渡我被身子との面談は、2ヶ月に一度続いていた。
タルタロスの決戦の後。
大人しく刑務所に入り、模範囚として生活している少女。
色々な事を話した。
彼女の生立ち。
家庭の事。
初恋の話。
そして、ジュートとの日々を。
彼女の生立ちや家庭の事は、俺にも色々思うところがあった。
ジュートにも、彼女を助けてほしいとお願いされた。
何とか彼女を助けられないか?
そう考え、色々活動してきた。
幼少期の個性の発現。
それによる傾向や嗜好がその後の人格形成に影響するならば。
俺にも出来ることはあるのでは?
と思ったのだ。
だから、様々なサポートアイテム…主に幼児や子供向けの個性の暴走を抑えたり、心理的な動きを観測し、その後のカウンセリングで役立つようなもの。
そういった物を開発した。
根津校長や警察、色々な人達にも協力を仰いだ。
特殊な個性を持つ子どもを、その親含めフォローするような仕組みづくり。
生まれついての個性が、ヴィラン誕生の原因となるならば。
小さい子供の時からの手厚いフォローが、そもそもヴィラン誕生の原因を無くせるのではないか?
そう言うと、根津校長達は協力してくれた。
「僕らはヒーローだけでなく、そもそも教育者なのさ」
教育者として、人々を救えるならそれはとても素晴らしい事だ。
全てが上手くいった訳ではない。
まだまだこの流れは発展途上で、試行錯誤している段階だ。
これが成功と言うまでには、より多くの人々の助けが必要だろう。
そして、より多くの時間も。
その一環として、俺が提唱し、今回初めてのテストケースとして採用されたプランがある。
未成年のヴィラン。
未成年の個性犯罪を犯した人を、更生するためのプランが。
………………………………………………………
「お久しぶりですね、翼人君」
「久しぶりだね、渡我ちゃん」
彼女は、私のことは渡我ちゃんと呼んで欲しいと言った。
だから、それ以来俺は彼女をそう呼んでいた。
久しぶりの面会だった。
彼女はとても穏やかな顔をしていた。
本当は穏やかで、優しい少女なのだ。
ただ、何かの歯車が1つ欠けただけ。
そんな、何処にでもいる少女なのだ。
「この前のプランについて、改めて渡我ちゃんの意見を聞きに来たんだ」
「…正直、嬉しいです。私は、悪い事をたくさんしてきました。そんな私に、こんな救いがあるだなんて」
自分は、幸せになっていいのだろうか?
彼女の罪悪感が、彼女を責めていた。
「君は、幸せになっていいんだ。俺が、俺の嫁が、そして周りの協力してくれる人達が、君が幸せになる手助けをしてくれる」
「………」
「麗日お茶子のこと、覚えてるか?」
「お茶子ちゃん?」
「彼女は、今俺のサイドキックをしてくれている。麗日は喜んで手助けしてくれると言っていたよ」
「あ、あああ…」
未成年ヴィランの更生プラン。
それは…
個性 巻き戻し
個性 催眠
「2つの個性を組み合わせ記憶を無くした幼児として、国が認めた家庭に養子として預け、人生をやり直させる」
「…………」
個性で歪んでしまった人生を、1からやり直す。
とても都合のいい考え方だ。
個人の能力や周囲の善意に委ねる範囲も多く、正直今後継続出来るかどうかわからない。
だけど…
「俺は、子供の頃から色々あった」
「…聞きました。ジュート君の自慢のお兄ちゃんでした」
子供の頃から、俺には翼が無かった。
何処にもいけない。
何者にもならず、終わるはずだった。
でも、タスケとジュートが。
一佳が。
これから産まれてくる子供達が。
周囲の皆が。
俺に未来を与えてくれた。
俺を幸せにしてくれた。
俺に、翼をくれたんだ。
何処にでも行ける。
未来を。
幸せを掴みに行くための翼を。
だから…
「次は、君が幸せになる番だ」
「う…うううう………うわあああ!!!!!」
みんなのおかげで俺は幸せになった。
だから、今度は誰かを幸せにする番だ。
「渡我ちゃん…俺の、俺達の養子になってくれないか?」
「翼人…君…」
「来月には男の子の双子が産まれるんだ。多介と、重人って名前をつけるつもりだ」
「タスケ君…ジュート君…」
「一緒に、家族として過していきたい。だから…」
だから…
「この手を、取ってくれ」
彼女に手を伸ばす。
もう一度言おう。
「次は、君が幸せになる番だ」
ここまで駄作に付き合っていただきありがとう御座います。
最後まで読んでいただきありがとう御座います。
このような形でのトガちゃん救済ルートとなりました。
力不足で表現が足りず苦悶もありますが、何とか終わりまでたどり着けました。
次回作も考えていますので、また何かの機会に時間潰しにでも読んでいただければ幸いです。
改めて、ありがとうございました。