IS×GARO《牙狼》~闇を照らす者~   作:ジュンチェ

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最終章・金色になれ篇
華~Wild flowers~ 前編


「あ……ああ…」

 

箒は未だに目の前の事象が受け止められていない…。いや、解してしまったその時に自分の胸の奥底で大事な柱が壊れてしまうような気がして理解するという行為そのものが行われていないのだろう。

されど、現実は不気味な笑みを浮かべながらゆっくりと歩み寄ってくる…。

 

「箒…久しぶりだな。随分と見ないうちに綺麗になったなぁ?そういえば、剣道の大会で1位になったんだっけ?おめでとう……」

 

「黙れ!お前は、一夏じゃない!一夏じゃない!?」

 

「あん?この顔を見てまだ信じられねぇってか?千冬姉とそっくりだろ。」

 

違う!例え、同じ顔と声をしていようとアイツはホラーになったりなんかしない。箒は否定する…

そんな彼女を嘲笑すると、彼はああ…と思いだした顔をして口を開いた。

 

「…なあ、箒?覚えているか…最後の約束?」

 

「…!」

 

やめろ……それを知っているのは自分と流牙だけだ。約束とすれば思いあたるのひとつしかありえない。

 

「俺と別れる時に言ったよな……」

 

「……やめろ…やめてくれぇ…」

 

それ以外としたら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『黄金騎士になる』ってよぉ。」

 

 

 

 

 

…交わした本人、織斑一夏しかありえない。

 

 

「う…ああ…うわあああぁあああああああああああぁぁあああああああああああああああああああぁぁああああ!?!?!?!?嘘だぁああああぁああああぁああああ!!!!」

 

 

途端、箒は全ての正常な思考力を奪われ発狂しながら頭をかきむしった。決壊したダムが如く表現できない激流のような感情が身をかき回し、のたうちまわり拒絶する力を最大に振り絞ろうとするも何も変わらない。涙を目から吐き散らし、悲痛な叫びで吠えても何も変わらない…

そんな彼女を見据えて『一夏』はニヤリと笑うと再び魔導ホラー態となり一気に迫り来るッ!

 

「箒!」

 

咄嗟に流牙は前に出て箒を庇う…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ギャンッ!!!

 

『むっ!?』

 

 

その時、藍色の影が素早く遮り一夏は飛び退いて距離をとる。何者だ!?無粋な邪魔者はボロボロな一行の盾になるように猛禽のような翼を拡げ、鋭い嘴のような兜で魔を見据えていた。

 

「あ、アイツは…!?」

 

踞っていたタケルは気がついた……ラウラのブリュンヒルデ戦の時に突如として現れたあの騎士であると…

 

 

 

 

『幻影騎士 吼狼~Crow~』

 

 

 

 

 

 

幻が如く現れ、幻のように去り行く騎士。日本刀タイプの魔戒剣を突きつけ、一夏と対峙すると…一夏はジリジリと歩を退けていき……舌打ちするとこちらも翼を拡げて夜空へと逃げ去っていく。そのあとを、ゲイヴォルグを撃退したISが再び飛来して追撃へ向かう。

 

「……はぁ…はぁ…」

 

一旦は去った脅威。流牙は糸が切れたように崩れ落ちると、仰向けになり辺りを見渡した…。

 

……ボロボロになった仲間たち

 

……手も足も出なかった自分

 

……あまりの悲劇に我を失って狂い泣く箒

 

 

 

 

獲られたものなど何も無い。深く抉られた完全敗北という傷に……流牙は誰もいない暗い虚空へと悔しさに吼えた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EP【華~Wild flowers~】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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それから、旅館に帰還した流牙たちは福音撃墜の喝采を受けたが……誰一人として笑顔の者はいなかった。千冬が気を効かせ、すぐに流牙は寝床へ向かわせられたが全身の痛みと昂る感情でとても眠れそうに無かった…。

 

(また……守れなかった。今度こそ、守り抜くと誓ったのに……)

 

何より、流牙に重くのし掛かっていたのはリアンのこと。幸い、命に別状は無いが千冬がつきっきりで今晩は看病を行うらしい…。

ならば良いと片付けられる流牙ではなかった。かつて、鈴音の父親を助けられなかったからこそ過ちを繰り返さないつもりで戦ってきたのに…自分はリアンを助けられなかった。あと少し、奴の加減が違っていたら命を落としていたかもしれない……

