『あんま無茶ばかりするなよ。元気でな』
ジュート君からそんな意味不明のメッセージが来たのは10月の頭頃だったと思う。
その頃ヴィラン連合はCRCとのイザコザもあり、私はジュート君の所に行く事が出来なかった。
落ち着いてジュート君に会いに行ったら、そこにはジュート君と全く同じ顔をしたジュート君と全く違う『誰か』がいた。
違う。違うよ。
ジュート君は、あんな普通な顔でコーヒー豆を買って歩く事はない。
一緒に買いに行ったことがあるからわかる。
ジュート君なら、もっと面倒くさくてうざったくて仕方ないって、なんで俺様がこんな事しなくちゃならんのだ!って顔をしながら、ふとコーヒー豆から漂う良い匂いにちょっと頬を緩ませながら歩いているはずだ。
私の光。
光輝く場所。
ジュート君が、この世から居なくなったとハッキリとわかった。
あの日、ジュート君と最後に会った日。
私は断られるのを覚悟で弔君にお願いし、最後にジュート君の勧誘に行かせてもらった。
ジュート君はヴィジランテ。
光と闇の間に生きる人。
私とは違う。
私は、違う。
中学の最後に事件を起こして以来、私は闇の中で生きてきた。
ヒーローがいくら世間に溢れていても、家出少女を見かければ良からぬ思いを抱くものは多い。
私はナイフを使って、そういう人達から日々の生活の糧を頂くような、そんな生活をしていた。
…最初は、ナイフで脅すだけだった。
でも、そのうち、人を殺してしまった。
そんなつもりはなかった。
女の子一人と侮り、暴力で襲う私を、さらに暴力で襲おうとした男がいた。
結局、その男を刺してしまった。
私が本格的にヴィランになったのはこの瞬間だ。
何度も夢に思った。
この事件の前に、ジュート君に会えていたらって。
そうしたら、もっと別の未来があったんじゃなかったかって?
ヴィランとヴィジランテ。
決して埋まらない溝がそこにはあった。
光と闇の間でも、光の側にジュート君はいたいのだとわかっていた。
だから、最後に1回だけ一緒に生きようと勧誘した。
駄目だとはわかっていた。
でも、そうせずにはいられなかった。
あれは私の精一杯の告白だった。
『好きな人と心と身体で繋がって…お互いの血と血が混ざりあっていく…多分私にとって一番幸せな死に方じゃないかと思うんです』
あの日、あの瞬間。
私は彼と死んでしまいたかったのだと思う。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「あなたの心で世論を揺らす!全ては解放軍の為!何故貴方は狂気に至ったか!」
「…普通の暮らしって、なんですか?」
普通って何だ。
私は、何だ。
私とジュート君が生きられない世界って、何だ。
…憎い。
憎い憎い。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い…
世界の全てが憎くてたまらない。
普通を押し付ける世界。
ジュート君がいない世界。
私が私らしく生きられない世界。
憎くて憎くてたまらない。
ああ…この憎しみで世界ごと殺してしまえればいいのに。
…カチっと、頭の中で音が鳴った気がする。
私が、生まれ変わるのがわかった。
「世界の、全てが、憎い」
「トガヒミコ…?」
「解放軍の貴方達も、憎い」
ああ…この憎しみで、世界を全て殺してしまいたい。
憎しみで誰かが殺せたらどんなにいいだろう!
目の前の連中の隙を見て、私は時間を稼ぐ為に後ろに走った!
「逃げられないよ!自分達から来たんでしょ!」
嫌な、人
私は、不幸なのかもしれない
バックからとある血の入った容器を取り出し、その血を飲む。
憎い人には、どんな笑顔を向けているかわからない。
貴方達が憎い人を攻撃するように
「…え?その姿は?」
男性の、姿。
『一応血を取っておいた。何かの役にたつかもしれねえだろ』
死穢八斎會 若頭
治崎 廻
「だ、男性の姿になったからって!外見だけ変わっても、多少力が増えても、個性は使えないはずでしょ!!」
マグ姉を殺した憎い憎い男。
憎くて憎くてたまらない。
役に、たってよ。
役にたってよ
私は憎い相手の血をすすり、その憎い力で憎い相手を、殺す。
私は、ひょっとしたら不幸なのかもしれない。
私は、全てが憎い。
全てを、憎み殺したい。
個性 オーバーホール
12月のある日。
異能解放軍との戦いの中。
私は、その場にいた全ての人間を、憎い個性で殺し尽くした。