今、俺の前には神秘的な光景が広がっていた。
「今思うとこれが『迷宮』の始まりなんだな」
『えぇ、そうですね』
俺は独り言のつもりだったんだが俺の声に反応する声があった。グフタフだ。
神秘的な光景がしばらく続くと、俺の意識は一瞬遮断された。
「ガバガバガバ(なんだこれ、声がでねぇ)」
気づいたら水中の中にいた。辺りを見渡してみると何もなく、空気があるであろう上を目指す。
「ふぅ」
なんとか地上に着き、呼吸を整える。
「やっと来たのかい」
声のするほうを見てみるとジャミルが立っていた。後ろのほうをみるとゴルタス、モルジアナ、連れてきた奴隷が集まっていた。
だが奴隷の数が明らかに足りない。
「よし、君も来たことだし、先に進むとしようか」
「先に進むったって……道は分かってんのか?それとまだ全員集まってないんじゃないか?」
俺たちが今いる所の目の前には無数の穴が存在している。当てずっぽうにゴールを探していても時間だけが過ぎてしまう。
「あー、このモルジアナは鼻が良く利くんだ。おそらくあの方は来てると思うしね。それに他の奴隷なんていてもいなくても同じだよ、役に立つとしたらせいぜい罠除けくらいでしょ」
奴隷の命なんてあってないようなものみたいな考えに胸糞を悪くしながらもジャミルについていく。
相当ヤバそうな奴なのでこの町に滞在してる期間だけは素直に従っておこうと思う。
「モルジアナ、後どれくらいで追いつくんだい?」
「後もう少しです」
スタート地点からしばらく歩いた頃には残ってる人数が4人になってしまっていた。
あの後少し歩いたら、カマキリに良く似た化け物と遭遇した。ジャミルはなんの躊躇いもなく、ゴルタスに奴隷を投げつけるように指示し、カマキリが奴隷を食っている間に道を進むというなんとも残酷なことだった。
クイッ
そんなことを考えているとモルジアナが道を変え、小さい穴へと入っていった。
「お、やっとみつけたのかい?」
ジャミルとゴルタスもモルジアナに続いて穴の中に入る。もちろん俺もそれに続く。
「な!なんだよお前ら!」
すると小さい穴に青年らしい声が響いた。ジャミル達に追いついて、状況を確認してみるとジャミルは青年を無視し、奥にいる少年のほうへと手を伸ばしていた。
「おぉ、『マギ』よ。あなたが来るのをお待ちしておりました」
「マギ?マギってなんだよ!おい!」
「ゴルタス」
ジャミルは尚も青年の声を無視し、ゴルタスに向かってマギと呼ばれた少年を運べと命令していた。
命令したジャミルのその手には笛らしきものが握られていた。
「おい!聞いてんのかよ!そいつは俺の連れなんだ!連れてくんじゃねぇ!」
「さっきからピーピーうるさいなぁ。君が彼の連れ?おかしな冗談はよしてくれないかい」
「冗談なんかじゃねぇ!さっさとアラジンを返しやがれ!」
すると青年は胸から短剣を持ち出し、構え臨戦態勢に入った。
「はぁ~。……ゴルタス、殺れ」
ジャミルは心底ダルそうにゴルタスに告げた。
ゴルタスもジャミルに応え、青年に向かって剣を振りかぶった。
が、青年はそれを鮮やかに避け、ゴルタスの背後を取り首元に短剣を向けた。
「あんたらが何の目的でアラジンを連れて行くか知らねぇが、そいつは俺の友達だ!連れてくんじゃねぇ!」
「いや~、凄いね君ィ。見直しちゃったよ」
ジャミルは青年を褒めるが少年の言葉には聞く耳を持ってないようだ。
「それに比べて、お前使えないな」
そういうとジャミルは剣を抜き、何度も何度もゴルタスの腹を刺していった。
「お、おい!なにやってんだよ!仲間なんだろ?お前らも止めろよ!」
青年は声を震わせながらも声を張って、俺たちに言う。
「仲間ァ?これは僕の奴隷だよ。だから何をしたっていいのさ」
青年の言葉にジャミルだけが反応をする。ゴルタスを刺すのに飽きたのか剣はしまっている。
「(やべぇよ、コイツいかれてやがる)」
「まぁ、君の友達と一緒に居たいならついてきてもいいよ。罠避けぐらいには使ってあげるよ」
青年は少し考え、小さく頷いた。
「(……アラジンが起きたら隙を見て笛を取り返してやる)」
青年は心の中でそう決意し、ジャミルたちの後を追う。