銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!!   作:ギアっちょ

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見切る

「先生、貴方の言う澪標ヒサギは………本当に、澪標ヒサギなの?」

 

 ヒナの言ったその言葉がずっと引っかかっていて。

 その去年行方をくらましたという、澪標ヒサギのことを調べていた。大方はヒナの言っていた通りで……顔写真も見つけて。

 

 確かに、目の色は青だった。それに顔立ちもどこか違っていて……身長もヒナの言う澪標ヒサギという人物より低いはず。

 

「あれ、ヒサギさんこれって…!」

「あぁうん、昨日見つけちゃって」

「ピンキーパカが気に入ったんですね!?えっとえっと……す、すぐにでもピンキーパカのグッズを用意します!!」

「お、おう……」

 

 澪標ヒサギは、神眼と呼ばれるほどすごい眼の持ち主だったらしい。

 私の知る澪標ヒサギも目が良くて……けれど、目の色も違う。髪色が似ているだけの別人……と言った方がいい。

 

 けれど共通事項として、眼の良さがある。神眼と呼ばれていたほどかどうかは分からないけれど……夜目は利くみたいだ。

 でも、眼がいいのに目の色が違う。同じなのか違うのか、いまいちよくわからない。

 

 そもそも彼女は自分を、キヴォトスの外から来たと言っていた。それがいつの話かは分からないけれど、去年に学園の生徒会長を務めていた澪標ヒサギと一致するだろうか?

 

「ありがとう、ヒフミ。これは一生大事にする」

 

 もし別人だとして、何故彼女は澪標ヒサギを名乗っているのだろうか。

 

「一生だなんてそんな……」

「これは友達からもらった初めてのプレゼントだから……」

 

 メガネをかけたペロロの人形を愛おしそうに見つめるアズサ。本当に大切に思っているのが伝わってくる。

 

「……もうすぐ試験か」

 

 聞きたいのは山々だけれど……今、変にプレッシャーを感じさせてしまいかねないことを思うと、まだ聞けない。

 

 二次試験が終わった後でもいい。ヒナも私に任せると言ってくれたし……彼女が苦しんでいる理由がそこにあるのなら、私が手を差し伸べてあげないといけない。

 

「模擬試験もみんな合格点…!希望が見えてきました!」

 

 今は二次試験に備えよう。

 補修授業部がひと段落ついた後で……彼女に、話をしてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「めちゃくちゃしてくるじゃん……」

 

 ハナコが読み上げた試験内容変更の概要。

 テスト範囲を3倍に拡大、合格ラインを90点に引き上げ……どれも急なものであり、対応のしようがないもの。

 

 この状況で思わずハナコが漏らした「退学」というワードにコハルとアズサが反応する。

 

 私を無理やり補修授業部に入れた疑惑があるのもそうだけど……なりふり構わなくなってきたというか。多分試験を受けても90点じゃ私も取れないし、そもそも試験範囲増えてるし……

 

「試験会場はゲヘナ自治区第15エリア77番街、廃墟の1番…」

「ぶっ」

 

 意味がわからな過ぎて吹き出してしまった。ゲヘナってどういうこと……?割と真面目に意味がわからない。

 範囲拡大合格ライン引き上げ、試験会場はゲヘナ……最初から合格させる気なんてなかったのかとなるほどのめちゃくちゃっぷり。

 

 先生たちがヒフミとアズサに「退学」ということについて説明している間、正直これは無理だろうなと思っていた。

 

「……試験時間が深夜3時になっている、今から出ないと間に合わない」

「あ、確かに…!?」

 

 一通り説明を受けても冷静に、試験時間のことを話題に出すアズサ。

 ……これでも受ける気あるんだな。って退学かかってるんだからそりゃあそうか。

 

「驚くにせよ、怒るにせよ、絶望するにせよ……それは試験を受けてからでも遅くない」

「……受けなきゃ何も始まらないか。ごめんすぐに支度する」

「わ、私も行きます!」

 

