このアカデミアでは俺だけに翼がない   作:のりしー

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拳藤一佳の文化祭

「…せい!」

「ぐっはあ!!!」

 

拳藤一佳の雄英高校1年の文化祭は、クラスメイトの物間に手刀を叩き込むことから始まった。

 

朝も早くからわざわざ1年A組の寮に行き挑発しようとしてたのであるこの男。

 

B組が好きなあまりの行動だとはわかってるけど、もう少し何とかならないもんかねほんと…

 

「まあ、一佳が愛しの先輩にかまけてばっかで寂しいんじゃないのコイツも笑」

「切奈…勘弁してよもう…」

 

クラスメイトの取陰がそう言ってくるが勘弁してほしい。

 

『文化祭当日は忙しいから朝練は辞めとこう。ミスコン頑張れよ』

 

先輩のその一言で今日の朝練は辞めになった。

多分どうせ、先輩は1人で自主練してるのだろうけど。

私を気にしてそう言ってくれたのがわかるから、何も言わなかった。

もっと頼ってくれてもいいのに…

 

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

 

 

「拳藤ーそれこっちよろー」

「わかったー!」

 

時計の針は少し進み、文化祭が始まった。

うちのクラスの出し物は演劇。 

私はミスコンがあるから劇には出ないが、準備は手伝えるのでギリギリまでこちらを手伝う予定。 

 

「いーのにそんな手伝わなくてもさ。ミスコンもあるし、愛しの先輩のクラスの出し物とか行って来たら?」

「んー大丈夫よ。そんな無理はしてないし」

「へー余裕じゃん」

「そーでもないけど」

 

翼人先輩のクラスの出し物。 

それは紳士淑女喫茶。

 

見た目がいい生徒を着飾って、給仕をさせたり簡単なゲームをさせたりするそうな。

 

控えめに言って、ホストかコンカフェ臭が酷いのだが、そこはミッドナイト先生判断であまり酷すぎるものはNGらしい。

 

ただミッドナイト先生判断なので、怪しいところだが…

 

「偵察!」「してきた」

 

「希乃子?唯?」

 

しばらく準備に顔出していなかった2人がこちらに近寄ってくる。どうも休憩がてら先輩のクラスの偵察に行ってたようだ。 

 

「えー!どうだった多重先輩!」

 

切奈の問いかけに2人は、

 

「「やべぇ。イケメンやべぇマジイケメン」」

 

…女の子はイケメンが好きだ。

付き合うとか結婚ならそれ以外の要素のが大切だが、観賞するなら間違いなくイケメン。イケメン強い。

 

「写メ無いの写メ」

 

レイ子がそう言うと、唯がスマホを取り出す。

茨ですら興味があるのか、そのスマホを覗き込んだ。 

 

『おおお!!!!!』

 

ソコには、先輩がいた。

この超人社会ですら珍しい綺麗な紫の髪。

知性と気品あふれる整った顔。

均整の取れた長身。

 

それを執事服で飾り、メガネまでかけていた。

やべぇ…マジイケメン…

 

「…ちなみに、メガネは何種類かから選べた」

 

…その案を出した人はこの文化祭のMVPだろう間違いなく。

 

「へーでも先輩やっぱイケメンだねー」

「…あ、チョッ、待っ…」

 

切奈が他にも写メがないか画面をスライドする、

 

『あ!!!!』

 

「くっ…」

 

ソコには先輩にお姫様抱っこされた希乃子の写メがあった!!

 

だっ!と逃げ出そうとする希乃子!

 

「確保ー!!!」

「ぎゃー!!!」

 

慌てて確保する茨と、捕まった希乃子!

「希乃子ーこれは事案だよー事案ー!!」

 

切奈の声に残ったメンバー全員が頷く。

 

捕まった希乃子は、

 

「わ、私より唯のが凄いことしてたもん!!!」

「…だっしゅ!」

 

「確保ー!!!!」

 

慌てて逃げる唯。

それを捕まえる私たち。

 

賑やかな文化祭だった。

 

 

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

 

「…ああ、拳藤、とお友達もいらっしゃい」

「…なんか疲れてますね先輩」

「わかってくれるか、まあな…」

 

希乃子と唯と皆でお話した後に、少し休憩時間を貰って先輩のクラスの出し物に顔を出した。

先輩は疲れた笑顔で迎えてくれた。

 

「大丈夫ですか?休憩取れてます?」

「大丈夫。軽くは取ってるよ。ミスコンの時間にまとめて取る予定だから少しハードだけどな」

 

 

