「そんな訳で職場体験は何してるのかよくわかんない感じで終わっちゃいました…正直複雑です…」
「まあ、滅多に出来ない経験を早くに出来たんだ。それはそれで前向きに考えればいいんじゃないか?CMは俺も見てみたいしな」
「…身近な人にそう言われると処刑宣告に聞こえるなあ…」
ヒーロー科の職場体験が終わり、5月末の雄英高校。
いつものように決まった自販機前で出会った拳藤との会話である。
どうも職場体験が思った通りのものでもないようで、何かと腹に据えかねる所がある様子。
ペットボトルの蓋を弄りながら、拗ねた様子の拳藤。
やれやれ。あまり焦りすぎない方がいいとは思うけど、客観的に見て1年A組を見てるとそうも行かないんだろうな。
「CM用で服着た時の写メないのか?」
「え?…一応ありますけど…」
「見てみたいな。ちょっと見せてくれよ」
そう言うと彼女は、顔を赤くしこちらに向けて両手をブンブン振り、
「いや!ちょっと!先輩無理です無理!」
「気にすんなよ。どうせもうすぐテレビで流れるんだろ?」
「そ、そう言われるとそうなんですけど!ああ!もー!!」
「せっかく可愛く撮ってもらったんだ。恥ずかしがる必要ないんじゃないか?滅多に無い機会だ。自慢するくらいでいいと思うぞ」
「そうかもですけど…うう…」
恥ずかしがる拳藤。
最後には観念してくれて写メを見せてくれた。
ソコには普段より着飾った美しい少女がいた。
「いいじゃん。普段の拳藤も可愛いけど、こっちは美人さんって感じだな」
「…からかってません?先輩?」
「若干、な」
もー!!!!!
そー言うや否やこちらの肩をポカポカ叩いてくる拳藤。
穏やかな、学校の時間。
「だけど気をつけろよ拳藤。どうも最近雄英高校中心にかなりきな臭い感じになってきてる。君みたいに目立つタイプは特に狙われやすいし」
この前のヒーロー殺しの1件。
結局1年A組が関わっていたようだ。
あのクラスが特異点なのかどうかはわからない。
でも、あのクラス中心に何か大きな物事の波のようなものが動き、うねり出しているのを感じる。
「ありがとうございます先輩。でも先輩もですよ?気をつけてくださいね」
「大丈夫だよ。俺は平和主義だしな。危ない所には近づかないと決めてる」
ジュートに関しては心配だが。
あれはアレで兄弟思いの男だ。
兄弟に迷惑かけないギリギリのラインを見極めるだろうけど。
5月の終わりの話だ。
もうすぐ夏がくる。
学生の待ち望む夏休みが。
俺達の、俺の残り時間は少しずつ減っていく。
10月、一体何があるのだろうか?