事象の地平線にて少女(?)は踊る   作:白麻エル

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第6話 何気ない行動が美少女を美少女たらしめる

 

 美少女との出会いとは、それこそまさに天啓である。

 

 思いがけないウチコとの邂逅は、真摯に美少女と向き合う俺に天が与えてくれた奇跡とも言えるだろう。

 

 おお神よ、さらに多くのミステリアスロールプレイを遂行できる相手との出会いをください……!!

 あ、出来れば美少女でお願いします。

 

 ダンジョン前から歩いて数十分。俺はとある森の中へと入り、石で作られた神社のようなものに祈りを捧げていた。

 

 社殿の周囲には植物が生い茂っており、原型をとどめていないためパッと見では本当にこれが神社なのかは判断しかねるが……特徴的な銅板葺き(どうばんぶき)の屋根からそう推測することができる。

 

 

「…あら」

 

 ガサリ、と木の枝と草を押しのけてこちらに近づく足音。

 

 俺はインベントリからカエルムと短剣を取り出して臨戦態勢に入る。

 

 撃鉄を引き起こし、いつでも撃てるように準備を整える────はずだった。

 

 しかし俺はとある重要なことに今ようやく気付いた。

 

 本来、このタイプの銃を使用するのに必須となる弾と火薬の両方ともないのである。

 

 これかなりまずいのでは?

 こうなってしまえば短剣による肉薄攻撃をする他なくなってしまったも同然なのだが……速度特化のこのステータスでまともに戦えるとは思えない。

 

 初心者用の長剣? あれは……もう倉庫行きだね。うん。

 

 

 そんなことを考えている間にも足音はさらに近づいてくる。

 

 一度逃げるべきか? だがまだ敵かどうかすら分かってないのに逃げるのは……

 

 焦りながらも悩み続けていると、俺の少し後ろで足音が止まった。

 

「おい、そこのあんた。何してんだ?」

 不意に、俺は足音が止まった方向から話しかけられた。

 警戒心を含んだその言葉にはかなり若い、少年らしさを感じさせる。

 

「祈っているのよ」

 

 ミステリアス美少女ロールプレイングをできる人との新しい出会いを求めてな!!

 

「祈る……? あんた、何言ってんだ?」

 

 心底不思議そうな様子の声は、こちらを窺う(うかがう)ように俺の隣へと移動してきた。

 

 ちらっと見えた顔からは彼の年齢が10代半ばから後半であることが察せられる。

 

「ここ最近になって、途端に変なヤツが増えだしたが……あんたもその仲間ってこと良いのか?」

 

 武器こそ構えていないが、その表情と声色からはうっすらと敵対心を感じさせる。

 

 変なヤツってなんだ……? ミステリアス美少女ロールプレイをすること自体はいたって普通の事だし、なにか集団でやらかした人でもいるのだろうか。

 

「変……貴方からすれば、確かに私は変と言えるかもしれないわね」

 

 確かに、ミステリアス美少女とは異質な存在である。よって一般常識的には『変』と称されるてしまうのかもしれない。

 しかし、ミステリアス美少女はただの変なヤツではない。よって他との差別化を図る必要がある。

 

「だけれど、貴方の想像するような存在ではないわよ」

 

「……まあ確かに、あんたはあいつらとは違う雰囲気がするが………」

 

 彼は少し考え込むような仕草をした後、まあいいか。と自己完結させた様子でまたこちらに話しかけてきた。

 

「すまなかった。最近は常識のない無法者が増えていてな……まああんたなら、そういうこともしないだろう」

 

 ひとまずは敵対心を収めてくれたようだ。

 

 ふむ。この感じから察するに、彼は元々この世界に存在しているNPCのようだが……ミステリアス美少女ロールプレイが彼にも通じるのか、試してみようじゃないか。

 

「別に気にすることじゃないわ」

「貴方も、ここには用があって来たのでしょう?」

 

 だがその前に彼がここに来た目的を知っておきたいところである。この神社っぽいものにも何か知ってるみたいだし、色々聞いておきたい。

 

