ベイラム・インダストリー所属パイロット『G7 レイヴン』   作:チームマッチUNRANKED

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Chapter1
「G7」


『レッドガンへ正式入隊したい 話を詳しく聞かせて欲しい』

 G13、独立傭兵レイヴンからこんなメッセージが届いた。いつか勧誘してみようと思ってはいたが、まさか向こうから来るとは。嬉しい誤算だ。

『本当か!?』

 奴は強い。レッドガンに入隊すればミシガン総長にも並ぶ戦力にもなり得るだろう。

『ああ、土着どもの小間使いはもううんざりだ』

 それに何より、奴には背中を安心して預けられる。我が方の依頼を幾度となく確実に遂行してもらった。

 

 

 

『分かった 上に話は通しておく、都合がついたら連絡してくれ 我々のベリウスでの拠点座標を送信する』

「ふぅ…」

 

 安堵のため息が出る。今回ではベイラムになるべく媚を売ってきたおかげか、思ったよりあっさり通った。演技とはいえ解放戦線をこき下ろすのは良い気はしないな。

 それはそれとして、これで安心というわけでもない。ウォルターに話を通さなくてはならないのだ…。

 

 

 

「それで、大切な話というのは何だ?」

「単刀直入に言わせてもらいます。貴方の下から独立してベイラムレッドガンに加入したいのです。」

 思わず眉間を抑える。"仕事"を通して感情や意志の類が蘇ってきているのには気付いてはいたが、まさかこれほどとは。

 

「…理由を聞こう」

「先日レッドガンの作戦行動の僚機として出撃するミッションがありましたよね?」

「ガリア多重ダムの破壊作戦だな」

「あの時ふと思ったんです。レッドガンに入れば互いに競い合い、高め合う仲間ができるのではないか、と」

 

 刺激を与える機会を兼ねて斡旋した作戦だったが、期待以上の効果をもたらしてしまったか。621が自身で選ぶのは喜ばしいことではあるが…。

「無論タダとは言いません。貴方に買われ、救い出され、ここまでかなりよくしていただきました。これまで戦えてきたのは全て貴方のお陰です。なので…今まで俺の稼いだ金を全て、貴方に()()()します」

 正直な所、621を手放すのは避けたい。補給の難しい封鎖惑星での戦力としてという理由ももちろんあるが、一番は感情的な話だ。

 621を戦いに放り込んだのは俺だ。例えもともと戦うために強化されていようと、俺がこいつを最後まで見届けなくてはならない、そう考えている。だが…。

 

「分かった」

「!」

「但し」

「!?」

「その金はお前が稼いだ金だ。お前自身のために使え」

「ウォルター…」

「G6に話したと言ったな。俺からもミシガンに話を通しておく。多少は入隊がスムーズになるだろう」

「ウォルター…!」

「レッドガンの主要メンバーのデータもある。コピーを持っていけ」

「ウォルター?」

「レッドガンでは食料はレーションが主になるだろう。餞別だ、地球産保存食も少し持っていけ」

「ウォルター!?」

 

 

 

 

 「LOADER 4」の武装を外して背中に荷物(3分の1ぐらいはウォルターの餞別だ)をどっさり積み、ワイヤーで括り付ける。探査を目的としたフレームとはいえ伊達にLOAD(積載)の名を冠していない。まるでジャンク回収機のような見た目になったローダーに乗り込む。

 嵩張るACのパーツ類は一部を残して他は全て売った。どうせこれからベイラム系列以外は使えなくなるし、傭兵でなくなってもオールマインドの野郎のパーツショップからいつでも買い直せる。

 

 道すがら雪に埋まったACの残骸を見つけた。思わずそれを拾い上げる。

 これから先、俺が自らの意思で選び、戦う道はこれまでよりもずっと厳しくなるだろう。明日には俺もこうなってるかもしれない。巻き戻りも、俺の死もではなく世界の滅亡だけがトリガーだったら使えないかもしれない。

 …いや、大丈夫だ。今の俺には「背景」がある。理由のある強さほど信頼できるものはない。ここまで折れずにいられたのはこれのお陰だ。

 

