ベイラム・インダストリー所属パイロット『G7 レイヴン』 作:チームマッチUNRANKED
「G2、ナイル副長からの指令を読み上げます!」
MTに乗った伝令が、整列した機体の前でブリーフィングを配信していく。
『ウォッチポイント・アルファに対して、アーキバスグループの合同部隊が突入作戦を仕掛けてくるという情報をキャッチした。この合同部隊には最大2機のヴェスパー隊長、1から3機のランク外独立傭兵、そして
次々と参画する可能性のあるACたちが画面に映し出される。
『MTの規模に関しては定かではないが、自戦力を出したがらないアーキバスから隊長が2機だ。我々の主力部隊にも迫る数での攻撃が予想される。
先行調査部隊、お前たちは先に制圧した深度1にて迎撃を行ってもらう。あそこの狭さなら戦力はどうしても逐次投入になる、そこを数の有利で潰せ。ブリーフィングは以上だ。』
なるほど、悪くない作戦だ。アーキバスを始めとした敵の追撃をかわしながら調査を進めるのは、常に挟撃されているようなものだ。先立って出鼻を挫き力を削ぐのは理にかなっている。
無能な上層部はすぐにでも集積コーラルを取りに行かせたいはずだが、それを通さないのは流石にG2といったところかな。
さて。まずいことになったな。
強化人間としての操縦能力が必要だと思ったから、結局再手術はしなかった。つまり、ノーザークに近寄られたら、俺もイグアスもとんでもない耳鳴りで本来の力を出せない。そしてレッド単騎じゃノーザークは多分止められない。コア理論に忠実なベイラムの機体じゃ、どう頑張っても近づくことになる。なにか打開の一手は…。
…閃いた。
そうと決まれば早速行動あるのみ!客人をもてなす準備は入念に…な。
「イグアス!」
「あ?何の用だ?」
「次の作戦に必要なものがあるんだが」
「知るか。自分でどうにかしろ。」
冷たい。レッドガン加入直後の燃えるような敵意ではなく、凍りつくような敵意を微かに感じる。
「頼む。イグアスの力が必要だ。この通りだ!」
深々と頭を下げる。俺の灰色とコーラル色が混ざった脳細胞が導き出した天才的計画には、イグアスが必要なんだ!
「何言われてもリードを引きちぎって暴走する馬鹿なワン公に貸す手はねぇよ。噛まれて終いだ。」
「…ミシガンのAC戦での癖。」
「…。」
「…地球産保存食。」
「…!」
「…昨日徹夜で作った『ルビコンのランク1監修!狂犬でも分かるアーマード・コアアセンブル論応用』ブックレット。」
「…?」
「…『G7レイヴン1日顎で使える権』。」
「…!?」
「…オールマインドの秘匿プログr」
「わーったよ。聞くだけ聞いてやる。」
「ありがとうイグアス!」
「触んな気持ちわりぃ!」
握手は払い除けられてしまった。
「んで、俺は何をすりゃいい。」
「独立傭兵コールドコール。」
「…お前…なんで知ってる?」
「イグアス、お前はあいつにツテがあるだろ。俺を紹介してほしい。仕事を頼むんだ。」
「まあ請け負ってやるが…なんだってあんなやつなんかに?」
「俺の分析だと、選択肢はただ一つ。それを実現させられるのは、今はコールドコールしかいない。」
「…ハア?」
イグアスが肩をすくめ、歩き去っていく。
「メッセージを飛ばすよう言付けしておく。言っとくが対価とは別に貸し1だかんな!」
「げっ、ケチグアス!」
「縮めてんじゃねえ!!!」
「…はっ。」
話してるうちに多少は機嫌を直してくれたようだ。根本的な解決にはなってないが…。
『お前がレイヴンか。まさかお前のような大物から依頼とはな。』
『御託はいい。今から依頼内容と報酬についてデータを送る。受けるかどうか決めてくれ。』
『ふむ…これは…。なるほどなるほど、これはイグアス坊ややレッドガンの面々には任せられぬわな。』
『御託はいいと言ったはずだ。受けてくれるか?』
『やってみるとしよう。イグアス坊やのお友達だ、報酬は成功報酬で結構。』
『よし、恩に着る。』
翌日。ヴェスパーとはまた別に、夜間に小規模な部隊のウォッチポイント突入があったらしい。ジャミングを駆使するそいつらを完全に妨害することはできず、数機の突破を許したとのことだ。
オールマインドか独立傭兵か、それともまた別の誰かか…。いずれにせよ厄介ごとの種になりそうだな…。俺が出ていれば撃滅できただろうか?
