「他所の家の事情なんて知るかよバーカって感じだよくだらねえ」
「同感です」
ここは病院。
俺の体調がかなり回復したのでミルコのお見舞いに来ていた。
先ほどまで電源の入っていた病室のテレビ。
特に見たい番組があるというよりは、暇でやる事ないからつけっぱなしにしていたようだ。
今回の荼毘の告発動画を受けての、エンデヴァー、ホークス、ベストジーニストというトップ3ヒーローの緊急会見が始まるところだったが、ミルコに
「うっとーしーからテレビ消せ」
と言われてテレビを消す事にした。
「アイツら何様何だろなマスコミ連中はよう。ヴィランよりよっぽど質悪いぜ」
「同感です。半分くらい潰れて欲しいですよほんとに」
全面戦争と同時に、各地に散らばっていた超常解放戦線の構成員への一斉検挙が行われた。
構成員は10万とも言われている。
その構成員の検挙と、今回の全面戦争で逃亡した超常解放戦線メンバーの掃討作戦が継続されていた。
中心はエンデヴァーとベストジーニスト。
負傷の酷いホークスは治療中だったが、2人のトップヒーローが全面戦争の疲れと負傷を満足に癒やす間もなく精力的に活動していた。
そこに、荼毘の動画である。
エンデヴァーが皆の前に出て説明するべきだ!
というおそらくマスコミが勝手に火を焚き付けた世論の後押しを受け、エンデヴァーは掃討作戦を一時中止。
そして今3人で緊急会見という訳である。
これを荼毘がどの程度狙ってやったのかわからない。
しかし、群訝山荘を担当したエッジショット班の過半のヒーローが負傷し動けないなか、精力的に活動していたエンデヴァーとベストジーニストの2人の足止めに結果として成功したのだから、タイミングとしてはベストだったのだろう。
もちろん超常解放戦線にとってはだが。
「痛えな、この時間のロスは」
「はい…」
超常解放戦線のメンバーも、人混みに紛れてしまえば捕捉が難しくなる。
全10万の構成員のうちどの程度が逃げ延びたのか不明だが、時間を与える事が彼らに有利なのは明らかだった。
「超常解放戦線のメンバーも気を利かせてマスコミ何社か襲撃してくんねえかなムカつくぜマジで」
「…それはそれでヒーロー側の責任にされそうで嫌ですね」
「…そーだな。あーそうだマスコミ連中の言いそうな事だ。ヴィランのが蹴れば黙るだけマシだマシ」
「ヴィランよりタチ悪いですね、確かに」
今の世界の問題は、マスコミが変わればある程度何とかなるような気さえする。
当然、ヒーロー飽和社会に慣れすぎたヒーロー側の変化も必要だろうけど。
今、ヤツラの矢面に立っているエンデヴァーの事を思う。
ハイエンド脳無との死闘。
全員の先頭に立ち、戦い続けたあの大きな背中を。
言葉を交わすことは少なかったが、味方に大きな信頼感を抱かせるには十分なあの行動。
戦いを共にし、俺はエンデヴァーを信頼していた。
そのエンデヴァーを訳も知らず一方的な糾弾をするマスコミへの怒りは大きい。
俺も複雑な家庭の事情がある。
人には人それぞれの事情があるのだ。
訳知り顔で、上から勝手に追求していいような問題ばかりじゃないのだ。
「…間に合うなら、私も戦う。だが、間に合わなかったらお前らで何とかしろよ」
ミルコはハイエンド脳無との戦いで左手と右足を失っていた。
治療し体力が回復次第、義手と義足をつけて戦線に復帰するつもりのようだが、時間はかかるだろう。
他、エッジショット班のヒーローでは、常にギガントマキアの前に立ち戦い続けたМt.レディを筆頭に、多くの重傷者が出ていた。
死人が出なかったのが不幸中の幸いだろう。
だが未だ意識を取り戻さないМt.レディを筆頭に、多くのヒーロー達が病院で治療を受けている。
この後、一体世界はどうなるのか…
「ま、なるようになるさ。毎日毎日今の一瞬を精一杯生きる、それしか出来る事なんてねーんだからよ人間なんて」
「そうですね」
ミルコの言葉。
これが真理なんだろう。
結局、今のこの一瞬一瞬を精一杯生きる事くらいしか、俺達に出来る事はないのだから。