ベイラム・インダストリー所属パイロット『G7 レイヴン』   作:チームマッチUNRANKED

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遅くなりすみません...。失踪しないように頑張ります。本当の本当に。


無人洋上都市制圧

 面倒ごと発生だ。

 

 ベリウスから傭兵雇用を続けているレッドによると、ミッションの斡旋時にノーザークに無価値な仕事ばかり斡旋していた大豊と、それに痺れを切らしたハンドラー・ウォルターが揉め、ついでに交渉も決裂したらしい。

 

 やらかした。数日前に"ノーザークを取り込むのは封鎖機構を潰してからでいいか"とか思ってた自分を近接適正158で殴りたい。

 ウォルターの猟犬と大豊のコネが無くなるのはワーム殺しの前(坑道破壊工作)、今までだってずっとそうだったのに。

 

 まあ、決裂してしまったものは仕方ない。今までの執行部隊殲滅のようにベイラム本社直々に重要ミッションを斡旋するよう働きかけるか、俺が個人的に雇うか、危険因子として潰してしまうか。

 

 現状差し迫った脅威にはならない相手だが、『選ばない奴とは敵にも味方にもなれない』。今のうちから対応を考えておくのが得策だろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やってきました、無人洋上都市ザイレム!

 

『不明な侵襲を確認 恒常化プロセスE』

 お、バレた。なかなか優秀な防衛システムだが、まだ詳細な位置はバレていないのは知っている。高みの見物としゃれこもうか。楽しんでおくれ、後輩殿。

 

 ここに来た目的は解放戦線の戦力の維持だ。万一ノーザークとエアがオールマインドと手を組んでいれば、それを察知したドルマヤンと彼らが交戦することになる。

 BAWS第二工廠のことを考えるとオールマインド側についてるようには思えないが、この世界は俺のベイラム移籍で今までと少し変わっている。俺とは違うルートでオールマインド入りしてるかもしれない。

 オールマインドの極秘作戦はこの時点だと案外外に漏れておらず、今の俺が彼らがオールマインドか判断することは出来ない。まあ、念の為だな。

 

 俺の時のオキーフ殺害がバレていたのは恐らく、当時オールマインドのリソースが逼迫した状況で、情報操作しきれなかったからだろう。

 ミッション行かずに呑気にアリーナとか高等傭兵試験とかしてたらそんな事してる場合じゃないって合成音声とは思えないぐらいのガチトーンで怒られたし。

 

 

 

 ECMフォグのおかげで身元バレの類はまずありえないが、今回も一応ベイラム所属には見えない機体構成で来ている。

アーキバスの四脚(VP-424)可変式肩レーザーキャノン(VE-60LCB)垂直プラズマミサイル(Vvc-70VPM)プラズマ機雷投射機(44-143 HMMR)重リニアライフル(LR-037 HARRIS)だ。腕はリニアライフルの命中率を重く見て、射撃武器適性の高いナハト(NACHTREIHER/46E)、頭部はECM対策のアンテナ頭(VE-44B)、コアは足りない装甲を補うアーキバス先進コア(VE-40A)だ。

 

 正直引き機体でありながら重量コアを装備していたりでコンセプトがちぐはぐで、お世辞にも優れているとは言えないアセンブルではある。

 機体名"ジャンクバスティオン"!オールマインドのスタッフには例のごとく無視を喰らった。まあしゃーない。オールマインドとは水面下では対立してるし。決して俺のネーミングセンスが悪いわけではない。そう信じることにした。

 

 でも1回ヨーヨー四脚乗ってみたかった。ドルマヤン程度ならこれで制圧できるだろ、BASHO一式ならプラズマ機雷投射機とレーザーキャノンのEN組の通りがいいはず。

 

 

 

 そんなどんぶり勘定をしながら、ザイレム北部へ向かってABを吹かす。ドルマヤンや封鎖機構が襲撃してくる方向だ。

 

 しばらくして、そこかしこから爆炎があがる。規模からしてザイレムの自爆ドローン(CD-E-086 AERIAL DEFENCE DRONE)だろう。ノーザークが吹っ飛んでないと良いが…

