キヴォトスに迷い込んだので、全力で楽しんでみる 作:おすとろもふ
最近は冷えた風が吹くことも少なくなり、すっかり透き通る春風を肌に感じるこの頃。
俺達が今感じている風は春風なのか、はたまた硝煙の匂いが混じった爆風なのか……。
キヴォトスを将来PRすることになるなら、プレゼンの場で発表することにしよう。
キヴォトスでは、どちらの風も全身を吹き抜けていきますよ!と。
「……なんでいつ来ても爆発が起こるんだよゲヘナは」
「はぁ……やっぱりおじさんも来て正解だったね〜……」
俺とホシノ先輩は現在、ゲヘナの自治区に足を踏み入れている。
しかし、ゲヘナ駅に降りて駐車場に出た瞬間に、生徒同士の銃撃戦が始まった。
そして、俺が唖然としている間にホシノ先輩が俺を守るように前に出て盾を構える。
その直後に爆風が吹き抜けた。
……どうだ?意味わかんねぇだろぉ!!
俺達は、流石の治安の悪さに呆れながら、前方から歩いてくる人物に目を向ける。
ゴツい巨大なヘイローを持ち、その小さな体躯には似合わないイカついマシンガンを構える白髪美少女……ヒナだ。
……今更だが、何故こんなことになっているのか。
始まりは、先日アビドスで過ごしていると、モモトークでヒナから稽古の誘いを受けた。
しかし、ゲヘナへのお出掛けはホシノ先輩から禁止されていた為、ホシノ先輩に相談した。
当然……
「……はぁ。駄目に決まってるでしょー?なんでミツハくんを危険な所に行かせないといけないの〜?」
こんな感じで溜息を吐きながら反対された。
だが、ここで折れる訳にはいかなかった。
俺が他のキヴォトスの生徒と肩を並べるには、経験の差を埋めるくらいの密度の濃い訓練が必要なのだ。
それに、様々な人から教えてもらった方が、色々な戦闘の視野が得やすい気がする。
そして一時間近く説得し続け、最終的にホシノ先輩が同行するのであればOKになった。
こんな感じのやり取りがあり、ゲヘナにやってきたのだった。
そして、本当はもっと早くに着き、ヒナが俺達二人をゲヘナ学園まで案内してくれる予定だった。
しかし、途中で生徒同士のいざこざに巻き込まれたと連絡が入り、多少の遅れが発生した。
そんなこんなで事件を解決してきたヒナは、その直後にまた目の前で発生したようだ。
……まぁしょうがないよね。ゲヘナだもんね。
「……あれが、風紀委員のヒナちゃんね。噂には聞いてたけど、強そうだね〜」
ホシノ先輩はほんの少し目を細め、ヒナを観察し始めた。
俺達がヒナを見ていると、それに気付いたのか溜め息を吐きながら銃撃戦の真っ只中を歩き始めた。
それに伴い、先程まで銃を乱射していた生徒達が射撃するのを止め、ヒナから距離を取り始めた。
「え?嘘だろ?戦場が割れてくんだけど」
「うへぇー……まるでモーセだよ〜」
俺達がヒナの行動にドン引きしていると、すっかり静まり返った戦場でヒナが宙に浮く。
……!?!?