 

「クソッ!」

 

無意識のうち、流牙は壁を殴っていた……。

 

 

 

 

 

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明朝……

 

 

起床した箒の顔は悪い意味で凄まじいものであった。血色は悪く、目の下には隈…果ては髪もやつれ気味と酷い有り様。恐らく、昨日のショックからずっと眠りが救ってくれるまで泣きはらしていたのだろう……その様相ときたら、ねだって貰った専用機のことで嫌味な1つでもと思っていた同級生が思わず退くほどだ。

 

「いちか………」

 

おまけに、口を開けば呪文のように一夏とうわ言を連綿と続けている彼女に同級生はおろか、ある程度親しくしていた者すら近づこうとしなかった…。すると、廊下を歩いている最中…ある部屋の目の前で、とある人物を見つける。

 

「……道外?」

 

それは、まさに道外流牙その人。彼は部屋に入ろうと手を伸ばしては見るも……すぐにその場を逃げるように去っていってしまった。何だろう…?箒がそこへ行くとすぐにわかった。

 

「リアンの…部屋?」

 

そうだ、彼女は昨日からつきっきりの看病が必要な状態なのである。即ちら寝たきり…。よって、お見舞いには来たものの罪悪感から逃げてしまったというわけか。

 

「あ……箒…」

 

その時、ちょうどいれかわりで鈴音と出くわした。彼女もつらそうだが、箒に比べたら随分とマシ… いいや、箒が酷すぎるだけか……彼女は苦笑いをしながら溜め息をついた。

 

「あのさ……私とセシリア…それにラウラと簪…クビ宣告を受けちゃってね。苻礼法師に……」

 

「!」

 

不意な言葉。自分のことでパンパンだった頭の中に投石されたほどの衝撃な事をさらりと彼女は言った…。壁に寄りかかると遠い目をしながら鈴音は続ける……

「正確には今一度、考える暇を与えるってことなんだけど。まあ、あれだけ惨敗すれば仕方ないか……。甘かったわ、何もかも。私にはISがあって、法師の見習いとしてまだまだでも、流牙がいれば誰だろうと負けることないって今までずっと思ってきた。だけど、違った…『アイツ』はそんな根拠の無い自信を粉々にうち砕いていった。」

 

アイツ……即ち、一夏なのは間違いない。実際、全く連携も何もかも役にたたず弄ばれるだけだったのだから。

鈴音はこの時、自分がどれだけ愚かか理解した。未熟な自分を結局は流牙にすがる形で去勢を張っていたに過ぎないと。流牙が敵わない相手の時、どうしようも出来なかった自分は役立たずであると…。だから、苻礼法師は今一度…まだ普通の世界に帰れる機会を与えたのである。

 

「ハッ…意地でも流牙についていくって言いたいんだけどさ。言えないんだ……。怖いんだ。また、アイツと戦うとしたら今度こそ…って思うと怖いの。嫌なのに、身体が震えるの…逃げたいって。」

 

箒はこんなに怯える彼女を見るのははじめてだった。底知れぬ恐怖がいつもの彼女の快活さと元気を縛っている…。非情なまで絶望的な現実が恋する少女の心をヘシ折ろうとしていた。

 

「……私たちのしてきたことは、アンタたちの足を引っ張るだけだったのかな?」

 

「そ、そんなことは…!」

 

 

 

 

「どーしたの、2人して?」

 

 

「「!」」

 

その時、ふらりと現れたのはシャル。箒らとは違い、笑顔の彼女の傍らにはセシリアやラウラ…簪の姿もある。こちらは鈴音に負けず劣らずの暗い顔だが……

 

「リアンのお見舞いに来たんでしょ?なら、こんな所に突っ立ってないで……」

 

彼女は来るなり、何の躊躇いも無く部屋を開けた。心の準備をなにもしてなかった少女たちは慌てるももう遅い……。

 

「あはははははは!そうよね、その時の流牙ときたら…!」

 

え?少女たちは戸惑った。昨日、あれだけボロボロにされたはずなのに何故……

 

「ん?あ、皆きてくれたの?」

 

…リアンは起き上がってピンピンしているのだ?

