「非常に優秀な個性だ。トップスピードこそ多少ホークスには劣るようだが、旋回性を含めたあの機動力は異常だ。人命救助でも戦闘でも非常に役立つだろう」
「………」
「職場体験でも、実際車にひかれそうな人を助けたり、木に登って降りれなくなった子供を助けたりと優秀な働きだった。咄嗟の判断力にも優れていたな」
「………」
「しかも、もと経営科のトップの成績だ。事務作業から何でも経営的な作業も抜群に優秀」
「………」
「正直、卒業を待たずに今すぐサイドキックとして採用したい。何処の事務所でも即戦力だろう」
「………」
私の目の前の先輩2人。
エッジショットとシンリンカムイ。
2人が事務所の窓から外を眺めている私の背に次々と声をかけてくる。
色々言っているが、一向に2人の方を向かない私に、揃って大きなため息をつくと、
「「で、Мt.レディ。君は一体彼の何がそんなに不満なんだ?」」
「…べっつにー、何でもないですよーだ」
「絶対なんかあるだろそれ…」
インターンと職場体験の雄英生徒が帰った後、事務所での3人の会話である。
2人には私が多重の奴によっぽど冷たいか無関心な対応をしていたと見えたのだろう。
冗談じゃないわよ…
こっちがどんだけ気を遣っていたと思ってるんだか…
そもそも、事務所での顔合わせから波乱の幕開けであった。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「ぱいせん!タスケぱいせんじゃないか!覚えてるか!峰田だよう!あの日にぱいせんから熱い尻派の思いを語ってもらった峰田だよう!」
…あっちゃー
そう言えばコイツラ面識あったわね…
こっちの峰田の事は正直すっかり忘れていた…
「お、おいやめろ峰田!先輩めっちゃ困ってるじゃねえか!」
「ふ、普段慣れてる俺達クラスメイトじゃないんだから自重しろよ!何突然人の事尻派とか言ってんだよ!」
クラスメイトの2人が峰田を止めようとする。
「ち、違うんだって!オイラ職場体験でМt.レディ事務所いたから先輩と面識あるんだよ!」
「え、でもさあ」
「言ってたんだよ先輩!俺はめっちゃ尻が好きだって熱く熱く語ってたんだって!あの人あのスーパーイケメンのクセしてオイラよりよっぽどムッツリなんだぜ!」
困ったわねー
事務所はすでに大混乱である。
顔合わせるなりこれだから無理もないけど。
実際事情知ってる私以外は混乱するしかないだろう。
タスケの兄もこれは流石にどうしたものかという様子だった。
「先輩!皆疑ってるんだ!オイラの事信じてくれないんだよ!オイラの為に語ってくれよもう一回!あの熱い尻派への思いを!」
…これを流石にタスケの兄にやらせるのは可哀想か…
タスケからは、兄は真面目で優しい人と聞いている。
まあ、タスケの為と思い手を貸すとしよう。
私はわざとらしくこれ見よがしに呆れたようなため息をつくと
「アンタ相変わらずバカねえ。こんなイケメンが尻について人前で熱く語るわけないでしょ。アンタと違ってイケメンだし」
「えええええええ!!!!!!」
「アンタじゃないんだから。そんな事思っても言わないでしょ普通。女に困ってなさそうだからアンタみたいに餓えてもないだろし」
「えええ!!!ひ、酷すぎる!Мt.レディも一緒に聞いてたじゃん!!オイラとタスケぱいせんが楽しく回転椅子で回ったの見てたじゃん」
「気の所為でしょ。私知らない」
「うわあああ!!!」
「み、峰田いい加減にしろ!先輩みたいな人がオマエみたいに尻尻言うわけないだろ!」
「せ、先輩すみません…コイツも悪いヤツじゃないんですけど…」
「あ、ああ…うん」
「ヒデェよ!酷すぎる!女は平然と嘘を付く!!怖い!!怖すぎる!!!何でみんなオイラの言う事信じてくれないんだよう!」
「さあね?日ごろの行いじゃない?」
「うわあああああん!!!」
そもそも、事務所に来た時からこれだ。
私だって思う所はある。
でも正直それどころではなかったのだ。
「「………」」
こちらはエッジショットとシンリンカムイ。
2人には事前に、多重は私の事務所でバイトしてたのは事実だが、出来れば私たちは初対面という事にして欲しいと頼んでいる。
事情があるのだと。
2人も大人なので、何も聞かず頷いてくれた。
そうして雄英の生徒を招いてのインターンと職場体験が始まったのである。