「ふーん…まあ…何かアンタにはあるんだろうなーとは思ってたけど、思ってたよりヘビーな話だったわねー」
「はははは…」
「年上の女として一個だけアドバイスしとくけど」
「はい」
「兄弟に迷惑かけないように、女関係はちゃんと整理しときなさいよ」
「はいー!!!!」
Мt.レディは、大人だった。
これが、彼女に僕たちの事を話した日の事だ。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「タスケーそれ終わったら最後にいつもので肩もんでくんない」
「はいーかしこまりですー!」
すでに10月に入っていた。
そして、今日は僕がこのМt.レディ事務所で最後のバイトとなるかもしれない日。
その、最後になるかもしれないバイト。
その、終わりかけの時間である。
Мt.レディの背後に回る。
彼女のお気に入りの椅子。
彼女は、時にその個性を不注意で発動させ事務所を壊してしまう。
でも、何度か事務所を壊してしまっても、この椅子は常に新しい事務所に運んで使っていた。
思い入れのあるものには、強い思い入れを持つ女性なのだ。
その利己的だったり打算的な面が目立つが、情の深い女性だった。彼女は。
「…ん、あー…やっぱりアンタの肩もみはサイコーねー…」
「あざですあざです。何なら他の所もおもみしまっしょいか?」
「あーじゃー実家のぬか床とかお願い」
「何か言ったこっちがすみませんでした!!!」
カラカラ…っと彼女は笑う。
「…うん。ありがと。もう大丈夫よ」
そう言うと彼女は肩越しにこちらに振り向き。
「タスケ、ありがとね。バイトに来てくれたのがアンタでホント良かったわ」
「…こちらこそ。貴方の事務所でバイト出来て良かったです」
最後のバイト。
もしかしたら最後になるかもしれない時間。
彼女も、それを知っている。
でも、いつも通りの会話だった。
いつものバイトのような時間。
「…ま、もしなんやかんやあってアンタが残ったら、またウチの事務所でバイトさせたげるから」
「はい…あざですあざです」
彼女は大人だ。
僕の伝えた話から、僕たちの事を色々察してくれているのだろう。
彼女は、肩に置いた俺の手を、握った。
「…え?」
そして、そのまま僕を引き寄せると、
「?!」
「♫」
そのまま、僕とキスをした
ガッツリとした、大人のキスを
「…昔見たアニメで憧れのシーンがあるのよね」
「…Мt.レディ?」
彼女はいたずらっぽく、でも少し…でも少しだけ寂しそうな笑顔を浮かべ、
「大人のキスよ。もしも次に会えたら、次はこの続きをしましょ」
「…はい」
2人。見つめあう。
僕と彼女。
コレがもしかしたら最後になるかもしれない。
そんな瞬間だった。
「…でもダメねアンタ。ちょっとキスに慣れ過ぎてて生意気」
「雰囲気!!!!!!!!!!!!!」
カラカラ笑う彼女。
僕もつられて思わず笑う。
ありがとうМt.レディ。
貴女に会えて、本当に良かった。
もしもまた貴女に会えるなら…思わずそう思ってしまった。
運命の時間が、迫っていた。