ジャスティスアウラ   作:記憶破損

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正義を受け継ぐアウラじゃない

 

 正義…この言葉を覚えたのは私という存在がこの世界に生まれた時からだった。魔族は親という概念を持たないと人間の間で言われているが、それは違う。全ての者に忘れられているだけだ。数億年の時が経っていれば当然だろう。

 

「ここは…魔界、いいえ…森の中ね」

 

 アウラには記憶があった。我が父であるジャスティスマンの戦いの記憶。超人と呼ばれた人類の祖にして神、そして最強の執行者にして裁定者。

 

服従の天秤(アゼリューゼ)

 

 魔族とは何か…知識はあった。人間を捕食する為に生まれた存在だと、だが同時にアウラにはジャスティスマンの魂の記憶(継承)を受け継いでいたのだ。

 

「これは…父からの贈り物、私は選ばれたのね」

 

 彼女は生まれながらにイメージがあった!裁定者としての在り方を、正義という天秤を!

 

 魔法はイメージだ。自らができる、行える、実現できると思えば発動する己の表現に等しい力。何より、彼女は生まれながらにして魔族。魔法の適正は人一倍、否!魔族十倍あったのだ!

 

「これが魔法(物理)!」

 

 ハワーッ!

 

 多くの強者たちと正々堂々戦い、正義の名の下に裁きを下す!それがジャスティスマンたる彼を見たアウラの思い、知識のない…いや何故かあったアウラが思う模範となる魔法の師だった。そして思いは加速する。

 

「ハワーッ!」

「ギャゥゥゥ!?」

 

 彼女は他者を殺すこと、傷つける事に対して何も感じなかった。それは残虐!非道!人外たる所以!完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)の血縁たる証!と思った。魔族故に人ではない。だからこそ、種族として上位であるからこそ!それ以下の雑種以下がどうなろうと感じないのは当然だと考えた。

 

「あ、あぁ…」

「森の中を一人で出歩くのは自殺に等しいわ、魔物にも対処できない人間ならね…偶然は何度も起こらない。心に刻みなさい」

「え、あ、魔…族!?どうして…たすけ…」

「…薬草を取ったら帰りなさい。待っている者の為に」

「あ…ありがとうッありがとうございましたァぁぁ!」

 

 人類を助けても…弱者を助けても、彼女の心には何も響かない。魔族故に…しかし、その志は父であるジャスティスマンの警句が叫ぶのだ。

 

正義(ジャスティス)

 

 正義とは何か…魔族として生まれたアウラには難しい言葉だった。父であるジャスティスマン、そして戦いの記憶を持ってしても魔族の心に響かなかった。だが答えは得ている。

 

 ルールだ、他者を陥れる、他者を無意味に傷つける、他者を貶す…魔族の本能を彼女は常に感じている。彼女も例外ではない、人類を、人を見ると食べたい欲求、殺したいと・・・だがしかし!なんという愚かと彼女は切り捨てた!

 

『こんな体たらくじゃっッジャスティスウーマンは名乗れないじゃない!』

 

 父であるジャスティスマンは我々魔族の祖!であるなら、我々のような欲求もあったかもしれない…だが彼が、偉大なる父が!そんな恥ずべき行いを一度でもしたか!考えたか!思ったか!ない!断じてない!弱者であろうと強者であろうと平等、裁定者としてあり続けた!

 

「もっと鍛えないと!今の私じゃ、超人にも勝てやしないじゃない!」

 

 彼女は煩悩(魔族の本能)を消す修行を何百年も続けた。己の肉体を鍛え、魔法(物理)を鍛え、一歩でも父に近づくために!それは未だに彼女を悩ます強大な思いとして燃え続けている。

 

 その思いを果たすため、修行と平行しながら技も鍛えている。残念ながら肉体を鍛えるのと、技を鍛えるのは別物である。ある程度イメージで再現できるが、効率がいいのは対人戦一択であった。魔物はただ知性のない獣、彼女にとっては動物を狩るのと同等でしかない。

 

「なんダぁ?チッせイ魔力だ、生まれたばかりの魔族かァ?丁度いイ、お前も魔王軍に来いヨ」

 

 己を鍛えるために旅をすると同族と会うことがある。魔力…我々魔族や人類、魔物も持っている潜在エネルギー…つまり超人強度。父であるジャスティスマンが1500万パワーであるなら、今の彼女や話しかけてきた魔族は1や2と彼女自身は判断するだろう。当然だ、父であるジャスティスマンは数億年生きた神なのだ、比べる方がおこがましい。

 

「もう何度目かしら…魔族として生まれながら父の志を外れた罪深き同族は…」

 

 ギルティ? オア ノットギルティ?

 

 答えは既に決まっている有罪だ!彼女の言葉でリングが現れる!処刑台だ!裁判台だ!彼女のテリトリーだ!

 

「な、ナンだこれは!貴様っ魔法ガ出ない!?」

「血の臭いがこびりついているわ…一応聞いてあげる、人間はどうやって食べたの」

「ハァ?ナニを言ってる、そんなの殺して」

「殺し方の方よ」

「あぁん?そんナの魔法なり握り潰すだけダろ!タノしかったゼ!」

「そう…なら私が裁きの技で引導を渡してあげる」

「ハ!オレより魔力が低いオマエが!ナメルなよ、魔法が使えなくともオレにはこの肉体がアる!」

 

 その肉体、アウラと比べれば大樹の如く!常人離れ、否、人類離れした肉体から出される圧倒的怪力は傍から見れば残酷な運命を待っていると予感させるに等しい現実!

 

 キェェェェ!

