ジャスティスアウラ   作:記憶破損

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ハラが減ってちゃ戦はできん!


牛丼!

 

 肉体は神秘だ。筋肉繊維一本一本の繋がりが、強く美しい筋肉へと昇華するのだから!肉体の限界を超え、鍛えに鍛えた者達は数知れず!だがしかし、その中で更なる高みに辿り着いた者達はごく一部!

 

 その者たちはどのようにしてその高みへ至ったか…。

 

 人は食事をエネルギーに変え、肉体を鍛えることで筋肉と等価交換を実現させる!魔族もまた然り…だが残念ながら人類ほどの効率はよくないのだ。魔族の肉体は魔力によって形成され、魔力の粒子の結合によって肉体が成り立っている。つまり筋肉はあっても、人間の筋肉としての機能を持つ筋肉のような魔力の筋肉なのである。勿論、人間同様鍛えれば魔力の筋肉も答え増幅するだろう。だがそれは正確には肉体の膨張であって、筋肉繊維の成長ではないのだ…。

 

 では魔族は肉体を鍛える意味がないのか?否、そうではない。魔族の肉体は限りなく魔力に近い故、自身の魔力を肉体に変換、強いては魔力筋肉の増大を促進させることが可能だ。しかし、魔族は基本そのような手間をしてまで肉体の基礎強化を行わない。魔族にとって魔力量こそ絶対の指標、肉体その物に魔力を注ぐとは即ち、せっかく増えた基礎魔力を減らす行為なのだ。なにより、身体機能を上げるより魔法を使った方が効率が良いのも事実。そもそもの身体機能がそこらの人類より優っているのだ、背格好が似通っていても種族の違いで捕食対象より圧倒している。よって、わざわざ魔力を減らす行為をする魔族はいないのだ。

 

 では効率よく魔族が筋肉を得るにはどうすればいいか!答えは一つ!食事である!

 

 

「牛丼がないじゃない!」

 

 

『牛丼』

 

 

肉!  肉!  肉!

 

 

 筋肉を付けるに適した食材!それは牛丼!牛丼とは牛肉とタマネギなどを甘辛く煮込み!丼に乗せた逸品!アウラにとってもパワーフード!ニンニク一房パワーアップ!とにかく食べたい今食べたい!

 

「そもそも牛肉が手に入らないじゃない!」

 

 残念…無念…また来週…この世界に牛丼屋は無いのだ…もっと言えば、記憶にある豊かな世界ほど需要と供給のバランスが上手く行っていない。貿易こそあるが、それこそ魔族や人間同士の争いで手に入りずらい。農場を経営していても牛は牛乳などの恵みを生み出す家畜、食べるとしても乳が出なくなった老牛であろう。調味料も勿論、醬油、砂糖、みりん・・・紅しょうがでさえ・・・アウラの口に入ることはない。

 

 

ギリッ

 

 

 だがアウラは諦めない!旅の中で秘めた思い。父であるジャスティスマンに追いつく為に身魔共に鍛える傍ら…牛丼を食べたいと常に考えていた!なぜなら牛丼である!正義も魔族も完璧もハラが減ってちゃ戦はできんのだ!

 

 

 目の前に肉がある…猪の肉だ。狩って、血抜きを行い、焼いている…調味料は塩…

 

「ッく!」

 

 醬油を作るには大豆や発酵の手順が必要だ。みりんは米こうじやもろみづくり・・・アウラは作り方がわからなかった。牛丼という完成品しか記憶になかったのだ。

 

 もしかしたら牛丼を知っている人間はいるかもしれない。魔族はいないだろう、そもそも食事にこれだけ意欲を持つ個体がアウラぐらいしかいない。・・・仮に人間が牛丼を知っていたにしても魔族(アウラ)に教えるだろうかが問題だ。

 

 魔族らしく人を襲い、脅し手に入れる手段を取れるなら比較的容易い事かもしれない。だがアウラは正義(ジャスティス)だ。そのような非道、父の志を自ら破る事などできない!

