キヴォトスに迷い込んだので、全力で楽しんでみる   作:おすとろもふ

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色々な人がいて、別れがあって、ラーメンを啜る

 

「はぁ……暑い」

 

「本当にね〜」

 

電車に乗っていたら、突然キヴォトスとかいうゲームの世界の都市に来ていて、寂れた駅のホームで幽霊と話している。

 

……いや、まとめたけど意味がわからん。

 

今日一日の内容が濃すぎて、これまでの人生が薄味の何かに思えてくる。

 

それにしても暑い。砂漠だからかは分からないが、とにかく暑い。

 

日陰にいるのに、空気がカラッとしていて喉が渇く。

 

「……俺のこの財布に入ってる現金、あそこの自販機で使えないか?」

 

「んー?無理だよ?……だってキヴォトスの通貨は電子マネーだからね〜」

 

「もう駄目だぁ。おしまいだぁ」

 

こんな所で、こんな暑さで俺は死ぬのだろうか。

 

超嫌なんだが。

 

「……そのヘイロー舐めたら水分補給にならない?」

 

……は?

 

「お、おま!おっそろしいこと言うな!」

 

「えー!だって凄く美味しそうだし……」

 

ジュルリッ

 

あぁ……このままだと俺のキヴォトスでの初の思い出が、年上の女性にヘイローを舐め回されたことになってしまう。

 

ち、ちくしょう……どうにかならないのか!?

 

「ちょっ!ユメ先輩っ!それ以上はッ!?」

 

「ッ!?え!?ちょっ!!」

 

焦った俺が手を前に突き出すと、突然目の前に水の球が出来上がった。

 

……え?なんこれ。

 

「えー!?なにこれ魔法!?」

 

「んなわけ……いや、この水なんか自由に動かせるな。まじで魔法説あるか……?」

 

ここにきて俺の魔法使いデビューが見えてきたかもしれない。

 

いや、そんなことより今一番重要なのは、

 

「これ飲めるかな」

 

「行っちゃおう!」

 

「よし!」

 

飲んだ。

 

凄く美味しかった。

 

「なんか今まで飲んだ水で一番美味かったかも」

 

「凄く透き通った美味しさだった……これ、売れるよ」

 

「金に困ったらこれで稼ぐのもアリかもな……」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

あれから一時間くらい二人で話していると、甲高い音を立てて向こうから電車がやって来た。

 

それと同時に、ユメ先輩が立ち上がって俺の前に立つ。

 

「……そっか。あれがユメ先輩が今から乗る電車か」

 

「そうだよ。……これでお別れだね〜。もっとミツハくんとお話ししてたかったな。もっと、一緒にいたかったよ……」

 

そう言ってユメ先輩は、泣きそうな顔で抱きついて来た。

 

「私ね、ずっと寂しかったんだよ。死んじゃったあと誰とも話せないし、誰とも目が合わなくてッ!でもっ!ミツハくんが最後に話してくれてっ!すごく、すごく!嬉しくて……!」

 

たった……たった数時間程度の仲だ。

 

でも、俺にとってかけがえのない時間だった。

 

俺が言葉を紡ぎ出すと、ユメ先輩の抱きしめる力が弱くなった。

 

「……ユメ先輩。俺も、ここに来て最初に出会ったのがユメ先輩でよかった。ユメ先輩に会えてよかった」

 

俺は、涙が滲んだ目を誤魔化すように裾で拭う。

 

……いつだって別れも再開も笑顔が一番だと思うから。

 

「あはは!……実は、ミツハくんって女誑しだったりするのかな〜?」

 

「なわけ」

 

「……うん。私決めたよ!ミツハくん!目瞑って口開けて!」

 

いや何故。

 

……すごく嫌な予感がするんだが。

 

「まあいいけど……はい」

 

口を開けた直後、何か固いものが先輩の指と一緒に、俺の口の中に入って来た。

 

「ッ!?ッ!?ち、ちょ!?へんふぁいッ!?」

 

「お〜!溶けたね〜!これで私とミツハくんはずっと一緒だよ!」

 

「な、なんだ今の……」

 