『恒常化プロセスB2 抗原機体投入』

 おっと。いらぬ心配だったか。

 さて、そろそろ封鎖機構かドルマヤンが襲撃してくる頃だ。こっちも仕事をする時間だな。

 

 ECMフォグの向こう側から封鎖機構の部隊が姿を現す。すかさず遮蔽に隠れ、スキャン。

 オレンジの光として表示される見えない波が広がり、周辺の機体を画面にマークしていく。

 

 次々と検知した機影がディスプレイに映し出されるが…ACは…見当たらない。ドルマヤンとやり合う必要は無いな。封鎖機構程度ならノーザーク1人で十分だろう。帰投するか。

 

 …待てよ?なんか…多くね…?

 リチャージしたスキャンを再度使用。

 

 …なんかエクドロモイ居る。しかも2機。ええ…。

 さしものノーザークと言えどもヘリにエクドロモイにおまけに狙撃型LCはまずい。捕捉されていない俺なら、戦闘した後逃げられるだろう。ECM下ならエクドロモイもどうにか撒ける相手だ。俺が少しでも削らなくては…。

 

 ノーザークと手を組むのは…いや。話が拗れる。ただでさえややこしいのにこれ以上面倒になるのはごめんだ。

手を組む…。…もしかして俺とノーザークが手を組む可能性を考えてあいつらがあんな大軍隊で?

 …俺がここに来たせいじゃん!!!余計責任持って潰さないとならなくなっちまった…。

 

 だが、やるしかない。フルチャージしたLCBをUNAWARE状態のエクドロモイプラズマライフル機にぶち込む!

「! コード15、損傷軽微。システムからの承認は既に降りている、排除執行せよ。」

 ACの戦闘システムによれば、やつの装甲は四分の一程度しか灼けていない。LCBでこれかよ…!

 

 すぐに激しいプラズマがエクドロモイのライフルから放たれ、放射状に広がる。根元は広がりきっておらず、当たりにくい!肩部にプラズマを少し喰らいつつも距離を詰め、プラズマ機雷投射機の射程に入る。

 本来なら引き四脚の投射機はこんなに積極的に振るものではない。しかし、エクドロモイ相手じゃ引き撃ちしても一瞬でアンテナ頭が奴の蹴りでひしゃげる結果になるだけだろう。追いが素早すぎて迎撃に使えないのだ。

 

 素早く2度投射機を打ち付ける。...なんか通りが悪い?あれ、ナハト腕部の近接適性が高くないのを差し引いても、記憶の限りエクドロモイは構造上EN攻撃が通りやすいはずでは...?

 アラート!

 ホバリングしながら後退!狙撃型LCのレーザービームが俺とエクドロモイの間をすり抜ける。LCの狙撃レーザーは意外にも予測射撃用のFCSは搭載されていない。その威力から脅威であることには変わりないが。

 

 一旦背を向け、AQBの連打で遮蔽に隠れ、体勢を立て直す。フォグ様様だ。

 オールマインドのパーツデータベースにアクセス。...『44-143 HMMR(プラズマ機雷投射機) 攻撃区分"実弾"』?実弾!?!?!?

 あんなにプラズマびりびりしてるのに?実弾?信じがたい...。

 

 

 

『ズドォン!』

 !? 戦闘音、それも強力なEN兵器の炸裂音だ!

 まさかノーザークが接敵したのか!?慌てて遮蔽から飛び出す。

 

 そこにいたのは全身銀色のAC...識別信号は「アリーナランク未登録 トランスクライバー(マインドβ)/ケイト・マークソン」!

 

 広域通信起動。

「オール...ケイト・マークソン、お前がなぜここに居る?」

「識別信号無し。貴方は何者... ッ!」

 トランスクライバーへヘリコプターのロケット弾。辛うじて盾で受けたようだ。今回もオールマインドのガレージを使ったのだが、俺の動向に興味が無いのか監視されておらず、こいつには身元がバレていないらしい。

「貴方について問い正したいところですが...その時間はないようです。」

「! 一時共闘でいいんだな?足を引っ張るなよ!」

 

 エクドロモイ近接機のレーザーパイル突撃を俺がギリギリ躱したのを皮切りに、再度戦闘が激化する!

