『しばらくこっちから連絡するまでバイト休みでいいから』
『わかりました。お気をつけて』
彼女とはそのメッセージを区切りに、しばらく連絡が途絶えた。
後は皆の知っている通りの結末だ。
拐われた雄英高校生徒の奪還作戦が始まった。
多くのトップヒーローが参戦したその作戦。
そして突如急に現れた敵の親玉らしき謎の存在と、オールマイトとの決戦!!
オールマイトの勝利!!!
感動的に見えるラスト。
だが、同時に多くの人が予感していと思う。
オールマイト。
偉大なヒーロー。
彼に守られ、一方的に守られていた平和な時代。
その終わりが来てしまったのだと。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「あらお見舞い来てくれたの?ありがと。ごめんねーみっともない顔見せちゃって」
横浜での戦い終了後。
負傷したМt.レディのお見舞いに行った時の話だ。
彼女は病院のベットの上でケラケラ笑っていた。
こんなことはいつも通りだと。
大したことなんてないのだと。
もーすぐ、いつもの日常が戻って来るのだと。
「思ってたより元気そうで安心しました。ご無事で何よりです」
「えーそんな無事ってほど無事でもないけどなー。ほらココとか!私の美しー顔に傷とかついちゃってない?嫌よねー」
そう言って顔の一部を指差す。
確かに傷らしき痕が見えるが、
「全然傷なんてわかりませんよーほんとほーんとに。もしМt.レディの顔に傷が有るなんて言うやつがいたら、控えめに言って目が腐ってると思います。そんなやつはいくら条件が良くても切り捨て御免した方がいいですよ」
「…ふーん、そーかしらね」
「ですです。何なら非力な身ですがこのタスケ。其奴を闇討ちしに参る所存!!!」
「…闇討ちは情けないわねー。せめて昼間に行ってよ、私が恥ずかしいわ」
「まさかの公認の果たし合いに!!」
いつものおどけた会話。
…少しでも彼女の癒しになればいい。
僕はピエロでいいのだから。
ケラケラといつものように笑っていた彼女は、
「…ダメねえ。ホント。気の利く若いツバメなんて飼っちゃうと。オマケにタダみたいなもんだし…」
「…Мt.レディ?」
そう言って、唇を噛む。
「…もっともっと…ずっーとずっーと、頑張らなくちゃいけないのよね私。せっかく強力な個性を持って産まれたんだしさ」
「………」
今回の事で色々と思う事があったのだろう。
彼女は深く、何かに誓っているようだった。
それが何かはわからないけれど。
誰もが感じていた事。
オールマイトの引退。
その後の社会。
誰もが、その事を考え始めていた。
ふーっ…
Мt.レディが深く深呼吸する。
「…ま、やれるだけやってみますか!」
ヨッシャーと気合を入れる!
美しい、大人の、女性の笑顔だった。
素敵な、笑顔。
何かを決意した笑顔。
その美しい笑顔に、思わず見惚れてしまう。
…ああ、やっぱり、この人は綺麗だな、と思った。
この人の所で働けて良かった。
そう心から思う。
…そしてその後彼女は、こちらの感動を他所に、いつものニシシ…みたいな黒い笑顔を向け、
「私頑張るからさ、傷物になったら面倒みてよね♫昔世話した若いツバメが、年取った自分を迎えに来るとかいい童話だと思うわけよ♥」
「それは一体何キャラなんですか…」
「あーら、決まってるでしょ!」
彼女は不適に笑う。
「ヒーローよ。これからNo.1を目指すヒーロー!」
そして彼女は不適に笑った。
カッコいい。
でも台無しだった。
でも、それで良いのだろう。
常にカッコいいヒーローである必要はない。
時には台無しになるくらい羽を休めることも必要なんだから。