広域レーダーに敵性反応はないが、いつ封鎖機構SGや解放戦線ゲリラと出くわすとも限らない。俺は急ぎレッドからもらった座標に向かってブーストをふかした。

 

 

 

 

 

「よく来た、G13!!!!!」

 強化人間の聴覚支援システムがあまりの声量に音割れした声を脳に直接伝えてくる。ミシガンの無線には受信側への声量を抑える機能でも付いていたのだろうか?などとくだらないことを考えてしまった。

 それはそれとして、まさか総長自らお出迎えとは。

「G1ミシガン、直接会うのは初めてだな。よろしく頼む」

 俺は手を差し出す。そしてミシガンと固い握手を

「痛たたたた!!!痛い!痛い!!!」

「ようこそレッドガン部隊へ!!!!!歓迎するぞ!!!!!」

 見張りの隊員がこっちをちらっと見た。あいつ笑いをこらえてやがる。

 

 

 

 折角直接来たので、そのまま加入手続きをやってしまうとのことだ。不自然なまでにスムーズに話が進んで少し不気味な気もする。

 

「最後にだ!!!貴様には正規隊員のコールサインとして先日空きの出たG7を新たに割り当てる!!!G7レイヴン!!!復唱!!!」

「G7レイヴン!」

 G13貸与の時と違い、今は調整を重ねて発話能力ぐらいは取り戻している。弱々しい肺一杯に空気を詰め込み、声を張る。

「よし!!!貴様には明日から早速出撃してもらう!!!貴様の部屋は先に伝えた兵舎の中、ガレージは輸送ヘリの内部だ!!!以上!解散!!!」

 …G7レイヴン、とだけ復唱するのはなんか違う気もするが、突っ込まれなかったのでこれで良いのだろう。

 荷物は追々ほどいていくとして、まずは挨拶回りからだな。イグアスの驚愕する面を拝むのが楽しみだ。オールマインドに加入しない程度にいじめてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議室のような整然と椅子と机の並ぶ部屋に、2人の老兵が居た。

「いいのか?ミシガン。ハンドラー・ウォルターの紹介とはいえ試験や調査免除どころか即戦力として運用とは」

「仕方あるまい。上の奴らは封鎖惑星を舐めている。補給物資や人員は半数以上機構に撃墜されているんだ、危険因子だろうと強い駒は少しでも欲しい」

「だとしても通らんよ、それは。G3の時のようにせめて奴に監視を付けろ、アーキバスにはスパイが入ったという噂もある」

「そうしよう。毎度済まないな、ナイル」

「これも仕事だ」

 老兵の1人は部屋を去った。

 

 

 

 

 

 挨拶回りをすべく歩いていると…

「G13!!」

 このミシガンと比べたら控えめな声量は…

「いや、今はG7だったな」

「レッド。いや、今はレッド"先輩"かな?」

 冗談めかしてオウム返しする。

「その呼び方はやめてくれ。貴様の実力なら6などあっという間だろう?先輩面する気にはなれないさ」

 言葉の割に満更でもなさそうだなこいつ。

 

 

 

 部屋についた。挨拶回りついでにイグアスをからかってやろうと思ったが、どす黒いオーラを放っていたのでやめておいた。丁度壁越えから外されたところだもんな…。

「ふぅー…」

 レッドガンのイメージに反してきっちりしているベッドに倒れ込む。ランク圏内のAC乗りは貴重だし、当然です、この程度はやってもらわねば。なーんて。

 …G7。前任のハークラーは何故か汚染市街で、周囲に味方の残骸もなしに撃破されていた。ヴォルタも壁でだ。ベイラム上層部はレッドガンのことを何とも思っていない。無理難題を全て力技で跳ね除けることになるだろう。

 それに加えて"破綻"を防ぐには兎にも角にも企業に集積コーラルを見つけてもらう必要がある。今までの周を大まかになぞれるように、ウォルターの仕事も影からアシストする。アーキバスの封鎖兵器鹵獲を防ぐために、定期的に封鎖機構を叩く必要もあるな。それから…

 …あれ?もしかして相当キツい?

 

………

 

 今日はとにかく疲れた。もう寝ることにしよう。

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