メンヘラ魔法少女憑依もの   作:xa

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二話

「折角この町に来たなら、一度会って話してみたかったんだよね。」

 

そう語る青いもみあげ。ばっ、あばばばばばバリ姫だ~~~!!!

かっ、可愛い~!美人すぎる!容姿端麗ってきっとこういう人を指す言葉なんだと今わかった。

もう歩き方から綺麗ですごい。刀二本と弓背負ってるのに、全然つっかえずに綺麗に立ってるの美しすぎる。

 

「あた、あたしと?白い月の騎士様が!?どうして?」

 

「噂の魔法少女についての純粋な好奇心が半分、私の探し物について知っていそうだったのが半分、かな。黒い森に、世界の底に繋がる小さな川が流れているって聞いてね。もしかしたら私の探している花が見つかるかもしれないって思ったんだ。」

 

「あぁ~なるほど、川というよりは洗濯機だったけど。多分、あの川はあんまりお花とは関係ないと思う。」

 

「洗濯機。行ったことがあるの?」

 

「いったことあるというか...あたしの故郷。」

 

たった一言でバリは色々察したようだった。幻想体も這い出てくるもっと深い川の支流を見たことがあるのだろう。

 

「びっくりした。あなたみたいに流暢に喋れるのもいるんだね。」

 

「会話できる奴らは結構いるよ?人間に優しいかはまた別の話だけど。」

 

バリは興味津々という風に頷きながらもみあげをさすっていた。

幻想体はあまり知られていない存在だ。研究もされていないし、まとめ上げた人間もまだいない。幻想体についてなら今の時代なら一番詳しいだろうなという自負があった。

 

それよりも、あたしはバリに会えたらどうしても聞いてみたかったことあった。バリの冒険譚を。ドンキホーテが夢見た英雄譚をあたしも知りたかった。

冒険の話、聞かせてください!そう懇願すると、微かにはにかんだ表情、嬉しそうなドヤ顔を見せて、聞き覚えのある台詞。

 

「...教えてあげようか?」

 

もう、ほんっと可愛い!可愛い~~~!!!すき。

 

それから、私は沢山の話を聞かせてもらった。冒険の話。旅の話。遺跡の話。フィクサーの話を。

とても語り上手で、ドンキホーテとサンチョが魅了された理由がよくわかった。こんなに面白い話をされたら、誰だってワクワクする。

あたしも、いつかこんな風に冒険出来たら素敵だなって、思ってしまうくらいには。

でも、楽しい話がずっと続いたわけじゃなかった。ふとした疑問、バリが気になっていたこと。それは、あたしのことだった。

 

「なぜあなたは命を懸けて戦うの?それも、無償で。中には国一つ滅ぼせるような恐ろしいものだっていただろうに、一度たりとも逃げなかったよね。怖くはないの?」

 

「どうしてって、それがあたしの存在理由だから?私は誰かに世界を救うヒーローであるように望まれて、抽出されたから。悪者を退治して、困っている人を助ける。そうすることでしか生きられないの。」

 

生きられないっていうのはちょっと微妙な返答だったかもしれない。

幻想体には生も死もないし、ただ同じことを繰り返すだけの現象としてみるべきだから。

 

「本当に、それだけの理由で?生まれた瞬間から存在理由が決まっていて、それに自分を捧げられるというなら...悪人がいなくなれば、あなたは一体どうなるの?」

 

バリの瞳が揺れて、何かに迷うような表情を見せて、それでも決意を固めたのかしっかりと目を合わせて口を開いた。

 

「私は、あなたが正義のヒーローか、あるいは悪い魔女か確かめたい。だから私と決闘をして。」

 

え、決闘?むりむりむりむり絶対勝てないじゃん、第一眷属と三日三晩戦ってけろりとしてる超人とド素人のあたしじゃ一方的に負けるに決まってる。

息遣いとか歩き方とかもう全く隙がないもん。

 

「あたし、勝てない勝負はしない主義なんだけど。」

 

「...私との決闘に応じてくれるなら。」

 

「応じてくれたら?」

 

「おいしいお菓子いっぱいあげる。」

 

「真の魔法少女はどんな事があろうと逃げないの!かかってきなさい!」

 

こうしてあたしはバリと決闘することとなった。思ったより理由がしょうもないな?お菓子ごときに釣られるとか我ながらチョロくないか?

でもバリ超かわいいじゃん。多分憧れと感動で正気じゃなかったんだと思う。

 

ここじゃ戦いづらいか、そう言われて二人揃って町の郊外へ。もし魔法が躱されたら家が吹っ飛ぶから正直かなり助かった。

バリの後ろ姿に、とても威圧感を覚える。今不意打ちして殴りかかっても確実に切り飛ばされると分かるくらいには。

 

「フィクサーの規則通り、正々堂々行くね。」

 

真っ直ぐ、正面を見据える。杖を両手に構えて、いつでも反応できるように。

 

正直全く勝てる気がしない。あたしが今まで戦って来た敵は殆どが異形であり、人型ではなかった。

対人戦の経験が全然ないし、刀とかどうやって受け流せば良いかわからない。

というかなんで実質特色フィクサーと戦わされてんの?何もない君とかが良い勝負するんじゃないの?あたしには荷が重すぎる!

 

コインが大降りに投げられ、黄金色の煌めきが空気を切り裂く。くるくると硬貨が宙を舞い地面に触れた。

瞬間、顔面に赤い矢が迫っていた。

 

強.......!速...避.......無理!!受け止める 無事で!? 出来る!? 否 死。

 

「あっぶな!?」

 

ノーモーションで武器切り替えられるとか聞いてない!テレポ間に合ってなかったらもう即死してたわ。でもこれで真後ろ取れた。くらえあたしが夜鍋して練習してたホーミング弾をしかも三発!

