ベイラム・インダストリー所属パイロット『G7 レイヴン』   作:チームマッチUNRANKED

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Chapter4
交渉


 ラストチャンスだ。解放戦線に入りこまなくては。

 

 同時襲撃作戦中のアーキバス系列ACからの攻撃インシデントを受け、ベイラムは向こうの言い分を聞かず裏切りを受けたと判断した。停戦の正式終了を待たずして、明日にも抜け駆け的にウォッチポイント・アルファへの突入作戦を開始する。

 かなり急いでいるな…。おそらくそのアーキバス系列ACはあのスネイルのように偽物だと思うが、それを指摘すれば知っていたことについて詰められるだろう。これ以上ボロを出せば俺への疑念が確信に変わってしまう…。

 

 ここを逃せば、解放戦線とのパイプを構築できないままにコーラル争奪戦の最終局面にまでもつれ込んでしまうことになる。

 全部終わってから「俺は解放戦線側だ!」とか言い出しても相手にしてもらえないだろう。

 多少強引に行くとするか。

 

 ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 着地で破損した輸送用コンテナの蓋を蹴り破る。

 ベリウスに帰ってきた。時間もないしやっぱりカーゴランチャーを使うのが…

「うっぷ」

 …帰りは別の手段にしよう。ベリウスから中央氷原のランチャーを使うにはカーラの助けも必要だし。

 

 

 

 

 

「防壁が超えられた!ACだ!!!」

「き、奇襲!識別は…"G7 レイヴン"!」

「何!?レッドガンの番号付きは「壁」と中央氷原で手一杯のはずでは!?」

 ACで殴り込み。もっともシンプルでもっともスマートで、もっともベイラム的なやり方だ。相手を交渉のテーブルに着かせるには、自分の力を誇示する必要がある、ってな。

「こちらG7レイヴン!解放戦線各位、俺に交戦の意思はない!上の人間と話をさせろ!」

「ふざけるな!企業の犬が!くたばれェェェ!!!」

 四脚MTのブレードを躱し、やつの足元にマニュアルスタンニードルランチャーをぶち込む!

「き、機体制御が…!」

「もう一度言う!俺に交戦の意思はない!」

 

 通信が大混乱している。

「クソッ!なんで企業の精鋭がっ…!」

「大人しく師父を呼ぶしか…!」

「馬鹿者!師父を危険に晒す気か!?俺たちが時間を稼ぐんだ!」

 

「道理を失い久しき不義の徒よ…!」

 この声は…!スキャンを起動。上空!

「今こそ同志ツィイーの恩義に報いる時なり!三途の渡しの六文銭!しかと受け取れい!」

 独立傭兵のエントリーだ。六文銭は実際軽視できない。

「待て六文銭!お前と戦ってる場合じゃない!」

「弱きを食み富むルビコンの蟲よ!問答無用!」

「何言ってるか分からねえよ!!!!!」

 

 ブーストキックを横QBで回避!仕方ない、交戦開始!

 機体名「Hawk wing/SNA」。MELANDER C3を基調にしたHawk wingをリビルド。MA-J-200 RANSETSU-RF(ランセツ)MG-014 LUDLOW(ルドロー)BML-G2/P03MLT-06(6連装ミサイル)で動きを止めた相手を、オールマインドでこっそり仕入れたVE-60SNA(スタンニードルランチャー)で殺さずして完全無力化する。

 フレームは単独行動向けに重装化してある。

 

 慣性で進むシノビと交差して距離を取りつつ、スタンニードルランチャー!

「むんッ!」

 強制放電の硬直をパルスアーマーの強制機体制御で踏み倒される。問題ない。前QBで踏み込み、アサルトアーマー!スタッガー!

 そして蹴りを入れて距離を離し、中距離の撃ち合いに持ち込む。ランセツARを小さく跳躍しながらのステップで回避し、シノビのACS負荷が溜まってきたところでAB!迎撃の投射機はABの対ショック姿勢制御で受け、強行突破。射撃で再度スタッガー!

 

「マズいぞ!六文銭さんがやられる!」

「こうなりゃヤケだ!突っ込め!」

「遅い!」

 スタンニードルをぶっ刺す!

