ベイラム・インダストリー所属パイロット『G7 レイヴン』   作:チームマッチUNRANKED

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Chapter3
調査基地奪還


 海越えからしばらくして。ベイラムとアーキバスの両社は中央氷原に既に多くの拠点を抱えていた。どちらも調査で手一杯らしく、妨害、防衛作戦の数はかなり減っている。つまり余裕ができたのだ。

 というわけでラスティへ連絡をつけよう大作戦を再開することにした。色々考える内に思い至ったことがある。

 

 "なぜオルトゥスに実弾オービット(ベイラムの武装)が使われていた?"

 

 …俺の読みが正しければ、ベイラムと解放戦線の和解さえも、夢物語では無くなるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルビコン解放戦線中央氷原支部の基地の1つ、その南東。俺は身一つと最低限の装備だけでそこにいた。移動手段はモービルだ。ACなんかで来たら速攻捕捉されて大戦闘だし、レッドガンのヘリは私用じゃ使えない。というか追跡信号でレッドガンにバレる。もうバレてるかもだけど。

 

 近くにいる見張りらしきMTに、遮蔽に身を隠しつつ公開通信を飛ばす。

「あー、あー、始めまして見張りさん。」

「…何者だ?貴方はここが解放戦線の軍事基地だと知らないのか?他の兵士に敵だと思われて撃たれる前に、早く逃げたほうがいい。」

 この声は…うれしい誤算だ。思わず口角が上がる。

「知ってるさ。その上であんたらのボスに話がある。」

「素性が分からないどころか、姿さえ見せない人間を通せるはずがないだろう。帰ってくれ。第一あのお方は中央氷原にはいない。」

「いや、フラットウェルの方だ。」

「…師叔に?」

「ああ。…そうだな…彼に『シュナイダーの公募プログラムについて知っている』と伝えてくれ。それで話は通る。」

「師叔だって中央氷原にはいないさ。こんな僻地に、解放戦線を背負うお方がいるはずだってないだろう。」

 何?おかしいな、フラットウェルのポストは中央氷原支部の司令だったはず。

「何でだ?あいつは中央氷原支部の司令だろう?まさかベリウスから遠距離通信で指揮でも執っているのか?」

「中央氷原支部?解放戦線にそんな部門はないぞ。いや、まさか私の知らない所で結成されたのか?」

「…あ!」

 やらかした!中央氷原支部の編成は封鎖機構の制圧艦隊が来た後だ!今ここに来てもドーザーか端役しかいない!頭を抱える。

 咳払いをする。

「すまない、勘違いをしていたようだ。だが、あんたに限ってそんな大きな動きを知らないはずがないだろう?解放戦線の傭兵雇用担当。戦線の顔であるお前なら。」

「なっ!?何故それを…!?」

「俺の声、忘れたか?()()()()。まさかこちらに来てるとはな。」

「! もしかして貴方は…独立傭兵レイヴン…!?」

「今はG7レイヴンだな。」

「っ!ベイラムのコールサインか。企業に使われるだけの犬ではないと思っていたのだが…。残念だ、レイヴン…。」

「なんだってお前みたいな重要人物がこんな僻地に?」

「…慎重派に煙たがられたんだ。傭兵への依頼を積極的に斡旋する俺たちの派閥が。仕方ないさ、有能な独立傭兵を企業に奪われた今の私があそこにいられる道理はない。向こうにとっても…ちょうどいい口実だっただろうな。」

「いいや。」

 岩陰から踏み出して、MTの前に出る。姿と、誠意を見せる。

「俺はベイラムを使ってアーキバスを潰す!そのためにレッドガンにいるんだ!企業に利用されるだけの存在じゃない!俺が!ベイラムを使ってルビコンの解放を成し遂げる!!!」

 通信機を使わず、人工声帯の持つ限り大きな声で叫ぶ。…暫しの無言。考えているのだろうか。聞こえなかったということはないだろう。MTには周辺の音を拾う機能もある。

 

「…ダメだ。私にはどうしても貴方を信頼することができない。真実だったら済まないが、引き取ってくれ。私が怒りに身を任せて、引き金を引く前に。」

 

 …やはりダメか。モービルじゃ防備の突破なんてまず無理だし、おとなしく引くしかない…。通信を起動。

「俺は本気だ。…いつかお前ら解放戦線が、俺にとっての戦友となることを願っている。」

 岩陰を経由し、射線が通らないよう警戒しつつ、ベイラムのキャンプに引き返す。

 

 

 

「戦友…か。」

「だが…彼は何故私の名前を…?まだ名乗った覚えは無いのだが…。」

 アーシルは1人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ルビコンに侵入した全ての不法勢力に告ぐ、直ちに星外へ退去せよ』