 

「む、来たか。そろそろだとは思っていたが…」

 

「織斑先生!?これはいったい……リアンさんの身体は大丈夫なのですか!?」

 

セシリアは驚愕せざらえなかった。昨日は意識すら朦朧としていたのに、平然と千冬と談笑している彼女はどんな身体をしているのか理解し難い。すると、リアンは腰に手をあて不遜に笑う。

 

「これでも、アナタたちより長く魔戒法師やってるのよ?これくらいじゃ、へばってられないっての!」

 

随分とタフ…やはり、経験の差というものはこうもあると凄まじい。まあ、一安心といったところだが…逆にリアンは彼女らを心配していた。

 

「それより、そっちは大丈夫なの?随分と手酷くやられたようだけど…?」

 

…これに関しては少女たちは黙ってしまうしかなかった。リアンもこれは失言だったと察し、千冬に話題を投げかけた…。

 

「そうだ!千冬先生、あの話…皆にもしてあげましょ。」

「む…さっきのを最初からか?そうか…気晴らしには良いかもな。」

 

話?少女たちは首を傾げる。リアンと千冬…あくまで協力者同士の関係で特に深い関係など無さそうだ。しかし……

 

「大して面白いものでもないが、私と道外たちがはじめて出逢った時の話だ。」

 

関係の長さではいえば、担任と生徒の期間より遥かに長いのである……。

 

 

 

 

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それは……少女たちがIS学園に入学する前…正確には道外流牙がISに触れる前と言ったほうが正しい。当時、千冬はISの世界大会2連覇を成し遂げ一躍、時の人となっていた。さぞ、華やかな生活がと思われていただろうが実際はかなり違う。

 

「うえぇ~……ひっく。」

 

毎日、夜になると酒に溺れてウロウロと人混みをさ迷い歩き…酔いが回りきってべろんべろんになると近くの食堂に転がりこむのが日課になっていた。まあ、こんなことが出来るのは顔馴染みの場所であるからこそ……

 

「ただいまぁ…!」

 

「ただいまじゃねぇよ!?ここ、あんたの家じゃねぇし!?」

 

ガラガラと戸を開けるなり土砂のようになだれ込めば赤毛の長髪にバンダナの少年がやってくる。『五反田 弾』。この食堂を実家とする少年で、千冬とは顔馴染みの仲…詳しいことはまず置いておこう。まず、弾はこの迷惑な客を手慣れた様子で椅子に座らせると奥の台所へと走っていく。

 

「酒もってこぉ~い、一夏~!」

 

「ふざけんな、酔っぱらい!あと毎度言ってるが俺は一夏じゃない!!」

 

こんなやりとりいつものこと……暫くすると、眠気に誘われてテーブルによりかかる千冬。ぼーっ…とする頭の中、ふとした瞬間に見知らぬ人影が目の前に水が入ったペットボトルを置いた。

 

「あんた、飲み過ぎだよ?まだ口開けてないから、これ飲みな。」

 

「…?」

 

誰だろう?見覚えは無いが……雰囲気は誰かに似ている気がする。優しい空気…た………し……か……

 

「い……ち…?ぐぅぅ……」

 

すると、とうとう睡魔に呑まれてしまう彼女。全く、呆れたと人影の指輪は呟いた。

 

『やれやれ、寝ちまったようだな?』

 

「ザルバ、本当にこの人なのか…?」

彼は…まだ、白狼に出逢う前の流牙。つまり、セシリアや箒のことも知らない頃。千冬とも初対面でその感想は……

 

(酒臭い……本当にブリュンヒルデと呼ばれた人なのか?)

 

流牙はきっと、魔戒騎士とも負けず劣らずの凄まじい屈強かつ誇り高い女性だと予想していたのだが…。実際はただの飲んだくれ…だらしないこの上なく、他人の家で好き放題して寝る始末。拍子抜けも良いところだ。

そこへ、お冷やを持った弾がやってきた。

 

「お?流牙か……悪いな、取り込んでてな。ほい、指令書。」

 

彼は流牙に赤い封筒を手渡すと、流牙はそれを魔導火ライターで燃やす…。すると、魔戒の文字が空中に並んで文章を形成する。

 

「番犬所からだな…。陰我が収束されし者、織斑千冬を守れ、だと。襲いくるホラーがあれば全て討滅せよ。珍しいよなぁ……あの胡散臭い三姉妹神官が個人を守れとはねぇ。」

 

「この人を利用してより1体でもホラーを狩れ…ってことだろ。」

 

「だろうな。まあ、仕方ないさ…今はこんなでも時の人だ。」

 

