ベイラム・インダストリー所属パイロット『G7 レイヴン』 作:チームマッチUNRANKED
壁防衛の時、俺はフロイトに一瞬で落とされた。訳が分からなかった。距離を詰められた、と思ったら次に気が付いた時には生身で瓦礫に埋まってたんだ。Sランカーってのはあそこまでやべえもんなのか…?そういやミシガンの野郎もSだ。
俺は…あいつを越えられるのか?
「クソッ!」
「イグアス、どうしたってんだ?いつにもましてイラついてんな。」
「ヴォルタ!!!」
「!?」
「俺に足りないのはなんだ!?」
「…将来の見通し?」
「違う!もっとこう…ACに乗るうえでの話だ!」
「あぁー。と言ってもな…俺はタンクしか乗れねぇからな…。それに俺らより上位のナンバーに中二乗りは居ないし、ヘッドブリンガーのアドバイスは…あっ。」
「宛があるのか!?」
「だがよ…」
「良いから教えろ!!!頼む!教えてくれ!!!俺は…!強くならなくちゃならねぇ…!!!」
「というわけでだ。イグアスに稽古をつけてやってほしい。」
「ヴォルタてめぇ!!!」
「『強くならなくちゃならねぇ…!!!』んだろ?」
「〜!!!」
「
いきなり来たと思ったらこの調子だ。こいつどれだけ俺が嫌いなんだよ。
「ランクはお前より上ですぅ〜!!!」
「適当抜かすなコラ!!!」
「いや、こいつが言ってることは本当だぞ。ほらよ。」
ヴォルタが端末を操作してイグアスに見せる。
「ランク…1…!?」
顔面蒼白になってやがる。イグアスのこの顔を見るためににランク1になったと言っても過言ではない。…流石に盛った。
「でもてめぇ3対1でフロイトに殺されかけたらしいじゃねぇか!!!」
「うるせぇ!!!お前はほぼ殺されてただろ!!!」
「落ち着けよ二人共!!!」
「…チッ、ヴォルタに免じて許してやるよ。」
「許してやる立場はこっちだ野良犬…!」
全く。ただ、イグアスの才能を開花させる絶好のタイミングではある。ヴォルタに感謝しなくちゃならないな。
丸一日今までのループと「NEST」で得た知識を実戦を交えて叩き込んでやった。次あいつの僚機として出撃する時が楽しみだ。特訓の結果は…その時お楽しみだ。
『周辺の地形確認に行ってくる』
G7からのAC出動報告。
「きな臭いな。」
『G7を尾行しろ』、メッセージを送信する。
「これで全てはっきりするだろうか…。」
ナイルは呟いた。
『メインシステム 戦闘モード起動』
やってきましたBAWS第2工廠!ウォルターの新しい猟犬、いや、「ノーザーク」は着々と実績を得ているらしい。
つまり「BAWS第2工廠調査」を受けてるかもしれないと踏んでここに来たのだが…正解だ。見慣れた機体が第2工廠に入っていった。識別信号は「独立傭兵ノーザーク」を示している。
武装こそ知らない構成だが、フレームは
やつが粗製ならそれとなく手助けしてやらなければならない。アセンブルもそれに合わせてきた。
機体名は…夜にフクロウのように飛び回る様子と"レイヴン"から「Black owl」。俺の素晴らしいネーミングは伝わらなかったらしく、オールマインドのガレージスタッフにはフクロウ…?と怪訝な目で見られた。この前みたいに笑われなかっただけ進歩だろう。多分。
隠密行動向けに
ハリス以外は全て非ベイラム製。識別信号も偽装してある。万が一誰かに見つかってもまさかレッドガンのACとは思われないだろう。
アーキバス系列やBAWSのパーツを使うときはパーツショップで買ってそのままオールマインドのガレージを使わせてもらった。フロイトとの戦闘データを渡したら喜んで入れてくれた。
勿論機密漏洩なので余計バレるわけにはいかない。イグアスと同類になってしまった…。
だけど久しぶりに企業とか気にせず、自由にアセンブルできて…少し楽しかったな。
さて。「ノーザーク」はと言うと…おお。いい感じにゴーストたちを蹴散らしてる。ジャミング弾で遠距離からのロックとレーダーは無効化してるが、気を抜くとこっちも発見されてしまいそうだ。
この調子なら帰っても大丈夫か。機体を拠点方向に…
「機影?」
思わず声に出る。
あの機体は見覚えがない。今までの周でもこんな機体と戦ったことはない。移動し、レーダーの有効範囲にノーザークが居ないのを確認してジャミング弾を撒くのをやめ、公開通信。
「そこで止まれ!」
一拍の間を置いて返答が来る。
「なんだあんた…?」
全身アーキバス…だが武装は…見慣れない武器だ。
「この先にあるのはBAWSの工廠ぐらいだが…こんな辺鄙な場所に何の用だ?」
解放戦線が追加で雇った傭兵?いや、
オールマインドの手の者なら、ここでご退場願うのが良い。ノーザークはまだ駆け出しだ。オールマインドの息がかかった精鋭を退けられる実力はないだろう。
対ACを想定した機体じゃないが…やれるか…?あぁ、不安だ…。姿勢安定が弱いとメンタルも弱くなる…。
「…行っていいか?」
考え事をしている間ずっと黙って待っていてくれたらしい。いやお人好しかよ。有無を言わさず殴りかかってくるオールマインドの刺客らしくない。違うのか?
