一瞬のことだった。
疾風のように速い少女によって下劣な盗賊が瞬く間に斬られ、倒れ伏した。
振り返ると、頭に穴を開けられて即死したであろう他の盗賊が目に入る。
一体彼女は何者なのか。
そんなことを思ったのも束の間。
「大丈夫? お嬢さん」
落ち着いていて凛としたその声を聞いた時には、既に彼女の腕の中にいた。
先程までの恐怖や不快感は体に残っている。
でもそれ以上に、少女に触れられることにより得られる安心感が大きかった。
「……うん」
そんな私は、伯爵の令嬢としての立場も忘れて縋るように返事を返すことしか出来なかった。
あっぶなかった~~!!
死ぬ気で雪原を駆け抜けて、しらみ潰しに怪しい場所を探索して回った結果、ようやく俺は件の御令嬢────ルイーゼを見つけ出すことができた。
陵辱寸前の彼女を見つけられて安堵の念を抱きつつも、しっかりとロールプレイはこなす。これが美少女としてのプロの御業である。
拘束を外し、優しく抱き寄せた時にはか細い声で返事をしてくれたのだが、直後意識を失ってしまったようだった。
手遅れだったのかと少しだけ取り乱した俺だったが、目立った外傷がないことから疲れているのだろうと思い、ルイーゼが起きるまで待つことにした。
そして今。
膝枕から目覚めた彼女は、赤らめた顔を両手で隠しそっぽを向いていた。
「恥ずかしい……忘れて……」
うーん可愛い。どうやら膝枕をされたことがよっぽど恥ずかしいらしい。
「地べたに寝かせるよりはるかにマシでしょう。そんなに嫌だったかしら?」
岩がむき出しとなっている場所に美少女を寝かせるなど許されないのである。
よって彼女が起きるまでのわずかな間、俺は膝枕をしながら寝顔を楽しんでいたのだ。
「嫌なんかじゃないわよっ! ただ、あんなことをしてもらったのが初めてで……お姫様みたいだなって、そう思っただけなの」
どうやら膝枕がどうのというよりも、扱いを気にしたようである。
膝枕がお姫様につながる理由は分からないが、とにかくそういうことをすると恥ずかしがるようである。
……そうとなると、いたずらをしてみたくなるのが人の心である。
「ひゃあ!?」
ひょいっと軽くルイーゼを持ち上げて、お姫様抱っこをしてみる。
「なら、これはどう?」
あまりに急な出来事に顔を隠すことも忘れた彼女が、まともに動き始めるのには少々時間がかかった。
「なっ……ななな何をしているの!?」
俺を見つめるその瞳は、さっきよりも赤くなった顔のような綺麗な紅であった。
伯爵家のお嬢様と言うのだから、もっとお堅い感じなのかと思いきや、案外可愛いものである。
もうちょっとだけ遊ばせてもらおう……