ありふれた世界で死が見える剣士が世界最強に 作:烙印バンザイ
時間が経ち、快楽も抜けきり汗が大量に出ていたので着替えることになったのだが簡易更衣室から出てきた天之河と坂上と谷口の雰囲気が重かった。
媚薬効果の間の記憶は残るようでギクシャクしていた。顔を合わせることなく微妙な距離をとっており、谷口は雫に隠れていた。
「鈴……忘れましょう? あればっかりは仕方ないもの。最後の一線は越えなかったのだし、あんなの忘れてしまうに限るわ。誰だって、思い出したくない思い出の一つや二つあるわけだし……」
「……シズシズ」
「ほら! 私なんて、そうとは気づかずにエッチなゲームコーナーを彷徨ったあげく、商品を物色してしまったことがあるのよ? それはもう真剣に! 周囲の男性客が、あの時、私をどんな目で見ていたのか……思い出しただけで欝になるわ……」
「……シズシズ、エッチなゲームに興味があるの?」
「ないわよ! あれは、そう、不幸な事故だったのよ」
「……ふ、くふふ、真剣な顔でエッチなゲームを吟味するシズシズ……ぷくく」
「鈴、笑うのは流石にひどいわ……」
「……南雲、その、面倒を掛けた。止めてくれて感謝するよ」
「ああ、そうだった。助かったぜ、南雲。マジでありがとよ」
「ああ、たっぷり感謝しろ。恩に着まくれ。借りを常に意識しろ。そして、いざという時は肉壁になる覚悟で俺に返せ。間違っても踏み倒すなよ? 地の果てまで追って返済させるからな」
どうやら微妙な空気が解決したが南雲の台詞はどこかのヤクザだった。
「大変だな……」
「こういう時、刀真君て、他人事のように言うよね」
「まあ、そうだな」
この後、あのスライムは襲ってくることは無く巨樹のもとへたどり着いた。今回も洞が出来上がり中に入ると転移陣が起動して俺達は転移した。
————
転移したところは、洞の中だった。前とは違うのは正面に光が見えるのだ。外に通じる出入り口が最初から開いていた。
「これは……まるでフェアベルゲンみたいだな」
洞の先はその先は通路となっていたが、その通路は洞から続く巨大な枝だったのだ。
フェアベルゲンと似ていて空中回廊なのだがこちは巨木一本から生えた枝だけで広大な空間に空中回廊になっていた。
「……大樹?」
「そういうことになりますよね。ここは大樹の真下の空間ってことですか」
「でもそれだと、地上に見えてた大樹って……」
「ふむ、地下の幹から枝が生えているということは、本当の根はもっとずっと地下深くということじゃ。ならば、地上に見えていた部分は大樹の先端部分という事になりそうじゃの? いやはや、大樹の存在は知っておったが、まさかあれがほんの一部だったとは……」
「本当の大きさはどれくらいになるんだ?」
「まあ、それほど…デカいって……うん?…なんだ?」
「……」
「刀真君、琥珀どうしたの?」
「なんか前に大量の気配がするんだけど…なあ、こは……琥珀?」
下の方向から大量のなにかがいる気がした。
「……ぶつぶつ…」
「琥珀?琥珀さん!?」
「ぶつぶつぶつ……」
琥珀のあの様子、下の方にいる何かの存在がなんなのかわかった気がした。
シアはそっと下を覗き込んでいた。
「ん~? 暗くてよく見えないです。……あの、ハジメさん」
「どうした?」
「何だか下から嫌な感じの音が聞こえてくるんです。でも私の目じゃ暗くて正体が……」
「待て…南雲。」
「…どうしたんだ刀真?」
「いや、その正体…分かったわ……うん、いや…あれは少し…うん」
「……?何なんだ、その正体は」
「うーん、簡単に言えば、嫌いな人が多い黒い奴かな……あと飲食店とか家庭の敵だな」
南雲はクロスビットを飛ばし小型の水晶ディスプレイを皆が見えるように掲げた。
そこに映っていた物は…
「「「「「「ッ!?」」」」」」
地下空間には測定不能な数のゴキブリが蠢いていた。
「な、なんてもの見せるのよ……」
「うぇ、GがGがあんなにいっぱい、いっぱいぃ~」
「……ハジメ、焼き払おう」
「……南雲さん、爆撃しましょう。」
「……やめといた方がいいんじゃないか。あの数だぞ? ……撃ち漏らしが大量に飛んできたらどうする」
「「「……」」」
何人かは数千ものゴキブリが一斉に飛んでくる…そんなことを想像したのか顔を青ざめた。心が折れたようだが
「問題…ありません。全部潰せばいいんですよ?」
約1名、殺意に燃えている人間がいた。
「「「「琥珀(さん)!?」」」」」
「アレは、害虫です。害虫では死徒蜂みたいな物なんですよ……つまり敵です。殺す対象です。」
「待て待て待て…死徒蜂?いまはゴキブリだろ?何で蜂?」
「…ゴキブリは害虫です。あのくそ蜂と同じ害がある物です。」
「というか死徒蜂とはなんだ?」
「害虫です。」
「「「あ、そうですか。」」」」
「でも飛んできたら」
「そんなことはどうでもいいです…殺す…それだけです。」
琥珀は過去になにかあったのか分からないがヤバかった。
「琥珀、落ち着いて」
「落ち着いていますよ。お嬢様…」
「落ち着いてないよ!」
その後、何故か春乃に念話でこれをしたら止まるよと言われたので言われた通りにしてみたら落ち着いたが顔を赤くしてしまった。
