この世には魔族と呼ばれる種族がのさばっている。人を欺き、人を虚げ、人を食す…自然の摂理とは弱者が強者に敗れて成り立つ事柄である。魔族と人類の歴史を読み解けば、誰しも思う当然の理、人もまた動物を狩り生きてきた歴史がある。魔族もまた生きる為に進化した形と捉えればそれはノットギルティなのだろう。
魔族は害獣だと人はいう。人の言葉を話すだけの動物、いや…騙るだけの獣だと。
助けてくれ…殺さないで…何もわからなくて…そういった言葉に耳を傾けた者達は数多くいる。それは
聖典には天地を創造した者は女神とされている。罪の裁量もまた然り…それは、その女神によって魔族もまた生み出された事になるのではないか?歴史の積み重ねにより、人の歴史となった現代では魔族は例外として描かれるのが必然であろうが、魔族もまた自然の摂理の一つとして捉えていいであろう。ならば、存在するのもまたノットギルティであろう。
「アハハ!タノシイ!タノシイネェ!」
生き物を殺すことは罪状に値しない。それを裁くのは人類の法であり、他種族たる魔族には当てはまらない。
「ぎゃぁぁぁ…ぁ…」
「ア、オワッタネ・・・ツギオマエ!」
「ひぃ!?た、助けて!」
とある森の中、大柄の人に近しい魔族がいた。その者が行ったであろう、人類が散らばっていた…頭部をもぎ取られた状態で。
「アハハ!ミテ、オマエノカゾク!」
あ…あぁぁぁ…
その魔族は楽しかった、人間を殺すのが、特に他の人間の前でゆっくり殺して反応を見るのが楽しかったのだ。捕食する動物で遊ぶ、その行為に楽しさを覚えた。
ハハハッグェ!?ナ、ナンダ!?
だがそれは、捕食する行為から逸脱したギルティな行為だ。
「生きる為に食す…魔族の本能に従い殺すことは私が許すわ」
ッ!?ダ、ダイマゾクサマ!?
「魔族も人と同様の食事をすれば…なんて今更言わないわ」
二ンゲンナラココ二!タ、タベマスカ…
「でもね…弱者をただ自らの快楽の為に陥れる…生きる行為以外の為に利用することはいけない事よ?」
ナ、ナニガ?ア、イキテルニンゲンノホウガッグェ!?
「理解できないのも私が許すわ…行きなさい」
その言葉を誰に言ったのか理解できなかった。だが、まるで角を隠すような不思議なマスクを付けた魔族から確かに聞こえたのだ。肉体の特徴から女性だと判別できたが、その背中はとても大きく、何故かとても安心してしまったのだ。
「ギルティ? オア ノットギルティ?」
彼女が呪文?を唱えると…彼女とあの残虐な魔族はまるで四角の結界へと消えていく。周りを細長い円状の結界が囲みだし、外からも見えるのに入れない、まるで観客に見えるためにそうするような不思議な結界が完成した。
「多くの同族を見てきたけど、あなたは最低の部類に属する輩のようじゃない」
「タ、タスケ…ッッマホウガ!?」
「このリング内で魔法を許されるのは私だけよ」
「グッ…オォォォォ!」
大柄の魔族は理由がわからないが、生き残るために魔族の本能より先に体が動いていた。小柄な少女に近しい体格の魔族…例え自らより魔力が上でもと。
「あ、危ない!」
その声は人間からの声だった。理由はわからない、同じ魔族同士の戦いなんて二人ともくたばれと答えるのが人類の回答として正しいことだ。だが、助けられた彼は違った。助けられた事実はあれど、確かに感じたのだ、あの背中に、あの魔族に。
ハワーッ!
その一時の不安は、彼女の独特な掛け声と共に打ち砕かれた。彼女は大柄の魔族が突撃してくる瞬間に飛んだ、いやまるで飛んだように跳躍し蹴ったのだ。奴の頭を、続けて胴体を。その威力は大柄の魔族が蹴られた個所を手で覆い、顔が汗で歪み痛がるようにして動きが止まった事から相応にあると見て取れた。
奴は何も発せない!頭が揺らされた為か!痛みによって喋れないのか!しかし、彼女は待ってくれない!
『
天秤が現れた、それは彼女の魔法。
人間は感じた、それは罪を測る天秤!彼女の存在意義、彼女を表す一つの回答だと!
「あなたの罪はもう答えている。だから裁くわ」
彼女の言葉を最後に執行される魔族への処罰!相手の背後を取り、左右の腕を交差させて逆方向に引き絞り、その腕で首を絞め、さらに後方に飛んでいく!
タ、タスケ!
あの魔族の最後の声が聞こえたが、もう遅い!
『ジャッジメントクラッシュ!』
その瞬間…辺りに粉塵が巻き起こるほどの衝撃が、彼の目の前で起こった。
あの魔族は塵へと消えていく…それを最後まで見ずに彼女は歩いていくのだ。呼び止める言葉がでない…助けられたのだ、例え同じ魔族だったにしても彼女は違うと感じている。だが言葉が、心が、動かない!恐怖が、人間としての本能が、強気者への言葉を遮るのだ。だが彼は抗った。
お、お名前は…貴方のお名前は!
その言葉を出すのがやっとだった。彼の言葉が聞こえ、彼女は一度立ち止まり彼の方を向いた。
「私の名は
彼女はその言葉を最後にこちらを振り向かなず森の奥へと消えていった。
「ジャスティスアウラ…そんな、本当に…彼女が…物語じゃなかったのか」
彼は知っていた、その名前を…魔王軍に対抗した一人の魔族のお話を、人々は作り話と否定する、たった一つの真実を。
「あの勇者一行と一時期旅を共にしたという魔族!本当にいたのか!」
秩序…その言葉を体現した魔族。悪の定義を外れた者に彼女は正義の鉄槌を下し続けたとされている。
「寄り道をしてしまったわね…元気かしらフリーレン」
それは不思議な記憶が宿った魔族のお話。この世界の魔族を魔界から来た存在と位置づけ、同族は全員魔界からの侵略者の類であると考えている謎の理論で動く魔族のお話。勿論、この世界に魔界という世界はない。
「我が父よ…私は必ず魔族の信頼を取り戻すわ。この思いがある限り、私の心はきっと動いている」
そして、魔族は本来気高く強い存在だったと考えている。勿論、最初から魔族は魔族である。
「このマスクに誓って」
偶然手に入れたマスクを、父親の物と判断して…自分は
「ちょっと体を鍛えましょう」
彼女は知らない…思い込みの果てに、
続きは自分で考えるがいい!