銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!!   作:ギアっちょ

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澪標ヒサギ

 

 銃

 このキヴォトスにおいて、携帯していて当たり前のもの。対立した時も、急いでいる時も、やむを得ない時も、露払いをする時も、色んな場面で使える優れもの。

 時にそれは信念になり、理想を掲げるための道具となる。

 

 でも、結局それは暴力なわけで。

 

 

「私たちには言葉がありま〜す!!」

 

 

 だから私は今日もメガホン片手に高らかに叫ぶ。

 

 丸腰で。

 

 

「喧嘩はやめましょ〜お!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう何回目ですかコレ…」

「この世から悲しみの雨が止むまで……かな」

「言ってることはカッコいいですけど、毎度毎度怪我して帰ってこられるこっちの身にもなってください」

「あははっ、ごめんってば」

「ヒサギさん…」

 

 後輩の宇沢レイサに毎度毎度手当てを頼みその度に心配される。

 

「なんでいつも武器も持たずに不良の抗争に突っ込んでいくんですか……せめて言ってくれれば私も行くというのに!」

「別に私諍いを辞めさせたいわけじゃないし」

「はえ?」

「手当てありがと!今度どっか遊びに行こ!」

「あっちょ、まだ包帯ちゃんと巻けてないですよ!?」

 

 レイサを置き去りにして寮へと戻っていく。いつも怪我をして帰ってくる私の姿はお嬢様連中にはちょっとばかし刺激が強いみたいで、いつも私に視線をたくさん向けてくれる。

 人気者は辛いね、はっはっは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 澪標(みおつくし)ヒサギ、それが私の名前。

 結構有名人だと思う、何故なら学園を歩くだけで周囲がざわつき始めるから。少し前までは名簿には載ってるよね?くらいの存在感だったと思うけど、ここ最近急に目立ち始めた。

 

 理由は………まあ色々あると思う。二年からトリニティにやってきた転校生なもんで、なおさら悪目立ちするのなんのって。我ながらよく転校できたなとも思う。

 この前なんか学園の外に行こうとしただけなのに正義実現委員会サマに呼び止められちゃって、走って逃げたよね。

 

「ん…シャーレ…?」

 

 何その洒落た名前、なんつって。

 信号待ちの時間にスマホでネットを覗いていたら気になる記事を見つけた。

 

「………」

 

 連邦生徒会の中になんか新しい部署……部活?がなんかが出来たようで、それが凄い権利持ってるとか何とかで随分と話題になってるみたいだ。あと顧問が大人だ〜って。

 

「まあどうせ大したことしないんでしょ〜?」

 

 連邦生徒会さんが何かした記憶ないし〜……

 よくニュースサイト見たら七囚人が脱獄してた、笑い事じゃなくてヤバい。治安悪化まっしぐらでしょこれふざけないでいただきたい。

 

「ん……おやおやおやおや」

 

 遠くの方でゲヘナから来たであろう生徒とトリニティ生が危ない雰囲気になっているぞ〜?

 

「ま〜まあまあ、一体どうしたのかな?」

「あ、誰だお前」

「口を出さないでもらえます?」

「道端で喧嘩しておいて手ぇ出すなはないと思うけどね?」

 

 トリニティ生は基本自分から銃は取り出さないから、先に手を出すとしたらゲヘナ生。でも発端となるのは大体トリニティ側の偏見意識のせい。

 とりあえず話を聞かせてもらうように何とか説得する。

 

「あたしが道歩いてただけでこいつが睨みつけて来やがったんだよ」

「あなたの事なんか一度も見ていませんが。自意識過剰もほどほどにしたらいかがですか?」

「んだとこのっ…」

「ま〜あまあ〜………ねえ、私自警団だからもう行っていいよ」

「……なら早くそう言ってください」

 

 私の言葉を聞いてトリニティ生がすたこらさっさと歩き去っていく。

 

「は?なんだあいつ逃げやがって」

「さてゲヘナのお客さん」

「あ?」

 

 随分と気が立っていらっしゃる。まあここってそういうところあるし、根本的にそりが合わないんだろうなあ……

 

「ひとりでトリニティに来るなんてそれなりの事情があるんだよね?話してくれたら力になれるかも」

「何だお前……馴れ馴れしくないか?」

「いいからいいから」

「お、おう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あまっ……おいしっ…」

「まさかケーキ買いに来てたとは……」

 

 人目のつかない路地裏、私が代わりに買ってきたケーキを美味しそうに食べているゲヘナ生さん。

 

「わざわざトリニティまで来なきゃだったの…」

「ん……配達とかしようもんならゲヘナに来た時点で狙われるから……あと季節限定は店でしか売ってないし…」

「あー……色々あるんだね、事情」

 

 ゲヘナの治安は悪い、想像しているよりずっと悪い、とっても悪い。自治区に入った瞬間に銃声の嵐が聞こえて、駆けつけてみたら風紀委員長に蹂躙された後だった。

 各地で起こる諍いを順番に風紀委員長が単騎で潰して回っていて……なんかもう、ヤバすぎて30分で帰った。

 

「その……さっきは悪かったな。あたしも分かってて来てるんだけど…」

「あはっ、いいよ別に。よくある事だし」

「…そうなのか?」

「トリニティとゲヘナの仲が悪いのは今に始まった事じゃないでしょ?」

 

 ゲヘナは割と荒々しい気質で……トリニティは、悪く言えば「お高く止まってる」だ。水と油みたいなもので、仲が良くなる未来も全く見えない。

 

「ただまあ、来るのはお勧めしないかなあ。あんまりこういう事言いたくないけど、気分のいいもんでもないだろうし」

「……あんたは、なんであたしらのこと嫌わないんだ?」

 

 そんな話してケーキ不味くならない?