「……あなた達には選択権がある。一つ、ここから早々に逃げ出すこと。二つ、この場所に倒れ伏すこと……どれがいい?」
底冷えしそうな程に冷酷な表情が、周囲を見下ろす。
心なしか、ヒナの目が紫色に光ってる気がする。まるで、悪魔というか魔王のような……。
ヒナの宣告がこの場に響き渡ると、生徒達がどよめき出した。
そして、その場からすぐさま逃げ出す生徒と、ヒナに対して手に持った銃を構え始める生徒で別れ始める。
「ホシノ先輩……キヴォトスの人って舞◯術使えるんすね〜。初めて知ったっすよ」
「……そんなわけないでしょ〜。羽が付いてるから飛べるんじゃなーい?」
そんな話をしていると、宣告を聞かなかった生徒達がヒナに向かって銃撃を始めた。
俺は、まるで針の筵とでも言うべき光景が広がると思っていた。
……そう、思っていた。
未だ銃撃を受けるヒナは、どこまでも冷酷に、そして面倒臭そうに戦場を見つめると、愛銃であろうマシンガンを目下にいる生徒達に向ける。
そのまま告げるように、言った。
【終幕:イシュ・ボシェテ】
瞬間、全てが紫の閃光に包まれた。
まるで、レーザー光線のようなマシンガンの銃撃が周辺一体を薙ぎ払い、先程まで鳴り響いていた銃撃音は、閉幕した後の劇場の如く静寂が訪れていた。
戦場に立っているのは、観戦していた俺とホシノ先輩、そして全てを終わらせた張本人であるヒナの三人である。
もはや、全ての感情を通り越して無。
「……いやー、最近ほんと日本に帰りたくなる日が沢山あるんですよね」
「ふーん?……それは却下でいいとして、流石におじさんもデタラメすぎると思うなー」
さり気なく却下されたのは置いておいて、あのホシノ先輩ですらあまりの惨劇に呆れの表情を浮かばせている。
そんな俺達の元に、ヒナが淡々と歩いて来る。
「……ミツハおはよう。そして、
「うへ〜、そんなついでみたいな扱いしないでよー」
「……さっきは見間違えかと思ったけど、昔と比べて別人のようになったわね」
目の前まで来るとヒナが挨拶をしてきた。
それと同時に、ホシノ先輩を一瞥して少し驚いた表情をした。
……やはり、昔のホシノ先輩は今とは違っていたらしい。ノノミがこの間言っていた、丸くなったというのは強ち間違いではなさそうだ。
「やっぱりホシノ先輩も女性なんで、可愛いを目指してるんじゃあぁぁぁあッ!!頭が割れるぅぅぅう!?」
「ミツハくーん?口に
「……ミツハはデリカシーがないのね……」
ホシノ先輩からのアイアンクローを受けていると、ヒナが呆れた目をこちらに向けてくる。
しかし、いつまでも駅で時間を潰している訳にもいかなかったので、俺達はヒナの先導でゲヘナ学園に向かって歩き始めた。
・・・・・・
ゲヘナ学園に着くと、周囲から沢山の視線を感じた。
……まるで、物珍しい客人が来たかのような空気が漂っており、些か居心地が悪い。
「気にしないで。少し目立つだけだから、そのうち慣れる」
「おっけー……そんじゃ、早速やるかー」
最近は、毎日のようにホシノ先輩とシロコと稽古を行っているため、段々と強くなることへのモチベーションが高くなってきている。
今まで出来なかったことが出来るようになるのは、結構気持ちがいい。
……相変わらず、ホシノ先輩からは転がされ続けているんだけどな。
ヒナとの稽古にテンションが上がる俺とは対照的に、ホシノ先輩は肩を下ろし、だらっとした態度で観戦モードに入った。
「うへぇ〜。おじさんはここで見てるよ〜。ミツハくんが怪我すると大変だしさー」
「……どの口が言ってんねん」
「ん?」
「なんでもございません」
一言で言うと、強烈な圧を感じた。
この世界には、舞◯術が使える人がいるんだな〜と思っていたが、次は覇◯色である。
次は卍◯、もしくはス◯ンドでも出し始めるのだろうか?
しかし、ホシノ先輩が腰を下ろしたのを見て、ヒナが見計らったように近づいた。
「……小鳥遊ホシノ。見てるくらいならバイトでもしてみない?」
「バイトー?……っていうかさ、フルネーム長くなーい?ホシノでいいよ〜」
「そう……それじゃあ、ホシノ。私の代わりに、自治区で問題を起こした生徒を片付けて回ってほしいの」
ヒナがホシノ先輩に、バイトの依頼を始めた。
同時に、依頼の話が始まるとホシノ先輩の目は鋭くなり、威圧感が漂い始めた。
しかし、その威圧感に一切の怖気すら見せず、冷ました顔で値段交渉を始めるヒナ。
……この二人って他の人達よりも別格で強くないか?