何の気なしに会話をしているが弾も『協力者』である。経緯はセシリア等とはまるで違うのだが…彼は主に組織からの指令の仲介を担っているのだ。

 

「この人、どうする?」

 

「あー、そうだなぁ。ここは置いておけないし、家に帰さないといけないんだが……」

 

「わかった。手伝う。」

 

「話が早くて助かる。」

 

とりあえず、弾からの依頼を受け…千冬をおんぶして自宅におくることにした流牙。夜道に出た彼等は弾が先導し、流牙が後に続く……。夜はホラーの時間…細心の注意をはらいながら進む中、重みを感じる背中に握りしめられる感覚……

 

「いちか………ぐずっ」

 

「…」

 

泣いていた。背中で揺られている世界最強と謳われた女が泣いていた…。

誰かの名前をしきりに呟いているようだが真意は解らない。そうしているうちに、彼女の自宅の前に着いた…。

 

「少し待っててくれ、鍵を開けるから。」

 

すると、弾は千冬のスーツのポケットから鍵を手慣れた様子で抜き取り、施錠を解除。そのまま、お構い無しに上がると『うっ…』と口許を覆った。

 

「うわっ…。相変わらず、ヒデェ臭いだぜ。」

 

弾は愚か、流牙すら中を見て言葉を失う。入る前は小綺麗な家と印象を受けたが、中に入れば玄関から既に空き缶などが散らばったゴミ屋敷という有り様だったのだから。ハエやゴキブリがいないのが、せめてもの救いでもあるが…年頃の女性で時の人が住む場所には到底思えなかった。

 

「そこのソファーにでも、置いとけ。それで、充分だから。」

 

さて、やるべき事は終わったと帰路に向かおうとする弾。流牙も後ろ髪が引かれるようなものがあるが…仕方無しと千冬をソファーに寝かせた時にふと、ある物が目がつき手にとった。

 

「弟を……さがしています?」

 

それは、彼女に似ている少年の顔が印刷されたチラシ……。流牙はこれに耳を当ててみると…

 

【弟をさがしてます!何でも良いんです!!お願いします!お願いします!】

 

流れてきた思念は千冬が必死にチラシを配り、少しでも情報を得ようとして……結局、収穫無しに戻る日々だった。涙を呑み、孤独に耐え…時に警察にもすがるも、門前払いを喰らい…悔しさに歯噛みし…やがて、酒に溺れていく姿は見るに耐えないものである。

 

「ああ、それか。弟だ……随分と前に行方不明になっちまったんだ。」

 

みかねたて説明する弾。成る程、恐らくはこれが原因で彼女はすさんでいったのだろう。不安に取り憑かれ…徐々に精神の安定さを失っていき、ついには堕ちぶれてしまった。哀れと無情に斬り捨てるには彼女は悲しすぎた……

 

「見つかってないのか?」

 

「見つかってたら、こんなに荒れるかよ。」

 

「…」

 

「よせよ、流牙。同情しても、本人が辛いだけだ。」

 

でも、このまま放置して良いのか?また、酒を千鳥足になって酔って潰れるまで煽り、たった独りの我が家に戻る生活。こんなことを繰り返していたら、いずれトラブルに巻き込まれるか身体を壊すに決まっている。

同情は重荷になると言われてもやはり……

 

「…放っておけない。」

 

流牙は魔法衣を彼女にかけると、千冬はすやすやと寝息をたてはじめた。無論、隣で見ていた弾は黙っていない…

 

「おい、流牙…。たく、俺は知らないからな!後始末なり何なりは自分でしろよ!!」

 

「ああ。わかってる…。」

 

 

 

こうして、流牙と千冬の出逢いは始まった…。しかし、彼女が流牙の正体を知るのはもう少し先の話である。

 

 

 

To be continued…

 

 




挿絵つけてみたんですがね。ええ、アナログは厳しゅうございます。箒とガロが描くのに同じくらいかかったのは内緒。
さて、それも1つなんですが私、機種変することになりまして現行の端末から移行する際にこちらのアカウントも引き継ぐつもりですが、万一に失敗した場合は現存する作品は新規アカウントで引き継ぐ所存です。

さてと……プリヤ翔もヨロシクネ!

それにしても、最近は仲良くさせて頂いている作者様のガロ作品が更新されなくて寂しくもあります。

感想お待ちしてます!あと、挿絵とか要望がありましたら気が向いたら描くかもです。


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