このアカデミアでは俺だけに翼がない   作:のりしー

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ジュート5

雄英高校にとって6月は特に何も無い月だ。

月初に中間テストがあるくらいで、特にイベントはない。

 

俺達3兄弟もそれぞれがそれなりに過ごしていたのだが、ある日トガから連絡が来た。

 

『何でも屋ジュートにお願いがあるんですが、会えませんか?』

 

会うと決めた俺は、メッセージを返し日程と報酬を詰める事にした。

 

 

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

 

待ち合わせ場所は雄英近くの繁華街。その路地裏となった。

「お久しぶりですジュート君!今日はお友達と会いに来ました!」

「へえ、友達ねえ…随分愉快なお友達みてーだな」

控えめに言ってもトカゲみてーなやつ。控えめに言ってもオカマみてーなやつ。控えるまでもなく変なマスク被ってるやつ。

 

…中々愉快なお友達のようだ。

 

「トガちゃんの言ってた通りのイケメンねー」

「でしょうマグ姉!」

「だが、本当に強いのか?めっちゃ強そうじゃねえか!」

 

「おいおい人を呼び出しといて勝手にそっちだけで盛り上がってんじゃねーよ。俺はこー見えて寂しがり屋なんだブッ殺すぞこのヤロウ」

 

「あら過激なイケメンねー」

「ジュート君、今回はジュート君を正式にスカウトしに来たんです。私たちヴィラン連合に」

 

…今回、トガからは何でも屋の仕事を依頼された。

内容は会ってから伝える、という条件で。 

先に報酬は電子マネーで受け取り済み。

 

なるほど…スカウトが目的だったのか。 

コイツが俺にそんな酷い事はしないだろうとわかっていたから受けた依頼ではある。

 

「待て!コイツをスカウトする前に確認する事があるだろう!」

「スピナー君?」

 

スピナーというらしいトカゲ野郎が一歩前に出てこちらを睨む。

 

「ジュートとやら。お前はステインの志を…俺達とともに彼の夢を紡げる者なのか!」

 

「ステイン…ヒーロー殺しねえ…」

 

ふーむと考える。

先月以来急速に広がるヒーロー殺しの思想。

当然俺だって興味本位で動画は見たさ。

ヒーローを多く殺してでも、やつには叶えたい望み、願いがあった。

 

その気持ち、わからない所も正直無いことはない。だが…

 

「…そーいう話ならノーだな。悪いがお断りさせてもらう。誰か人を殺してでも叶えたい望みはあるのかもしれない。理解もするさ。だが、人を殺すって事は誰かが世界からいなくなるって事だろ。そんなの寂しいじゃねえか」

 

10月に控える、俺達3兄弟のイベント。

心というか魂に刷り込まれたそれ。

間違いなく、俺達は一つの人格に統合されるのだろう。

誰が主人格になるのか?それとも3人が混ざりあって全く別な誰かになるのか?

 

…どちらにしろ、おそらく2人は最低この世界からいなくなる。

 

…それは、とても、寂しい話だ。

 

兄貴の事を考える。

小さい頃から負担ばかり押し付けてしまった兄貴の事を。

もし叶うなら、兄貴にこの世界に残って欲しい。

バカ兄貴の方とはそう話している。

 

元々兄貴に迷惑かけるような事はするつもりがない。

ヴィジランテまがいの活動ですらグレーゾーンである。

ヴィラン連合なんて持っての他だ。

 

「やっぱジュート君はそう言うと思ってました。残念です…」

 

言葉ほどに大して残念だと思ってなさそうにトガがそう言う。

 

「じゃあ、ジュート君ラーメン食べ行きましょうか」

 

「なんでだよ!今全然そんな話して無かったじゃねーか!」

 

「マグ姉達は先帰っててくださいー私ラーメン食べてから戻りますね」

 

「いや、聞けよ俺様の話!」

 

元々決めていた事なのか?オカマ達はあっさりと「じゃあまた後で」みたいな感じで立ち去っていった。

 

その場に残された俺様とトガ。

 

「じゃあ行きましょうかジュート君」

「やれやれ…メンマのとこでいーか?」

「もちろんです!」

 

そうして、2人で馴染みのラーメン屋に向かう。

 

「…多分ジュート君はスカウト断るって思ってましたけど。ホントは少しだけ期待していたんです」

 

「そら悪かったな」

 

「ジュート君も多分普通に生きて行くのが難しい何らかの事情ありますよね?無かったら、ジュート君くらい強ければ普通にヒーロー目指せばいいですし」

 

「…ノーコメントだ」

 

当たりだけど。

「良いことではないとわかっています…でも、私が私らしくいられる世界のためにヴィラン連合は必要だと思いました。」

 

…少しだけ、正直少しだけ気持ちはわかる。

わかるんだよ、トガ。

 

「ジュート君、前に私がエッチしてもいいって言ったの覚えてますか?」

「覚えてるよバカ。危うくお腹刺されるとこだった」

 

「あれ、実は結構本気だったんです。」

「あん?」

 

「好きな人と心と身体で繋がって…お互いの血と血が混ざりあっていく…多分私にとって一番幸せな死に方じゃないかと思うんです」

 

「………」

 

「ジュート君」

 

「なんだよ」

 

「私のこと、嫌いになりました?気持ち悪いですか?」

 

「んなこたねーよ。世の中たくさんの人で溢れてるんだ。そーいうヤツがいてもいーだろ別に」

 

「あははージュート君ならそ~言ってくれる気がしてました」

 

トガは少し小走りになり、俺様の前に出る。

向かう先は路地裏にふと表通りの光が差した路面。

 

路地裏の闇の中、光に包まれ彼女が振り返り笑う。

 

「そう言ってくれる人がこの世界にいるだけで、私の世界は金色に輝いているのです!」

 

とても綺麗に、彼女は笑っていた。

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