ベイラム・インダストリー所属パイロット『G7 レイヴン』 作:チームマッチUNRANKED
呼吸を整え、レバーを引く。
『メインシステム 戦闘モード起動』
ウォッチポイント・アルファ深度1。複合砲台ネペンテスにより、ベイラムレッドガンの主力部隊が壊滅的被害を受ける場所だ。
ウォッチポイント・アルファ突入の決定に伴い、上層部に重要度が低いと判断されたベリウスの拠点は、最低限の戦力を残して全て引き払ってきたそうだ。もちろん「壁」の防衛メンバーも。
今回の突入ACにはイグアス、レッド、俺が選出されている。今まで通りだったら俺ではなく五花海が起用されるはずだが、上位番号を捨て駒にするのはさすがに惜しいらしいな。
「これよりベイラムグループ専属AC部隊 レッドガンの作戦行動を開始する!!!始めるぞ!!!役立たずども!!!!!まずはリフトにアクセスしろ!!!!!」
「リフト…これが丸ごと動くのか。」
レッドが中央にハーミットのシステムでアクセスすると、リフトが降下を始める。
だが…
『脅威度未測定の侵入者群を検出 防衛フェーズ1.0 対象を排除します』
放送と同時に、リフトが停止する。
「ドローンに囲まれているぞ!迎撃しろ!」
うおっ。すさまじい数だ。ベイラムが先行突入するときはこんなに封鎖兵器がいたわけか、ネペンテスなしでも壊滅的被害受けてたんじゃないか?
危険な自爆攻撃態勢に入ったものを最優先に、ライフルで遊撃していく。そうじゃない、レーザー豆鉄砲相手なら二脚MTでも簡単に対処できるだろう。
機体名「TENDERFOOT」。G13だったころから、テンダーフッドのアセンブルをウォッチポイント・アルファの調査に最適化。フレームはそのまま
ターナーはベイラム製な上、普及率が頭1つ抜けてるおかげでメンテナンス用物資には事欠かない。ウォッチポイント・アルファの環境じゃ、企業規模の部隊の補給はより難しくなるだろうと読んでのチョイスだ。
封鎖兵器のシールドに対抗するために、買い直したパルスブレードも続投している。パルスブレードを譲ってやったイグアスは、かなり近接武器の扱いが上手くなってきている。このまま近接偏重コア理論絶対主義になるまでじっくり育ててやろう。
右肩の4連装ミサイルは6連装に換装。左肩にはネペンテスやエンフォーサーの高出力攻撃への対策として、新たに
エンフォーサーや敵対ACと戦うことになれば、積極的にパルスブレードで攻撃し、シールドとアサルトライフル分の火力を補う必要があるだろう。封鎖機構のヘリコプターをめった斬りにしたのを思い出すな。
「おっと。」
うっかり機雷に突っ込んだが、盾で受ける。そしてそのままブレードでドローンを斬り払う。
今ので封鎖兵器の第一陣は最後らしい。
「リフトへのアクセスが拒否されている。各々で飛び降りるしかなさそうだな…。」
「関係ねぇ、着地ぐらいMTでも出来るだろ。先に行くぞ。」
「あっ!イグアス先輩!」
あいつ…現場で一番上の立場の人間が率先して足並みを乱してどーする。
「うおっ!?」
ヘッドブリンガーが飛び降りてすぐに、リフトを凄まじい数のレーザーが掠める。
「今のビームはなんだ!?」
「攻撃か?警戒しろ!」
通信に部隊員たちのどよめく声が乗る。そうか、今
「イグアス、無事か?」
「壁際の飛び出てる所に上手く隠れた。ありゃなんだ?」
「"複合砲台ネペンテス"。ろくでもない技研の遺産だ。コンテナプラズマミサイルと、6連ビームキャノンを装備している…と技研の論文で見た。」
…ってことにする。
「あの弾幕に近づくのは厳しいが…あれを突破しなきゃ話が始まらねぇ。全員で降りるぞ。狙いを分散させる。」
「待てイグアス。それはダメだ。」
「あぁ?何が不味いんだよ野良犬。」
…わからない。ネペンテスで部隊が半壊したというのはウォルターから聞いた話でしかない。このまま続けていれば半壊することは分かるが、何故そうなるのかが、説明できない。
「G7!ベイラムの社是は『物量による制圧』!部隊員たちも、勿論俺もそれに最適な訓練をしている!全軍突撃が良いんじゃないか?」
「…嫌な予感がするんだ。」
濁しつつ、引き止めたいが…。
「G6の言う通りだ、我々MT部隊は全機突撃を行う!」
ダメか。まあダメだろうな。社是を抜きにしても、アレに対して狙いを分散させるっていうのは理にかなってはいる。他の最適解っていうと…独立傭兵を捨て駒にするとかだな。
よし、プランBで行こう。リフトから素早く飛び降り、
「なっ!G7!?」
驚くレッドの声をよそに、メインカメラを下に向ける。
ウツボカズラが、大口を開けて待っている。
拡散レーザーの連射を盾の連続展開によるイニシャルガードでいなしつつ…
「ぐあっ!」
スタッガー!盾をものともしない高い衝撃力で吹き飛ぶ!だが、吹き飛びでなんとか追撃の予測照射は外れた。
ここまで来たらこうするしかない!さらに重力で加速。
「G7!独断専行はやめろ!!!」
何を今更。「壁」だって、宇宙港だって、俺の独断専行で勝ち取っただろう。だが、それを言ったところでどうにもならないから口には出さない。
凄まじい速度で増える速度計の数字を見つつ、タイミングを計る。そろそろだ!
