キヴォトスに迷い込んだので、全力で楽しんでみる   作:おすとろもふ

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粛清のシロコダイビング

 

「いやー、いい湯だったね〜」

 

「ん!また来たい!」

 

俺達はアビドス高校での俺の尋問が終わった後、四人でアビドス自治区にある銭湯に足を運んだ。

 

そして、湯上がりにシロコが裸で出てくるという珍事件もあったものの、ホシノ先輩の神速移動による捕縛でなんなく捕まった。

 

……当然俺は見ていない。

 

「……それにしても、ミツハさんはこの後どうするんですかー?」

 

「んー?このあと?」

 

「ミツハさんって廃墟暮らしでしたよね?今夜はどこに泊まる予定なんですかー?」

 

「え、普通にそこら辺の廃墟借りるけど」

 

俺は、まだキヴォトスに来て2日目だ。

 

住む家もなければ、食料もない。当然、寝具なども持っていないので、しばらくは段ボール生活になるだろう。

 

本当、この世界は残酷だ。

 

「いや〜……おじさん、それは良くないと思うなー」

 

「同意ですね⭐︎」

 

「んなこと言われても、廃墟が駄目なら道路しかなくなるんだけど」

 

ホシノ先輩とノノミは、廃墟暮らしを許すつもりはないらしい。それだと俺はどうすればいいのだろうか?

 

道端に段ボールを敷いて、段ボールを掛けて寝るとかか……?

 

砂漠の寒さ舐めるなよ。今日だってめっちゃ寒いんだぞ!

 

「ん、校舎に泊まればいい。私と一緒」

 

……なん、だと?

 

「……あー、まあいいかな〜。おじさんもシロコちゃんの案に賛成だよ〜」

 

「そうですね!他に泊まれる場所も無さそうなので、しばらくはアビドス高校の校舎に泊まるのがいいかと」

 

「……まじで?いいの?」

 

「いいよ〜……でも、ちゃんと働いてねー?」

 

「アイアイサー!」

 

……とりあえず、バイトの一覧とか見てみよう。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

爽やかな朝を知らせる小鳥の囀りが心地良い。

 

目を瞑っていると、暗かった視界を明るく染め上げてくれる朝日。

 

俺は頬を撫でる爽やかな風を感じながら、仄かに暖かくなってきーーーー

 

「どーん」

 

「ゴッフゥア゛ア゛ァァ゛ッ」

 

俺の意識は強制的に刈り取られた。

 

 

 

 

 

「こんのッ!!アホシロコぉ……!」

 

現在、寝ていた俺の腹にジャンプして飛び込んで来たアホの頬を、こねくり回している。

 

俺の記念すべきキヴォトス3日目の朝は、シロコに意識を刈り取られるという悲惨な結末を残して去って行った。

 

「ご、ごべん」

 

シロコの頬をグニグニと伸ばしていると、部室の扉が開き、眠た気な目を擦りながらホシノ先輩が入ってきた。

 

「うへ〜、朝から元気だねぇ〜」

 

「おーホシノ先輩じゃん。おはー」

 

「ほはー」

 

「う〜んおはー」

 

俺は、シロコの頬から手を離すと、外出する準備を始めるために自室へと戻る。

 

今日はキヴォトスの学園都市を見物しにいきたいのだ。

 

荷物を整理していると、部屋の扉からノノミがひょこっと顔を出した。

 

「ミツハさんおはようございます!……あれ?今からお出掛けですか?」

 

「ノノミじゃん。おはー。今日は街の方に行ってきて銃買う予定」

 

「お〜!いいですねー!ということは、今日は一日帰ってこないということですか?」

 

「まあそうなるな〜」

 

俺の部屋として割り振られている空き部屋の前でノノミと話していると、唐突にクジラ人形を抱き抱えたホシノ先輩と、ヘルメットを片手に持ったシロコが来た。

 

……シロコは、今からライディングでも行くのか?

