ありふれた世界で死が見える剣士が世界最強に   作:烙印バンザイ

30 / 93
 作者「なんかいつもより長くなったな」
刀真「どうした作者」
作者「いや最近、休みの日ができて書いてみたら思った以上に長くなったら」


二十八話

 しばらく歩くと霧が晴れた場所に出た。道の端に誘導灯のように青い光を放つ拳大の結晶が地面に半分埋められている。そこを境界線に霧の侵入を防いでいるようだ。南雲とユエがその結晶の話を聞いていた。そうしているうちに門が見えてきた。ギルが門番と思しき亜人に合図を送ると、ゴゴゴと重そうな音を立てて門が僅かに開いた。周囲の樹の上から、俺達に視線が突き刺さっているのがわかる。人間が招かれているという事実に動揺を隠せないようだ。アルフレリックがいなければ、ギルがいても一悶着あったかもしれない。おそらく、その辺りも予測して長老自ら出てきたのだろう。門をくぐると俺達は、唖然としていた。それを見てアルフレリックは誇らしげだった

 「ふふ、どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

 「ああ、こんな綺麗な街を見たのは初めてだ。空気も美味い。自然と調和した見事な街だな」

 「ん……綺麗」

「この感じ懐かしいですね」

 「あ、そういえばそうだね」

 「そういえばそうだったな」

そういえば琥珀は、YAMA育ちだった。琥珀は、山に赤ん坊の頃に捨てられていてひろわれたんだった。そういえば琥珀の育て親も、YAMA育ちの魔術師殺しだったわ。

 「それをいいますと、刀真、貴方もYAMA育ちの祖父母に鍛えられているじゃないですか」

「それもそうだな」

「さっきからYAMA育ちてなんだ」

「「「異常者」」」

 まあ、そんな事を話しながら亜人族達からの視線をあびながら移動した。

「……なるほど。試練に神代魔法、それに神の盤上か……」

 現在、南雲が説明をしていた。アルフレリックの顔色は変わらなかった。この世界は、亜人族に優しくないので神が狂っていようが関係はないらしい。俺達は、アルフレリックから掟のことも聞いた。

 この樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れたらそれがどのような者であれ敵対しないこと、そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くことという何とも抽象的な口伝だった。

 【ハルツィナ樹海】の大迷宮の創始者リューティリス・ハルツィナが、自分が〝解放者〟という存在である事(解放者が何者かは伝えなかった)と、仲間の名前と共に伝えたものなのだという。フェアベルゲンという国ができる前からこの地に住んでいた一族が延々と伝えてきたのだとか。最初の敵対せずというのは、大迷宮の試練を越えた者の実力が途轍もないことを知っているからこその忠告だ。

 「それで、俺は資格を持っているというわけか……」

 南雲が把握していた。まあ、俺達も一緒に攻略したけど。オルクスの遺産を管理しているのは、南雲だか…下が騒がしくなってきた。俺達は、顔を合わせ同時に立ち上がった。

 階下では、大柄な熊の亜人族や虎の亜人族、狐の亜人族、背中から羽を生やした亜人族、小さく毛むくじゃらのドワーフらしき亜人族が剣呑な眼差しで、ハウリア族を睨みつけていた。部屋の隅で縮こまり、カムが必死にシアを庇っている。シアもカムも頬が腫れている事から既に殴られた後のようだ。

 俺達が階段から降りてくると、彼等は一斉に鋭い視線を送った。熊の亜人が発言する。

 「アルフレリック……貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた? こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど……返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ」

 あの亜人族達は、長老で全員アルフレリックに視線を送っていた。

 「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

 「何が口伝だ! そんなもの眉唾物ではないか! フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」

 「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」

 「なら、こんな人間族の小僧が資格者だとでも言うのか! 敵対してはならない強者だと!」

 「そうだ」

 熊の亜人族は、こちらを睨んできた。どうやら口伝に対する認識はそれぞれ違うらしい。

 「……ならば、今、この場で試してやろう!」

 熊の亜人族は、いきなり突っ込んできた。しかも、春奈を狙ってだった

 「バカやめとけ」

俺は、熊の亜人族に忠告しようとしたが春奈を狙ったのが間違いだ。春奈を狙った瞬間、琥珀が春奈と亜人族の間に入り拳を片手で止めていた。俺達やハウリア族以外は、驚いていた。

 「ぐっう! 離せ!」

 熊の亜人族は、距離を取ろうとしていたが琥珀は握力をあげた。そして一気に握りしめた。

 バキッ!「ッ!?」

 拳を破壊され、止まっていると琥珀に腹を殴られ吹き飛んだ。

 「次は、どなたですか」

 琥珀は、殺意を出した。他の亜人族たちは、黙った。

 現在、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族のグゼ、そして森人族のアルフレリックが、南雲と向かい合って座っていた。南雲の傍らには4人とカム、シアが座り、その後ろにハウリア族が固まって座っている。

 「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族・・・としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう? あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 「こちらの仲間を再起不能にしておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」