さて、そろそろ作戦開始時刻だ。機体の調整にかかろう。と言っても、今回調整が本当に必要かは怪しいが、な。
機体は突入時と変わらず最適化した「TENDERFOOT」。
ここじゃACパーツを届けてもらうのも一苦労だ。調査の手が技研都市まで及べば、重要度がなくなったウォッチポイントアルファは誰も制圧しなくなって輸送ヘリとかで乗り入れられるようになるはずだが。
現にウォルターの元にいたときはそうやってガレージごと突っ込んだものだ。
しかし入り口である中央氷原観測不能領域を敵勢力に固められてる今じゃ難しい。
企業の大部隊レベルの補給は何かと面倒だ。
簡易キャンプの臨時ガレージ拠点から機体を出す。あたりをスキャンすると、ほかの隊員たちもだいたい位置についているようだ。作戦開始の信号が送られてくる。
「上空に敵性反応、第一波です!迎撃を!」
MT部隊員からの報告。一拍遅れて、多くの二脚MTが輸送ヘリに乗って降りてくるのに向け、一斉にこちらの榴弾が放たれる。
「チッ、かなり落とされたぞ!分が悪い!」
「狼狽えるな!事前情報じゃ、ベイラムの戦力はここに居る分だけだ!増援があるこっちにも勝ちの目はある!」
俺はACの機動力を活かして手が足りてないところのカバーに行くか。
迎撃を耐えた四脚が暴れ回っているところにチャージパルスブレード!直後にキック!MTからの援護のミサイルでスタッガー!
近くにいた
「第二波、ACの反応あり!」
AC投入が思ったより早いな。ノーザークが来るまでに
ランク外の傭兵だろうか、MTの群れのなかに見慣れないACが2機紛れている。
「あー、畜生。割のいい仕事があるって聞いたのにレッドガンの番号付きへの尖兵だあ?ハイリスクハイリターンにもほどがあるぜ。」
「やってやろう、先に撃てばいいんだ。作戦完了まで生き延びるか死ぬか、一世一代の大博打だ。」
片方は大豊のとこの
どうやら2機はACとの交戦を避けつつMTを削るつもりらしい。どんどん引きつつMTたちを襲っていく。
「チッ、めんどくせぇな!」
イグアスがブレードを連続で構え、高速で四脚を追っていく。だが、あれじゃ追いつく前にENが切れるだろうな。捉えるまでには時間がかかりそうだ。
「レッド!敵MTの殲滅を頼む!俺はBAWSフレームのACを抑えに行く!」
「了解した!だが突出するのは控えろ!G6としての命令だ!」
「だー、悪かったよ。」
口では謝りこそしたが、司令部や、今現場で一番偉いイグアスに従ってのまともなやり方じゃ今回も打破できない。2人には悪いが、また胃を痛めてもらおう。
MT部隊と交戦中の傭兵の機体が見えてくる。左肩はシールドか。ブレードとシールドだけとは随分な節約志向のACだ。俺も出撃の機会を持て余して封鎖機構をブレードだけでスクラップの山にしたときとかあったな。
「よう、貧乏独立傭兵さん。」
「チッ、もう追いついてきやがったか。番号付きなんか相手にしてられるか!」
言いながらABで引いていく。武装がろくにないだけあってかなり素早いな。いくらここが狭いとは言え捕まえるのは骨が折れそうだ。
周りのMTをほどほどに蹴散らしながら考える。放置は…なしだな。こっちのMTがどんどん削られてしまう。追い続けて仕事ができないようにしつつ、レッドとの2対1の状況を作って追い込む。よし、これでいこう。
司令部に通信を飛ばす。
「交戦中の敵MTの残数は?」
「15、いや14ですG7!」
もうすぐ殲滅できるか。レッドに回線を繋ぎ替える。
「レッド!BAWSフレームのACに追いつけない!そっちが済んだら援護を頼む!」
「了解した!」
ABでの追いかけっこを続けつつ、目についた敵MTを削っていく。やつがこっちのMTを始末するべく足を止めれば、すぐにでもブレードで斬り捨てられるよう残ENには気を配っているが、止まりそうにもないな。撃破報酬より生き延びるのが大事か。
「第三波!来るぞ!」
チッ、二波の殲滅が間に合わなかったか。
「BAWSの四脚タイプが…3機!?」
「九連装バズーカがいる!まとめて吹き飛ばされるぞ!散れ!」
輸送ヘリを叩き落としつつ、スキャンをかけると…報告の通り3機も湧いてきている。四脚MTはACより落としやすいがACよりほっとくと厄介だ。一度向こうをやるか。
一番近かったブレード型に意識外からキック!即座にアサルトアーマー!スタッガーしたところにブレードで袈裟斬り!追撃!まだ足りないが…四脚は背後から斬り裂かれ爆散!
「イグアスか!四脚ACはどうした?」
「先にこっちを潰すべきだと思ったんでな。」
同じ事を考えてたようだ。
アラート!
二手に分かれるようにQBして避ける。俺たちの背後にあった構造物が、跡形もなく吹き飛んでいる。バズーカか!