 部屋に戻って荷物の整理をする。

 

「あら、ヒサギさんその銃は……」

「一応ね、迷惑はかけられないし」

 

 唯一持っている実銃の狙撃銃を背負う。モデルガンなんてなんの役にも立たない、ただのガラクタだよガラクタ。

 

「……せっかく行ったのに戦闘に巻き込まれて辿り着けませんでしたとか、そういうのはごめんだからさ」

「…そうですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こっち、人が少ない」

 

 私の先導で後ろにヒフミたちがついてくる。

 なんとかゲヘナにたどり着いたは良いものの、不良たちに絡まれてしまっては戦闘は避けられない。

 

「あそこ右に曲がって……方角これで合ってる?」

「は、はい、大丈夫です」

「ありがと。右に曲がってしばらく路地裏に入るから走ろう」

 

 眼で周囲の地形を見つつ、人の少ない場所を探してそこを進む。夜も出歩いている生徒は多いけど、街もトリニティとは違って道が色々あるというか複雑というか……

 とにかく、人の目を避けて試験会場へ行く。銃は持っているけれど人を撃つ決心がつくかはわからない。だったら最初から戦闘を避けてしまえばいい。

 

「先輩やっぱり凄い…」

「えぇ、まるで本当に全部視えているみたいに」

「……大通りに出る、不思議と人気はないけど……とりあえず行くしかないかな」

 

 こういう広範囲を見るやり方は頭と目に負担がかかる。試験前に頭痛でダウンしては元も子もないと視るのをやめる。

 

「ごめん、これ以上はちょっとキツいかも」

「ううん十分だよ、ありがとうヒサギ」

 

 片目を抑えつつ今度は後ろに周り、大通りに出るところでアズサに先行してもらう。

 

「……銃声が聞こえる、それに確かに人気が少ない」

「事情はわかりませんが好都合です、突っ切りましょう」

 

 

 ハナコの言葉に全員で頷き進んで行ったが、すぐに橋のところで検問に引っかかってしまった。

 

「トリニティの生徒がゲヘナにテストを受けに来るわけないだろう!……正義実現委員会までいるのか!?」

「あっやば」

 

 そういえばコハルずっと正義実現委員会の黒いセーラー服着てるから……

 

「やむを得ない、黙らせる」

「アズサちゃん!?」

「上層部に連絡!正義実現委員———」

 

 突然爆発物が飛んできて、検問官たちを吹き飛ばしてしまった。

 

「アズサちゃん……」

「違う、私じゃない」

 

 まあ爆発物はアズサは持っていないし……

 

「あら?先生と以前戦った皆様方と……知らない方が一人いらっしゃいますね」

「あ、この前戦った…!」

「水族館の……」

 

 水族館?この前?

 ……あぁ、この人たちが前私が呑気にグッズ見てる間に戦ってた美食研究会……気に入らない店あったら爆破してる人たち…

 

「事情は把握しましたが……温泉開発部が市街地の真ん中をドカンとさせてしまい、今ゲヘナは混乱状態。まあ結果として私たちも、緊急事態ということで快く力添えをしてくださった友人のおかげで脱出してこられたのですが……」

 

 温泉開発部……温泉を求めてそこがどこであろうととにかく温泉を掘り始める……

 ああ、ゲヘナだなここ、すごくゲヘナって感じがする。友人って言った先が簀巻きにされて必死にこちらに何かを訴えてくる可哀想な人だし。

 

 

 そのあと何故か車に乗せて試験会場のところまで連れて行ってくれるという話になっていた、なんで?