「目的を言え!」
「だが…守秘義務がだな…。」
おもむろに右手の重リニアをチャージ。甲高い音を鳴らしながら銃身が激しい放電を起こす。
「守秘義務と命、どっちが大事だ!?」
「待て!待ってくれ!話す!」
効果てきめん!チャージをキャンセルする。俺の
「俺は長い間とある野郎を追ってる。」
ふむ。
「そいつは金を借りては返さずに上手いこと逃げ隠れるんだ。」
ん?
「だが最近になって尻尾を出すようになった。つまりだ、ここに奴が来るって情報が入ったんだよ。」
…。こいつもしかして。
「あんた、ノーザークを追ってる債権回収業者か?」
「な…!?何故それを知ってる!?」
「いや、まあ…ちょっとな。」
まさか「未来でRaDに歓迎されてた」、なんて言っても信じないだろう。だが面倒なことになった。名義と一緒に借金もついてくるのかよ…。とんだトラップだ。
今後のノーザークの活動に支障が出るかもしれない。しびれを切らした金貸しが、ノーザークが成長する前にコールドコールや星外の優秀な殺し屋でも雇ったら悲惨だ。かと言って嘘はつけないし…。洗いざらい話して説得するしかない。ウォルターについては伏せれば仕事の邪魔にはならないだろう。
「借金取りさんよ、実を言うとだな。今のノーザークは借金王ノーザークじゃないんだ。」
「はあ?どういうことだよ?」
「これは秘密なんだが…今のノーザークは最近ルビコンに来た密航者。元のノーザークからライセンスを奪い取ったんだ。」
「…だから取り立てをやめろと?わざわざ封鎖惑星まで来て手ぶらじゃ帰れないし、そもそもその話も本当かどうか疑わしいぞ。」
ぐ…もっともだ。
「大体あんたは誰なんだよ。」
「俺はガンズ………!…事情があって身分を明かせない、すまない…。」
「はあ?それで信じろって言うのかよ?無茶だろ…。」
…全くもってその通りだ。
「あんた…あいつとグルなんじゃないか?」
「は!?」
「俺のことを知ってるのも、あいつを庇うのもあいつの仲間だからで説明がつくだろ?こんな辺鄙な場所にあいつとあんただけいるってのも出来すぎだ。」
…確かに。
まっっったく反論できない。
「もういい、行かせてもらうぞ。それから1つ忠告だ。あんた、あいつとはとっとと縁を切ったほうが良いぞ。」
ここでこの取り立て屋を倒したらそれこそデッドスレッドが飛んで来かねない。ノーザークに任せるしか無い…。
…取り立て屋の独り言が通信に乗って聞こえてくる。
「あいつ…仲間がいるなら連帯保証人にして押し付けそうなもんだが…そこまで腐ってはないのか…?」
連帯保証人…あいつのことだし、既に知り合い全員に金借りるだけ借りまくって連帯保証人どころじゃないだろうな。…待てよ?
「それだ!!!」
「うおっ!?まだなんかあ」
「俺が!!!あいつの借金を肩代わりする!!!」
「!?」
ベイラムの社是!
もともとウォルターに返すつもりだった金!ウォルターとその猟犬に使うのになんの躊躇いもない!
「さあ幾らだ!?一括で!この場で返済してやるよ!!!」
「本気か…!?」
「本気だ!!!」
「…たとえ本気でも正気とは思えんな…まあいい、じゃああんたに請求するぞ。」
「頼む!」
「えーと…元に加えて利息に今まであいつが迎撃した借金取りへの修理費に弾薬費に…」
ふむ。
「俺たち債権回収業者の封鎖惑星入りにかかった工作の費用に、あいつの未納のACパーツ代に…」
え?
「ノーザーク捜索での情報屋への報酬分に」
「待て待て待て待て…!まだあるのか!?」
「なんだ、怖気付いたか?額にしたらまだ半分も行ってないと思うぞ?」
「元とその利息プラスアルファより逃げ回って出した被害のほうがデカいのか!?!?!?」
…この日、幾度とない周回で解放戦線の総資産より膨れ上がった俺のへそくり口座は、桁をいくつか減らすことになった。
情報戦部隊の隠密行動カスタム調査ドローンからG7の行動記録ログを受信した。
「これで…G7が何処の回し者か分かるはずだ…!」
早速再生する。
映像内。G7はオールマインドのガレージでアーキバスフレームの機体に乗り換えた。MT部隊に潜伏させておいた直属の情報戦部隊員からのV.Ⅳを逃がしているように見えたとの証言と、盗聴した解読不能の暗号通信を思い出す。やはりアーキバスなのか…?
…BAWSの施設に向かっている。確かあそこは最近封鎖機構の監査が入ったはずだ。封鎖機構のスパイで本隊に合流する…?…上空を飛び回っているだけだ。違うらしい。
突然ジャミングがまかれる。追跡がバレたか?いや、ドローンは撃破されておらず、記録はまだ続いている。
おそらく目視で追跡したのだろう、時折カメラから姿をくらますが、やはりベテランの情報戦部隊が直接操作する調査ドローンだ、すぐに再度姿を捉える。
何度目かに姿をくらまし、捉え直したタイミング。独立傭兵らしいACと通信するG7が見える。ドローンの通信傍受。
『ザザ…これ桁ザザ違わなザッか…?』
『いや、こザで正しザ…振り込みをザ認ザザた。これザルビコンからおザザラバだ。』
金銭の授受?傍受した電子請求書のデータは一部欠損しているが、辛うじて異常な額のやりとりをしていることは分かる。
G7は元独立傭兵だ。まさか独立傭兵仲間とレッドガンの予算を横領している!?
レッドガンの全ての口座の取引記録を確認する。…一切異常はない。自腹…!?
「なんなんだ…奴は…!?」
ナイルは1人頭を抱えた。