このアカデミアでは俺だけに翼がない   作:のりしー

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静かな始まり、その前に

「は!!まーた彼女へメッセージ送ってのんか?マメだな色男!」

 

「ははは…すみません」

 

褐色肌の美しい女性ヒーローがかけてきた声に、そう返す。

ミルコだ。

 

今、俺はたまたま雄英高校近くで活動していた彼女の元で職場体験をさせてもらっていた。

時間は流れ1月が終わり、2月に入っていた。

 

『職場体験?…まあ数日はこの辺りで活動するつもりだから構わねえけどよ、その間だけだ』

 

だが、使えねえヤツだったらソッコー叩き返すかんな!

 

そう言っていたそうだが、幸運にもお眼鏡にかなったようで、職場体験は本日で無事3日目となる。

 

コンビニで買った惣菜パンを2人で食べる昼食時。

とあるビルの屋上での事である。

 

特定の活動エリアを持たないミルコは、超スピードで街を跳躍し、トラブルを見つけ次第駆けつけ解決するという独特のスタイル。

 

そのスピードについて行ける者がおらず、サイドキックなど不要とのことだったが…

 

「…ま、オマエは掘り出し物だったな。大した個性だ。いいプロヒーローになれるよオマエ」

「ありがとうございます」

 

気性の荒さが目立つ言動とは別に、意外に面倒見が良い所もあったりするので、人間わからないものだ。

 

彼女のスピードについていけるとわかってからは、高速機動中に気をつけるべきポイントや、意識した方がいい事をかなり丁寧に指導してくれた。

 

「後進の指導かー…柄じゃねえと思ってたけど、案外悪くねーな。またそのうち誰か受け入れてみるかな」

「本当ですか?仮免取ったらインターン希望出させてもらってもいいですか?」

「…ま、そん時の気分次第だけどな」

「えええ…」

 

彼女はニヤッと獰猛な笑みを浮かべ、

 

「私はこの時、今の一瞬一瞬を全力で生きてんだぜ。先の事なんて知るかよ!」

「なるほど」

「さ、飯食ったらまた行くぞ!彼女とのメッセも程々にな!」

「わかりました。俺はもう大丈夫です!」

 

「良し!!行くぜ!!」

 

そう言った瞬間、一気にミルコは一速からトップギアに入る!

個性 兎

 

強靭な足腰から生み出された超スピードで跳躍し、ビルの屋上から移動する。

個性 超重装具

 

俺も個性を発動!

一気にトップスピードに加速し飛翔!

彼女に追いつく!

 

ミルコは俺を見るとニヤリと笑い、

「生意気なヤツだな!いいぜ!もっと出してみろ!」

「はい!」

 

彼女を追い抜き加速する!

目的は、たった今コンビニ強盗してきたであろうヴィラン!

店から出たばかりの、ATMごと現金を強奪したヴィランが目についたので、ソイツに向かって全力で飛翔する!

 

 

「げ!!」

 

ヴィランがこちらに気づく!だが遅い!

「はっ!」

飛翔の勢いそのままに右ストレートをヴィランの顎に打ち込む!

「ぎゃ!」

苦悶の声をあげてヴィランが吹っ飛ぶ。

かなりいい感じに決まった。 

当分起きれないだろう。

「ソイツはもういい!次だ!次行くぞ!」

「はい!」

 

コンビニから出てきた店員に後を任せ、2人で高速でその場を離れ跳躍・飛翔する。

 

「どっちが多くヴィラン倒せるか午後は競争でもするか?負けたほうが勝った方にジュース奢りな」

「えええ…大人が学生に賭け振ってくるんですか?」

「冗談だよ、冗談」

 

何か本気だった気もするが…

 

「!先行くぜ!」

「く!」

 

発見が遅れた!

目の前には車にひかれそうな子供!

 

先に気づいたミルコがその子供を保護する!

超スピードでその子を抱き抱え跳躍し、歩道に移動する。

 

「へ!今度は私のが早かったな!」

勝ち気なバニーさんだ、全く。

後輩にすら負けたくないのだろう、本気で。

 

「さあ次だ次だ次だ行くぜ行くぜ行くぜ!」

子供を親に預け、また跳躍する!

一瞬足りとも止まらない!

これが彼女のスタイル!

 

俺もそれについていく!!

「まだ行けるだろ!もっと行けるだろ!まだまだ出来るだろオマエは!フォローはしてやる!やれ!行け!飛べグランダート!」

「はい!」

 

こうして、ミルコとの職場体験は終わった。

非常に実りの多い職場体験となった。

 

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

 

そして時はさらに進み3月。

ヴィランとの全面戦争が始まろうとしていた。

本来、仮免の無い俺は参加の予定が無かったのだが。

 

「総力戦だろ、私のフォローさせるからグランダートも呼べ」

ミルコからの珍しい推薦があり、俺の参加も決まった。

 

「まだ仮免もないんだ。あまり無理はさせるなよ」

 

周囲の心配の声にミルコは、

 

「ああ、わかってるよ。『あまり』無理はさせねえよ」

「…それ絶対させる気だろ…」

 

と返したそうな。

3月、ヴィランとの全面戦争が、静かな始まりの時を迎えようとしていた。

 

 

 

 

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