「……」
「あの?すみません……悪かったと思ってるよ本当に悪いな」
「いいえ、こちらこそすみません……なので刀真…やめてください…恥ずかしさと申し訳なさとあと一つの感情がぐちゃぐちゃになっているので…あと視線が辛いです。」
何故か春奈と雫が視線を送っていた。
「ねえ、南雲くん両儀くんはいつもこんな感じなの?」
「まあ、そうだな……大体、こんな感じだな。」
「まあ、刀真ですから。昔から女装に対しては恥ずかしいと思っているようですがある事について何処かへ捨てたんじゃないかて思っていました。」
「気遣いとかは普通にできて勘も鋭いけどある事になると鈍いよね」
「酷くないか?」
「本当のことなのでしょうがないですよ。少し黙ってください。鈍感朴念仁」
「え、おい」
「そうだよ。いくら朴念仁だからって」
「……」
「ただ、ある意味、女の敵なだけだよ」
「春奈さん?」
「まあ、ある意味その通りだわ。」
「ちょっと待てくれ……俺に味方はいないのか?」
(まあ、女性関係に関して言えば、あの勇者(笑)よりも酷いからね)
春乃にまで言われてしまった。というかもとは春乃の提案だったのだが。
「というかなんで刀真さんはお姫様抱っこをしたんですか?」
「うん?提案されたから」
「提案?誰からなんだ?」
「あ、もしかして。」
春乃ことを知らない三人以外は気づいたようだ。
「え、私たちだけ知らないの!?」
「とりあえず試練が終わった後にお前ら三人にも話しておくよ。今は面倒だ。流石に説明していてうっかり落ちてしまったらしんどいだろ。」
琥珀のある一面が知られたのと俺がなぜかおかしいという話も終わり。俺達は遠くに枝通路が四本合流していて大きな足場になっている場所が見えていたので、一行はそこを目指すことになった。
落ちないように慎重に進んで行き大きな足場に到着したが予想していた最悪な事が起こった。
ウ゛ゥ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛!!!
「うぅおおおおおお!!」
「やぁあああああ!!」
「ひぃいいい!!」
「くるなぁあああ!!」
「ッ――――!!」
「……」
誰もが咄嗟に出せる攻撃を出していた。
どれだけ迎撃しても黒い生物の津波は衰える事なく俺たちに向かってきた。
「うぅ、――〝聖絶ぅ〟!」
谷口は、半分泣きながら、障壁を張っていた。その直後、真上から音がしたので上の方を見てみるとせり上がっていたゴキブリの波が一気に落ちてきた。
「――む、り」
「鈴ぅ! 寝るな! 寝たら死ぬぞ! 俺達の精神がっ!!」
谷口が気を失ってしまった。天之河は必死に励ましていた。
確かに人によってはトラウマになるものだった。
「ユエ、重ねて防御を頼む」
「……ん、絶対破らせない!」
ユエが谷口の障壁に重ねって張った。障壁の外はゴキブリにより黒く染まった。
「何だか、この迷宮に来てからこんなのばっかりですね……」
「今までの大迷宮以上に厄介極まりないの~。ふむ、やはり、他の大迷宮の攻略を前提にしておるだけに、あるいは難易度も数段上に設定されておるのかもしれんな」
「れ、れれれ、冷静に分析してないで何とかしないと!」
「香織、大丈夫よ、問題ないわ。あれは唯の黒ごまだもの。黒ごまプリンとか黒ごまふりかけとか、私、結構好きよ。特に〝黒ごまふりかけしょうゆ風味〟は美味だわ。ご飯がとてもすすむの」
「雫ちゃん!? どうしよう、雫ちゃんが既に壊れかけてるぅ!!」
「え、雫もか!?こっちも落ち着いて欲しいんだが誰か落ち着かせるのを手伝ってほしいんだけど」
「……殺す…殺す…殺す」
琥珀はどこかからミニガンを取り出した。
「おい!?琥珀、そこから撃つと障壁が壊れる!?」
琥珀をなだめようとした時、異変は起きた。障壁に集っていたゴキブリが一気にひいていったのだ。
ゴキブリの波は球体になり円環を作り出した。ゴキブリは円環の並びだし空中に何かができていた。
「おいおいおい、まさか……魔法陣を形成してるのか?」
危険を感じ攻撃を再開したが他のゴキブリが肉壁になり妨害をされた。
魔法陣が完成したのか中央にあった球体が姿を変え全長三メートルほどの巨大ゴキブリとなった。
「ギギチチチチチチッ!!!」
どうやら巨大ゴキブリは他のゴキブリを操れるようだ。ゴキブリが新しい球体を作り出していた。
(何かがおかしい)
空中にある球体には危険を感じなかった。それよりも危険を感じたのは下の方からだった。
「チッ、させるかッッ!?」
「……んっっ!?」
南雲とユエは新たなゴキブリの出現を止めるため攻撃を仕掛けようとしていたその瞬間、足元から魔力の奔流が発生した。
視線を下に向けると無数のゴキブリが魔法陣を作っていた。どうやら空中の魔法陣はおとりで本命の下の物を隠すためのものだった。爆発したかのような閃光が周囲一帯を包み込みこんだ。
閃光が収まり自分の状況を確認したが無傷だった。春奈達の方を向いたが
「……これは?」
普段感じる感情とは逆で敵意を感じた。
感情の反転の時の構成に悩んでいます。