 ケイトは初手KRSVフルチャージ。相変わらず敵を最速で倒すことしか考えていない戦い方だな。周囲を巻き込むプラズマがエクドロモイ二機に激しい衝撃を与える!

 俺はホバリングで距離を詰めつつ、プラズマライフル機を先ほどのように投射機で殴りつける!スタッガー!

 おっと、ヘリのミサイル!バックQBで躱す。俺は追撃が間に合わないが、まあいいでしょう。その為のケイト・マークソンです。

 

 近接推力任せに、身動きの取れないエクドロモイに向けてトランスクライバーが突っ込む。

 正面からダガーで斬り、機体を踏みつけ崩し、裏に回りつつさらに斬り付ける!ジョイントを使い人体で言うところの逆手にダガーを持ち替え...機体中央を刺突で貫く!見事なり...。

「何なんだ...こいつらは...!」

 背部の大型ブースターに誘爆したのだろう。エクドロモイが爆散する。

 

 

 

 

 

「続けましょう。」

「コード44、ここまでの戦闘データを送信する。情報照会を。」

 言いながらレーザーパイルを近接機が構える。ECMフォグ環境下での通信…ザイレムに有線通信システムでも敷いてるのか?

 そしてあれは突進刺突の予備動作だ。余裕をもって横にQBを

『ピーッピーッ!』

「うおっ!」

 側面からのレーザー狙撃!反射的に後ろにQBを吹かしたが、前後のQBではレーザーパイルは避け切れない...!

「なんちゃって。」

 武装シフトとアサルトブーストのレバーを同時に起動!アサルトアーマーで...

 

 あれ?機体がなんか前に進み始めてる?

 

『ガァン!』

スタッガー!?一瞬遅れてレーザーパイルに串刺しにされ、機体が持ち上げられているのだと理解する。

 

 …あ。

「エキスパンション...積み忘れた...!」

「...ハァ」

 オールマインド...いや、ケイトのあきれた溜息。1段階チャージのKRSVがエクドロモイの動作を一瞬衝撃で止める。

「すまん、助かった...っと!」

 四脚をブースターでぶん回し、エクドロモイを蹴り飛ばす!さらにLCBで砲撃!

「畜生...!」

 近接機も続けて爆散。残りはヘリと狙撃LCの分隊だ。

「私は狙撃型LCの排除を。」

「それがいい。ヘリは任せろ。」

 流石パーツ販売をやっているだけある、俺の機体構成を見て機動力が必要な狙撃機排除は不適と判断したらしいな。

 カスみたいな試験機をベイラムに売りつけてる割にアセンブルの理解度は高いようだ。分かったうえであのふざけた機体を売りつけているのか?企業相手のサービスは"傭兵支援"の主題から外れるしな。

 

 ホバリングでロケット弾を軽くかわしつつそんなことを思う。

 ...あぶねっ、ヘリにつられてECMフォグの有効範囲からはみ出しそうになった。確か近くの沿岸部ではシュナイダー主導の拠点襲撃作戦が行われている。フォグから出てドンパチすれば何かと面倒なことになるだろう。

 なんで非正式ミッションでまで作戦領域に悩まされなきゃならんのだ。怒りのフルチャージLCBが命中!

 

 しばらく射撃戦が続く。弾を軽くかわしながら、重リニアライフルや垂直プラズマミサイルを撃ち込み続ける。引き撃ち機の黄金パターンだ。

 いつまでも俺に弾が当たらないのに業を煮やしたのか、ヘリがミサイルやマシンガンを放ちながら、かなりの推力でこちらへ距離を詰めてくる。もう少しで投射機の射程に入る。四脚の姿勢安定もあることだ、正面から受け止めてやろう!

 投射機をチャージし、機体の前で振り回す!弾を弾き、被害を抑える。射程に入った!

 投射機のチャージをキャンセル!投射機のチャージは使い辛すぎるからな、通常攻撃で叩き落す!

 思いっきり勢いをつけ、投射機を叩きつける!叩きつける!

 ヘリがザイレムのメインコントロールビルへ墜落し...ド派手に爆散!

 

 ミッションコンプリート!勢いあまって全滅させてしまったが、まあ誤差だろう。まあ。

 ...ん?メインコントロールビル...?

