ベイラム・インダストリー所属パイロット『G7 レイヴン』 作:チームマッチUNRANKED
ベイラム・アーキバス連名の惑星封鎖機構に対する同時襲撃作戦、その決行直前。
俺はアーキバスが襲撃する予定の主力封鎖拠点のうちの一つ、そこから数キロメートルの岩陰にACを駐機し、待機していた。
今回の目的はワーム殺しの裏でアーキバスの封鎖兵器鹵獲を可能な限り阻止し、戦況をベイラム、解放戦線有利に傾けること。ヴェスパー隊長を潰せばAC1機で戦況レベルの影響を与えることだって可能だ。
…侵攻側である星外企業をギリギリまで痛めつけてバランスをうまく保てば、アーキバスも含めた和解も狙えるのでは?
ハードルは極めて高いが、余裕があれば狙ってみたいところだ。アーキバスのような大規模経済圏がルビコンに平和的に参入すれば、コーラル技術はより早く発展し、破綻の阻止も多少容易になるだろう。
さて。そろそろ開始時刻だが… …!?
狙撃地点のほうから凄まじい光が発せられ、辺りが日の出のように照らされる。
始まった!そういやここはアイスワームへの攻撃ポイントよりオーバードレールキャノンに近かったな。
と同時に炸裂音!こっちも始まったか!
強化人間メインシステムの戦闘モードを起動!出撃する!
機体名「Libra」。意味は"天秤"。パワーバランスを整えるこの襲撃にちなんでのネーミングだ。ちょっとドルマヤンと被るが、それはもう仕方ない。
封鎖機構っていうのは総じて実弾防御が緩い。アーキバスフレームを頻繁に採用するヴェスパー部隊もだ。
というわけで実弾をバリバリに使用するACでやってきた。
両腕に
左肩に我らが決戦兵器
そしてだ。フレームを腕以外全部MIND ALPHAにして、色は全体シルバーに翡翠色のDEVICEにしてある。ちょっとした嫌がらせだ。
腕部はフーベンダブルトリガーをどうにか使うための反動制御、腕部積載とダブルトラブルを振るうための近接適性を考え、MELANDERにした。ベイラムのフレームはやはり至高だ。
…この機体には一つ、極めて致命的な欠点が存在している。
高価なパーツばかり使用しているために、この前のように乗り捨てることになれば…考えたくもない!ああ、恐ろしい…。だから恐ろしい…。
ライセンス失効済木っ端独立傭兵の識別を残骸から頂戴して、ガチャガチャいじって偽装もしたし、変装もしているからオールマインドにバレる心配は少ないだろう。せいぜい「あの木っ端傭兵、生きていたのか」で終わりだ。
そのためにわざわざ管理システムの目に留まらなさそうな、僻地のオールマインドガレージまで行ったんだ。
到着した。状況は…中央でHCをアーキバスがMTやドローンで包囲している。ただ次々MTが蹴散らされているし、均衡は長くは持たないと思っておこう。
奥からはレーザーショットガンの弾が打ち上げられているのが見えた。
ルビコンであれを使うのはACとGHOSTだけ、それも未カスタムなら、GHOSTのアルゴリズムはあれをあまり撃ちたがらない。アーキバスのACがいると見るのが妥当だろう。
とりあえずHCの方に突っ込んで、共倒れさせてしまおう。交戦地の直上でブーストを切って落下。
「AC!識別は…"トーマス・カーク"?コード44!企業の傭兵か?」
無言のままガトリングをぶっ放す。
「ぐっ!?うっとうしい!」
パルスキャノンと周りのBAWS二脚MTの射撃を躱しつつ、なおも撃ち込み続ける。
スタッガー!
