戻ってくるってどういうことよおおおおお!!!」(藤ねえ)

 

「先生、先生は嫉妬してるんだ。僕の美しさ、このバラに」(慎二)

 

「藤村先生が生まれながらにして、“僕より醜い”のは、僕のせいじゃないッ!!」(慎二)

 

 

──バシンッ!!

 

藤ねえの平手打ちが慎二の頬を打つ。

 

「間桐慎二! 校内放送の私物化と、繰り返される奇行により──停学処分1週間!!!」(藤ねえ)

 

「黙れぇぇぇええ!! 醜き民よ!! 僕の“美の伝道”を邪魔するなぁぁああ!!!」(慎二)

 

──涙がぼろぼろとこぼれる。

 

「僕を停学にするだって!? 逆だ!

 “僕以外の全員を停学にして”僕一人でこの学園を完成させるべきなんだッ!!」(慎二)

 

「君たちの心が汚れているから、僕の輝きが見えないんだよぉぉおお!!」(慎二)

 

 

──藤ねえ、冷たく一言。

 

「反省の色なし。停学処分、1ヶ月に延長!」(藤ねえ)

 

「うわあああああ?!? それは僕の“美”への冒涜だあああああ!!!」(慎二)

 

──慎二、泣き崩れる。机に突っ伏して号泣する。

 

「僕は美しい……美しいはずなのに……」(慎二)

 

「醜い民たちが……僕の美に嫉妬してるんだ……うううっ……」(慎二)

 

 

──その姿を見て、桜はまた吹き出しそうになる。

 

「……だ、ダメです……笑いが、止まらな……」(桜)

 

「そのまま笑ってて。……それが“正解”なんだから」(凛)

 

「美しさって……こんな形で使えるんだな……」(士郎)

 

「……にやけます……私……生きててよかったです……」(桜・涙を流しながら笑う)

 

──かくして、慎二は“誰にも理解されないナルシスト”として孤高を貫き、

──桜は、そのおかげで少しずつ笑顔を取り戻していった。




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次回──
「ナルシスト最終──そして、春が来た」

誰もが呆れ、桜は笑った。
そして、それだけで充分だった。

──もう涙はいらない。
──笑いと共に、新しい自分へ。

──To Be Continued──
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