レバーを一気に引く!アサルトブーストを起動!予備制動で慣性が掻き消え、身体に凄まじいGがかかる。直後、隔壁が下で閉鎖された。
アクセスポイントにはもう辿り着いている!コアと接続を確立、ハッキングを開始!
アンティークみたいな施設の末端セキュリティぐらい…造作もない!制御確立!
AC数機分の隙間だけあけ、封鎖兵器を置き去りにそこから飛び降りる!
上からは再度隔壁が閉鎖される駆動音が聞こえる。分断成功だ。
「野良犬!どういうつもりだ!?」
「あの砲台を壊すには俺一人で十分、せいぜい指をくわえて見ていろ…ってこった!」
待ち構えていた封鎖兵器をシールドごと叩き斬りながら答える。
再度自由落下を開始。プラズマコンテナミサイルはACに十分なダメージを与えられないはずだ。装甲任せに突っ切る。
ネペンテスが先ほどより長いチャージを始める。高出力レーザーの6連射が来る!
一発ずつ、丁寧にIGで受け…5発目でオーバーヒート、そして6発目をQBで回避!どうせ次のレーザーまでには間がある、
QBの予備機体制動で落下速度は落ちたが、次の射撃までに十分懐に入り込め…レーザーポインターで狙われている?
レーザーと直角の方向に再度QB!少しの間の後、アラートとともにリニアライフルの弾丸がもといた場所を走り抜けていく。封鎖兵器の大群!?
アーキバスの依頼で調査したときはここまで居なかったはず…スキャンを走らせつつ、あたりを見回す。スキャンの有効範囲である、視界内だけでも夥しい数の封鎖兵器が確認できる。クソ…これじゃあMT部隊も吹っ飛ぶわけだ…!
「G7レイヴンより報告!隔壁の下は狙撃兵器がてんこ盛りだ!隔壁を開くにしても全員を遮蔽に入れてからにしろ!」
「! 通信が繋がった!G7!一度戻れ!」
「野良犬!調子に乗ってんじゃねえ!」
「うるせえ!このままだとMT乗りが半分死ぬんだぞ!!!」
有無を言わせず通信を切る。ネペンテスの射撃が来る前に、リフトの機構を遮蔽にできるエリアに入り、先客の封鎖兵器をぶった斬る!
「多いな…深度3並だ。」
マルチロックでミサイルを2体に3発ずつ入れ、アサルトライフルで1体目のパルスシールドをダウン、2体目にも数発叩き込む!
背後からパルスブレードを振ろうとする2体目を、クイックターンからのブレードで振り向きざまに一閃!
「甘い!」
パルスブレードの連続稼動限界時間ギリギリまで機体を1体目に向け…返す刀で一刀両断!
ABで次の足場に飛び移る。勢いのままに狙撃態勢の封鎖兵器にブーストキック!肩のガトリングを構えるが…遅い!再度ブーストキックでゴリ押す!他封鎖兵器からの狙撃をバックQBでかわしつつ、ミサイルとアサルトライフルの一斉射でとどめ!
下からプラズマコンテナミサイルが飛んでくるが、無視。同じ足場の次の封鎖兵器から放たれたレーザーを、オーバーヒートから上がったシールドで弾く!プラズマミサイルの爆風をQBで飛び越え、パルスブレードで
全ての遮蔽兼足場に封鎖兵器がいるとんでもない状況だが、丁寧に始末しつつどんどん下っていく。
『再度の不正アクセスを検出 防衛プログラムフェーズ2.0移行』
見上げると隔壁が開き始めている!タイムリミットが近い。
だがこの高度なら、行ける!
遮蔽から降りつつパルスアーマーを展開!6連高出力レーザーは衝撃力はそれほどでもない!アーマーで突っ切り、剥がされると同時にIGに瞬時に切り替える!
「うおおおおおおおお!」
間合いに入った!
「伐採してやるよ!雑草が!!!」
頸部関節にチャージパルスブレードを叩き込む!ミサイルとライフルをフルバースト!リロードの合間にキック!再度ミサイルを発射!パルスブレード冷却完了!
『ネペンテス損傷拡大 当該深度での防衛プランを棄却』
へし折る!!!
肩で息をする。どうやら自分で思っていた以上に気を張っていたらしい。
「G7!!!」
レッドが、ハーミットが残党を始末しながら降りてくる。他の隊員たちも一緒だ。
「何を考えている!?!?!?一歩間違えばレッドガンは番号持ちを一人失うところだった!!!」
「そんなもの、今更だろ?「壁」でだって、汚染市街でだって…いや、なんでもない。」
ここじゃまだレッドガンの番号付きはハークラーしか死んでないんだった。
「野良犬。」
イグアスが柄にもない感情を押し殺したような声で話しかけてくる。
「二度と、勝手な真似するんじゃねぇぞ。」
「お?心配してくれてんのか〜?この〜。」
「…チィッ。」
…違うな、これは。コールドコールじゃないが、機体越しにでも冷たいものを感じる。
コンプレックスを刺激してしまったか?それか、独断専行に不信感を募らせている?
「…。」
「…。」
大破したMT僅か数機という最高の戦況に反し、レッドガン部隊の雰囲気は、命1つない氷原のようだった。