第一高校の生徒会室はそれなりに広い。そしてそんな広い場所に副会長の七草真由美と書記の中条あずさが二人きりで座っていた。市原や服部は説明会の件で風紀委員との打ち合わせに向かっていて、会長は教職員や学校側との日程調整などを含めて話し合いを行っているところ。
そういうこともあって今は二人だけなのだ。
しばらく静寂が包み込んでいた生徒会室に中条が呟く。
「生徒会長ってすごいですね」
「そうよ!あーちゃんも分かっちゃった!?」
「あ、あーちゃん……?」
「うん。中条あずさだから『あーちゃん』ね!」
「え、そんなきゅうに…」
中条は七草からそんな呼び方をされたことに戸惑っていると七草の方はそんなことを気にせず、話を進めようとしてくる。
「それで会長のどこがすごいと思ったの?」
「なんていうか…リーダーシップっていうんでしょうか。なんか会長について行けば大丈夫みたいな感じがするんです」
「それはあるわね」
そこで中条が辺りを見渡して会長が居ないことに気付く。
「あ、そう言えば、会長は?」
「今も学校説明会を開くために色々なところと打ち合わせをしているところみたいよ」
「本当に忙しそうですね」
「うん。会長は私たちにあんまり仕事が集中しないようにしてくれているけど、私としては会長が過労で倒れるんじゃないかって心配で心配で」
「それは私も思ってました」
六塚は自分が企画したことなので誰よりも歩き回っている。授業や六塚家の次期当主としての役割もそれなりにある中で学校説明会を開くために毎日立ち回っている。
「でも、会長は来年や再来年、その先のことを考えている。そしてそのためにも今回の学校説明会は必要だと断言していたわ」
「…本当にすごいですね、会長」
「すごいわよね」
そんな会話が生徒会室では繰り広げられていると…生徒会室の扉が開いて市原と服部が入って来る。
でも、二人の様子は少し疲れているようだった。珍しく市原の方にも疲れが出ていることに、七草は驚きながら質問をした。
「どうしたの、りんちゃん?」
「いや、予想以上に風紀委員と打ち合わせが長引いたんです」
中条は何かを感じ取ったようで詳しい説明を求めるようだ。
「なにかあったんですか?」
中条の質問に対して答えたのは服部だった。
「まず大前提に風紀委員は今回の説明会に関しては賛成していて、自分たちが警備にあたることに関しても容認しています」
服部の言葉に七草が同意する。
「ええ、そう聞いているわ」
「そこまではいいんですが、問題は警備の配置です」
服部の言葉に中条は疑問に感じたようだった。
「警備の配置ですか?」
「うん。この場所にはどれだけ警備を置くかとか、誰を担当させるかとかでかなり議論が白熱していてな。どうやらそれぞれ自分のプライドというものがあるようで、警備の要は自分だと言い出す人たちが多くて。まとめるのにこの時間まで掛かってしまったんです」
「それは大変ね。りんちゃんも服部くんもお疲れ様」
そして二人共、椅子に腰を下ろして次の仕事に掛かろうとしたタイミングで服部が思いだシカのように話し出した。
「そう言えば、改めて会長のすごさを理解しましたよ」
「すごさ?」
「はい。一昨日ぐらいに会長のお供として風紀委員の打ち合わせに参加させてもらったことがあるんですが、その時の会長は会話の主導権を誰にも渡さず、どんどん決めて行ってましたし。それなのに風紀委員の面々も会長が決めたのならという感じでしたし」
「ああ…会長はね」
そんな話をしていると市原が生徒会長について話し始めた。
「たぶん、歴代で見てもここまで風紀委員と部活連、教職員側と連携が取れている生徒会は初めてだと思いますね。それも全てが生徒会長の六塚冷という一人の生徒の信頼で成り立っているんですから」
それだけ生徒会長はこの学校内で信頼を勝ち取っているのだ。
改めて生徒会に所属する四人も生徒会長の凄さを感じたのだった。