何で真後ろ取ったのに全部弾かれてんの?刀長すぎる待って容赦がぜんぜんない!あたしの杖が悲鳴あげてる!折れそうなんだけど!

無理無理マッチしてらんない!バックステップで下がって星形弾を乱射するけど、掠りもせず全部弾かれてる。

ヒステリックゲージがもうカンストしそう!

 

「っ!アルカナ・ビート!」

 

星形散弾は当然のように水の鏡で防がれたが、この技の真価は威力ではない。使用時効果で相手になんかピンクのオーラがつくのだがなんと全耐性が脆弱になる。

あたしがこれまで勝ててきた理由だ。一対一で相手だけ全耐性脆弱とか効果が強すぎて我ながらビビる。でも、マッチに勝てないと意味がない!

 

「ちょっと!ねぇ!??!速すぎるって手加減して!」

 

クイックが積まれすぎてわけわからん速さになってる。正直防戦一方だ、二刀流やばすぎだって!

瞬く暇すらないし、早すぎて見えてないから直観ではじき返してるけど、もう限界!杖から出ちゃいけないガキィンって金属音が響いてる。

無理テレポで仕切りなおす!

 

待ってワープ地点に置き黒い矢は卑怯だって!しかも二発飛んできた。この体制じゃ避けれない!あっ太ももに刺さないで!痛っっっ、たくもないな。

いや痛いけどこの前掠ったPALE鎌に比べれば断然マシ。あたしのBLACK耐性は0.3、とてもかたい。赤い矢だったら内臓吹っ飛んでた。

 

距離はまだかなり開いてる、流石に遠距離戦ならあたしのほうが多分強い。

くらえあたしのディバインバスター!矢とぶつかっても消し飛ばしてる、これなら当たる!

 

よ、ようやく当たった!脆弱だから結構痛いでsy...

なんで直撃したのに動けてるんだこいつ!?か、肩が!肩がずっぱり切られたんだけど!これが破壊不能コインってヤツ!?!?

 

わかってはいたけどメジャーアルカナなんか比じゃないつらい。

こんな奴と三日戦ってるドンキやばすぎ、三日どころか三秒で殺されちゃう!

 

「もうダメ負けました降参しますあなたの勝ちです許してください!」

 

両手を挙げて膝を付く。杖もしなしなだし、血も流れてて痛いし、もうつらみが限界。

 

「でも、まだ本気出してないよね。もっと強い技も使えるだろうし、変身もできるって噂で聞いたけど。決闘は全身全霊で挑むべきものだよ?」

 

「アルカナ・スレイブは詠唱が恥ずかしいから使いたくないし、変身も自分が自分じゃなくなる感じがあるから苦手なの。それに、決闘だろうと人間に向けて使うものじゃない。」

 

バリは少し悩んだ風に顎をさすった後、きっぱりと目を合わせて言い切った。

 

「うん、やっぱりあなたは正義のヒーローだね。それもとっても優しい魔法少女。」

 

あたしは、優しくなんか、ない。

私は、幻想体だ。人間の心から生まれ、人間によって抽出された存在ではあるが、結局のところ人を殺す存在だ。ZAYINだろうが、ALEPHだろうが、同じだ。

優しくなんて、優しい存在ではあれない。ただみんな本性を知らないだけ。

結局のところ、私の行いは全部偽善。自分の存在意義と欲求を満たすための自分勝手な行い。実のところ、あたしが望んでいるのは平和じゃないから。誰かに必要とされることだけが憎しみの女王の求めることだから。

 

「けれどどこか不安定で、道を踏み外せばきっと悪になる。それを朧気ながら感じているから怖がっているんだね。」

 

ほんとはみんな、知っている。井戸から這い出た幻想体たちと、あたしが同じ存在であることを。だから、恐ろしいんだ。

WAWクラスは抑止力の影響がなければ数十万人を殺しつくせる。

WAWとALEPHの中間であるとされたピアニストは30万人を消し飛ばし、アンジェリカをも殺した。ALEPHクラスは特色に匹敵する力がある。

ロボトミーでも憎しみの女王は規制済み、溶ける愛、状況次第で笑う死体の山にも一対一で打ち勝っていた。

もし、もしも、私が闇堕ちして暴れだしたら...この町は消し飛んでいる。確実に。

 

あんなに優しくしてくれた人たちを裏切って、ころして、壊す?あたしが?

 

ふと、街を眺める。私が守った世界。人々の往来、喧騒。大人から子供まで皆笑顔だ。

自分の手を見つめる。握りしめる。私の鋭利な剣の向き先が、私の守ったものに向いたのなら、それは自分で自分を傷付けているのと変わらない。

手首をそっと撫でる。病的なまでに白い肌。ナイフを持っていれば、きっと切り付けていた。

 

「自分自身の危うさに気づけたなら、大丈夫。あなたはきっと、ずっと優しいまま。」

 

そんなこと、ない。あたしは、あたし自身が守ったものを傷付ける前に、離れなきゃいけない。今はまだ正気でも、いつかあたしは必ず悪になって、みんなを傷付けるから。

私が、先輩みたいになる前に、どこか、どこか遠くへ。世界は...平和で...あたしは、もう、存在意味がないから。

 

「そんなに心配なら、私についてきてみない?あなたに何があっても私が止めてあげるから。」

 

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