 

「うへ〜ノノミちゃんおはよ〜」

 

「ノノミおはよ」

 

「はい!おはようございま〜す⭐︎」

 

テンション高えな〜。

 

ある程度の準備は出来たので、あとは出発するだけである。

 

「……んー?ミツハくん、これからお出掛けー?」

 

「これから街の方に買い物に行くそうですよ!」

 

「へぇ……?ちなみにどこに行く予定なのかな?」

 

なんか……ホシノ先輩の圧が強くなった気がする。

 

少し空気が重くなった。

 

「うーん。一先ずは、このD.Uってとこに行く予定っすね」

 

「一人で?」

 

「うん」

 

……さらに空気が重くなった。

 

「……ミツハ、武器も持ってないのに危険。考え直すべき」

 

「いや、その武器を買いに行く予定なんだけど」

 

流石に、いきなり襲われることは……ないとも言えないが、ないと考えたい。

 

なんにせよ、このまま武器なしで出歩くのは危険なので、銃が欲しい。

 

「ふ〜ん?まあいいや。おじさんもミツハくんに着いていくからね」

 

……ほえ?

 

なんでホシノ先輩が?……というか凄い眠そうなのに本当に大丈夫なのか?

 

頼りになる先輩なんだろうけども、この先輩長い距離歩いても疲れないのか……?

 

「せ、先輩、無理しなくても大丈夫っーーー」

 

「無理してないから大丈夫だよ?それに、一人で行かせて迷子になったり拐われたりする方がめんどくさいからね」

 

「……ホシノ先輩、今まで見たことないくらい早口」

 

シロコが余計なことに口をツッコむ。

 

「し〜……シロコちゃん!そういうことは黙っておく方が利口ですよー?」

 

「……ん。わかった」

 

ホシノ先輩の表情は伺えないが、耳が少し赤くなっていた。

 

 

 

 

アビドス高校 校庭

 

 

 

 

「よ〜し、準備できたし早速行こうかー」

 

ホシノ先輩が、間延びした声で声を掛けてくる。

 

背中にショットガンを背負う幼女……う〜んデンジャラス。

 

「……でも、どうやってアビドス駅まで行くんですか?徒歩だと遠いですよ?」

 

「……ん、確かに。私が背負う?」

 

なんで幼女に背負われなきゃならねえんだよ。

 

「んー……自転車に乗ろうかな〜って考えてたんだけどー、ミツハくんはどうするつもりなのかな〜?」

 

「え?イルカに乗る」

 

「「「!?」」」

 

みんなが驚愕した顔でこちらを見た。

 

あの普段目を半目にして眠そうなホシノ先輩でさえ、目を見開いていた。

 

「……なんでそんなにビックリしてんだ」

 

「いや、普通ビックリしますよ?あと、イルカって何を言ってるんですか〜?砂漠にイルカなんていませんよー?」

 

「海を渡って行く……?遠回り」

 

こいつらは俺の頭に異常性を見出したらしい。

 

……あまりにも失礼極まりない。

 

とりあえず、俺の言ってる意味を理解させるにはイルカ号を見てもらうしかない。

 

「イルカ号!降臨ッ!」

 

俺は、水を生み出しイルカの形にすると、その背中に飛び乗った。

 

少しひんやりするのが、砂漠の気温と相まって気持ちいい。

 

「……え?え?ほ、本当にイルカだぁ〜!!わ、私も乗っていい!?」

 

朗報、ホシノ先輩キャラ変

 

ホシノ先輩が、見たこともないようなキラキラした表情でイルカ号に飛びついた。

 

「わっ!わぁ〜!凄い……ひんやりしてて気持ちいい〜」

 

そして、イルカ号の背中に乗った後、ぐでっとしたまま動かなくなった。

 

「ず、ずるい!私も乗りたかった!」

 

「帰ってきたら是非私も乗せて欲しいですねー!」

 

「いいぞー。んじゃ、出発進行ー!」

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

????