 みんな美食研究会のこと捕まえようとしてたんだよね?……どうして?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ、なんかもう笑えてくる」

「……確かに。窮地に陥った時ほど気を落とさない方がいいものだ」

 

 戦いが得意じゃないヒフミとコハル、それと先生は美食研究会と一緒に行動してもらって、一応戦える私とむしろ戦る気満々のアズサ。それと……

 

「ハナコは…こっちでよかったの?」

「誰かがサポートに付かなきゃいけませんから」

「助かる。後方支援があるとないとじゃ大違いだから」

 

 しかしまあ。

 温泉開発部と風紀委員会に板挟みされるって、どういう状況なんだろう本当に。三つ巴……にすらなっていない気がする、こっち3人なんですけど。

 前の道は風紀委員会、後ろの道は温泉開発部……行きたい場所は前だけど、流石に3人で突っ切って撒く、というのは無理があるだろうし。

 

「追い詰めたぞ、温泉開発部とトリニティの侵入者ども!」

「ヒサギ、あの銀髪のツインテールと後ろの火炎放射器持ってるやつは特別強い。警戒を」

「了解、ハナコも安全なところ探して隠れてね」

 

 爆破が起こりすぎてアスファルトの道がボコボコになったり、炎上した車が転がってたりとまあ阿鼻叫喚の事態ではあるが……そのくらいの方が遮蔽物があってやりやすいか。

 

「ヒサギさん、この状況ですけど……」

「……私一人でどうこうなる事態じゃないから、流石に空気は読むよ。……あと持ってるのは銃だけじゃないし、大丈夫」

「……分かりました」

 

 こうも囲まれていると流石に強行突破というわけにはいかない。上手くここから離脱する術を考えないといけない。

 

「行くよみんな!温泉という夢に向かって突き進むのみ!!」

 

 温泉開発部の方から凄まじい雄叫びが上がる、怖い。

 

「ヒサギ、どう切り抜ける?」

「……風紀委員会の目的は私達全員の確保、温泉開発部の方はとりあえず温泉が最優先。だから確実に逃げるためにまずどうにかするのは……」

 

 アズサに視線で標的を送る。

 あそこの銀髪ツインテール、あれをどうにかすれば多分風紀委員会の指揮系統も緩まって……綻びが出る、はず。

 

「了解、幸運を祈る」

「ありがと、そっちもね」

 

 温泉開発部の大きな声と共に突っ込んでくる足音で開戦の火蓋が切られる。3人同時に散開してハナコは物陰へ、アズサと私はそれぞれ別方向に駆け出す。

 

「っ!わざわざ来てくれるなら好都合!」

 

 私は銀髪ツインテの方へ駆け出す。持っている武器は5発装填のライフル、遠距離用だとは思うけれど最前線に立っている。

 武器をバラす余裕は……多分ない。

 

「ッ!」

 

 頭に向かって飛んできた銀髪ツインテ弾を首を捻って回避、後ろの風紀委員会が援護に飛ばしてくる弾丸も私に当たりそうなやつだけをこちらの狙撃銃で防いで、避けて、一直線に距離を詰める。

 

「近接戦闘する気か!?」

 

 そう言って構え方を変える銀髪ツインテ、そのまま防御してくれるならと銃に掴み掛かったが普通に避けられ、その回避行動と合わせてこちらに銃弾を放ってくる。

 

「っと、ほっ!」

 

 2発撃ってきたのを地面に手をついてそのまま跳ねて避ける。着地を狙って撃ってくる他の風紀委員会の一方に向けて威嚇射撃、少し掠ったがなんとかそれも避ける。

 

「危なっ——」

「今のも躱す!?」

 

 私が無理な体勢になっているのを狙って銀髪ツインテールが後ろから撃ってくるがそれも避ける。

 リロードはしていない、あと1発。

 

「いやキツぅっ」

 

 あれか、何度か聞いたことがあるけれど多分この人がイオリっていう風紀委員会の切り込み隊長とかなんとかだろう。流石の身のこなしで位置取りも気にしてこちらを上手く誘導しながら、一瞬で私の後ろにまで回ってくる。

 私も身のこなしにはそれなりに自信のある方だけど、向こうも相当。そしてこっちは他の風紀委員会射撃も避けつつ…

 