「ああ。俺……というよりうちの家系は代々はここ周辺の土地を守ってきた。だからここには見回りで来たんだ」

 

 彼の言っていることが本当ならば、この神社もどきにはかなりの秘密が隠されている可能性が高そうだ。

 

 さて、世の中にはこんな言葉がある。

 『秘密とミステリアス美少女が交差するとき、物語は始まる』

 

 つまりこの建物と俺の相性は完璧────新しいミステリアス美少女物語(ストーリー)が始まること間違いなしである。

 

「そう。今は貴方が"これ"の守護をしているのね」

 

 俺はまるでこの建物の正体と関係性を完全に知っているかのように振る舞う。

 

「『今は』って……その言い方、俺の父さんやご先祖さまを見てきたような口振りじゃないか!」

 

「さて、どうかしらね」

 

 鬼気迫る様子で彼は俺の言葉に食らいつく。

 

 ふむ……名将アルシオーネ、この少年の家族関係には深い事情があると予想致す。となれば少し掘り下げてみよう。

 

「ただ……あんな事が起こるだなんて、私でも少し想定外だったわ」

 

「おい…おい! そんなことを言うくらいだ、俺の父さんがどこに居るのか知ってるんだろ!? 俺が幼い頃、いつも通り見回りをしていたはずなのに何も残すことなくいきなり消えた父さんのことを!」

 

 なんの予兆も無い行方不明……この世界においてはモンスターや盗賊の襲撃による死が考えられるのだが────

 

 いつも通ってる道に対処しきれないような強いモンスターが出現することなんてそうそうありえることではないし、盗賊によって襲撃されたとしても遺体や遺品はその場に残るだろう。

 となれば考えられる行方不明の原因は1つに絞られる。

 父親の蒸発だ。

 

「あれは仕方の無い事だったの。今貴方が父親を捜索したってどうにもならない可能性が高い」

 

 けれど、と続ける。

 

「それでも父親を諦めきれないと言うのなら、もう少しだけ時期を考えることね」

 

「時期…?」

 

 この世界の人間は一般的に、肉体の成長と同時に魔法の扱いにも才────スキルが現れるようになる。

 

 彼がまだスキルを持っておらず、これから取得出来るチャンスがあるのならば蒸発した父親を探すことだって────

 

「そんなこと言ったって、最近発現したスキルなんて矢が当たりやすくなる《アローサイト》とちょっと空気が綺麗になる《エアークリア》だし……もう、父さんを見つけられる希望なんてないんだよ…ッ」

 

 ダメだった。こんなのでこの広い世界から父親1人を探し出すのは無理である。

 

 どうしよう。もうはぐらかすしか無くなちゃったよ……

 

「いいえ。貴方には必ず絶好の機会が訪れるわ。だからそれまでに出来ることはやっておきなさい」

 

「絶好の機会…? 正直、あんたの言ってることは理解に遠く及ばないんだが……完全に諦めるよりはまだマシかもな」

 

 そう言って彼はわずかな笑みを浮かべた後、踵を返して森の奥へと向かっていった。

 

 彼が視界から完全に消える直前、俺はこんな言葉を送る。

 

「貴方の道は貴方が切り開くもの……これに他の意思が直接干渉することなんてありえてはならないことよ」

 

 つまり自分のことは自分で頑張れということだ。

 これは無責任に投げ出したという訳ではなく、純粋な応援の気持ちである。

 

 彼は一瞬だけ動きを止めるが、すぐにまた何事も無かったかのように歩き出す。

 

 彼ならばきっといつかは父親を見つけ出すことだって出来るだろう。

 

 彼の願いが叶うことを、目の前の神社で祈っておこう。

 

 

 

 

 祈ってる姿もまた美少女としてエモいんじゃないか…?





可愛らしいアイドルをライブで見たとき、貴方は「可愛い」と言うことでしょう。
評価を付けると言うことは、それ似通っています。

思ったことを表に出す。両者ともにそれだけの事です。それだけで互いに幸せになれるのです。
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