「それで無事ヒーロー科への編入希望は受け付けてもらえたんですか?」
「ああ、なんとかね」
トガヒミコ襲撃からまた少し日が経ち、10月は終わり11月となっていた。
駆けつけた警察には、突如ヴィランに襲われたと言うだけで事情聴取はあっさりと済んだ。
病院までパトカーで送ってもらい、病院で手当てを受けながら考えていたのはトガヒミコのことだった。
彼女を助ける。
なんとかしてあげたい。
でもどうするべきか?
ジュートの様にヴィジランテとして活動する事も考えた。
だが何の伝手もない学生が1人ヴィジランテになったところで、どうにかなる問題ではないだろう。
ジュートからは、彼女がヴィラン連合に所属しているとも聞いていた。
個人で出来る事には限界がある。
俺は、ヒーロー科への編入を目指す事にした。
ジュートの通っていたボクシング道場に通い、集中訓練を受ける傍ら、事情を話した拳藤に協力してもらい個性の訓練も始めた。
誕生日の朝、目覚めた瞬間からわかっていた。
タスケとジュート。
2人の個性を使えるようになっている事が。
頭の中に見えないスイッチが2つ増えているイメージ。
俺の翼の個性と、2人の個性。
組み合わせる事でかなり強力な能力となっていた。
拳藤はしみじみと、
「元々格闘技をかなりやってるのは体付きでわかってましたから、ボクシングがめちゃくちゃ強いのはまだ納得するんですが…」
しみじみと、ぼやく
「まさか個性がここまで強力だなんて…しかも2年の経営科成績トップ!…先輩、ちょっとチート過ぎませんか?」
「ははは…」
そんな事を言ってジト目で睨んでくる。
俺の個性は、重力を操り空を飛ぶ個性だった。
拳藤曰く
「普通に空を飛ぶ個性ってだけでも強力なのに、先輩の場合重力操作で空を飛んでるからか?体勢維持したままでの方向転換とか、機動性が極悪過ぎです!」
普通に空を飛ぶ場合、大体は翼持ちの個性がその翼を羽ばたかせて空を飛んでいる。
だが、俺の重力操作の場合、翼を羽ばたかせる必要がなく、何なら棒立ちの状態でそのまま空を飛べるのだ。
ジュートの重力拳も組み合わせると、凶悪さが跳ね上がる。
「体勢維持したまま飛んで、更にトップスピードで直角に方向転換可能なんて、反則ですよ反則!」
「まあ、そう言われるとなあ」
「しかも重力拳に多段で攻撃力めちゃくちゃトンデモないことになってるし…先輩のインテリイケメンフェイスで極悪ゴリゴリインファイターってのはちょっとギャップが酷すぎます」
まあ、そういう事になる。
空を自由に自在な体勢で飛び、トップスピードからの機敏な動きが可能。
足場のない空中での打撃だが、そこは2人の弟の個性で威力を底上げ出来る。
極悪ゴリゴリインファイターってのはまさに言い得て妙であった。
ガックシと拳藤は肩を落とし、
「先輩と一緒にヒーローになれるかも、っていうのは嬉しいんですが…正直自信なくしちゃいます…」
彼女の嘆きはわかる。
だが…
「3人分の個性を自由に使えるんだ。弱かったら申し訳ないよ」
この力は、俺達兄弟の過ごした時間の結晶なのだから。
「…そう言われると、何も言えないからズルいです」
「ああ…すまない。気を使わせた」
時間の流れは、2人の消失から俺の気持ちを少しづつ癒していた。
こう、何気ない会話の中で自然に口から出せるように。
まだ2人の不在が寂しい。
だけど拳藤と、時間の経過が少しづつ少しづつ心の痛みを癒してくれていた。
もうすぐ文化祭となる。
横目で、ちらと拳藤を見た。
「?どうかしましたか?」
「いや、何でもないよ」
人格統合から、そろそろ一月。
お誂え向きに、踏み出すには丁度いい文化祭という良いキッカケもある。
そろそろいいかな?
許可なんて、取る必要も本当ははいんだけど。
心の中の2人は、もっと早くでも良かったんだぜ、って言うと思う。
そうだな、そうしよう。
文化祭で拳藤に告白する。
そう決めた。