そうさらっと言ってくれる。

席に案内してもらい、喫茶店の席に案内してもらう。

「まあ、ゆっくりしていってくれ」

 

そう言うと他の席から呼ばれた先輩がそっちに向かう。

 

「うーわ、こりゃまたコテコテのメニューだねー」

「ほんとね」

 

一緒に来た切奈とレイ子がそう言う。

メニューはほんとにコテコテだった。

 

『指定のスタッフに肩を揉んでもらう』

『指定のスタッフとポッキーゲームする』

 

などなどなどだ。

 

ミッドナイト先生これちゃんとチェックしたんだろうか…したんだろうなあ…

 

「やっぱ多重先輩人気だねー」

「まあ、イケメンだしね」

「………」

 

忙しそうなスタッフの中でも、特に先輩は忙しそうに動いていた。

 

「わかってたけど…やっぱモテるんだよね先輩…」

 

実際、4月からの付き合いだが、先輩はモテる。

わかってた事だ。

 

顔が良くて、優しい。かつ2年経営科のトップの成績だ。 

事情があり人付き合いはあまりないが、それでも狙ってる女生徒は多かった。

実際仲良くなった私も

 

『お手並み拝見』

 

という女の先輩の視線は多かったのである。

 

切奈はニヤニヤしながら、

「どーするー?焦ったほーがいーんじゃないの一佳」

「切奈…あんま煽らないの」

たしなめるレイ子。

 

対照的な2人を見ながら、

 

「いいの…先輩は『ほぼもう』私のだし」

「「おおー言うねー!!」」

 

見知らぬ女の子に愛想を振りまく先輩を見ながら、そう2人に言う。

 

 

お互いの気持ちは通じてると思う。

あの人達皆に本当は大きな声で言ってやりたい。

 

その人は、私のだ!って

 

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

 

応援に来てくれた先輩が見ている中、ミスコンが終わった。

 

残念ながら、私は一番にはなれなかった。

 

…まあ、やるだけやって勝てなかったのだから仕方ない。

少し悔しいけど。

 

来年出してもらえるなら、その時また頑張ろう。

 

控室に置いてきたスマホを思い浮かべた。 

ミスコン前、控室に応援に来てくれた先輩。

 

「綺麗だな。似合ってるよ拳藤」

ドレス姿を褒めてくれた。

執事服の先輩と、ドレス姿の私。

2人で写メを撮った。 

 

この写メは私だけのものだ。

出し物ではない、先輩との写メを私だけが持ってる。

 

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

 

「拳藤、少しいいか?」

文化祭も終わりが近づく頃、先輩が私に会いに来た。

 

2人で校内を歩き、人のいない学校の屋上に向かう。

鍵は、先輩が個性の応用で開けたようだ。

 

文化祭の、屋上。

2人きり。

 

…ひょっとして、これって…

 

先輩は、真剣な顔でこちらを向く。

 

「待たせてすまない、拳藤」

「…先輩」

 

「拳藤。始めて会った時から、俺は君に惹かれていたと思う」

「………」

 

「好きだ。君の事が好きだ、拳藤。俺と付き合ってほしい」

「…はい!私も好きです!先輩!」

 

翼人先輩!

告白してくれた!

気持ちは通じてると思ってた!

でも、言葉にして伝えてくれると本当に嬉しい!!!

 

体も心もふわふわして、まるで空を飛んでるみたいだ。

無重力でふわふわ浮いてるような、幸せな気分!

 

「拳藤…」

「先輩…」

 

あ…キス…

 

近寄って来た先輩に抱きしめられ、キスをする。

 

「………」

「………」

 

幸せ…幸せ…

…でも

 

唇が、離れる。

目の前には、先輩の整った顔。

 

「先輩…」

「拳藤…」

 

思わず、気になった事が、口から出てしまう。

 

「キス…手慣れてません?」

「うっ…」

 

いや俺じゃないんだが…

そんなつぶやきが聞こえる。

 

わかってるけど。

先輩にそういう時間がないのはわかってる。多分あの口の悪い弟さんとかだろう。

わかってるから。

 

でも、面白くない。

面白くない。

 

「なんか、先輩だけキスが上手いのはズルいです」

「拳藤…」

「だから…私も上手になるまで、何度でも付き合ってくださいね♫」

「…そういう練習で良ければ、喜んで」

 

そう言うと、2人でまたキスをした。

 

好きな人と気持ちが通じ合い、キスをする。

それだけで。

たったそれだけなのに。

 

何でこんなにも世界は輝いているんだろう。 

 

幸せな時間だった。

 

 

それが私の雄英高校1年の文化祭の思い出だ。

 

 

 

 

 

 

 

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