 

 

 

 ...カメラ越しにECM制御装置に乗ってくるくるしている(何やってんだアイツ)"ヤツ"と目が...というよりカメラアイ(FINDER EYE)が合う。

「...ノーザーク...!」

 ECMフォグが少しずつ晴れて行く。

 

 遠くからトランスクライバーが飛んでくるのが見える。

「所属不明機体。射撃型LCは排除しました。おや、そちらの識別信号は...」

 水を切るように着地。

「お会いできて光栄です、識別名"ノーザーク"。私はケイト・マークソン。貴方を追跡する封鎖機構の部隊は我々が排除しました。」

「...」

 ノーザークは喋らない。先代...「ハウンズ」は第四世代強化人間だけで構成された部隊だと、ウォルターから聞いたことがある。こいつも俺やハウンズと同じ第四世代の失敗作で、手術以降の活動歴が浅いために、十分なコミュニケーション能力を取り戻すに至っていないのだろうか。

 

「...目的は果たしました。所属不明機体。貴方の素性はもはや問題ではありません、帰投させていただきます。ではまた縁があれば、ノーザーク、不明機体。」

 トランスクライバーは飛び去って行く。まさかあいつノーザークに恩を売るためだけにここまでケイトを飛ばしてきたのか...?この世界ではリリース計画の協力パイロットは現時点でオキーフしかいないはず、あいつなりに味方を増やそうとしての行動だとすると...?

 

 しばらく考え込んでいると。

「...お前...何者だ...?」

 ノーザークが発話する。話せるのか。だがこれ以上こじれると面倒だ。

「名乗るほどのものじゃない!!!じゃあな!!!!!」

 AB!

「...待て。」

 アラート!

 磁力で急加速され、衝撃波まで生む速度の弾丸をAQBでギリギリ回避する。

「何するんだよ!」

「『観測データ奪取』..."俺ら"のこと嗅ぎまわってたよな...お前。」

「っ!?」

 戦闘しつつ考えを巡らせるが...バレる原因は一つも思い当たらない。なんなら今は身分を隠している。一体どこで...?

『ーーー。』

「ぐっ!?!?!?」

 唐突に激しい耳鳴りに襲われる!

「ぐあっ!」

 続いて激しい衝撃!攻撃を受けた!?耳鳴りで頭が...周囲の情報を上手く拾えない...!

 脳の、強化人間の全リソースをディスプレイに集中する。先ほどまでスキャンにすらかからなかったザイレムの防衛兵器たちにも取り囲まれている。新しく起動したのか...!?理解が...追いつかない...!

 

「そこまでだ。」

 突然、攻撃と耳鳴りが止む。この声は...

「この機体の排除は"友人"からの依頼にはない。向こうは敵対意思もないようだ。」

「ウォルター...!」

 思わず呼ぶ。

「...!そういう...ことか...!」

 バレたか...だがこの状況でバレるなら、「ウォルターへの陰ながらの恩返し」ともとれる。不幸中の幸いと言ったところか。

「...?」

 ノーザークはことを理解できていないらしい。理解できていたらそれはそれで大問題だが。

「635。仕事は終わりだ。」

 ノーザークは飛来した輸送ヘリにACごと回収され、退却していった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外部とはかなり距離のあるザイレムの中央部で戦闘したからか、幸運にもシュナイダーには検知されなかった。

 ケイトからの注目を浴びた以上、オールマインドのガレージにこの機体で乗り付ける訳にもいかない。機体はザイレムの沖合に沈めた。さらばマイCOAM...(泣)

 

 

 

 あの耳鳴り。原因不明の防衛兵器の起動。大豊からの『観測データ奪取』への俺の参加希望、という機密の漏洩。

 間違いない、エアだ。あの耳鳴りの中ではまともに戦うことはできないだろう。ハッキングによる環境利用も、無視できない脅威だ。敵対したら俺一人で始末できるという腹積もりでいたが...。大きすぎる...修正が必要だ...。

 時間をかけすぎれば、最終的にはエアがエコーやアイビスシリーズを見つけてしまう可能性にも思い至った。ノーザークの排除がややこしくなったな...。

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