 「何を言ってるんですか、先に仕掛けてきたのは、あなた方です。更に言えばお嬢様を狙った瞬間、私にとっては、排除対象です。」

「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

「そ、それは! しかし!」

「勘違いするなよ? 俺達が被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」

 「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 「確かに、この少年は、紋章の一つを所持しているし、他の三人もそれなりに実力があるようだね。その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 他の亜人族は、何か思うことがあるようだった。アルフレリックが代表していった。

 「南雲ハジメ。他三名、我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さん達を口伝の資格者として認める。故に、お前さん達と敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。……しかし……」

 「絶対じゃない……か?」

 「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな……」

 「それで?」

 俺は、バレないように仕込んでいる物を構えた。

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

「……殺意を向けてくる相手に手加減しろと?」

「そうだ。お前さん達の実力なら可能だろう?」

「あの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だが、殺し合いで手加減をするつもりはない。あんたの気持ちはわかるけどな、そちらの事情は俺にとって関係のないものだ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれ」

 南雲には、敵対者は殺すという価値観は根強く心にあるからそう言うと思っていた。すると虎人族のゼルが口を挟んだ。

 「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 ハウリア族に頼むから必要はないと思っていたが次の発言で真意が分かった。

 「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」

 「シア! 止めなさい! 皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

 「でも、父様!」

 「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 「・・・・・・・」

 俺は皮肉だなと思ったら、ハウリア族の家族を思いやる心が招いた。

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが? どうする? 運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

 バッシュ!!

 「はあ!?」

ゼルの頬が少し切れていた。南雲達以外は、驚いていた。

 「何をした?」

そう聞かれたので俺は答えた。

 「ナイフで切った」

 「貴様、別に俺は、お前らと戦争したてどうでもいいけどお前らくらいなら5秒あれば血祭りにできるけど。やるか?」

 そう言うと全員沈黙した。南雲が何か話そうとしたから俺は、元いた場所に座った。

「俺は、お前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。俺からこいつらを奪うってことは、結局、俺の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうが。俺から、こいつらを奪おうってんなら……覚悟を決めろ」

 「ハジメさん……」

 「本気かね?」

 アルフレリックが誤魔化しは許さないとばかりに鋭い眼光で南雲を射貫く。

 「当然だ」

 「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」

 「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」

 「約束したからな。案内と引き換えに助けてやるって」

 「……約束か。それならもう果たしたと考えてもいいのではないか? 峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう? なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう。」

 「問題大ありだ。案内するまで身の安全を確保するってのが約束なんだよ。途中でいい条件が出てきたからって、ポイ捨てして鞍替えなんざ……」

 南雲がユエに視線を送った。

 「格好悪いだろ?」

 「・・・・・・・ふっ」

俺は、ユエとの出会いで南雲は外道との一線を超えていないことに少し鼻息で笑いユエに感謝していた。

 「ならば、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」

 「アルフレリック! それでは!」

 いや、それと言いかけたが南雲が先に言った。

 「ああ~、盛り上がっているところ悪いが、シアを見逃すことについては今更だと思うぞ?」

 「俺達も、シアと同じように、魔力の直接操作ができるし、固有魔法も使える。あんた達のいう化物ってことだ。だが、口伝では〝それがどのような者であれ敵対するな〟ってあるんだろ? 掟に従うなら、いずれにしろあんた達は化物を見逃さなくちゃならないんだ。シア一人見逃すくらい今更だと思うけどな」

 「はぁ~、ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である南雲ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。何かあるか?」

 「いや、何度も言うが俺達は大樹に行ければいいんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」

 「……そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが……」

 「気にしないでくれ。全部譲れないこととは言え、相当無茶言ってる自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ」

 他の亜人族達は、疲れた表情で早く立ち去ってくれといわんばかりの顔をしていた。ハウリア族は、困惑していた。

 「おい、何時まで呆けているんだ? さっさと行くぞ」

 「あ、あの、私達……死ななくていいんですか?」

 「? さっきの話聞いてなかったのか?」

 「い、いえ、聞いてはいましたが……その、何だかトントン拍子で窮地を脱してしまったので実感が湧かないといいますか……信じられない状況といいますか……」

 「……素直に喜べばいい」

 「ユエさん?」

 「……ハジメに救われた。それが事実。受け入れて喜べばいい」

 「そうだよ、助かったんだったら素直に喜びによ」

 「・・・・・・・」

 ユエが南雲に視線を送った。

 「まぁ、約束だからな」

 「ッ……」

シアが南雲に近づいき全力で抱きついた。

 「ハジメさ~ん! ありがどうございまずぅ~!」

 「どわっ!? いきなり何だ!?」

 「むっ……」

 これは、まだ面倒事があるな。と俺は、心の中でそうおもった。




夜、集中していたら深夜3時で眠すぎて後書きが思いつきませんでしたが、次回は、両儀刀真、佐々目琥珀考案、ハウリアブートキャンプ

ギャグ回か過去回みたいなの作るときにどういうネタにするか

  • 幼児化
  • 性別転換
  • 王様ゲーム
  • 先生との過去
  • 刀真のトラウマ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。