「なぁ、アンタってあの騒ぎにその子を助けた奴だよな」
歩いていると青年が話しかけてきた。青年は先頭を歩いているので自然と俺も先頭を歩く。
「騒ぎって、あれか?小太りな奴が騒いでたやつ?」
「それだよ。俺もあん時居たっつうか、元を辿れば俺たちのせいなんだけど……」
青年は歯切れが悪くも話を続ける。
「ありがとな。本当なら俺が止めるべきだったんだろうけど、足が竦んじまって」
「困った時はお互い様って言うだろ?気にすんな」
「けど、あんたが領主様と関係あるなんて思わなかったよ」
青年は少し減滅したように言った。
「関係があるっていうかなぁ。今日までは領主の名前すら知らなかったのにな……」
「君たち、知り合いだったのかい?」
「いやぁ~、ちょっと顔知ってるぐらいっスよ」
ジャミルの言葉に少年は焦りながらも応える。
「ん?『迷宮』の形が変わってきてる?」
そして少し歩いたところに、竜の顔をイメージしてある入り口が見えた。
「これが宝物庫への入り口かぁ。どれどれ………これはトラン語かな?」
ジャミルは石碑を見ながらそう呟いた。
「トラン語……今でも南部で少数部族が使ってるってアレかな?」
ただジャミルの言葉に反応した奴がいた。そう、さっきの青年だ。
「おや?トラン語が分かるのかい?珍しいね……」
ジャミルは素直に関心した表情を見せた。
「何々、『竜の……真実点……』……あれ、違うな」
「『竜の牙を超え』『真実へ辿り着け』『すべては竜の尾にあり』……じゃないすかね」
「へぇ、知ってるだけじゃなくて読めるのか。凄いじゃないか!」
又もジャミルは青年に驚く。
「ハハハ……」
「こんな時こそキミ達、脇役の出番だよ」
ジャミルはそうサラっと言ってのける。君『達』って言葉に俺も入ってるんだろうな。
目の前には明らかな罠が張り巡らされていた。何個ものトゲが今にも落ちそうに天井に配置されている。
「き、君達って?」
ジャミルの言葉にまたしても青年が反応する。
「平民の君とディーノ。君だよ」
いつか罠避けに使われるなぁって思ってたけど、このタイミングでかぁ。
「わかった」
「なら俺から行く」
青年は一歩前へ出て、そう告げる。
「どっちが先でもいいよ~」
ジャミルがそういうと青年は軽い準備運動をし、罠の中に飛び込んでいった。
青年はトゲが落ちてくるもそれをステップで避け、何とかトゲのないエリアへと到達した。
「おぉ!ゴールだ」
「ふぅ……」
青年が安堵のため息をした瞬間
ガコンッ
青年が居たはずだったエリアの床が開き、青年は落ちていってしまった。
「あらら、死んじゃったかな?次は君の番だよ」
「あぁ」
さっきの青年のおかげでトゲが落ちる速度は分かった。俺も軽い準備運動をし、罠へと走った。
バッバッバッバッ
俺がトゲのあるエリアへと侵入すると次々とトゲは落ちてきた。
だが、俺はトゲが体を貫く直前の体に感じるトゲの風圧を利用し、トゲを回避する。
トゲが落ちてくる速度は速かった。だが、速いだけにこっちにもメリットがある。
トゲは物体だ。物体が空気中をすばやく動くと微かだが音や風を感じる。
それを利用し、体に当たるギリギリのタイミングで回避をしながらも、さっき青年が辿り着いたエリアへと到達する。
俺が辿り着くと床は開き、さっきの青年と同様、俺も落とされた。
青年の犠牲のおかげで俺も冷静な対処ができた。
壁を交互にジャンプし、落下速度を下げて、下を見下ろす。
下に行くにつれて異臭も漂ってきた。おそらく死人の臭いだろう。
少ししたら、トゲと骸骨が見えてきた。ここで死んで何年か経ってるのだろう。さっきの青年のものではないのがすぐに分かった。
俺は壁を一蹴りし、出口に飛び込む。
「あだっ!」
「痛っ!」
うまく転がり込もうとしたが予想外の出来事に驚いてしまう。
「お前さっきの!」
そう、さっき死んだと思われた青年は生きていたのだ。