「…というのが惑星封鎖機構からのメッセージだ!!!!!だが我々はルビコン進駐を継続する!!!!!これが!!!先日より始まった対封鎖兵器訓練の理由だ!!!!!」

 満を持しての封鎖機構制圧艦隊のお出ましだ。すでにうちとアーキバスは拠点をかなり落とされ、MT部隊の損耗がまあまあある。

「今後封鎖機構との接敵機会が大きく増えるだろう!!!死なない程度に死ぬ気で訓練にあたれ!!!!!」

 AC乗りもヴォルタがHCに一度撃墜され、ベリウスでも「壁」防衛に出たナイルはかなり危ない戦いを強いられたらしい。補給は0ではないが、満足でもない。ジリジリと厳しくなってきている。

 

 ちなみにだが、アーキバスキャンプへのデータ奪取作戦(観測データ奪取)に参加してノーザークの様子を見てみようとした。結果は大豊の連中に「レッドガンメンバーを出すほどの作戦じゃない」だのなんだの言われて門前払いされてしまった。俺の時と同じくノーザークを軽く見てるな、あれは。

 ノーザークがまだ生きていることを鑑みるに、最初(1周目)の俺と同等程度の実力らしい。そのレベルの相手とベイラム系列が決裂すると色々面倒だ。

 ノーザークの有用さを説明する資料でも持ち込んでプレゼンするか?それか恫喝か。

 無理に仲間に引き込む必要もないか?アーキバスについても最悪ミシガンとMT部隊のバリューセットか俺が直接出れば潰せるとは思う。

 兎にも角にもまずは封鎖機構を追い払ってからだな。

 

「なおこの後拠点奪還作戦のブリーフィングを行う!!!事前に通達を受けたメンバーは通信を切らず待機しろ!!!!!」

 どうやら俺は作戦にアサインされていないらしい。機体構成でも触ってるか。

 久しくタンクに乗ってないしこの機会に組んでみるのもありか?僚機がいる作戦なら四脚にグレネードを大量に積むのもありだな。時間があるしデカールも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ、キリがねぇ!」

 あれが噂に聞くLCとやらか。二人してふわふわ飛び回りやがって。

「うざってぇんだよ!」

 ミサイルでフレアと横への回避を誘発した隙に距離詰めて叩っ斬る!

 さらにクイックターンしてAB、ヴォルタに絡んでるやつを蹴っ飛ばす!

「ナイスだイグアス!」

 グレネードで派手にLCが吹っ飛ぶ。

「コード…78…!」

「あとは小物を片付けて終わりだ!とっとと掃討するぞ!」

 ヴォルタと歩調を合わせて突撃。

 !

 間一髪で物陰から突然飛び出してきたスタン弾をシールドで弾く。

「待ち構えてやがるな…!」

 MTがスタン弾をリロードしている隙にヴォルタが蹴散らした。

「突っ込むなよイグアス、奴ら遮蔽にガッツリ隠れてやがる!」

「一匹ずつ潰すぞ!」

 こっちも遮蔽で射線を切りつつ、袋叩きにされないよう慎重に陣を崩していく。焦れってえな。

 

 …

 

 

 

「敵性反応なし、今のが最後だ!」

「…だがこいつらなんだってわざわざこんな時間稼ぎみてぇな戦法を…?固まってグレネード集中砲火されてりゃこっちが突破されてたかもしれねぇのに。」

「んなこたどうだっていいだろヴォルタ、制圧は終わってんだよ。とっとと作戦本部に報告するぞ。…本部?」

『G4G5!!!!!』

 キーン。なんだってミシガンの野郎が…!?こいつの担当は事後処理じゃねえだろ!?

『そちらへ敵性反応が向かっている!!!おそらく増援、間もなく目視圏内だ!戦闘に備えろ!!!!!』

「ハァ!?聞いてねえよ!!!」

『冷静に対処しろ!!!反応と速度を分析するに恐らくHC型執行機!!!退却も視野に入れろ!!!!!』

 ガシャン!後ろから轟音!見ると鉄塔が倒れていく所だ。土煙の中に…

 

「コード23。排除執行する。」

 

「クソが…!」

 盾を構えつつリニアライフルをぶっ放す。

「現場の部隊は全滅している。敵はAC2機。コード44、排除対象の情報を。」

「ずいぶん余裕だな、システムの犬ごときが…!」

「…」

 無視かよ、食えねぇ連中だなクソ。

 さっきからシールドでまともに弾が入らねぇ。そのくせあいつのレーザーは俺のシールドじゃ防いでもかなり痛え。

 ヴォルタも大火力の武装をガンガンぶち込んではいるが、シールドを張ってない部分も装甲がバカみてぇに分厚い。

 ミサイルはどうにか避けられるが至近距離のレーザーが…受けきれねぇ…!

 

 ガァン!!!

 シールドが落ち、機体が一瞬制御を失う…!だがヴォルタのブーストキックのおかげで追撃は免れた。

「助かったぜ畜生!」

「まだだ避けろ!!!」

 レーザー連射を間一髪で避ける!