 

「…」

 

 アウラは動かない!両腕で腕を組み動かないのだ!どうしたアウラ!巨大な魔族がアウラの肉体を握り潰さんと両腕で捕まえる!動きもしない相手にニヤリと魔族は下劣な笑みを浮かべ発するのだ!

 

 命乞いをするなら

 

「聞き飽きたわ」

 

 ッオオオォぉぉ!

 

 巨体の魔族は機嫌を悪くしてそのまま地面にアウラを叩きつける!しかもただ叩きつけるのではない!アウラの肉体を持ち上げた際、頭を下になるようにして叩きつけようとしていたのだ!しかし、それでもアウラは動かない!腕を解くこともせず、そのままの体勢で叩きつけられようとしているではないか!?

 

ドゴン! 

 

 地面にアウラの頭部が埋まるほどの衝撃が辺りを揺らす!これほどの攻撃を受ければ頭は粉々になっただろうと考えた。

 

 

 

 

 ハッオレに逆らうカら…

 

 一時の静寂によってその者の安助が訪れる…当然だ、アウラは死んだのだ…

 

 

 

 

 

 

「気が済んだかしら」

 

 なッグぁァぁ!?

 

 

 否!アウラは未だ健全!静観していたアウラは遂に腕を解き、両腕で体を引き抜き、その勢いのまま奴の頭部に飛び蹴りを食らわせたのだ!

 

「…それだけ体格に恵まれてるのに鍛えてないのね」

 

 …!?…!?

 

 頭部に蹴りを受けた魔族は千鳥足の如く踊っている!

 

「終わりにしましょう」

 

 

服従の天秤(アゼリューゼ)

 

 

 その天秤…裁きの天秤をイメージして生まれたアウラの魔法である。普段は光輝くダンベルが出てくるが、悪を裁く際は天秤となりて悪の罪を測りで示すのだ!

 

 服従とは運命!従い、支配された者達の思いを測る具現!その測りの重さは罪の重さ!アウラの、正義(ジャスティスマン)の行いに反する行為を行えば行うほど罪は傾いていく!

 

 結果は・・・有罪!

 

「ジャッジメントペナルティ!」

 

 その掛け声と共にアウラは体格を物ともしない勢いで持ち上げた!いや、打ち上げたのだ!千鳥足でフラフラの足元に高速で近づき、太ももをしっかり押さえ上空へ向けて投げ飛ばした!その投げ飛ばされた高さは優に10mを超えている!

 

 頭が混乱の中でも打ち上げられた魔族は察した!アウラは打ち上げた直後、すぐさま飛んできて魔族の頭部を掴み勢いよく地面に向けて力を込めだしていることを!これからの自分を待ち受ける運命を!引きはがそうとしてももう遅い!簡単に握り潰せるはずと思うほどの細腕を握るもビクともしないのだ!

 

 

 死にたくなッ!

 

 悪党の最後はいつも同じ!

 

 

 

有罪(ギルティ)ーッ!

 

 

 

 そしてまた、新たな判決が決まった…アウラもまた必然の結末に興味が失せ…待ったのだ。

 

「…気づいていたか、アウラ。魔力は隠していたんだがな」

 

 その判決を見る観客のことを。その者はマントを身に着け、口元も隠す魔族だった。魔力は自分より遥かに多く、百年、二百年以上は生きてきた差があるだろうと察した。

 

「なるほど…魔力量が低いと思ったが、肉体の強化に回しているのか。魔族らしくないな」

 

 その者は何がおかしいのか、僅かに笑みを浮かべながら近づいてきた。

 

「…初対面で名乗らないのは礼儀がなっていないじゃない?」

 

 そう言われ、キョトンと表現できるほど呆けた男はまた笑みを浮かべた。

 

「そうだな、浮かれていたようだ。シュラハト、魔王軍の一人だ。お前にはこれで十分だろう」

 

 シュラハトは言い終わると同時に自らのマントを脱ぎ棄てた!

 

「勝負してほしい。こちらが勝てば魔王軍に入ってほしい」

 

 アウラは察した、シュラハトもまた自分とは違う形で志を持つ魔族であると。

 

「あなたが負けたら?」

「…これを渡そう」

「ッ!それはジャスティスマンのマスク!それをどこでッ」

「落ち着け、これは作り物だ。未来でお前が付けていたのを見て作った物だ」

「未来ですって…そう、あなたは未来を見る魔法を持ってるのね」

「先に言っておくが過去は見れない…仮に数億年前の魔族がいたとしても、魔力量の差で見えない」

 

 その言葉に僅かに落胆を感じたが、すぐさま切り替えた。

 

「この試合をすることで…あなたは救われるかしら?」

「…そうか、流石だ…ジャスティスアウラ」

「ジャスティス…アウラですって」

「未来でお前が名乗っていた」

「そう…未来でもウーマンは名乗れていないのね」

「お前は女性のはずだ…いや、そういう意味ではないのだな…終わる自分にはわからないままだった」

 

 アウラはただシュラハトに近づき頬を叩いた。それを知りながらシュラハトもまた受け入れたのだ。

 

「未来を変えたければ自分が変わればいい…さあ、始めるわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わる直前になって思い出す光景に一人の魔族は微笑んだ。血だらけのマントが煩わしい、相手からの斬撃で血だらけの服も…。今もなお互いに攻撃を予測し、避け、当て、食らうを繰り返す攻防のさなか…互いに見えた未来に同じ一つの笑みを浮かべたのだ。

 

 相手も自分も武器を捨て、肉体をさらけ出す。もう見ている者もいない、武器も必要ない…いいや、武器はもう持っている!お互いに駆け出し、最初で最後の勝負を決めるのだ。

 

 ゴングの音は鳴っている!あとは千年後の未来の為に!この拳を叩きつけるだけなのだから!





続いた!
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