ACと比べて、HCのACSは高速連射可能な武器への対応力が低い。
アラート!狙撃型LCのレーザーをバックQBで躱す。
ここからDOUBLETROUBLEは…間に合わないか。ガトリングを撃ち込み続ける。
「チッ、孤立しすぎたか…!一度本隊まで戻る!」
MTの大群とACを単機で相手取るのは流石に面倒くさかったのか、ある程度装甲を凹ませたところで逃げられた。おー、すげー推力。爆導索が振り切られてしまった。あのジェネレーターAC用に欲しいな…。
アーキバスのドローンやヘリが追っていったが、あんなおもちゃじゃHCに一瞬で鉄くずにされて終わりだろう。
「さて。」
クイックターン。掃射。
テンポよくMTを蜂の巣にしていく。
「こいつ!ACでここまでやるのか!?」
「怯むな!名の知れたやつでもない!囲んで叩け!」
おお、無名時代に何度も聞いた通信だ。なんかノスタルジックな気持ちになってきた…。まあ、戻るたびに無名になるから何度も聞いたようなものなのだが。
それはそれとしてほぼ最高効率でやつらを鉄くずにしていく。
さっきから狙撃型LCが地味にうざったい。とっとと向こうを処理しに行きたい、こいつらにあまり時間は掛けたくないな。
「こちら南西地区!独立傭兵の襲撃に対処しきれない!増援を!」
お、これさっきのACが飛んでくるんじゃないか?手間が省けたな。砲台と狙撃型まみれの封鎖拠点を突っ切るのも面倒だし。
「独立傭兵だと…?この作戦を知っているということは…解放戦線ではない?私自ら捕らえて依頼主を吐かせてやろう!」
このねっとりとした声は…スウィンバーンか。通信の識別もそれを示している。だが、スウィンバーンがレーザーショットガン…?もう一機いるのか?
ここにいるのは「壁」がベイラムの手中にあるからか。「壁」襲撃に投入されてないところを見ると、アーキバス的には「壁」はもういいらしい。向こうの頭の悪い上層部は、うちの無能な上層部よりは頭がいいようだ。
そりゃそうだ。
今頃、事態が呑み込めてきた封鎖機構は各地で猛反撃をしていることだろう。「壁」のナイルたちが煽りを食らってなきゃいいが。
「あれが襲撃者か…!粛清する!突撃するぞ!」
来た。ガイダンスだ…が…それともう一機…?
「キング…その口ぶり…友達無くすよ…。」
狙撃型LCを吹っ飛ばしつつ、アンバーオックスが現れる!シャルトルーズ!?生きていたのか!?いや、それより"キング"と言ったか?声に生気もない。
うちの総長とあいつが交戦したのはアーキバスの拠点でだったよな。その場のノリでアーキバスに入社でもしたのか?…んなわけないか。
アラート音!
「っ!」
MAJESTICで現実に引き戻される。考えるのはあとだ、まずは現状を打破しなくては。
ガイダンスには盾がある、落とすのは面倒だ。アンバーオックスの火力は軽視できない。決めた。シャルトルーズから落とす!
「さしずめ漁夫の利を狙いに来たジャンク屋といったところか…?場を引っ掻き回す卑劣な不法者には指導が必要だな!」
粗雑なスタンバトンの振りを軽く躱し、ABの速度を乗せたガトリングをぶちこみながらシャルトルーズに迫る。
「迎え撃つよ…キング…。」
殺意を読んでLRBを躱す。
直後に横QB!LRBをギリギリで躱す。アンバーオックスのFCSは、オールマインドのデータベースによればアーキバス先開の中遠距離モデル。至近距離のアシスト適性は並、密着状態からでも射撃を避けられないことはない!
スウィンバーンとシャルトルーズ、2人の
さらにDOUBLETROUBLEのチャージを開始。
アンバーオックスの装甲をチェーンソー1度で落としきれるか?
複数ACでの作戦らしいし、アーキバスと言えども物資の都合上一機あたりに配分されるリペアキットは少なくなってると思うが…それでも耐えてリペアを使われると辛い。ホバータンクだってタンクだ。装甲はほどほどにある。
…まあいい、耐えられてから考えりゃいいんだ!
右手のガトリングをゼロ距離でフルバースト!スタッガー!
面で展開したチェーンソーを押し当てる!
「させるかぁっ!」
「ぐあっ?!」
背中にスタンバトンのコアロッドを突き刺された。
慌ててバックQBでアンバーオックスから距離を離す。強制放電中に見つめ合って死んだらたまったもんじゃない!
紙一重で強制放電の硬直明けに飛んできたイヤーショットを躱す。セーフ!