他の生徒達を見てても、二人より強いと感じることはない。
間違いなくホシノ先輩とヒナ、そしてネル先輩は上澄みの強さを持っている。
俺が思考を止めて、目の前で行われている値段交渉を見ると、丁度終わったらしくホシノ先輩がホクホク顔でショットガンと盾を手に取った。
「それじゃーおじさんはちょっと働いて来るから、ミツハくんはちゃんと待ってなよー?」
「俺は子供か!!」
そんな言葉を残して、ホシノ先輩は風紀委員会の腕章を身に付け、街へと駆けていった。
「……それじゃ始めよう」
「うっす。よろしくお願いします!」
銃を構えたヒナと向かい合った俺は、改めてやる気を入れ直した。
・・・・・・
???side
……駄目だ。
ありえない。
こんなことがあっていいはずがない。
私達は、いつものようにデイリーミッション感覚で銃撃戦をしていた。
こんなのは、ゲヘナ自治区ではそう珍しく無い……いや頻繁に起こるような細事だ。
ゲヘナは、爆発音と銃撃音が街のBGMになっていると言っても過言ではないほど身近だ。
しかし、少し前からだろうか?
風紀委員会に空崎ヒナという一年が入ってから、急激に暴れる不良生徒達が少なくなった。
それでも、ほんの二割くらいの話だ。全体的に見れば然程変わりはしない。
そんなことを思っていたが、実際に空崎ヒナと相対して私は漏らした。
思い出すのも嫌で顔が引き攣るが、それでも純然たる事実として私は恐怖で失禁してしまったのだ。
それからは夢に出るほどのトラウマとなり、暴れるのを一旦自粛するくらいだった。
だがしかし、最近は私の勢力も力を付けた。
さらに、今日は空崎ヒナが非番の日だという。そんなチャンスをみすみす逃す私達ではない。
今日の犯罪件数は、次第に膨れ上がっていっている。ゲヘナニュースアプリでリアルタイムの情報を検索すると、様々な犯罪が更新され続けている。
かくいう私達も、そのビッグウェーブに乗っかって銃を乱射していた。
……十数秒前までは。
現在の私の前では、一方的すぎる蹂躙劇が行われていた。
「うへぇ……ほんと、ゲヘナって治安が悪いよね〜」
のびのびとした口調からは、想像も出来ないような動きと立ち回りで仲間が次々と倒れ伏していく。
「な、なっ!なんでだ!というか誰だお前はッ!?」
私は、思わず声を荒げながらピンク髪の女に叫ぶ。
すると、女はまるで道端の石ころを見るような目で私を見て、寒気がするような声で言う。
「……そんなことどうでもよくなーい?知る必要ないしさ」
その言葉を聞いた瞬間に、私の中で何かが弾ける音と共に、急激な怒りが目の前を覆った。
空崎ヒナでもないただの一般生徒にッ!!私が恐怖を感じる?
「そんなことはありえないッ!!沈めぇぇぇえッ!!!」
私は、一心不乱にピンク頭に銃を乱射する。
しかし、どれだけ撃っても全く傷がつく様子のない盾に、尽くを阻まれる。
まるで、お前如きがどれだけ攻撃しようが無意味とでも言われているかのような……。
「クソッ!!クソがァァアッ!!」
ただひたすらに撃ちまくる。弾が切れたと分かった瞬間に、もはや手癖となっているリロードをして、また撃ちまくる。
……いや待て。
落ち着いて考えてみると、おかしい。
何故あれだけの強さがある奴が、盾の後ろから出てこない?
「……私だったら裏をとーーー」
「せいかーい。あの盾は囮だよー」
そんな呑気な声が聞こえた瞬間に振り返ろうとするが、身体に強烈な衝撃を感じ、近くにあった建造物の壁まで飛ばされた。
全身にズキズキとした痛みを感じるが、そんなことは些細なことだ。
クソッ!!
私は頭に血が上りすぎて、全く戦況と相手を見れていなかった!
……いや、そもそも始めから相手になどなっていなかったのだ。
自重気味に笑う私の前に、ピンク髪が歩いて近づいてくる。
その姿は、どこか空崎ヒナと被って見える。
「それじゃー、おじさんは次の現場に行かないといけないからさー。大人しく気絶してね〜」
……そうだな。
こいつに似合う言葉があるならこうだろう。
「……悪魔が」
その言葉を放つと同時に、私の意識は刈り取られた。
アンケートに答えてくださった皆さん!本当にありがとうございます!
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そして、折るね⭐︎にも沢山入れられてました!!
囧<なんでぇえーー!?