 機体OSの分析機能によるとやつのACS負荷はやっと半分、装甲に至っては少し凹んだぐらいだ。

「硬すぎだろ…!」

「引くかイグアス!?」

 回線切り替え。

『勝算はある。ブレードをどうにか当てられれば盾を干渉で破れると思うが…』

 なるべく敵にとって照準が速く動く向きにブーストを掛け、レーザーをギリ避ける。

『この調子じゃ切りかかった途端スクラップにされちまう。』

『了解したぜ!』

 ヴォルタが距離を詰め、ゼロ距離で武装をぶっ放しまくる!ブーストを使った位置取りで俺たち両方の攻撃が盾で受けられている。だが、それでいい。

『そうだ、話が早ぇ!続けろ!』

「…チッ」

 やつのシールドが光り輝く。それに合わせてヴォルタはQBで切り返し、シールドバッシュが空を切る!

 狙い通りだ。デカブツらしく突進の後は動きが一瞬止まる!

「多対一は初めてかぁ!?群れなきゃ何もできねえ犬っころが!!!」

 シールドごとパルスブレードでぶった斬る!動きが止まったところに蹴りを入れ、さらにライフルをチャージしてぶっ放す!

「…!」

 もう一発ぶった斬る前にブーストで抜けられる。

「読んでたぜぇ…!」

 ヴォルタのトップアタック!もろにショットガンが入る!

再びシールドが光る。

「焦ったな?」

 シールドバッシュをシールドで受ける!装甲がパルスで焼け、ACSに強い負荷がかかる。だが機体は動く!

 再びブレード!至近距離でレーザーを喰らって機体制御がまた落ちるが!

「ここだな!?」

 ヴォルタのアサルトアーマーがシールドをかき消す!

「『数的有利のアサルトアーマーは刺さる』、あいつの言う通りだな。」

「よくお前も『未来(コーラルリリース)で見た』を鵜呑みに出来るよな…。」

「そこはお互い様だろイグアス。」

 

「…余裕なのはどっちだ…?」

「「!」」

「舐めやがって…!なぜこの世界は秩序を乱す貴様らのような輩がヘラヘラしていられる…!?貴様らのような惑星開発系企業はいつもそうだ!何がベイラム経済圏だ!?何がアーキバス先進開発局だ!?貴様らはただの惑星規模の犯罪集団だ!クズどもが!粛清してくれる!!!」

「…ブチギレたな。」

「ブチギレちまったな。」

「貴様らのようなクズがいるために無辜の民が害を被る!!!排除!排除してやる!!!」

 オーバーヒートを顧みない粗雑な射撃を軽く躱す。

「マニュアル通りにいかなかったらすぐ癇癪か?これだからお役人様は嫌いなんだよ!」

「死ね!法の下に屈しろ!死ね!!!」

 もう話にならない。あいつはブーストの位置取りも忘れ、挟撃を食らい放題だ。

「殺す!!!殺してやる!!!企業もドーザーも傭兵も!皆殺しにしてやる!!!!!1人残らずだ!!!!!」

「死ぬのはてめぇだ。」

 隙だらけの背面をぶった斬る。あれだけ重厚だった装甲はすでに原型をとどめていない。勝ったな。

「ゔあああああああ!!!!!」

「なっ!?」

 レーザーのチャージショットが偶然シールドに当たって…左腕ごともぎ取られた!?

「がっ…!」

 機体が吹き飛んでコックピットの中で振り回される!

「イグアス!?なに油断してやがる!」

「畜生…!」

 ミサイルとリニアをぶち込む。さらにヴォルタからも重ねて攻撃が入った。

「まだだクズども…!俺はまだ…!!!…!」

 HCが青く光り、ぶっ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ…!」

 完全に有利だったのに、一発で機体が中破しやがった。ラッキーパンチを当てられた。ヴォルタとの共同作戦じゃなければ死んでた。

「結局機体性能だ…!HCにも負けないような機体の性能があれば…!」

 封鎖機構にも対抗できる、まあまあな重さでEN防御に優れてるパーツ…!それさえあればビーム一発で負けるなんてありえねぇ…!

 

 唐突な着信音。端末を確認すると…オールマインドからのメッセージ?

『識別名G5 イグアス。戦闘ログの送信に感謝します。ログハントプログラムに基づき、貴方に最適と考えられる、我々の開発部門のパーツを送付いたします。』

 …これは…。ACの腕部パーツ…。

『今後の貴方の活躍に。我々一同期待しております…。』

 その声は気のせいか…。合成音声にしては、感情が乗りすぎているようにも思えた。そう、何か思惑を伏せているような…。そんな感じがした。

「このパーツ…試して、みるか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?その腕マインドアルファか?それ近接適性低いからやめたほうがいいぞイグアス。」

「そうなのか?…あ、マジだ。元の腕に戻すか。サンキュー野良犬。」

 

 

 

 

 

 しばらくして。

「…識別名G5 イグアスが…我々のパーツを使っていない…。」

 その声は気のせいか、合成音声にしては感情が乗りすぎているような声だった。そう、何か悲壮感を漂わせているような。そんな感じの声だった。

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