「二人とも…先に行っちゃうとはね…立て直すのは…辛いな…。」
悲壮さが漂う声でうわごとのように通信につぶやきを乗せている。2人…ブランチのキングと『レイヴン』のことか?なぜ脈絡もなくこんな話を…。
! アーキバスについているってことはまさか…
「…ナニカサレタのか…。」
この様子。アーキバスに洗脳されてHAL826に乗ったウォルターに近い。何度も見てきた。何度も…
「うっ…。」
気分が悪くなり、えづく。と同時に、頭に血が上っていくのを感じる。
「ふざけるなよ…!アーキバス…!」
余計なトラブルを避けるために通信は切っているが。それでもなお叫ばずにいられない。
ウォルターとは何度も対峙したから、再教育や、ファクトリーで部品化を受けた人間を前にしても冷静でいられると思っていた。
でも違った。
許せない。理屈より先に感情が出る。冷静な俺が、金で人を殺すのと何が違う?と囁く声も耳に入らない。
アーキバスはダメだ。
アーキバスは俺の未来にはいらない。
アーキバス経済圏と手を組むだなんてまっぴら御免だ。
殺す。
スウィンバーンにAB。カウンターの蹴りを受けるが、硬直をパルスプロテクション展開で押し戻す。これでシャルトルーズは手を出せない。
ガトリングを撃つ。盾ごとすり潰す。
「く、来るな!シャルトルーズ!援護を頼む!」
叫びながらスタンバトンを振り回してくるが、QBで背面に回り込み連撃を空振らせる。
「もう遅い。」
スタッガー。チェーンソー。
「待っ!待て!話を…!」
目の前でパルスが光る。パルスアーマー?遅い。振り抜く。
「おあーっ?!」
吹き飛んで、弾け飛ぶ。
次だ。
PPを捨て、再度シャルトルーズに突撃。
!
アラート!ABを中断して避ける。攻撃者は…封鎖機構のHCか。
シャルトルーズはあの様子じゃ優先順位も分かっていないだろう。スウィンバーン亡き今、彼女単独で封鎖兵器の鹵獲ができるはずがない。封鎖機構とぶつけて利用させてもらおう。
ガトリングの装弾数に不安がある。俺は一度引くか。
主戦場から封鎖機構側に少し進み、端末を起動して飛行ルートを指定、そして事前に手配した補給を要請。
これで待機していれば補給シェルパが飛んでくるはずだ。
待ち時間にレッドガンの端末を起動。位置情報がバレることはない。ルビコンに全球測位衛星なんて派手に打ち上げても、衛星砲でドッカーンだからな。
各地の戦況はどんなもんか…。
!
『レッドガン部隊の作戦行動中、アーキバス系列と思わしきACからの襲撃を受けた』?
この動きは今までは無かったはず。
今のアーキバスにベイラムを叩くメリットはほぼ無い。敵対勢力を叩くより封鎖兵器を取り込んで戦力増強を図るほうが圧倒的に有利だからだ。では誰が…?
補給シェルパが到着した。リペアと弾薬を素早く積み込み、再度戦闘モードを起動する。
ここで出来ることはもうない。
記憶が正しければ、近くに他のアーキバスが襲撃している中規模封鎖拠点があるはず。そちらにも介入するのがベストだろう。
いや、"襲撃してきたアーキバスらしき機体"とやらを制圧しに行くのもありか?
…とにかく動かないと始まらないな。機体を立たせる。
ABを起動す…待て、様子がおかしい。
あの光…こちらへ向かっている?尋常ではない推力だが。
それが止まったかと思うと、上空でそれから大量のミサイルが放たれ、向こうに降り注ぐ。
あのミサイルは…
「…バルテウスか!」
『ガッ!』
「うおっ!?」
機体が吹き飛ばされた!?
一瞬遅れて、攻撃を受けたことに気付く。
背後からUNAWARE状態への奇襲!?相手は…
オープンフェイス!?なんで…!?
厄介事が2つ。なぜバルテウスが飛んできた?なぜアイスワーム排除に向かったはずのスネイルがここにいる?
まあいい、身体に聞くことにしましょう。
オープンフェイスに向かってABを…起動!