 

「・・・」

 

 …己のマスクに触れる。(ジャスティスマン)ならどうすると…

 

 

「食事中か、アウラ」

「…また来たのね、マハト」

「シュラハトがお前から学べば俺の平穏は訪れると言ったからな」

「前に伝えたでしょ、人をまず殺さない事から始めなさい…また殺したわね」

「ああ、相手から襲ってきた」

「無知は罪…でも、学ぼうとする意志がある間は見逃すわ。食べてないでしょう」

「言われた通り人は食べていない。だがなぜ食べていけないんだ?」

「…それがあなたの平穏に近づくからよ。食べるなら牛丼にしなさい!」

「牛丼?…考えておこう」

 

 魔王軍のマハトとは、それなりに交流がある。シュラハトからマスクを受け取った後、しばらくしたらこいつが来た…。

 

『俺に平穏を過ごさせてくれ』

 

 マハトは他の魔族とは違い比較的まともであった。この比較的というのは、人類に対し積極的に敵対しないという意味での比較的だ。人は殺すし食べる、まして殺す行為に対しなんとも思っていない…それはアウラ自身もそうだが、意識しているか否かだ。マハトは平穏を望みながら争いを行う、矛盾した行動でも人類に対し、意識を向けることができていないのだ。

 

「まあいいわ…やりましょうか」

「そうか。だが何度も思うが、なぜプロレスという格闘技を会うたびに」

「あなたに口で言っても理解できないのは知ってる。だから教えてる(肉体言語)でしょ?感じなさい」

 

 ギルティ? オア ノットギルティ?

 

 アウラが唱えた!試合の時間だ!魔族の心に魂のゴングを鳴らすんだ!

 

「マスクは準備したかしら?」

「ああ、これだ。俺の魔法で加工してある」

「ッ!それは…どこで」

「人間との戦争時に手に入れた物だ…この兜がどうかしたか?」

「いいえ…でも、いい兜ね。思いを乗せるには大きいけど」

「俺の思いを乗せる・・・やはり意味が理解できない。この兜を被ったところで何になる?」

「誓いよ…マスクはその思いを絶対貫くという自分との約束とでも言うのかしらね」

「…わからないな」

 

 今のマハトにはわからない!だがしかし、いつかは理解できるはずだ!人類のシルバーの兜を魔族であるマハトが!黄金に輝くマスクを生み出したのだ!光り輝く先の未来!それを伸ばすはマハトの希望!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が黄金仮面の魔族か」

 

 帝都で争いに負けた貴族が流れ着く都市、城塞都市ヴァイゼ。日々権力争いが絶えず、民は疲弊し、治安も最悪、状況を打開しようと動けば勇敢な者は死んでいく。

 

「ジャスティスアウラに続く、人類を守護する魔族と聞いていたが…」

 

 一人の男がいた。ヴァイゼの現状を理解しながらも受け入れ生きてきた男だ。その男は現状を変えようとは思っていなかった、流れに身を任せ自分の人生の在処すら流れで手に入れた物だ。…息子ができた、自分とは違い、正義感溢れる立派な息子だった。今の現状を嘆き、腐った貴族達に直訴した…結果は息子は事故に合って二度と会えない場所に行ってしまった。

 

「派手にやるじゃないか」

 

 男の周りは血で染まっている…。男自身の物ではない、護衛として来ていた者たちや同じ貴族の返り血だ。

 

「毒を持っていた。そいつは短剣、右のそいつは毒針だ。全てお前を狙っていた」

「…そうか、助けてくれたのか」

 

 男はこの現状の中でも落ち着いていた。一服の為、煙草を吸うほどに。

 

「私はグリュック…応じてくれるなら君が求める物を可能な限り提供しよう」

 

 かくして、一人の人間と黄金のマスクを被る魔族は友となった。この出会いによりヴァイゼは変わる、少し先の未来…世界にヴァイゼ名を知らしめる事件が起こる。

 

 

 

『黄金郷』

 

 

 

 

 金色に光る光沢!溢れ出る肉汁!添えられた玉ねぎ!その味はこの世界で類を見ない逸品!その名は!

 

 

 

カツ丼

 

 

 

 老若男女が笑顔で食す幻想の如く生まれた進歩のレシピ!その生みの親はヴァイゼの民なら皆が知る黄金のマスクを身に着けた一人の魔族!

 

 

 

「美味しかったよ。マハト」

「ええ、私もです。グリュック様」

  

 

 

 





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