 

 

 

「ククッ……ついに計画の一歩手前まで来ましたか、カイザー理事」

 

「フンッ!当たり前だろう。私自ら手掛けている計画だぞ?失敗なんぞさせるか」

 

闇よりも深い黒に歪な亀裂が入った存在と、カイザー理事と呼ばれる『大人』が対話する。

 

その室内は、決して煌びやかなオフィスなどではなく、必要最低限の物しか置かれていない質素なオフィスであった。

 

決して談笑とは言い難い雰囲気を纏いながらも、話は進んでいく。

 

「……そうですか。対デカグラマトン兵の強化を……。ククッ……ですが、それだけで倒せる程甘くはないですよ?」

 

「言われるまでもない。これだけで奴を倒せる訳がない。私達の技術を結集した兵器が、後少しで完成するのだ」

 

「ほう?兵器ですか」

 

黒のスーツを着た大人は、表情が伺えないながらも僅かに目を細めた。

 

「ああッ!そうだッ!!あの忌々しいヘビを一撃で沈める圧倒的な武器だッ!!それはもはや神器と言っても過言ではないだろう!」

 

カイザー理事は、その巨体を大層に広げ自分の作る武器の素晴らしさを語る。

 

それを見ながら黒のスーツを着た大人は、横目に砂漠が映し出されているモニターを見る。

 

「ククッ……そうですか。神器……それは私も興味がありますね……」

 

「フンッ!!貴様の疑わし気な視線など今にひっくり返るだろう」

 

「ええ……是非ともそうして……ッ!?!?ク、ククッ!ククック、クク!」

 

「……何を笑っている」

 

「い、いえ……なんで、もございませんよ……クククッ」

 

首を傾げ、訝し気な表情をしながらカイザー理事はモニターを見る。

 

「ッ!?なんだこれは!?凄まじい速度を出してイルカが通り過ぎて行ったぞ!?」

 

「クッ!ククッ!どうしますか?カイザー理事、貴方の作ったトラップが作動して爆発の連鎖が起こっていますよ?」

 

「ふ、ふざけるなァァァ!!すぐに行かねばッ!!クソッ!!」

 

カイザー理事は、慌てて部屋を飛び出して行く。

 

その後ろ姿を見送った後、残った大人は呑気に冷めたコーヒーを啜る。

 

「ククッ……なるほど、あれは神秘を具現化させ、イルカの形を模したものですか。……実に興味深いですね。何故、水に乗れるのか。何故、彼の神秘は水を生み出せるのか……。ククッ……ククククッ!!」

 

暗いオフィスには、怪し気な笑い声が響くのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

「え、アビドスの電車って一時間に2本しかないんすか……!?」

 

「そうだよ〜。そもそも使う人があんまりいないからね〜」

 

「不便!!」

 

「まあまあー。おじさん達もそこまで使う訳じゃないからさ〜。そこまで不便に感じることはないんだよね〜」

 

俺とホシノ先輩は、無事アビドス駅に着いた後、電車が来るまで広々としたホームで話していた。

 

もちろん周りには人一人おらず、アビドス自治区の廃れ具合がわかる。

 

「そういえばさー、ミツハくんの出す水ってイルカ以外にも変えられるの?」

 

「ん?変えられるっすよ。というか、俺のイメージ次第でどんな形にだってできるっす」

 

「おー!凄いね〜!それじゃーお魚さんとか作れるかなー?」

 

魚か……。

 

魚って言っても色々な種類がいるしな〜。どうせやるならもっと具体的にイメージしたいところだ。

 

そうだな……去年の秋に食べたやつでいくか。

 

「そんじゃーいくぞー!……ほい」

 

「おー!!これはさんまだね〜?」

 

一瞬で当てやがった。

 

……別な魚も作ってみるか。

 

「そんじゃー……これはどうだ!」

 

「そ、それはっ!!マグロー!!お刺身食べた〜い」

 

「な、なるほど……?」

 

マグロ=刺身なのか。

 

哀れなマグロだ。

 

「……!おー!来たっすね」

 

「よ〜しそれじゃー乗ろっかー」

 

俺達は雑談を一旦やめて、D.U行きの電車に乗り込んだ。

 

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