固いものがまるで飴のように溶けていった。

 

それと同時に、何故かユメ先輩を身体の中から感じた。

 

……まじで何を食べさせられたんだよ。

 

「内緒だよー?それじゃ!ミツハくん!ホシノちゃんをよろしくね〜!あと、もしピンチになったら私を呼ぶんだぞー?」

 

「……ホシノって。まあいいか。んじゃまた会おうぜ、先輩!」

 

「あはは!おう!また会おうな後輩っ!」

 

そう言ってユメ先輩は、笑いながら電車に乗り込んでいった。

 

それと同時に電車が発車した。

 

きっと、またいつか会えるだろう。

 

……終点で。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

俺は、いつまでも駅のホームにいるのも生命の危機を感じた為、止むを得ず砂漠行脚の旅に出ることにした。

 

正直、この暑さの中歩きたくはないのだが、砂漠の夜は恐ろしいほどに冷え込むと聞いたことがあるので、早めに住居を探したかった。

 

しかし、見渡す限りの砂!砂!砂!で砂のゲシュタルト崩壊が起きてきている。

 

歩き始めてから2時間くらい経つが、一向に人工物一つ見えてこない。

 

「あ゛ぁ゛ー!あづい゛!」

 

こまめに自分の出した水を飲んだり、被ったりしながら歩き続ける。

 

本当に方向が合っているのかすら分からないが、こんな場所で足を止めたら本当に死ねるのでとにかく歩き続ける。

 

そして、しばらく歩いていると日が落ち始めた。

 

夕日が綺麗で幻想的だが、俺にとっての時間の猶予が刻一刻と迫ってきている。

 

「まじやばくね……?なんか冷え込んできたんだけど。バッグに上着入れといてよかった。いやほんと」

 

俺は、実家に持って行く筈だったお土産を齧りながら、上着を着る。

 

このままだと本当に不味いな……。

 

俺は、水を温水にできないか試し始める。

 

この水が温かくなれば、今日を越せるかもしれない。

 

 

 

 

しかし、10分試行錯誤しても水は温かくはならなかった。

 

「うわぁ……ここでゲームオーバーか?ユメ先輩とあんな約束しといて、早々に再会とか気まずいにも程があるだろ……」

 

絶望を感じながら、目の前に水を浮かせて色々な形を使って遊ぶ。

 

……なんか楽しいな。

 

そう遠い目をしながらふよふよ浮かぶ水を眺めていると、気づいた。

 

「いや……そもそもこの水浮いてんだけど。……原理は知らんけど浮くなら、水固めて上に乗ればワンチャン……?」

 

これしかないと思った。

 

まさに起死回生の妙案である。

 

日頃、色々なアニメや漫画を漁っていたので、イメージ力と発想力には自信があった。

 

まさかこんなところで活躍するとは思わなかったが。

 

 

 

……目を瞑り、イメージするのはイルカだ。

 

水でできたイルカ。

 

身体の中で、不思議な感覚が腕に集まる感じがする。

 

そして、目を開けると俺の目の前に出来上がっていたのは、水でできた透明なイルカだった。

 

「……まじでできたよ。しかも乗れるんだけど」

 

地面から15cmくらい浮いたイルカに乗り、乗り心地を確かめる。

 

「……よし。行けそうだな!そんじゃ、イルカ号出発!」

 

俺とイルカ号は、時速60キロで夜の砂漠を横断し始めた。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……まじで、酔う」

 

凄まじい速度で砂漠を横断したせいで、冷えた風が更に冷えて凍えるような風になったり、砂の段差を避ける為に、急にイルカ号を上に持ち上げたりした結果酔った。

 

これでは、砂漠を乗り回したりするのは夢のまた夢だ。

 

……要改善だな。

 

「にしても途中でよく分からん軍事施設があったり、遺跡が見えたりしたけど、ブルアカって世界観どうなってんだ……?」

 

色々とごちゃごちゃになってないか?