 シノビが膝をつき、崩れ落ちる。

「六文銭の野郎が…一瞬で…!」

「ルビコンに巣食う蟲よ…!コーラルと共にあれい…!」

「殺さないぞ。」

「…何…?情けを受けてのうのうと生きるなぞ」

「情けだとかそういうのじゃなくて。最初っからこっちは戦う気がないんだよ。」

 

 機体を、あまりの急展開に脳の処理が追いついてしないらしい兵士たちのMTに向ける。

「ほらほら、俺は強いぞー。アストヒク引っ張り出してこないと全滅するぞー。」

 パニックを起こしたらしい数機が中央部に向けて離脱していった。

「あっ!敵前逃亡だぞ!貴様ら!おい!」

 ドルマヤンがちゃんと来るかは別として、これで上に緊急事態が起きていることは伝わるだろう。

 

「六文銭。お前も警句の意味、知ってるだろ?俺はあれに同調してるんだ。頼むから上と話をさせてくれ。」

「」

 ダメだ、こりゃ通信機能壊しちったな。ウカツ。

 

 

 

 ! 真紅の炎を噴射するACが飛んでくる。あれはコーラル内燃型ジェネレーターの…!早すぎだろ…!

「師父!?なぜここに!」

「師父!ことあるごとに飛び出してくるのをやめてください!あなたはトップなんですよ!?」

「師父!お戻りを!出しゃばって来ないでください!!!」

 …酷い言われようだ。まあ、妥当か。ベイラムに一度捕虜に取られても突撃癖が直らないんだもんな、彼らにとっちゃいい迷惑だ。

 アストヒクが、目の前にドッスンと着地する。

 

 気に食わなかったら叩き潰せばいい。そんな殺気をひしひしと感じる。ここから先の言葉選びには気をつけたほうがよさそうだ。

「はじめまして、俺はベイラム・インダストリーレッドガン部隊所属のACパイロット、G7 レイヴンだ。『コーラルよ ルビコンと共にあれ』。」

「チッ、こいつ俺たちを馬鹿にしてるんじゃないのか?」

「静かにしていろ。…レイヴンと言ったか。外の企業のお前が、その警句の何を」

「『コーラルよ ルビコンの内にあれ』、」

「…!」

「『その賽は 投げるべからず』。だったよな?サム・ドルマヤン。」

「お前…、それをどこで…。」

 

 よし、掴んだ。今回はなんと理論武装もしてある。ジェイルブレイクレベルの理論武装をだが。

「あんた、アイビスの火の前によく随想録を書いていただろう?アイビスの火で散逸したあれに、個人的に共鳴しているんだ。コーラルとルビコンのことは、俺も正しく理解しているつもりだ。」

 …実際にはこのままだとどうなるかをこの目で見てきたんだがな。そんな言葉を飲み込む。

「………。」

どうだ?

 

「話を聞く価値はあるようだ。言ってみるがいい、レイヴン。」

 よしよしよしよしよし!!!!!おっと、はしゃぎすぎた。一度大きく深呼吸をする。

「フゥー…。単刀直入に言う。最終的に、ベイラムと和解してくれ。」

 

 様々な声が一瞬で場を包む。怒り、混乱、怨嗟…。

「企業と和解だと…!?ふざけるのも大概にしろよ、侵略者が…!!!」

「…何故俺たちと侵略企業が手を組む必要がある?企業が骨の一片まで無くなるまで討ち滅ぼせばいいだろう。」

「…チッ。」

「ベイラムの連中には何人も殺された!!!俺のダチもだ!!!受け入れがたい!!!!!」

 

「…それによって我々はどんなメリットを受けられる?お前にどんなメリットがある?」

 うーん、バスキュラープラント延伸の説明が難しいな…こっちもちゃんと考えてくればよかった。

「技研がいろいろやった結果、"破綻"を引き起こしそうになってアイビスの火を引き起こすことになった。これは知っているな?」

「…。」

「燃え残ったバスキュラープラントは集積コーラルの密度を高め、増殖を促進している。2度目の破綻は近い。」

 反応を伺う。ドルマヤンは黙ったままだ。下っ端も静観している。ゴーサインを待っているのだろうか?