「……時間がないか」

 

 イオリを私一人が惹きつけているため他の温泉開発部と交戦している風紀委員会がだんだん押され始めている。あっづ!という悲鳴も聞こえてくる。

 唐突に私が真横の誰もいない方に銃を撃つ。

 

「……?一体どこを撃って——」

 

 まだ燃えていないけれどボロボロの車、そこのガソリンタンクを撃ち抜いた。すぐに大きな爆発が上がり、その場の多くの視線がそこへ誘導される。

 

「アズサよろしく」

 

 短く通信機にそう言って突っ込む。今だけ風紀委員会の手が止まっている、イオリの弾丸もあと1発。

 

「くっこの——」

 

 すぐに私に視線を戻したイオリ、素早く私に向かってそのライフルを振り下ろすが、見えているので当然避ける。

 

「ぐぅっ」

 

 流石というべきか、私が避ける方向を分かった上ですぐに蹴りに転じてきた。見えていても回避が間に合わず、思いっきり腹を蹴られて身体が宙に浮く。

 

「——いまっ」

 

 続け様に私に照準を合わせて、弾倉に残った最後の一発を私に向けて放つ。そして私の後方で、私に隠れるように引き金を引いたアズサの弾丸が私に向かって放たれる。

 

 蹴り飛ばされながら全身を捻りながら、イオリの弾丸だけを狙撃銃を当ててズラして、アズサの弾丸が私の体のすぐそばを飛んでいくのを見届ける。

 

「あっぶな……なっ——」

 

 

 そのまま上空で、私の投げた閃光弾が炸裂した。

 轟音と閃光により戦いの音が止み、地面を転がりながらアズサにキャッチされ、そのまま何とか戦線を離脱した。

 

「ありがとうスズミぃっ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「一旦ここで休みましょう、まだ間に合いますから」

「ごめん……腹蹴られたの割とクリーンヒットだったみたいで…」

「私がやっていたらああは行かなかった、ありがとうヒサギ」

 

 引き金は何度か引いたけど当ててはいない、照準の先に人はいなかった。………情けないけれど、これが私の精一杯だった。

 ………自己矛盾。

 

「うぅ……頭痛いし耳痛いしお腹痛いし目も痛い……なんかもう辛い…」

「ハナコ、治療は?」

「目立った外傷がないので身体の内側でしょうし、今すぐには……」

「ごめん、3分で立ち上がるから………あ、私のカバンに目薬入ってるから取って……」

 

 銃弾を見るっていうのはそれだけで凄く疲れる。高速で動く小さな飛翔体が自分に向かっていくつもいくつも飛んできて、それを眼と脳が処理するんだからたまったもんじゃない。

 

「……どうやらヒフミたちは何とか切り抜けたみたいだ」

「そっか、よかった……」

 

 この前の深夜に役に立たなかった分は、これで帳消しになっただろうか……私の願望の押し付けでみんなの足引っ張るのはごめんだし……

 改めて何がしたいんだろうな、私。

 

「それにしてもアズサちゃんとヒサギさん、凄い連携でしたね」

「凄いのはヒサギだ、ああも弾丸の雨をくぐり抜けられるのはヒサギだけ、本当に凄い」

「……あははっ、コハルにも見せたかったな。なんつって」

 

 アズサも私の意図を汲んでくれたからああやって上手くスタングレネードを使えたわけだし……それこそ風紀委員会と温泉開発部に囲まれていたのはアズサだ、そっちだって十分凄い。

 

「……行こうか、ちょっとマシになった」

「もういいんですか?」

「最悪ハナコにおぶってもらうから大丈夫。……なんだその顔、冗談言えるくらいに回復したってことだから……」

「ならいいですけれど……」

 

 

 

 

 そのあと、なんとか時間までに試験会場に辿り着き、さあ試験を始めようってなったところで温泉開発部に爆破された。

 

「……なんて日だ」

 

 思わずそう言ってしまった。

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