仁君の力を奪い、使った。
後は消化試合だ。
オールフォーワンの血はコップ3杯くらい頑張って飲んだ。
それだけ飲めば、日本を滅ぼすくらいの時間は余裕で保つだろう。
個性 二倍
オールフォーワン・サッドマンズパレード
通路を逆流していくオールフォーワンの波。
タルタロス内に生きる者全てを飲み込み、魔王が増殖していく。
…もう、何かを考えるのには疲れていた。
憎しみだけが頭を塗りつぶしている。
憎しみだけでいい。
…他の何かを考え出すと、頭がおかしくなりそうだった。
増殖し続ける魔王は、目の前の橋に立ち塞がるヒーロー達を見つけたと思念が飛んでくる。
「…どうでもいい」
心の底からどうでもよかった。
適当に、増えた魔王たちが攻撃することだろう。
それで終わりだ。
何も考えたくなかった。
考える必要もないと思っていた。
…突如、魔王の群れの先頭が一万人以上消滅する瞬間までは!!
「…え?」
意味が、わからなった。
一体何が起こった?
今までも多少の分身が倒されていたのはわかっていた。
でも、一万を超えるオールフォーワンが一気に消滅するだなんて!!
慌てて先頭にまだいるオールフォーワンと知覚を共有する!!
そこには、
「ジュート君…じゃ、ない奴!!」
憎しみが、心の奥底から沸々と湧いてきた!!!
オールフォーワン達に指示を飛ばす!!
橋だけでなく、空を飛んであのジュート君の顔をした、誰かを殺してこいと!!!
しばらくすると、さっきの一万を遥かに超える、こちらの知覚の限界を超える数のオールフォーワンが消滅した!!!
『ブラックホールクラスター』
そう聞こえた気がする。
ブラックホールの渦が、多くの瓦礫とオールフォーワンを飲み込み、爆散した!!
地上に上がっていたオールフォーワンはこれでほぼ全滅したと知覚でわかってしまう!!
まだだ!まだタルタロスの地下に溢れるオールフォーワンがいる!!!
憎いアイツに攻撃を集中する!!
100を超えるオールフォーワンが、1人に攻撃を集中するのだ。
避け、重力のバリアで防御し、避け、防御し、空の広さが足りないとばかりに飛び回るヒーロー!!
このまま行けば、倒せる!!!
そう思っていた。
そしたら、今度はそこに新しい脅威が生まれた。
Мt.レディの、更なる巨大化!!!
ヒーロー達の盾になるМt.レディ!!
そして、防御と回避で手一杯だったヒーローが攻撃に転ずる!!
また100以上のオールフォーワンが一瞬で倒された!!
生き残ったオールフォーワンも残ったヒーロー達の攻撃で次々と倒されていく!!
そこからは、タルタロス内のオールフォーワンが減り続け、ヒーロー達の傷が増えていく時間が続いた。
なんでヒーロー達は諦めないのだろう?
あんなにも辛そうなのに。
あんなにも痛そうなのに。
あんなにも血が流れているのに。
「トガちゃん…」
「大丈夫…大丈夫ですよ、仁君…」
いつしか、オールフォーワンはこの部屋にいる者を残し消滅していた。
「行ってきますね、仁君」
「気をつけて…トガちゃん…」
そう仁君に言って残りのオールフォーワンと共に部屋を出た。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
タルタロスの地下を出た瞬間、知覚の限界を超える程の数のビームが襲いかかってきた!
「くっ!」
事前にわかっていた。
使えそうな個性を組み合わせ、防いだり避けたりする!!
しかし、個性を使った傍からその個性が消えていく!
『イレイザーヘッド!!!』
「あっ!!」
慌ててオールフォーワンの血を飲む!
危ない!変身がとける!
急いで視線を避け物陰に隠れて血を飲む。
その物陰がビームで破壊される!!
また変身が!
また血を飲む!
物陰に隠れる!
その間に、残っていた全てのオールフォーワンが倒され、イレイザーヘッドに消されていく!
「あ!」
また物陰が破壊される!
近くに視線を遮れる建物か残骸は!あった!
そこに飛び込み血を飲む!
飲んだ瞬間、その物陰が破壊される!
息が吸えない!苦しい!
血を飲みすぎてお腹が苦しい!
物陰に隠れ血を吸う。そして破壊された物陰がら飛び出し新たな物陰に飛び込み、血を吸うと同時に飛び出す!!
苦しい!苦しい!苦しい!
…気がつくと、辺りには何も無かった。
何も身を隠すところのない、更地。
…血を、飲まなきゃ…
「…ゲボ!ゲボッ!!!」
…思わず血を吐き出してしまう。
息が苦しい。
お腹が、苦しい。
もう、ダメだ…
体が、ドロドロと、溶けていく…
元々溶けかかっていた。
それが、もう止めようがなくなっていた…
目の前に、立っているのは5人のヒーロー。
それ以外は、皆地面に力尽き、倒れていた。
立っているヒーロー。
ジュート君ではない、誰か。
「弟に、こう頼まれたんだ」
ヒーローが、1人、こちらに向けて歩いてくる。
「『でも、もし、アイツが助けを求めていたら助けてあげて欲しいんだ』って。弟のジュートがそう言ってたんだ」
「…ジュート、君が…」
ジュート君であって、ジュート君じゃない誰か。
彼の顔を見る。
不思議と、いつも不機嫌そうに笑うジュート君の笑顔が重なって見えた。
「君が、助けを求める顔をしていた」
「あ…」
「だから、弟の、ジュートの分まで」
「あああ…」
「俺は、君を、助けたいと思う」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
何かが砕けた。
心の何処かで、何かが。
涙が、涙が止まらなくなってしまった。
止まらない。
涙が、止まらない。
辛かった。
いつからだろう。
私は、ホントに辛かった。
ジュート君はいなくなって。
マグ姉も死んでしまって。
弔君も死んでしまって。
憎みたくない人達を、無理矢理憎んで憎んで憎んでた。
ホントは、もっと皆と仲良くなりたかった。
出来れば血を吸わせてもらいたかった。
でも、血を吸わなくても。
私の事を受け入れてくれれば、それだけで血を吸わなくても我慢できたのに。
逃げ回る日々は辛かった。
中学最後の日から辛かった。
その前のその前から辛かった。
わかってくれない両親も。
そうだ、私はきっと…
「…助けてよ…ヒーロー…」
「わかった」
きっと、誰かに助けて欲しかったのだ。
「相澤先生…あの…」
「わかってるよ」
泣く私の頭上から、声が聞こえる。
「俺はヒーロー科の教師だ。泣いてる女の子を助けるな、なんて、今までもこれからも教える気はない」
戦いは、終わった。
長い長い戦いが、終わった。