 

「しかしだ。火を点けるのも賽を投げるのも、俺や企業の望むところじゃない。火を点ければコーラルもろともルビコンは灰になり、賽を投げれば人間世界の悲惨が待つ。かと言って、コーラルは人知を越えている。企業が好き勝手にコーラルを弄り回せば、破綻を制御できるようになる前に技研の二の轍を踏むことになるだろう。」

「話の繋がりが見えん。」

「ここからが本題だ!!!」

「!?」ビクッ

「ちょっ!そこのMT!驚かせたのは悪かったからブレードを下ろせ!!!」

 

 咳払いをする。

「要するに、解放戦線には我々企業の無茶なコーラル研究を抑える「安全弁」になってもらいたい。そのためなら俺個人による解放戦線への間接支援は惜しまない。歴戦の勇士を味方に引き入れるチャンスだ。悪い話ではないと思うが?」

「なるほど、企業への敵対方法を少し変えるだけでランク1が味方に…と言うのだな。だが、それはお前が内部からアプローチすれば済む話なのではないか?」

「俺は戦闘なら得意だが、発言力は肩書き通り正規番号の末席でな…。」

「もう一つ。安全弁とは言うが、今の解放戦線に2つの星外企業を御しきれるはずがないだろう。そこを、どうしようというのだ?」

「そこは問題ない。アーキバスは潰すからだ。一対一で表面上でも一度和解という形をとれば、パワーバランスが大きく傾かない限り、解放戦線への攻撃にはリスクに見合うリターンが無くなる。()()()の言う通り、恵みは尽きない。分け合いに合意することだってそう難しくはないだろう。」

「!」

 

 悩んでいるご様子。そりゃそうだ。解放戦線全体に関わることだ。むしろ、即断即決されたらドルマヤンが所詮はドーザーだったと切り捨てざるを得ない。

「…検討ぐらいはしよう。この話は持ち帰る。」

 よし。及第点だ。解放戦線の内部では慎重派が一段と圧力を増しているはずだが、ドルマヤン直々ともなれば流石に…な。

 

 

 

「感謝するぞ、サム・ドルマヤン。また」

 アラート音!

「…ッ!!!」

 すんでのところでQBが間に合う!プラズマが地面を走り、装甲を微かに焼かれる。

 クイックターン!

「…オールマインド…!」

「… ……。」

 トランスクライバーにゴースト、アーキバス系列ACが並んで立っている。クソ、ここの警備部隊は俺にかかりっきりだったからな…!

「ドルマヤン!こいつらはコーラルリリースを目論んでる勢力だ!潰すぞ!」

「構わぬが…何故分かるのだ…?…いや…セリアのような…。追求はしまい。MT部隊!迎撃せよ!!!」

 エアが居るんだと勝手に納得したらしい。面倒くさいからそれでいいや。

 

 

 

 オールマインド的に、アーキバスだけが本来より大きく消耗している自体は看過できなかったらしいな。だがなんと間の悪い、オールマインド直々に俺が解放戦線と繋がってるところを見られてしまった。

 最悪ほうぼうで偽名義で大暴れしてたのがバレたり、ここでの情報をベイラムにバラすぞとか脅迫されるかもしれない。本部に情報を送る前にぶっ潰させてもらおう。

 

 突撃!トランスクライバーにブーストキックして防壁から叩き落とす!分断だ。

「ドルマヤン!もろもろ任せたぞ!!!」

「… …………」

 ルビコン解放戦線基地から離れつつ、そのまま撃ち合いを始める。ゴーストとヴェスパーデッドコピーどもは向こうでどうにかしてもらおう。

 

「あれを見られたからには生きて帰すわけには行かねーなぁ!まあ、お前が生きてるかは知らないが!」

「…… …」

 話す気はない、か。ここで消すやつに何を語っても無駄ってところか?

 KRSVのフルチャージを回避しつつ、カウンターのスタンニードルランチャー!強制放電したところにキックを合わせる!スタッガー!ランセツのチャージバースト射撃は…パルスアーマーで防がれたか。

 キックで距離が離れたため、アサルトアーマーは届かない。ダガーを警戒し、一度ABで大きく距離を離す。仕切り直しだ。

 

 機体を左右に細かくステップさせ、FCSの予測射撃を外しつつ引き撃ちを続ける。時々ORBT(レーザーオービット)が掠るが、大した損傷にはなっていない。プラズマライフルモードのカラサヴァは、弾速が速くないせいで明後日の方向に飛び続けている。

 しびれを切らしたらしきオールマインドがABを起動した。右手にはエネルギーが迸るカラサヴァ。ゼロ距離フルチャージとダガーで強引な大ダメージを狙うつもりらしいが、

「甘い!」

 AB体勢に入ると同時に最速でキック!硬直したところにランセツのチャージバースト!