 

 

 

俺は砂漠に吐いて、気分が回復した頃を見て再びイルカ号に乗った。

 

少し先に都市のようなものが見えるので、そこを目指すことにしよう。

 

「さーて行くぞイルカ号!」

 

乗り心地は乗りながら改善するとしよう。

 

まだまだ試したいことも、実験したいことも山程あるしな。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

現在時刻は、朝の5時らしい。

 

念の為持ってきていたモバイルバッテリーを使い、スマホの充電を100%まで回復させた。

 

しかし、問題もある。

 

今使わせてもらっている家は廃墟で、電気も通っておらず水も出ない。

 

水の問題は心配ないのだが、電気が使えないのが困る。

 

コンセントが完全に死んでいるので、スマホの充電もできないし、モバイルバッテリーの充電もできない。

 

正直、このままだとまた詰みだ。

 

「もう動きたくない……。だけど食料もない、電気もないじゃあ限界も近いしなぁ」

 

とりあえず、このゴーストタウンを散策してみないとな。

 

 

 

散策を始めて30分は経つが、あたりには崩れかかっているビルや廃墟しかない。

 

それどころか、殆どの建物は砂に埋もれているし、住んでいる人の気配は一つとしてない。

 

「これは、本当にゴーストタウン説あるな」

 

ぐうぅぅ

 

「はぁ……腹減った」

 

このキヴォトスに来てから、お土産のお菓子以外何も食べていない。

 

再び顔を上げて歩き出そうとしたが、ふと一軒だけ稼働しているお店が目に入った。

 

俺は気になり、お店に入ってみることにした。

 

「あのーすいませーん。やってますかー?」

 

明るい店内の壁には、銃が掛けられており、日本のラーメン屋との違いを感じる。

 

「おう、やってるぜ!」

 

店内を見ていると、奥から二足歩行の柴犬が出てきた。

 

……え?まじ?柴犬が立って喋ってんだけど。

 

「……スゥー。オーケーオーケー飲み込んだ。キヴォトスだもんな。そ、それより大将!この柴関ラーメン一つ!」

 

「あいよッ!ちょっと待ってな!」

 

 

 

柴関ラーメンは、暴力的な美味さだった。これなら毎日通いたいくらいだな。

 

俺がラーメンを食べ終わり、水を飲んでいると、にこやかな顔の柴大将が話しかけてきた。

 

「にしてもいい食いっぷりだったな!こんだけ美味そうに食ってもらえたら料理人冥利に尽きるぜ!」

 

柴大将は親指を立てながら笑う。

 

……ほんと、人間と同じだな。ここからは、そういう偏見とかを持たずに接して行く方がこの世界では生きやすそうだ。

 

深く考えたら負けってやつだな。

 

「……まじで美味かったです。正直、今まで食べたラーメンの中で一番でした」

 

「はっはっは!!嬉しいこと言ってくれるな!」

 

ふと、俺は手元のスマホをチラッと見ると、これまで使ってた電子マネーのアプリが統合されて謎進化を果たしていた。

 

「ブフッ!?ゲホッゲホッ!!」

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

柴大将が慌てて駆け寄り、柔らかい肉球で背中をさすってくれた。

 

「だ、大丈夫です。……あの質問なんですけど、このアプリのお金って使えますか?」

 

俺は、謎進化を果たした『モモペイ』という電子マネーアプリを柴大将に見せた。

 

「……ん?おう?使えるぞ。てか、キヴォトスでモモペイ入れてない住民はいないぜ?」

 

「まじすか」

 

「まじだぜ」

 

この返し流行ってるのか。

 

「それじゃ、お会計お願いします!」

 

「おう!柴関ラーメン二杯で1160円だ」

 

「ご馳走様でした!」

 

「おう!またこいよ兄ちゃん!」

 

柴大将の笑顔と共に見送られ、俺は柴関ラーメンを後にした。

 

いい時間だった。

 

何故か、これまで生きてきた人生よりも、キヴォトスで過ごしたこの2日間の方が楽しい気がする。

 

色々な人がいて、話してみて、それがこんなに楽しいとは思わなかった。

 

俺は、今まで人とこんな風に関わったりしたことはなかった。

 

「よしっ!決めた。俺はブルアカを……キヴォトスを精一杯楽しんでみるとするか!」

 

俺の今後の目標が決まった。

 

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