「合わせるぞ!イグアス!」
「偉そうにすんな!」
同時にABを起動!ガトリングの銃口はこちらを向いている。射撃を入れつつ左へAQBを連続起動し、回り込みつつ被弾を最小限に留める。
「そこだイグアス!」
ヘッドブリンガーのブーストキック!MTが怯んだ隙にパルスブレードを起動し、一気に距離を詰め…チャージブレードでぶった斬る!合わせてイグアスもパルスブレード!撃破!
「こちらG6 レッド!増援も含め、二脚MTは全滅させた!いつでもいけるぞ!」
「! そうか!イグアス!俺はまたACの相手をしに行く!もう一機のMTは任せた!」
「急げよ!増援が近い!」
再びブレードACのほうに行くと、既にこちらのMTが数機落とされていた。
「戻ってきやがったか、勘弁してくれ。」
もう気付かれたか。どうやらこちらの動向をかなり気にかけているようだ。何度も行き来を繰り返して撹乱してやろうか…いや、やめておこう。
レッドは配置についているようだ。始めるぞ!AQBを連発して回り込み、逃げる方向を誘導!
「そこだっ!」
ハーミットがバズーカを放つ!精密にコアを狙った榴弾はバックQBで回避されるが…
「それでいい!」
追いついた!背後からパルスブレード!
「クソっはかったか!」
焦って振り返りざまにパルスブレードを振り回してくるが、冷静に盾で防ぐ。
回線切り替え!
『レッド!今だ!詰めろ!』
ライフルで相手の意識と盾をこちらに向けさせつつ、レッドと挟撃!スタッガー!
こんなこともあろうかと、ハーミットの機体構成には俺が少し口を出してある。
「ABBOTは木星戦争でベイラムを支えた傑作だ!変えるなどと!」とかなんとか言っていたが、AC戦シミュレーターでの"交渉"の結果快く受け入れてくれた。
ダケットの衝撃力は相変わらずすさまじいな。
パルスブレード冷却完了!今から振ればスタッガー延長こそできないが
『ピーッピーッ!』
反射的にバックQB!距離減衰した爆風を機体に受ける。
見上げると、四脚ACからミサイルが発射されるところだった。
「そう言えばこいつがフリーだったな、G7…。」
「関係ない、俺たちで終わらせればいいだろ。」
奴らはじりじり引きつつ相談をしている。
「どうする?企業さん方はやる気らしいぜ?」
「いやいや、今死にかけたばっかりだろお前。あんなの相手にしないほうがいい。」
「とはいえ、あいつらかアーキバスが壊滅しないと作戦終わらねえしなぁ…。…お?」
「このコードは…どうやら1つ目の山は越えたようだ。」
「第四波!この識別信号は…!?独立傭兵ノーザーク!AC LOADER 5、来ます!」
「なっ…ノーザーク!?」
「…!?更に上空より貨物コンテナらしきものがドロップ!アーキバス勢力に迎撃されながら降下してきます!」
あれは…時間ちょうどだな。
「レッド!少しだけ外す!3機を抑えておいてくれ!」
「なっ!?…何か考えがあるんだな?…やってみよう。」
通信が入ってくる。
『レイヴン。依頼は成功した。投下ポイント候補は"3"だ。』
『感謝する。』
コンテナの外装が空中でパージされ、中身がネペンテスの麓に着地。テンダーフットを腕を伸ばした状態で制御を落とし、コクピットを解放。
伸ばしたMELANDER C3の腕を足場に、テンダーフットからコンテナの中身に飛び移る!
システムオールグリーン。損傷軽微。メインシステム、戦闘モード起動!
「レッド!」
「イグアス先輩!」
四脚MTを撃破したのだろうか。
「状況はどうなってやがる?」
「独立傭兵3機を相手にしています。かなり厳しい戦況です…。G7は一時離脱しました。考えがあるようですが…。」
「野良犬野郎が…また勝手な真似しやがって…。行くぞ!ヴェスパーのお役人どもが来る前にACを片付けねえとマズい!」
「了解!」
イグアス先輩のヘッドブリンガーが敵に向かって飛んでいくが。
「ぐっ…!?」
「先輩!?」
「なんだこの…耳鳴り…?頭が…痛え…!」
ヘッドブリンガーが突然棒立ちになる。
「何が…何が起きているんだ!」
ノーザークの機体がレーザーライフルをチャージし始める。バズーカを撃ち込むが、シールドで軽くあしらわれてしまった。
やつがライフルをヘッドブリンガーに向けた瞬間。視界を紫電が横切り、ノーザークはすんでのところで回避した。
援軍?
人体との調和を無視した、ただ速く飛ぶためだけの形状。そんな異形の四脚を携えたACが、飛行している。あのプラズマはあのACが…?識別信号は…
「G7、レイヴン…。」