「……… …」

 スタッガーまであと一息だが、カラサヴァフルチャージをいなしつつスタッガーを取れる手札は…。…あれがあった!

 アラート!カウンターのゼロ距離フルチャージカラサヴァだ!

「しゃらくせぇ!アサルトアーマー!!!」

 パルスの奔流がマルチENのエネルギーとぶつかり合い、呑み込む!さらにその波はトランスクライバーをも包み…スタッガー!

「お前はすっこんでろ!オールマインドぉぉぉ!」

 スタンニードルがコアに深々と突き刺さり、放電!!!

「……… ………」

 マインドβは制御を失い、崩れ落ち、爆ぜた。

 

 

 

 撃破を確認したらすぐにクイックターン、武装オールパージ、そしてアサルトブーストを起動しつつ無理やりメインシステムの戦闘モードを解除!!!全速力で襲撃前に手配した輸送業者の指定ポイントまでかっ飛ばす!!!

 間に合え!!!!!

 

 

 

 

 

 結局時間ギリギリで間に合い、無事に再度氷原入りすることに成功した。日帰りで中央氷原とベリウスを往復…、弾丸旅行どころかハリスチャージショット旅行だ。

 幸いにもスタンニードルランチャーを俺が持っていることはベイラムに知られていないため、安価な武装を3つ買いなおすだけで「周辺の地形調査の過程で武装をすべて破棄しました」と言う必要がなくなった。不審ってレベルじゃない…。

 

 あとはドルマヤンが俺をどう扱うか、だな。具体的な話が何もできてないままだ。通ったとして、この調子で解放戦線と連携が取れるものか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"トランスクライバー"部隊まで反応がロスト…。あの規模の拠点ならAC分隊で落とせる目算だったが…。サム・ドルマヤンの我々が持つ戦闘データとの乖離か、或いは…『イレギュラー』の介入。」

 暗号回線に、何者かが接続したことを表すシステム音が響く。

「望みの物はこれか?」

「これは…。」

 

 送信されたアーキバス四脚MT部隊の通信ログからは、『登録番号Rb18 識別名"トーマスカーク"』によって壊滅的被害を受けたことが読み取れる。

 記録画像には未登録機体の姿。登録傭兵利用記録を照合…Rb18…ライセンス失効済み…2日前のルビコン共通時03:52に画像と87%の確度で一致するパーツを中央氷原東第八臨時オールマインドガレージで購入、アセンブル…。

 詳細戦闘ログ欠落…戦況から推測…AAP07: BALTEUSを撃破…?推定:アリーナランク換算C上位以上の脅威。"トーマス・カーク"とは一致しない。

 オールマインドデータベースより、当該ACと一致する戦闘タイプのデータをマッチング…一致なし。ルビコン星外パイロットのデータに範囲拡大…一致なし。ログハントシステムで収集したアリーナ未登録ACパイロットとのバトルログを照合…一致なし。

 強化人間パイロット特有の再アセンブルによる出撃…?アセンブル変更直後は、強化人間でも操縦能力の有意な低下が確認されている。だとすればより高いランクの強化人間による、アセンブル変更を合わせた身分偽装。修正。推定:アリーナランク換算A上位〜特例上位ランカー。

 

「該当/該当可能性存在パイロット…6名。"シャルトルーズ"。"キング"。"G1 ミシガン"。"G7 レイヴン"。オリジナルの"レイヴン"。そして、未捕捉のCパルス変異波形…。」

「独立傭兵達はまず身分を隠す必要がない。その上、シャルトルーズは死んでいるはずだ。アーキバスと封鎖機構を襲うメリットがあるのは…レッドガン2人だな。他は動機が薄い。変異波形に至ってはACを動かせるかさえまだ分かってないんだろう?」

「はい。G1 ミシガンが直接出向くのは組織にとって明らかに悪手。残った可能性は…」

 

「「G7 レイヴン」」

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