 ……まあ今更か。

 

「こうやって普通に話せる相手を嫌う理由、ある?」

「………変な奴って言われないか?」

「よく言われる〜!!」

 

 私のそんな姿を見ておかしそうに笑うゲヘナ生さん。

 

「ありがとな、付き合って貰って。おかげでいい気分で帰れそうだ」

「そりゃどうも。もしまたトリニティで困ったことがあったら、私を探してみてね。まあ見つからないだろうけど……力になるよ」

「……あんた変な奴だけど、いい奴だな」

「よく言われる〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ〜ん、レイサちゃんパトロールお疲れ様〜」

「ヒサギさん!?っていうかケーキ!?なんで!?」

「ん〜ついで?」

「わあっよく分からないけどありがとうございます!!すぐ頂き……その前にお手洗いに行って来ます!」

「行ってらっしゃい〜」

 

 トリニティは、他より銃声が少なくていい。一番平和って感じがする。銃なんて持ってるけどろくに戦いで撃ったこともないって奴がたくさんいるのもいい。困ったら撃つという選択肢がない。

 

「洗ってきました!!」

「お疲れ!好きなケーキを選びたまえ!3つ選んでいいよ!」

「そんなに!?一つで結構です!……というか3つしかなくないです?」

「バレたか」

 

 パトロール後のレイサはテンションが高くて声がでかい。段々といつものレイサになっていくのが面白くて、たまにパトロール後を狙って会いに来る。

 

「このケーキ全部あげちゃう」

「ええっ!?食べきれませんよ!?」

「じゃあスズミにでもあげて?」

「えっ、う〜ん………今ここで二人で一つずつ食べて、残ったのをスズミさんにあげるってのはどうです?」

「……天才?」

 

 何も考えずにゲヘナ生さん助けたついでに3つ買ってきてしまったので、食品ロスにならなくて何より。

 

「なんでも食べていいんですか?」

「どうぞどうぞ」

「じ、じゃあこのチーズケーキを…」

「あっ………」

「えっ………」

 

 沈黙。

 

「……なんてね」

「で、ですよね!ヒサギさん冗談好きなんですからもう〜」

「あははっ、ごめんごめん………………」

「もういいですって!」

 

 怒られた。

 私が買ってきたケーキなのに。

 ちなみにチーズケーキが食べたかったのは本当、言わないけど。

 

「じゃあ私はショートケーキで……スズミにはモンブランでいいかな」

「はい、後で渡しておきますね」

「よろしく」

 

 その後、二人でケーキを食べながらその日の成果を話し合った。

 

 レイサはヘルメット団とスケバンの諍いを喧嘩両成敗で辞めさせたのだそうだ。単騎でよくやるなあと思うけど、傷も少ないあたりそう大きな戦いでもなかったのかな。

 私は……特に何もしていないなあ。

 

「ゲヘナの人の買い物に付き合ってあげたくらい?」

「……立派な人助けですね!」

「ん〜、声が大きいとこ好きだよ」

「あっ声大きかったですか?すみません……」

 

 言われて声がちっさくなるところも好きだよ。

 

「まあでも個人的にはそっちの方が安心だったり…」

「どして?」

「だってヒサギさんいっつも怪我して帰ってくるから…」

「怪我すんのはレイサちゃんもじゃん?」

「ヒサギさん戦いすらしないじゃないですか!」

 

 そんな話してたらケーキが美味しくなくなっちゃうよ〜……

 

「相手を傷つけたくないって気持ちは尊重しますけど……それでヒサギさんが怪我してたら元も子もないじゃないですか」

「ん〜、心配してくれてるの〜?優しい後輩持って嬉しいなあ」

「ち、茶化さないでください!」

「一口いる?」

「あっ欲しいです」

 

 よし、話逸らせたな。

 

「スズミさんだっていつも心配してて…」

 

 ダメだ逸らせてない。

 

「どうして、そんな危険なやり方なんですか?」

「……それはねぇ〜」

 

 メガホン片手に争いの起こっている場に乱入し、叫び散らしながら和平を訴えかけてくる丸腰の変態………あの変態と一緒くたにされるのは正直気に入らないけれど、私の評価は大方そんなもんだと思う。

 

「……何て言えばいいのかな」

「射撃の成績は優秀だったって、正義実現委員会にスカウトもされたって聞きました。それなのにどうして……」

「ん〜、詮索はよくないぞぉ〜?」

 

 レイサからすれば、本当に疑問なのだろう。銃を持って己を、誰かを、平和を守ることを当然として生きてきた彼女からすれば。

 いいや彼女だけじゃない、この世界で生きる大半の人にとって、私の存在は常識破りで、破天荒で、理解ができないんだろう。

 

「でもなあ、それが私の信念で美学で……誓いだからさ」

 

 

 銃無き世界を作る。

 それが私の理想だから。

 

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